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- 自己破産の手続きタイミングによる退去費用の免責可否
- 自己破産後に発生した退去費用を払わないと起きること
- 退去費用を支払えない場合の対処法
「自己破産すれば、退去費用も払わなくていいの?」
「原状回復費やクリーニング費用まで免責になるのかが不安……」
自己破産を検討しているものの、退去費用が免責されるかどうか分からず、手続きに踏み切れていない方もいるのではないでしょうか。退去費用とは、原状回復費用やハウスクリーニング費用、違約金といった賃貸契約終了時に発生する諸費用のことです。
本記事では、退去費用が自己破産の免責対象になるかどうかや、自己破産後に発生した退去費用を払わないと起きることを解説します。退去費用を支払えない場合の対処法も説明しているので、退去費用で困っている方はぜひ最後までご覧ください。
目次 ▼
1章 退去費用の免責可否は自己破産の手続きタイミングによって異なる
原状回復費用やハウスクリーニング費用といった原状回復費用は、基本的には自己破産によって支払い義務が免除されます。しかし、自己破産のタイミングや退去時の状況によっては、免責されないケースがあります。ここでは、自己破産のタイミングによる免責可否について見ていきましょう。
1-1 自己破産の手続き前に発生した退去費用
自己破産の申立てより前に退去しており、すでに債務が発生している場合の退去費用は、原則として免責対象です。未払いの退去費用を、自己破産の申立てと同時に裁判所へ提出する債権者一覧表に記載しておけば、免責の対象となり、支払い義務がなくなります。
ただし、自己破産をしても、債権者一覧表への記入を忘れると免責は認められません。また、明らかに故意や嫌がらせによって部屋を傷つけたり汚したりした場合も、免責の対象外の可能性があります。
1-2 自己破産の手続き後に発生した退去費用
自己破産の手続き開始決定後に発生した退去費用については、原則として免責の対象とはなりません。自己破産は、手続き開始決定時までに発生した債務を対象とするものであり、それ以降に発生した新しい債務は含まれないためです。
ここでいう手続き後とは、具体的には裁判所が自己破産の開始決定を出した日以降を指します。この開始決定によって、それ以前に発生した債務が破産手続きの対象となり、返済義務がなくなります。したがって、開始決定後に発生した退去費用は、破産手続きによる免責の対象とはならないため、支払う必要があります。
2章 自己破産後に発生した退去費用を払わないと起きること
先述の通り、債権者一覧表への記入を忘れたり、故意や嫌がらせによって部屋に損害を与えたりした場合、自己破産の手続きを終えた後に退去費用が発生した場合は、免責の対象外です。つまり、自己破産後の資産があまりない状態でも、退去費用を支払う必要があります。自己破産後に発生した退去費用を払えない場合、以下のようなリスクがある点に注意しましょう。
2-1 連帯保証人に請求が及ぶ
賃貸契約を結ぶ際に連帯保証人を立てている場合、借主が退去費用を支払わないと、貸主は連帯保証人に対して支払いを請求します。連帯保証人には借主と同等の支払い義務があるため、代わりに退去費用を全額支払わなければなりません。これにより、連帯保証人である友人や親族に大きな経済的負担と迷惑をかけてしまうことになります。
2-2 訴訟を起こされ、給与・財産の差押えに発展する恐れがある
自己破産後に発生した退去費用を支払わずに放置した場合、賃貸管理会社や大家から民事訴訟を起こされる可能性があります。裁判によって判決が確定すると、強制執行により給与や財産の差押えが実行されます。
給与は、手取り額の4分の1(手取り額が44万円を超える場合は33万円を超える部分)までが差押え対象です。その他にも預貯金や自動車、貴金属、宝石といった換金できる財産も差し押さえられます。
3章 退去費用を支払えない場合の対処法
退去費用を支払えない場合の対処法は以下の通りです。
- 分割払いにできないかを相談する
- 退去費用の内訳が妥当かどうかを確認する
- 敷金や保証金で充当できないか確認する
- 専門家に相談する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 分割払いにできないかを相談する
退去費用の一括支払いが困難な場合は、賃貸管理会社や大家に分割払いの相談をしてみましょう。賃貸管理会社や大家にとっても回収できないよりは良いため、支払い意思があることを示せば、月々の負担を軽減する分割払いに応じてもらえる可能性があります。
3-2 退去費用の内訳が妥当かどうかを確認する
退去費用が高額だと感じた場合は、その内訳が妥当かどうかをしっかり確認しましょう。賃貸物件の原状回復義務は、借りた時の状態に戻すことではなく、借りた人が故意や過失で付けた傷や汚れなどを元に戻す義務を指します。
経年劣化や通常の使用による損耗(壁紙の色あせや家具の設置跡など)の修繕費用は、通常、貸主の負担となります。不必要な修繕費用や、相場よりも不当に高額な請求が含まれていないか、請求書の内容を細かくチェックすることが重要です。
3-3 敷金や保証金で充当できないか確認する
賃貸契約時に敷金や保証金を支払っている場合は、これらを退去費用に充当できないか確認しましょう。敷金は本来、原状回復費用や未払い家賃の担保として預けているお金であるため、退去費用から敷金を差し引いた残額のみが請求対象となります。
敷金だけで退去費用を賄える場合もあるため、請求書に敷金の充当が適切に反映されているかを必ず確認してください。また、保証金についても同様に充当可能な場合が多くなっています。そのため、契約書を確認して敷金や保証金の取り扱いについて把握しておくことが大切です。
もし敷金や保証金の充当が適切に行われていない場合は、賃貸管理会社に対して説明を求め、正しい計算による請求書の再発行を依頼しましょう。
3-4 専門家に相談する
退去費用に関するトラブルが複雑で自分では解決が困難な場合は、専門家への相談を検討しましょう。弁護士であれば法的な観点から適切なアドバイスを受けることができ、必要に応じて交渉や法的手続きを代行してもらうことも可能です。
費用面で弁護士への相談が難しい場合は、自治体の消費生活センターや法テラスなどの無料相談窓口を利用する方法もあります。消費生活センターでは賃貸トラブルに関する相談に応じており、解決に向けたアドバイスを受けられます。
また、退去費用の支払いが困難で他にも借金を抱えている場合は、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に相談することも検討してください。自己破産後すぐには再度の債務整理手続きには制限がありますが、専門家であれば現在の状況に応じた最適な解決策を提案してくれます。
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まとめ
自己破産における退去費用の取り扱いは、手続きのタイミングによって大きく異なります。自己破産の手続き前に発生した退去費用は免責の対象となり支払い義務がなくなりますが、手続き後に発生した退去費用は免責されないため通常通り支払う必要があります。この違いを正しく理解しておくことが重要です。
自己破産後の退去費用を支払わずに放置すると、連帯保証人への請求や訴訟による給与・財産の差押えに発展する可能性があります。このような事態を避けるためには、支払いが困難でも放置せずに適切な対処を行うことが大切です。
対処法としては、分割払いの相談、退去費用の内訳確認、敷金や保証金の充当確認、専門家への相談などがあります。特に退去費用の内訳については、国土交通省のガイドラインを参考に借主負担と貸主負担を適切に区分し、不当な請求がないかを確認しましょう。
それでも退去費用の支払いが難しい場合は、弁護士・司法書士などの専門家に相談することで、法的な観点から適切なアドバイスを受けられます。自己破産後であっても、現在の状況に応じた最適な解決策を提案してもらえるため、一人で悩まずに早めに相談しましょう。
グリーン司法書士法人では、自己破産や借金問題について、経験豊富な司法書士が相談に応じています。初回相談は無料で行っており、お客様の状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。退去費用の支払いでお困りの方は、問題が深刻化する前にぜひ一度ご相談ください。
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自己破産と賃貸に関するよくある質問
ここでは、自己破産と賃貸に関するよくある質問への回答を掲載しています。
- 自己破産したら、今の部屋を出なければなりませんか?
- 自己破産をしても、賃貸物件に住み続けることは可能です。自己破産により持ち家は処分の対象となりますが、賃貸物件の場合は家賃を滞納していなければ現在住んでいる部屋から出る必要はありません。
- 自己破産後、新しく賃貸契約を結ぶことはできますか?
- 自己破産後でも新しく賃貸契約を結ぶことは可能です。ただし、信用情報機関に事故情報が登録されるため、保証会社の審査に通りにくくなる場合があります。特に信販系の保証会社は信用情報を重視するため、審査が厳しくなる傾向があります。対処法としては、公営住宅を利用する、家賃の前払いに対応している物件を探すなどが挙げられるでしょう。
- 自己破産すると家賃の支払いはどうなりますか?
- 自己破産手続き開始前に滞納していた家賃は免責の対象となり、支払い義務がなくなります。しかし、滞納家賃について免責を受けると確実に大家から契約を解除されますので、滞納がある状態で自己破産を検討している人は、専門家に相談しましょう。なお、自己破産手続き中であっても現在住んでいる住居の家賃は生活に必要な支出として継続して支払うことが求められます。家賃の支払いが困難な場合は、大家や管理会社と相談して分割払いなどの対応を検討する必要があるでしょう。














