連帯保証人欄に身に覚えのないサインが?勝手に保証人にされた場合の責任と対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
連帯保証人欄に身に覚えのないサインが?勝手に保証人にされた場合の責任と対処法

この記事は約 10 分で読めます。

知らない間に借金の連帯保証人欄に自身の「サイン」があれば、誰でも驚いてしまうものでしょう。

連帯保証人欄にサインがあれば、債務者が借金を返済できなくなったとき、代わって返済しなければなりません。

しかし書いた覚えのないサインであるのにもかかわらず、債務者の代わりに返済責任を負うことには納得できないはずです。

そこで、連帯保証人欄に身に覚えのないサインがあったとき、返済義務の責任を負うことになるのか、対処の方法について次の4つの章に分けて説明していきます。

  1. 連帯保証人欄に身に覚えのないサインがあった場合の確認事項
  2. 知らない間に連帯保証人にされても返済義務を負わないケース
  3. 知らない間に連帯保証人にされたのに返済義務を負うケース
  4. 知らない間に連帯保証人にされていたときのポイント

もしも勝手に「連帯保証人」にされたことで、今後どのように対応するべきか悩んでいる方がいれば、この記事をぜひ参考にされてください。

1章 連帯保証人欄に身に覚えのないサインがあった場合の確認事項

「連帯保証人」は、債務者が返済できなくなったとき代わりに返す義務を負う立場の人であり、債務者と同じ責任が課せられます。

知らない間に借金の連帯保証人欄に勝手にサインをされて、借入契約が成立してしまっている場合、次の2つをまずは確認しましょう。

  1. なぜ連帯保証人になっているのか
  2. 債権者から確認の連絡はあったか

それぞれの確認事項について説明します。

1-1 なぜ連帯保証人になっているのか

連帯保証人になるためには保証契約書に「署名」したり「実印」を押したりすることで合意することが必要ですが、なぜ連帯保証人にされたのかその「経緯」を確認しましょう。

  • 家族が勝手に実印などを持ち出し、連帯保証人欄に押印しているケース
  • 口約束で連帯保証人になる「約束」をしていたようなケース
  • 自分で署名しているものの、サインする書面の「内容」を理解していないケース
  • 故意に内容が理解できないように仕向けられているケース

あくまで一例ですが、このようなケースが考えられます。

連帯保証人にされた経緯によって、その後の対応なども変わってくることになり、裁判になったときにも経緯を明確にすることで連帯保証人になる意思がなかったことを「証明」しやすくなると考えられます。

1-2 債権者から確認の連絡はあったか

知らない間に連帯保証人にされている場合、なぜ「債権者」は保証する意思のない人が連帯保証人であることを知らなかったのでしょうか。

債権者から電話や手紙などで連帯保証人になる意思の確認の連絡があったとき、その内容がよく理解できないまま、「承諾した」と勘違いさせる返事をしてなかったでしょうか。

債権者に「連帯保証人になる意思がある」と捉えられる言動はなかったか​、再度思い出してみましょう。​

もしも債権者が保証の意思がない連帯保証人であると知っていたのに、保証契約を結んでいれば無効となり、知らなかったと嘘をつけば詐欺を主張することで契約を無効にできる可能性もあります。

もしお心当たりがあるのなら、すぐに弁護士へ相談することを強くお勧めします。

2章 知らない間に連帯保証人にされても返済義務を負わないケース

借金の保証をする意思のない状態で、知らない間に連帯保証人にされたのなら、返済義務を負う必要はないケースも当然あります。

ただし、返済責任の有無については、次のように連帯保証人にされた「経緯」によって異なりますし、個別のケースでどうなるかは専門家の判断を仰ぐ必要があります。

  1. 債務者が債権者と嘘の口約束をしていた場合
  2. 勝手に印鑑を持ち出された場合
  3. 連帯保証人欄になりすましなどでサインされていた場合

それぞれの経緯と返済義務について、大まかにガイドラインを説明していきます。

2-1 債務者が債権者と嘘の口約束をしていた場合

返済義務を負わないのは、債務者と債権者が嘘の「口約束」をしていたケースです。

たとえばお金を借りる債務者が、連帯保証人に承諾を得ず、債権者に対し連帯保証人になる人がいると勝手に伝えているとします。

債権者もその口約束を鵜呑みにし、連帯保証人に承諾を得ず、債務者にお金を貸した後、連帯保証人に請求するケースなどです。

「保証契約」は、保証する側と債権者との間で合意されていなければ無効であり、そもそも口約束では効力が生じないため「保証契約書」が作成されていなければ無効とされます。

2-2 勝手に印鑑を持ち出された場合

第三者によって知らない間に印鑑を持ち出された場合や、契約を結ぶ権利のない者が勝手に「代理人」として振舞って押印された場合、保証契約は無効となります。

また、実印などを勝手に持出し、第三者が連帯保証人の名前で勝手に契約する行為を「無権代理行為」と呼びます。

もっとも、持ち出されるのを認識していたのに漫然と放置した場合など、明らかに軽率すぎる行動をしていたような場合には保証人の責任を負わされることもあり得ます。

自分の実印や通帳などは厳重に管理し、安易に貸したり持ち出されることのないようにしましょう。

2-3 連帯保証人欄になりすましなどでサインされていた場合

返済義務を負わないのは、連帯保証人欄に「なりすまし」でサインされていた場合などです。

保証契約書に身に覚えのないサインがあるときや、印鑑を「偽造」されているときには、他人が連帯保証人にされた本人になりすまし、署名や押印している可能性があります。

サインの「筆跡」や印鑑の「陰影」などで本人のものでないことを証明できれば、保証契約は無効であることを主張できます。

いずれの場合も、具体的な主張は専門的な判断が必要になりますので、早急に弁護士へ相談することをお勧めします。

3章 知らない間に連帯保証人にされたのに返済義務を負うケース

借金を保証する意思もなく、知らない間に連帯保証人にされていたのにもかかわらず、返済義務を負わなければならないケースもあります。

具体的には次の2つに該当する場合です。

  1. 代理権が付与されていると認められる言動があったとき
  2. 署名代理権限があると認められるとき

それぞれどのようなケースか説明していきます。

3-1 代理権が付与されていると認められる言動があったとき

返済義務を負わなければならないのは、代理権が付与されていると認められる言動があった場合です。

債務者が保証契約書に「実印」を押印していた場合、その行為が連帯保証人にされた方の意思でなければ、代理権限のない人が勝手に契約締結したことになるため契約は成立しません。

しかし債権者が「この人は代理人だ」と信じることが妥当である場合、保証契約も有効として扱われることとなり、連帯保証人にされた人は保証義務を負わなければなりません。

下記のような行動があったときには、代理権が「付与」されていると認められる可能性があるため注意してください。

  • 代理権は与えていないのに与えたような言動や行動があったとき
  • 代理権を与えていたものの代理人がその権限外の行為をしたとき
  • 代理権がなくなった後で代理人だった人がまだ代理権がある振舞いをしたとき

3-2 署名代理権限があると認められるとき

返済義務を負わなければならないのは、「署名代理権限」があると認められるときです。

代筆で代理権が認められてしまうと、連帯保証人にされた本人の署名と「同一視」され、保証契約も「有効」として扱われてしまいます。

なぜ「代筆」されたのか、本当に代筆が必要だったのかその事情など、署名代理権限があると認められる経緯を確認されます。

本人から代理人に対し、署名代理権限を与える通知などがなくても、代理権限が授与されていると認定されることは少なくないため注意してください。

4章 知らない間に連帯保証人にされていたときのポイント

知らない間に連帯保証人にされていたときには、その保証契約が「無効」であることを「主張」するためにも、次の4つのポイントを押さえた上で行動しましょう。

  1. 契約書がなければ保証契約は不成立
  2. 連帯保証人になる意思がなければ不成立
  3. 身に覚えのない請求には応じる必要なし
  4. 金融機関側から意思確認等がなければ無効

それぞれのポイントについて解説していきます。

4-1 契約書がなければ保証契約は不成立

保証契約は、「保証契約書」がなければ無効となり、成立しません。

民法では多くの契約において、書面ではなく口頭による「口約束」でも、双方合意のもとで成立するとしています。

しかし保証契約については、契約成立したときに連帯保証人が負う「リスク」が大きいため、「保証契約書」を作成しなければ成立しないとされています。

4-2 連帯保証人になる意思がなければ不成立

保証契約は、連帯保証人になる「意思」がなければ成立しません。

本人に保証する意思が認められれば、他人が代筆で署名し認印を押印しても有効とされています。

逆に、連帯保証人になる意思が認められないときには、他人が押印した印鑑が「実印」だった場合でも契約は無効です。

裁判することになれば、

  • 筆跡
  • 印鑑の種類
  • 意思確認の有無
  • 保証人との関係性

など「客観的証拠」から保証人になる意思の有無や、保証契約書の有効性が判断されます。

4-3 身に覚えのない請求には応じる必要なし

身に覚えのない「請求」があっても、応じる必要はありません。

意思に基づいていない保証契約に対する請求があったとき、支払ってしまうと連帯保証人として認めたことになり、保証契約が「有効」として扱われます。

支払いはしなかった場合でも、保証人であることを認めた「言動」があれば、保証契約は成立していると判断されるリスクがあるため注意してください。

4-4 金融機関側から意思確認等がなければ無効

一般的に連帯保証人として契約するときには、「金融機関」から連帯保証人に対し、直接の「意思確認」をすることが必要とされています。

そのため、金融機関から連帯保証人に意思確認をしなかったのなら、保証契約書を作成していてもの契約は「無効」になる可能性もあると考えられます。

まとめ

知らない間に、保証契約書の連帯保証人欄にサインされていた場合、保証する意思もないのに借金を肩代わりしなければならないのかと考えてしまうものでしょう。

しかし保証契約は、連帯保証人になる意思がなければ成立せず、口約束では効力がなく保証契約書が作成されていない場合でも無効として扱われます。

ただ、本人に保証する意思があれば、他人が代筆で署名し、認印を押しても有効とされているため、連帯保証人になった経緯を踏まえつつ保証の意思がないことを主張することが必要です。

保証契約の効力を争うケースは難しい裁判になることが多いため、どのケースであっても保証人になっていることに納得できないときには、弁護士に相談したほうがよいといえるでしょう。

当社でも弁護士を紹介できるため、弁護士では敷居が高く不安があるという場合には、一度気軽にグリーン司法書士法人グループへご相談ください。

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連帯保証人の代筆は無効になる?
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