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住宅ローンの繰り上げ返済は、多くの方が検討する選択肢のひとつです。繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
今回の記事では住宅ローンを繰り上げ返済するメリット・デメリットを、わかりやすくまとめます。住宅ローンの返済方法にお悩みのみなさんや、今後住宅ローンを検討しているみなさんは、ぜひ参考にしてください。
目次 ▼
1章 住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みは2種類
住宅ローンの繰り上げ返済は、毎月の定期返済に加えて、ローン残高の一部を早期に返済する方法です。この手段によって、ローンの残高を減らし、結果として支払う利息の総額を減らすことが可能です。
繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、それぞれに特徴とメリットが存在します。この選択は、個々の金融状況や将来計画に応じて異なります。くわしく見ていきましょう。
項目 | 期間短縮型 | 返済額軽減型 |
---|---|---|
目的 | 返済期間の短縮 | 毎月の返済額の軽減 |
利息負担 | 大きく減らせる | ある程度減らせる |
毎月の返済額 | 変わらない | 減額される |
返済期間 | 短くなる | 変わらない |
手数料 | かかる場合が多い | かかる場合が多い |
メリット | 将来の資金負担軽減、完済時期早め | 家計の負担軽減 |
デメリット | 一時的にまとまった資金が必要 | 将来の利息軽減効果は低い |
1-1 返済期間短縮型
期間短縮型は、毎月の返済額を変えずに、余裕があるときに繰り上げ(臨時)返済を行なって、ローンの返済期間を短縮する方法です。この方法により、返済期間を短縮できます。
返済期間が短縮されることで、早期にローンの支払いを完了させることができ、将来の金融的負担を軽減します。ただし、短期間での返済が可能であればの話であり、毎月の返済額に変更はありません。
期間短縮型の繰り上げ返済は、特にローンの初期段階で行うと、支払う利息を大幅に減少させる効果が高まります。ローンの初期には、返済額に占める利息の割合が高いため、早期の本金減少が利息の総額に大きな影響を与えるからです。
1-2 返済額軽減型
返済額軽減型では、返済期間を変更せずに、ボーナス時などに繰り上げ(臨時)返済を行なって、ローンのの毎月の返済額を減少させる方法です。
繰り上げ返済した金額は、元金部分に充当されます。元金が減ることにより、毎月の利息も減り、結果として返済額が軽減されます。
なお、住宅ローンの審査と信用情報については、以下の記事でくわしく取り上げています。信用情報の調べ方(開示請求手続きの方法)もわかりやすく解説しているので、併せて参考にご覧ください。
2章 住宅ローンを繰り上げ返済するメリット
住宅ローンの繰り上げ返済は、将来にわたって支払う金利を節約する大きなメリットがあります。それによって、長期に渡る返済の総額を減少させることが可能となります。
繰上げ返済を積極的に行うことで30年ローンを25年で完済すれば、それだけ金利負担も減るからです。
返済期間短縮型では、毎月の返済額は変わらず、返済期間が短縮されることで利息の負担を減らせます。長期にわたる利息の負担が大きく軽減され、総返済額の節約につながります。
返済額軽減型では、毎月の家計にすぐに影響を与えることを望む場合に適しています。短期的に毎月の返済負担が軽くなり、家計の柔軟性が高まって生活費や教育費などの余裕が生まれます。
なお、住宅ローン審査の際に、異動情報が信用情報機関に登録されている、いわゆるブラックリストに載っている状態について、以下の記事で掘り下げて解説しています。そちらも参考にしてください。
3章 住宅ローンを繰り上げ返済するデメリット
住宅ローンを繰り上げ返済する場合の、主なデメリットとして挙げられるのは次の7項目です。
- 住宅ローン控除の金額が減少する場合がある
- 住宅ローン控除を適用できない恐れがある
- 繰り上げ返済時に手数料がかかる場合がある
- 手元の現金が減少してしまう
- 返済期間短縮型だと毎月の返済額は変わらない
- 繰り上げ返済を取り消すことはできない
- 団体信用保険の保険金額が減少する
それぞれを見ていきましょう。
3-1 住宅ローン控除の金額が減少する場合がある
住宅ローン控除は、年末時点でのローン残高に基づいて控除額が決定します。繰り上げ返済を行うことでローン残高が減少すると、その結果、控除額も減少する可能性があります。
特に、繰り上げ返済により返済期間が当初の計画より10年未満に短縮される場合、住宅ローン控除の適用を受けられなくなることがあります。それによって、想定していた節税効果が得られなくなる可能性があります。
3-2 住宅ローン控除を適用できない恐れがある
繰り上げ返済により返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除の対象外となるケースがあります。これは、住宅ローン控除が設定されている最低返済期間に満たなくなるためです。
住宅ローン控除は、住宅の購入や新築に際して発生するローンに対して、一定の税額控除を受けられる制度です。しかし、繰り上げ返済により返済期間が短縮されることでこの制度の恩恵を受けられなくなることがあります。
3-3 繰り上げ返済時に手数料がかかる場合がある
繰り上げ返済を行う際、金融機関によっては手数料が発生することがあります。特に、何度も小額で繰り上げ返済を行う場合、手数料が累積してしまう可能性があります。
ちなみにインターネットを通じて繰り上げ返済の手続きを行う場合、手数料が無料になるケースが多いです。このような手数料の無料サービスを提供している金融機関もあるため、繰り上げ返済を検討する際は、手数料の有無について事前に調査することが重要です。
3-4 手元の現金が減少してしまう
繰り上げ返済を行うことで、短期的には手元の現金が減少します。これは、将来の利息負担を減らすために現在の貯蓄を使うことを意味します。
貯蓄を繰り上げ返済に充てることは、将来的な金利負担を減らす効果がありますが、緊急時の資金需要に対応できなくなるリスクも伴います。特に大きな修繕費用が必要になる可能性や、医療費の支払いなど、予期せぬ出費に備えることが難しくなる可能性があります。
3-5 返済期間短縮型だと毎月の返済額は変わらない
返済期間短縮型の繰り上げ返済では、毎月の返済額はそのままで、返済期間のみが短縮されます。このため、月々の支出に直接的な影響はありませんが、利息総額の削減により長期的な支払い負担は軽減されます。
この返済方式の選択は、将来的に支払う利息を減らしたいと考える場合に適しています。しかし、短期的に家計のキャッシュフローの改善を望む場合には、返済額軽減型がより適切な選択肢となることもあるでしょう。
3-6 繰り上げ返済を取り消すことはできない
繰り上げ返済を行った後は、その決定を後から取り消すことはできません。これは、繰り上げ返済がローン残高の減少という不可逆的な効果を持つためです。
したがって、繰り上げ返済の決定前には、自身の財政状況や将来の資金計画を慎重に評価することが極めて重要です。不測の事態や予期せぬ資金需要が生じた場合に備えて、十分な手元資金を確保しておくべきです。
3-7 団体信用生命保険の保険金額が減少する
住宅ローンとセットで加入されることが多い団体信用生命保険(団信)の保険金額は、ローン残高に応じて変動します。団信は、ローン借入者が死亡または高度障害状態になった際に、ローン残高相当の保険金が支払われ、ローンが完済される仕組みです。
繰り上げ返済によってローン残高が減少すると、その分保険金額も減少します。万が一の場合に遺族が受け取れる保険金額も、減少するということです。
なお、住宅ローン以外にも借金があって、月々の返済が難しくなりお困りのみなさんは、新たに借入をしないで解決する方法を検討しましょう。ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください!当司法書士法人では借金問題に関する個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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4章 住宅ローンを繰り上げ返済するかどうかの基準
住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際、自身の財政状況、将来のライフイベント、そしてローン完済のタイミングなど、多岐にわたる要素を考慮する必要があります。
「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」のそれぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、自分の状況に最適な選択をすることが重要です。住宅ローンを繰り上げ返済するかどうかの基準として、次の3点を考慮するのが賢明です。
- 生活資金を十分に用意できているか
- 将来のライフイベントに備えて資金を用意できているか
- 住宅ローンを定年までに完済できるか
それぞれの趣旨を解説しましょう。
4-1 生活資金を十分に用意できているか
繰り上げ返済をすると、短期間で手元の資金が減少します。そのため、繰り上げ返済後も安定した生活を維持できるかどうかを、慎重に検討する必要があります。
繰り上げ返済により利息を削減できるメリットがある一方で、予期せぬ支出や緊急事態への対応能力が低下するリスクも伴います。繰り上げ返済の計画を立てる際は、将来的な資金ニーズも考慮することが重要です。
さらに、繰り上げ返済に伴う手数料の発生も、考慮する必要があります。手数料が発生する場合、繰り上げ返済による利息削減効果を相殺してしまうことがあるため、金融機関の条件を事前に確認し、最もコスト効率の良い方法を選択することが重要です。
4-2 将来のライフイベントに備えて資金を用意できているか
将来のライフイベントに備えて、資金を用意できていることが必要です。たとえば、子どもの進学や結婚、さらには自身や家族の病気や事故など、突然の大きな支出が必要になる場合があります。
そのため、繰り上げ返済を行う前に、これらの将来のライフイベントに備えた資金計画をしっかりと立てることが重要です。将来必要となる可能性のある資金を考慮し、それを確保した上で繰り上げ返済を検討することが、賢明な選択となります。
また、老後の生活資金も念頭に置く必要があります。退職後の収入減少に対応できるよう、十分な貯蓄を準備しておくことで、繰り上げ返済後も安心して生活できる基盤を築くことができます。
4-3 住宅ローンを定年までに完済できるか
多くの人にとって、定年を迎えるまでに住宅ローンを完済することは、大きな目標のひとつです。定年後の収入が減少することを考慮すると、退職前に住宅ローンを完済しておくことで、老後の生活資金に余裕を持たせることが可能になります。
繰り上げ返済によって返済期間を短縮することは、定年までの完済を目指す上で有効な手段です。しかし、そのためには繰り上げ返済に充てる資金を計画的に準備し、日常生活における余裕資金を適切に管理する必要があります。
定年までのローン完済を目指す場合、繰り上げ返済のタイミングと金額の選定が重要になります。早期に大きな金額を繰り上げ返済することで利息負担を減らすことができますが、同時にライフスタイルや将来の計画に合わせた柔軟な資金管理も求められます。
なお、定年までに住宅ローンを完済しようとして、新たな借入をしてしまい返済が厳しくなっているみなさんは、ぜひグリーン司法書士法人にお気軽にご相談ください!当司法書士法人では借金問題に関する個々のケースに応じた解決方法をご提案し、その実行をサポートできます。
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まとめ
繰り上げ返済は、将来の金利負担を減らし、経済的な余裕を早く得るための有効な戦略です。期間短縮型は、最終的な返済期間を短縮し、長期にわたる利息負担を大きく減少させるメリットがあります。
特に、定年までの返済期間がかぎられている場合や、早期にローンを完済したいと考えている方にとって、この方法が適しています。
返済額軽減型は、月々の返済負担を減らし、その分で家計の他の必要な部分に余裕を持たせることができます。教育費や生活費など、他の重要な支出に資金を充てることが可能になります。
また、将来的に収入が減少する可能性がある場合や、現在の生活水準を維持しつつローンを返済していきたい場合に有効です。
それぞれの方法には、メリットとともに、家計の状況や将来計画に応じて選択する必要があります。定年までにローンを完済したい、毎月の返済額を減らして生活費に余裕を持たせたいなど、個々の目的と状況を考慮して最適な選択をすることが大切です。
よくあるご質問
- 住宅ローンのペアローンと収入合算の違いとは?
- ペアローンとは、ペアローンとは夫婦や同性パートナーがそれぞれ別に住宅ローンを組み、一軒の住宅を購入するという方法です。
それに対し、収入合算とは夫婦や親子の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。
- 住宅ローンの収入合算していた妻が退職するとどうなる?
- 借入時に収入合算で住宅ローンを組んだとしても、その後妻が退職することに問題はありません。
しかし、妻の収入ありきでローンを組んだ場合、住宅ローンの支払いが家計を圧迫し返済が困難になる恐れもあります。