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- 偏頗弁済をしてしまった場合のリスク
- 家賃・公共料金の引き落としや養育費の支払いは偏頗弁済に該当するのか
- 偏頗弁済をしてしまった時の適切な対応
債務整理を検討しているなかで、「家賃や養育費を支払ったら偏頗弁済になるのでは?」と不安に感じる方も多いでしょう。
偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、一部の債権者を優遇する行為を指し、自己破産や個人再生の手続きに悪影響を及ぼす恐れがあります。ただし、生活に必要と認められる支払いは偏頗弁済に該当しないケースもあり、個人では判断が難しいのが実情です。よって、返済が苦しくなってきたら、早めに弁護士・司法書士に相談し、偏頗弁済になる行為を避けることが大切です。
本記事では、偏頗弁済になる行為とならない行為を紹介します。偏頗弁済をしてしまった場合のリスクや対処法も解説しているので、少しでも不安な方はぜひ最後までご覧ください。
目次 ▼
1章 偏頗弁済とは?してしまった場合のリスクを解説
偏頗弁済には、以下のようなリスクがあります。
- 自己破産の免責が認められなくなる
- 個人再生の手続きに悪影響を及ぼす
- 弁護士・司法書士に辞任される
- 優先的に返済したお金が回収される
- 詐欺破産罪に問われる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 自己破産の免責が認められなくなる
自己破産では、裁判所が免責許可決定を出すことで、原則として借金の返済義務が免除されます。しかし、特定の債権者にだけ返済を行う偏頗弁済をしてしまうと、免責が認められない可能性があります。これは、複数の債権者を公平に扱うという破産手続きの原則に反するためです。
全てのケースで免責が取り消される訳ではありませんが、「大したことない金額だから大丈夫」と自己判断してしまうのは危険です。手続き中に偏頗弁済が判明した場合、破産管財人の調査が必要になり、手続きが長期化したり、追加で管財人費用が発生したりする恐れもあります。
1-2 個人再生の手続きに悪影響を及ぼす
個人再生は、借金額を大幅に削減し、原則3年で完済を目指す手続きです。借金の一部を分割で返済する再生計画案を作成し、裁判所の認可を得て手続きが成立します。
個人再生の申立てを行う際、偏頗弁済が発覚すると債権者に返済した金額が清算価値として評価され、返済総額が増える恐れがあります。清算価値とは、破産した場合に債権者へ分配できる財産の合計額のことを指します。
個人再生では、再生計画による返済額がこの清算価値を下回ってはいけないため、偏頗弁済によって一部の債権者へ返済してしまうと、その分だけ他の債権者への公平な配分が崩れ、結果的に再生計画上の返済額が増えることになります。
さらに、偏頗弁済の内容や金額が大きい場合には、そもそも再生計画案が裁判所に認められない可能性もあります。民事再生法第174条では、「債権者の一般の利益に反する場合は再生計画の認可をしない」と定められています。つまり、偏頗弁済が悪質で、公平性を著しく欠くと判断された場合には、「債権者の一般の利益を害する行為」とみなされ、再生計画案が却下されるリスクがあるのです。
個人再生の手続きでは、債権者を公平に扱うことが大切です。少しの判断ミスで不利な結果に繋がることもあるため、支払いを続けて良いか迷った時は、必ず弁護士・司法書士に相談しましょう。
1-3 弁護士・司法書士に辞任される
債務整理の手続きでは、弁護士や司法書士が代理人として債権者とのやり取りや裁判所への申立てを行います。しかし、偏頗弁済をしてしまうと、担当の専門家が辞任する恐れがあります。
依頼後に特定の債権者へ返済を続けたり、受任通知を送った後にクレジットカード決済やキャリア決済を行ったりする行為は、偏頗弁済にあたる可能性が高く、手続きの公正性を損ないます。そのような信頼関係が崩れてしまった状況では、代理業務を続けることが厳しくなり、辞任せざるを得なくなるのです。
専門家に辞任されてしまうと、申立て準備をやり直す必要があり、手続きの再開までに時間がかかります。また、新たな専門家に依頼し直す場合は、追加の費用が発生する可能性もあります。こうした事態を防ぐためには、支払いを継続すべきか迷った時点で、必ず担当の弁護士・司法書士に確認することが大切です。
1-4 優先的に返済したお金が回収される
偏頗弁済を行った場合、破産管財人が否認権を行使して、返済したお金を回収することがあります。否認権とは、破産手続きの公平性を保つために、破産者が一部の債権者だけを優遇して支払った行為を取り消し、財産を取り戻す権限のことです。
例えば、破産申立ての直前に特定の債権者へまとまった金額を支払った場合や、家族・知人にだけ返済していた場合などが該当します。このような行為が確認されると、破産管財人は受け取った側の債権者に返還を求め、回収した資金を他の債権者に公平に分配します。
ただし、返済先がすでに使ってしまっているなどで回収が難しい場合には、破産者本人に自由財産の範囲から支払いを求められることもあります。自由財産とは、破産後も生活に必要な最低限の財産(現金や家財など)を指しますが、そこからの支払いを命じられると、手続き完了後の生活が苦しくなるでしょう。
1-5 詐欺破産罪に問われる
偏頗弁済を意図的に行った場合、刑事罰の対象となる可能性もあります。破産法265条では、破産手続きの開始を免れる目的で特定の債権者に弁済した場合などに、詐欺破産罪として処罰されることが定められています。
つまり、破産を見越して一部の債権者だけに返済したり、財産を隠したりするような行為は、手続き上の問題に留まらず刑事事件として扱われる恐れがあるのです。
詐欺破産罪が適用されると、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科される可能性があります。悪意がなくとも、結果的に「特定の債権者を優遇した」と判断されれば、厳しく追及される場合もあるでしょう。
破産手続きは、全ての債権者を平等に扱うことを前提とした制度です。「少しだけ返しておこう」「知人に迷惑をかけたくない」といった善意のつもりでも、法的には不正とみなされる場合があります。このようなトラブルを防ぐためにも、支払い前には専門家の指示を仰ぎ、自己判断で返済を行わないよう注意することが重要です。
2章 家賃・公共料金の引き落としや養育費の支払いは偏頗弁済に該当する?
弁護士・司法書士に依頼して債権者に受任通知を送った後はもちろん、借金の返済が厳しくなった後の支払いは偏頗弁済に該当します。ただし、家賃や公共料金、養育費などであれば、支払いが認められるケースがあります。ここでは、返済が苦しくなった後、家賃・公共料金の引き落としや養育費の支払いが、どのように取り扱われるのかを解説します。
2-1 通常の支払いは該当しない
生活に必要な家賃・光熱費・水道代・通信費・保険料などの通常の支払いは、基本的に偏頗弁済には該当しません。通常の支払いは日常生活を維持するために必要不可欠な費用であり、支払いを続けること自体が「債権者の一部を優遇した」とはみなされないためです。
また、養育費の支払いも、偏頗弁済の対象外です。免責の対象外である養育費は自己破産をしても支払い義務はなくなりません。生活維持や扶養に関わる支出として扱われるため、養育費の支払いは偏頗弁済には該当しないのが一般的です。
2-2 滞納している場合の支払いは要注意
生活に必要な費用の支払いは問題ありませんが、滞納していた家賃や養育費をまとめて支払う場合は注意が必要です。自己破産や個人再生の申立て直前に過去分を一括で支払うと、「特定の債権者を優遇した」とみなされ、偏頗弁済に該当する恐れがあります。
例えば、数か月分の家賃を一度に支払ったり、過去の養育費をまとめて清算したりする行為は、偏頗弁済に該当する可能性が高いでしょう。
また、申立て後に銀行口座から自動引き落としが続いている場合も、偏頗弁済と判断されるケースがあるため、口座やクレジットの引き落とし設定は事前に確認しておくことが大切です。
偏頗弁済は、意図せず行ってしまうケースも少なくありません。そのため、債務整理を検討する段階から「どの支払いを止めるべきか」「継続しても大丈夫な支払いは何か」を専門家に相談しておきましょう。
3章 偏頗弁済に該当する行為
偏頗弁済は、意図せず行ってしまうケースも多くなっています。知らずに偏頗弁済をして困らないように、該当する行為を確認しておきましょう。
3-1 特定の債務だけ優先的に返済する
特定の債権者にだけ返済を続ける行為は、偏頗弁済に該当します。具体的には、親や友人などの身近な人からの借金、保証人を設定している借金、会社からの借金などを優先的に支払うケースなどです。
破産や個人再生の手続きでは、全ての債権者を平等に扱うことが原則です。一部の債権者を優遇すれば公平性を欠く行為とみなされ、免責不許可事由に該当する可能性が高いでしょう。
3-2 受任通知の送付後にクレジットカード決済やキャリア決済を使用する
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、債権者あてに受任通知が送付されます。受任通知が届いた時点で、債務整理の手続きが正式に始まったとみなされ、債権者は直接の取り立てや請求ができなくなります。
それにもかかわらず、受任通知の送付後にクレジットカードやキャリア決済を利用すると、「返済できないとわかっていながら新たな借入を行った」と判断され、偏頗弁済や不正利用とみなされます。
そのため、債務整理を依頼した後は、クレジットカードの利用をすぐにやめ、現金やデビットカードなどの範囲で支出を管理することが大切です。特に自動引き落とし設定が残っている場合は、意図せず偏頗弁済になるケースもあるため、必ず専門家の指示に従って口座の管理を行いましょう。
3-3 返済が厳しくなった後に不動産に抵当権を設定する
返済が難しくなった段階で、自分の所有する不動産に新たに抵当権を設定して債権者へ担保を提供する行為は、偏頗弁済とみなされる恐れがあります。債権者に対して法律上の義務がないのに担保を差し入れることは、他の債権者を不当に不利に扱う結果となるためです。
破産法第162条第1項第2号では、破産手続きにおける否認権の対象として、「破産者が支払の停止後に、破産財団に属する財産を無償で譲り渡したり、債務を無償で免除したりする行為」が挙げられています。ここでの無償には、法的な義務がないのに行う取引という意味合いも含まれます。そのため、担保を設定する約束がなかったのに後から抵当権を付ける行為は、実質的に「無償で担保を提供した」とみなされ、否認の対象となる可能性が高いのです。
破産管財人は、返済が厳しくなった後の担保設定を公平性を損なう取引と判断し、取消を求めます。また、行為が悪質と見なされれば、免責許可の判断にも影響を与える恐れもあるでしょう。もし担保提供を検討しているなら、必ず弁護士や司法書士へ相談し、法的な影響を確認してから判断することが大切です。
4章 偏頗弁済をしてしまった場合の対処法
偏頗弁済に該当するかは判断が難しく、意図せずしてしまうケースが少なくありません。もし偏頗弁済をしてしまった場合は、正直に申告することが大切です。
債務整理の手続きでは、取引履歴や入出金を詳しく確認するため、偏頗弁済を隠しても必ず発覚します。事実を隠すと免責が認められない恐れがありますが、誠実に説明すれば、事情が考慮されるケースもあるでしょう。
また、早期に報告すれば、破産管財人への説明方針を整えたり、返還の対応を調整したりすることも可能です。自己破産や個人再生ができなくなることがないよう、偏頗弁済の可能性がある支払いをしてしまった場合は専門家に正直に伝えましょう。
5章 自己破産や個人再生を検討しているなら弁護士・司法書士に相談しよう
偏頗弁済は、どの支払いが該当するのか判断が難しく、自己判断で進めると手続きに悪影響を及ぼす恐れがあります。家賃や養育費といった問題なさそうな支払いでも、返済状況によっては偏頗弁済とみなされる場合もあります。
こうしたトラブルを防ぐには、できるだけ早い段階で弁護士や司法書士に相談することが大切です。専門家に依頼すれば、支払いを続けて良いかどうかだけではなく、自己破産や個人再生の申立てまでの流れ、必要な書類などを具体的に指示してもらえます。偏頗弁済のリスクを回避しながら、債務整理の手続きをスムーズに進めるためにも、早めの相談を心がけましょう。
グリーン司法書士法人では、債務整理や自己破産・個人再生に関する相談を無料で承っております。「どこまで支払っていいか不安」「すでに支払ってしまった」など、少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
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まとめ
偏頗弁済とは、特定の債権者を優遇する行為を指し、自己破産や個人再生の手続きに悪影響を及ぼす恐れがあります。ただし、家賃や公共料金、養育費、税金・社会保険料など、生活を維持するために必要な支払いは原則として偏頗弁済に該当しません。
一方で、家族や友人などへの優先的な返済、受任通知送付後のクレジットカード利用などは偏頗弁済に該当するものの、正直に申告すれば債務整理の手続きを進められるケースが多くなっています。債務整理で借金問題を解決するには、一人で判断せず、弁護士・司法書士に相談して正しい手順で手続きを進めることが大切です。
グリーン司法書士法人では、経験豊富な専門家が借金問題の解決をサポートしています。無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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