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- 認知症になった家族の金銭トラブル・借金問題は珍しくないこと
- 認知症の人が自己破産できないこと
- 認知症の人が自己破産するのに必要な成年後見制度の申立て
- 成年後見制度の申立てのおおまかな流れ
- 成年後見制度を利用する際の注意点
- 認知症かもしれない人の借金・お金のトラブルを防止する方法
認知症の人は自己破産できるのでしょうか。認知症の患者数は年々増加しており、そのなかで家族や本人が直面する金銭的な問題も増えています。判断能力の低下により金銭管理が難しくなるだけでなく、意図せず借金を負ってしまうリスクも伴うでしょう。
このような状況での救済策として、成年後見制度が注目されています。判断能力が不十分な人々を法律的に保護し、適切な決定を行う支援を提供する制度です。
しかし、制度の利用にはいくつかの複雑なステップがあります。今回の記事では、認知症の人が自己破産を申請する際に成年後見制度を利用するための具体的な流れと注意点について、詳しく見ていきましょう。
目次 ▼
1章 認知症になった家族の金銭トラブル・借金問題は珍しくない
認知症は記憶や判断力に影響を及ぼすため、金銭管理が難しくなる場合が多いです。そのため、家族が認知症になると、思わぬ借金を抱えるケースがあります。
たとえば、過去に利用していたクレジットカードを無意識に使い続け、請求が膨れ上がってしまうなどです。また、高額な商品の押し売りや詐欺的なセールスに引っかかるケースも少なくありません。
また、認知症の家族が金銭的なトラブルに巻き込まれるケースは珍しくなく、多くの家庭が同様の問題に直面しています。家族や親族が知らない間に、認知症の本人が多額の借金を背負ってしまうケースも多いです。
認知症患者が意図せず契約を結んでしまう場合もあり、家族全体に大きな負担がかかる事案も少なくありません。家族が認知症の兆候を見せ始めた場合、できるだけ早く金銭管理の見直しを行いましょう。
たとえば、銀行口座の管理を家族に移行する、または成年後見制度を利用するなどの措置で、将来のトラブルを未然に防げます。また、地域の福祉サービスや専門家への相談で、よりよい対応策を見つけられるでしょう。
2章 【注意】認知症の人は自己破産できない可能性がある
認知症の進行により、患者は自己破産を含む法的手続を自ら行う能力を失う場合があります。法律上、自己破産などの重大な法的手続には「意思能力」が必要とされ、この能力が欠けている場合、契約や手続は無効とされます。
認知症が進行し、契約内容や手続の意味を理解できない場合は、本人が自己破産手続を進めるのは事実上不可能です。極めて軽度の場合は、自己破産できる場合があるかもしれませんが、その辺りの判断も含めて、早い段階で司法書士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
自己破産を検討していた家族が認知症の傾向が出ており、どうすればよいかお悩みのみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。債務整理のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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3章 認知症の人が自己破産するには成年後見制度の申立てが必要となる
認知症の方が自己破産を行うには、家庭裁判所に成年後見人の選任を申請する必要があります。成年後見制度とは、判断能力が低下した高齢者や障害者の財産管理や日常生活を支援するための制度です。
この制度は、主に「法定後見」と「任意後見」の2つに分類されます。認知症などの場合は、本人の判断能力がすでに低下しているので、法定後見が適用される可能性が高いでしょう。
法定後見には、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。それぞれ、判断能力の程度に応じて適切な支援が提供されるものです。
成年後見人は、本人の財産管理や契約行為の代理を行う権限を持ち、本人が不利益な契約を締結しないよう保護します。認知症の人が自己破産を希望する場合、成年後見人がいれば、その手続を代行可能です。
なお、自己破産とはどういうものかや、メリットおよびデメリット、手続およびその流れについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にご覧ください。
成年後見人制度を利用したうえでの自己破産を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。グリーン司法書士法人では、成年後見人制度の申立てと自己破産の両方で、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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4章 成年後見制度を申し立てる流れ
成年後見制度を申し立てる際の流れは、おおむね次のとおりです。
- STEP① 申立人・申立先の確認
- STEP② 診断書の取得
- STEP③ 必要書類の収集
- STEP④ 申立書類の作成
- STEP⑤ 面接日の予約
- STEP⑥ 家庭裁判所への申立て
- STEP⑦ 審理開始
- STEP⑧ 審判
- STEP⑨ 後見の登記
- STEP⑩ 成年後見人の仕事開始
ステップごとに、簡単に補足しておきましょう。
STEP① 申立人・申立先の確認
成年後見制度を利用するためには、まず申立人を決定する必要があります。申立人は本人の配偶者、四親等内の親族、本人が暮らす施設の長など家庭裁判所に認められた利害関係人がなります。申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
STEP② 診断書の取得
成年後見制度を申請するためには、本人の判断能力を証明するための診断書が必要です。診断書は、家庭裁判所指定の様式で、医師によって作成されます。
診断書には、本人の病歴や現在の健康状態、判断能力の程度の詳しい記載が必要です。この診断書をもとに、家庭裁判所は本人の判断能力を評価し、後見制度の適用を判断します。
STEP③ 必要書類の収集
申立てには、診断書以外にも多くの書類が必要です。たとえば、申立書、本人の住民票、戸籍謄本、親族関係図、財産目録などが挙げられます。
書類が揃わないと、申立てが受理されない場合もあるため、注意が必要です。必要な書類をすべて揃えるためには、事前にしっかりと準備を行い、必要に応じて専門家の助けも借りなければなりません。
STEP④ 申立書類の作成
必要書類が揃ったら、次は申立書類の作成です。申立書類には次のような種類があります。ただし、書類の名称や様式は各家庭裁判所によって若干異なるのでご注意ください。
- 申立書
- 申立事情説明書
- 親族関係図
- 財産目録
- 収支状況報告書
- 後見人候補者事情説明書
- 親族の同意書
申立書には、本人の基本情報、申立人の情報、後見人候補者の情報などを記載します。また、申立ての理由や経緯の記載も必要です。
申立書の記載内容に不備があると、再提出となるので、正確かつ詳細な記載が求められます。
STEP⑤ 面接日の予約
申立て後に家庭裁判所で、面接が行われるので、先に予約をしておきます。面接は、申立人や成年後見人候補者から詳しく事情を聞くためのものです。
裁判所の繁忙によって2週間〜1か月先でないと、予約が取れない場合があるので、書類の準備に目処がついたら、予約を取っておくのが賢明です。
なお、面接日の1週間前までには、家庭裁判所に申立書類一式を提出しなければならないので、余裕をもって予約しましょう。
STEP⑥ 家庭裁判所への申立て
申立書類一式が揃ったら、家庭裁判所へ提出します。提出の仕方は、家庭裁判所へ持参もしくは郵送です。
提出前に申立書類一式を、コピーしておきましょう。面接の際にコピーを手元に持っていれば、受け答えの資料として使えます。
STEP⑦ 審理開始
申立てが受理された後、家庭裁判所は審理を開始します。審理とは、申立書や診断書をもとに、本人の判断能力や後見人の適格性を評価するプロセスです。
STEP⑧ 審判
家庭裁判所は審理の末に審判を行い、後見人の選任を正式に決定します。審判の内容は、申立人や関係者に通知されます。審判の決定に不服がある場合は、一定期間内に異議申し立てが可能です。
STEP⑨ 後見の登記
審判が確定すると、後見の内容が登記されます。後見登記は、成年後見制度が正式に開始されたことを公的に証明し、後見人の権限や責任を明確にするものです。
STEP⑩ 成年後見人の仕事開始
後見登記が完了すると、成年後見人は正式に後見人としての仕事を開始します。後見人の主な仕事は、本人の財産管理や生活支援、法的手続の代理などです。
後見人は、定期的に家庭裁判所に報告書を提出し、業務の透明性と適正性を確保します。また、後見人の行動は家庭裁判所の監督下に置かれ、必要に応じて指導や監査が行われるでしょう。
成年後見制度の仕事開始以降は、成年後見人が被後見人のかわりに自己破産の手続を進めていけます。
認知症の傾向がある家族の、成年後見人制度の利用を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。法律のプロフェッショナルであるグリーン司法書士法人では、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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5章 成年後見制度を利用するときの注意点
成年後見制度を利用する際には、特に次の4項目に注意を払う必要があります。
- 成年後見人は原則として途中でやめられない
- 成年後見人は家族や親族が選ばれるとは限らない
- 専門家が成年後見人になると費用がかかり続ける
- 軽度の認知症であれば成年後見制度以外の選択肢も取れる可能性がある
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
5-1 成年後見人は原則として途中でやめられない
成年後見人に選ばれた場合、原則として途中でやめられません。これは成年後見制度の重要な特徴で、後見人は被後見人の生活や財産の管理を一貫して支える責任があります。
また、成年後見人は被後見人のために広範な権限を持つため、特定の業務だけに特化できません。たとえば自己破産の手続だけに専念するなどは、認められないのです。
成年後見人を選任する際は、候補者がその責任を十分に理解し、長期間にわたって誠実に職務を遂行できるかどうかを慎重に検討する必要があります。
5-2 成年後見人は家族や親族が選ばれるとは限らない
成年後見人は、必ずしも家族や親族が選ばれるわけではありません。家庭裁判所は、被後見人の利益を最優先に考慮し、最も適任とされる者を成年後見人に選任します。
そのため、弁護士などの専門職が選ばれることも珍しくありません。これは、家族や親族に適切な管理能力がない場合や、被後見人の利益を守るために専門的な知識が必要とされる場合の判断です。
また、家庭裁判所は利害関係や利益相反が生じないようにするため、選任の際には関係者の背景や状況を入念に調査します。このように、後見人の選任に関する最終決定権は家庭裁判所にあり、被後見人やその家族の希望だけでは決まらないので、注意しましょう。
5-3 専門家が成年後見人になると費用がかかり続ける
専門家が成年後見人として選任された場合、その報酬は被後見人の財産から支払われます。報酬は家庭裁判所が定めた基準にもとづき、被後見人の財産の規模や管理の複雑さに応じて金額が設定されるのが一般的です。
つまり、専門家が成年後見人に選任された場合は、長期間にわたって一定の費用がかかることとなります。被後見人やその家族にとって、経済的な負担となる場合があるので注意が必要です。
5-4 軽度の認知症であれば成年後見制度以外の選択肢も取れる可能性がある
自己破産は財産の大半を失うという手続なので、ある程度高度な判断力のもとで行うべきであり、通常は認知症患者では認められません。
ただし、認知症の進行が極めて軽度の場合、成年後見制度を利用せずに、ほかの選択肢を取れる可能性があります。
5-4-1 任意後見制度
任意後見制度を活用すれば、本人が判断能力を失った場合でも、信頼できる後見人に財産管理や生活支援を委ねられます。
任意後見契約は、本人がまだ判断能力を持っている間に公証役場で契約を結ぶことで成立します。本人の希望に沿った生活支援が受けられるため、安心して生活を続けられるでしょう。
5-4-2 家族信託
家族信託を利用する方法もあります。家族信託は、信頼できる家族が受託者となり、本人の財産を管理・運用する方法です。
家族信託は、比較的柔軟に財産を管理できます。家庭裁判所の監督を受ける成年後見制度とは異なり、手続が簡便である点も特徴です。
ただし、信託契約には専門的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けましょう。
5-4-3 金融機関の口座管理サービス
本人が自分の意思で金融機関や行政機関と契約を結べる場合もあります。たとえば、銀行との間で口座管理サービスの契約を結び、日常の金融取引をサポートしてもらうなどです。
このように、軽度の認知症であれば、成年後見制度以外の選択肢を検討することで、本人の生活の質を保ちながら、必要なサポートを受けられる可能性があります。
6章 認知症かも?と思った人の借金・お金のトラブルを防止する方法
認知症が疑われる場合、お金のトラブルが起こらないようにするため、早期に適切な対応を取ることが重要です。貸付自粛制度を利用すれば、本人が金融業者で貸してくれと頼んでも、ブラックリスト入りと同様に、融資は通常受けられません。
ただし、貸付自粛制度は基本的には本人が申請するもので、家族であるというだけでは認められません。家族であり、かつ法定代理人でなければならないのです。
そこで、成年後見人制度の利用とセットで貸付自粛制度を利用するのが、金融トラブル回避の有効な方法のひとつといえるでしょう。また、本人にすでに多額の借金があるなら、成年後見人制度を利用したうえでの債務整理を進める方法もあります。
なお、貸付自粛制度については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも併せてご覧ください。
成年後見人制度を利用したうえでの債務整理を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。グリーン司法書士法人では、成年後見人制度の申立てと債務整理の両方で、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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まとめ
成年後見制度を利用することで、認知症の患者が適切な法的保護を受けられます。この制度は、患者本人や家族が抱える金銭的な問題を解決するための重要な手段です。
成年後見制度を利用する際には、まず申立人を決定し、必要な書類を収集します。また、診断書の取得や家庭裁判所への申立てなど、手続には一定の時間と労力が必要です。
成年後見人が選任された後は、途中での退任は原則としてできません。家族や関係者は十分な準備と覚悟を持って、手続を進める必要があります。
認知症の進行や金銭的な問題に対処するためには、早期に対策を講じることが重要です。成年後見制度はその一助となるものであり、貸付自粛制度をセットで利用すれば、さらに有効といえるでしょう。
成年後見人制度の利用および、債務整理を検討しておられるみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください。グリーン司法書士法人では、成年後見人制度の申立てと債務整理の両方で、個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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