債務超過の解消年数とは?|再生計画の条件は5年以内

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債務超過の解消年数とは?|再生計画の条件は5年以内

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事業をする中で、経営が上手く行かない場合には、自社が抱えている問題点をピックアップし、それらを改善する「事業再生計画」を立てなければいけません。

しっかりとした事業再生計画を立てることで、銀行からの新たな融資や投資会社から資金援助を獲得しやすくなります。

事業再生計画を成立させるための要件の一つとして、債務超過解消年数があります。

この記事では、

  • そもそも債務超過解消年数とはなにか
  • 債務償還年数との違い
  • 債務超過解消年数との違い
  • 事業再生計画を立てるコツ

などについて解説します。

1章    債務超過解消年数とは

債務超過解消年数は、事業再生計画に必要な指標の一つです。

ここでは、債務超過解消年数について詳しく解説します。

1−1    そもそも債務超過とは

そもそも債務超過とは、企業の負債額が資産の総額を上回り、純資産がマイナスになっている状態です。

債務超過が続くと、財務状況が不健全だと判断され、金融機関からの融資や投資会社からの出資が困難になってしまいます。

よって、債務超過の状態の中では、それを解消するための新規事業の参入や新たな設備投資もできませんので、負の連鎖に陥ってしまいます。

そのため、企業としては債務超過を解消することが非常に重要です。

1−2    債務超過解消年数とは

債務超過解消年数とは

債務超過解消年数とは、債務超過が解消され、純資産がプラスになるまでに必要な年数で、簡易的に次のように計算するのが一般的です。

【債務超過÷当期税引き後利益】

債務超過年数は、主に債務者区分の指標になります。

債務者区分とは、金融機関が債務者の財務状況や資金繰りなどをもとに返済能力を判定したものです。

金融機関によって内容が異なる場合もありますが、下記の5段階で格付けされます。

  1. 正常先
  2. 要注意先
  3. 破綻懸念先
  4. 実質破綻先
  5. 破綻先

(金融機関によってはもっと細分化されていることもあります)

金融機関は、この債権者区分をもとに、融資をするかどうか判断します。

債務超過解消年数が2〜3年を超えると、債務者区分が引き下げられる可能性があり、事業再生計画において目途にする上限年数は5年以内とされています。

1−3    債務償還年数との違い

事業再生計画の成立に必要な要件として、債務超過解消年数と並ぶのが、「債務償還年数」です。

債務償還年数とは、債務を利益で返済するのに必要な年数を指します。簡単に言えば「借金を何年で返せるか」ということです。

債務償還年数は、単純化すれば、【借入金÷キャッシュフロー】の計算で出すことが可能です。

ただし、一般的には運転資金は棚上げし(返済すると事業がなりたたない)、次の計算式で表されます。

【(借入金―運転資金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)】

(【経常利益+減価償却費−法人税等】の部分は、一般的にキャッシュフローと言われています。)

債務償還年数が10年を超えると、資金繰りの改善が必要であるとされています。

2章    事業再生計画の成立に必要な債務超過解消年数は5年以内

事業再生計画の成立させるには、債務者区分を「正常先」の状態にする必要があります。

「正常先」となる最低ラインに到達するには、最低でも以下を満たさなければいけません。

  • 債務超過解消年数が5年以内
  • 債務償還年数が再生計画の終了年度時点で10年以内

具体的な例で見ていきましょう。


【例】※単純化のために運転資金を考慮しないケースで計算しています。
資産:3,000万円
負債:4,000万円
債務超過分:1,000万円

●債務超過解消年数を5年以内にするために必要な税引後利益
債務超過(1,000万円)÷5年=200万円

●債務償還年数を再生計画の終了年度時点で10年以内にするために必要なキャッシュフロー 
負債(4,000万円)÷10年=400万円

実際に事業再生計画を立てる際には、より精密に計算する必要がありますが、目安程度であれば上記のような計算で算出が可能です。

事業再生計画はあくまで実現できる内容でなければいけません。机上の空論では金融機関に見抜かれてしまいますので、現実的なデータに基づいて作成しましょう。

3章   債務超過を解消するコツ

経営状況を改善するためには、債務超過を解消することが非常に重要です。

債務超過を解消するには以下のような方法を取りましょう。

  • コストを削減する
  • 売上を向上する
  • 増資をする
  • 債務の免除を受ける
  • 民事再生・会社更生で債務の減免を受ける
  • 遊休資産を売却する
  • 債務を株式に転換する
  • 早期の売掛金を回収をする

それぞれ詳しく解説します。

3−1    コストを削減する

債務超過が発生しているのであれば、まずは削減できるコストがないか確認しましょう。

人件費や広告費に無駄はありませんか?

残業をさせているのであれば、業務効率を上げて残業時間を短縮するよう働きかけることで人件費をカットすることができます。また、派遣会社などを利用している場合には直接雇用にすることで費用を抑えられるでしょう。

また、昨今は物価の高騰により、仕入れ代や原材料のコストがかさんでしまうケースもあるかと思います。その場合には、仕入れのルートや製造方法などを見直しましょう。

3−2    売上を向上させる

経営を立て直すには、コストの削減に加えて売上を増やさなければいけません。売上を向上させるために、商品の価格を見直したり、リピートしてもらうための工夫をしたりと、何らかの策を施しましょう。

また、売上アップに向けた新規事業などに必要な資金が不足しているのであれば、資金調達をす ることも大切です。

すでに債務超過をしている場合には、金融機関からの追加融資は難しいかもしれません。それでも、国や自治体の助成金・補助金であれば利用できる可能性はあります。

以下に助成金・補助金の例を列挙しています。活用できるものがないかチェックしてみてください。

助成金・補助金内容
ものづくり補助金中小企業や小規模事業者向けの補助金
革新的なサービス開発や試作品開発を支援
小規模事業者持続化補助金より小規模な事業者向けの制度
新商品の開発やPRなどを支援
事業再構築補助金中小企業から中堅企業まで利用できる補助金
新しい分野への進出や業態転換を支援
IT導入補助金中小企業や小規模事業者向けの補助金
ITシステムにかかる費用を補填できる
事業承継・引継ぎ補助金後継者不足に悩む中小企業向け
経営者の交代や新規事業を支援
JAPANブランド育成支援事業海外進出を考える企業向けの制度
新規事業の海外進出を支援

3−3    増資をする

債務超過は、負債が資産を超過している状態ですので、増資(会社の資産を増やすこと)をすることで解消できる可能性があります。

増資する方法は、主に以下の3つです。

  • 公募増資・・・新株を発行し、投資家に対して公募にて出資を募る
  • 第三者割当増資・・・特定の第三者に対して、新株を発行する
  • 株主割当増資・・・既存の株主に大して、持株数に応じて新株を割り当てる

会社にとって適切な方法を選択しましょう。

なお、増資をすると税制面で優遇を受けられなくなったり、手続きに費用がかかったりとデメリットもあります。

増資を行う際は、会社にとってのメリット・デメリットを踏まえたうえで慎重に検討しましょう。

3−4    債務の免除を受ける

債権者に債務を免除してもらえば、債務超過を解消できます。

債務免除を受けられれば「債務免除益」として利益に計上することが可能ですので、その分負債を減らすことができます。

ただし、免除を受けた額は「債務免除益」として利益に計上しなければなりません。その結果、黒字になった場合は、法人税の課税対象となるので、「法人税が払えない」ということにならないよう注意してください。

なお、債務免除を受ける場合には、トラブルにならないよう、必ず書面を取り交わしましょう。

3−5    民事再生・会社更生で債務の減免を受ける

資金調達が難しい場合には、民事再生・会社更生で、債務の減免を受けることも検討しましょう。

民事再生は中小企業向け、会社更生は大手企業向けの再建手続きで、どちらも裁判所で行います。

手続きが認められれば、再生計画に従って債務が大きく圧縮され、手続き後は計画に則って返済します。

どちらも手続きの内容は大きく変わりませんが、会社更生では、経営陣の入れ替えが、経営権が裁判所に選任された更生管財人が引き受けるなど、大規模な手続きです。そのため、実質大企業向けとされています。

どちらを選択するかについて、明確な基準はありませんが、自社の規模を鑑みて、どちらを適用するか判断しましょう。

詳しい手続きの内容は以下の記事にて解説しています。

3−6    遊休資産を売却する

事業を進める中で取得したものの、現在は使用していない・稼働していない、「遊休資産」があるのであれば、売却しましょう。

遊休資産は、管理コストがかかるだけではなく、税金の課税対象になることもあります。

不用な資産は、放置せず売却するようにしましょう。

3−7    債務を株式に転換する

債務を株式に転換することで、債務の返済義務をなくすことができます。これを経営用語では「Debt(債務)・Equity(株式)・Swap(交換)」、略して「DES」と呼びます。

債権者の了承を得ることができれば、返済義務のある債務を、株式へと変換し、会社の資本金とすることが可能です。

株式へ変換すれば、債権者への返済義務は消滅します。

これでは債権者にとってメリットがないかと思われるかもしれませんが、債権者とすれば、債権の代わりに株式を取得できるため、債務者である会社の経営に参画できるというメリットがあります。

ただし、この方法を取る場合、持株比率や利益などに影響が出ますので、注意が必要です。

債務を株式に転換する方法は主に以下の2つです。

  • 現物出資方式
  • 新株払込方式

3−7−1   現物出資方式

現物出資とは、新株を引き受けるために、金銭以外の財産(債権や不動産、PCなど)を出資することです。

DESを目的として現物出資方式では、債権を持つ会社が、その債権を出資することで新株を引き受けます。

3−7−2    新株払込方式

新株払込方式とは、負債の返済のために会社が新株を発行する方式です。

3−8    早期に売掛金を回収する

自社の資金を取り戻すため、早急に売掛金を回収することも検討しましょう。

取引先などに売掛金があれば、専門家に依頼してでも早めに売掛金を回収することが大切です。

売掛金を回収できれば、運転資金を有利子負債でまかなう割合が減少しますので、金利コストの削減が見込めます。

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4章    まとめ

債務超過の解消年数は、事業再生計画を立てるにあたって必要な指標の一つです。

新たな融資を受けられる状態にするためには、解消年数は5年以内に抑える必要があります。

債務超過を解消するためには、まず経営状況を見直したり、資金を増やしたりと様々な対策をしなければいけません。

無駄なコストを削減したり、助成金や補助金を活用して新規事業を立ち上げて売上を向上を図ったりと、打開策を考えましょう。

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