クレジットカードを1年滞納するとどうなる?時効は成立する?

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
クレジットカードを1年滞納するとどうなる?時効は成立する?

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 この記事を読んでわかること

  • クレジットカードを1年滞納するとどうなるのか
  • クレジットカード滞納で時効を成立させることは難しい

クレジットカードの支払いが遅れても、少しなら大丈夫と思っている方もいるかもしれません。

しかし、その状態が1年も続くと事態はずっと深刻になります。加えて、生活への影響も計り知れません。中には、延滞して1年が過ぎ、このまま時効がきて支払わなくてもよくなるのでは?と期待する人もいるかもしれません。

この記事では、クレジットカードを1年滞納するとどうなるのか、クレジットカード滞納1年で時効は成立するのか、また1年以上滞納してしまい返済が難しい場合の対処法などについて解説します。

1章 クレジットカードを1年滞納するとどうなる?

クレジットカードの支払いを滞納して1年が経過すると、どのようなリスクがあるのか確認していきましょう。

1-1 遅延損害金が発生する

クレジットカードの支払いが遅れると、支払い日の翌日から遅延損害金が発生します。

◆遅延損害金(遅延利息)とは
金銭債務を期日までに払えなかったときに発生するペナルティです。

クレジットカード会社によって遅延損害金の利率は異なりますが、一般的には年率14〜20%と高額です。

【事例:30万円を1年滞納した場合の遅延損害金】

元金遅延損害金年率1年間の遅延損害金合計請求額
30万円14.60%約43,800円約343,800円

1-2 クレジットカードを使えなくなる

滞納して1年が経過すると、クレジットカードは強制解約されており、すでに使えなくなっています。
また、信用情報機関に滞納したことが事故情報として登録され、「ブラックリスト」に載っている状態であることがほとんどです。

◆信用情報機関とは
信用情報機関とは、個人のクレジットやローンの申し込み・契約・取引に関する情報について、加盟各社が「客観的事実」を登録している外部機関です。

信用情報機関の主なものとして、株式会社日本信用情報機構(JICC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)があります。

なお、完済後およそ5年が経過して事故情報が削除されれば、再びクレジットカードの新規発行ができるようになります。

1-3 ローンを組めなくなる 

住宅ローンや車のローン、教育ローンなど、ほとんどのローンは申し込み後の審査時に、信用情報を確認します。

滞納により現在ブラック状態であることがわかると、新たなローン契約はまず不可能といえるでしょう。

1-4 購入物の返却が必要になる

分割払いやリボ払いで購入した商品には、クレジットカード会社による「所有権留保」が付けられている場合があります。

◆所有権留保とは
所有権留保とは、ローンが完済されるまでの間、商品の所有権は購入者ではなくクレジットカード会社に留め置かれることです。

滞納が続くと、カード会社が所有権留保を根拠に、商品(価値があるもの)を回収・引き上げをしようとします。

ただし、一括払いで購入した商品については、所有権は購入者にあるため回収されません。

1-5 クレジットカード会社から訴訟を起こされる恐れがある

滞納が3か月を超える頃には、クレジットカード会社から滞納者に内容証明郵便で催告書が送付されていることがほとんどです。

催告書を無視していると、裁判所を通じて「支払督促」が送付されたり、あるいは「訴訟」を起こされたりする恐れがあります。支払督促とは、それまでに度々送られてきた督促状とは異なり、強制執行につながる公的な手続きです。

訴状に対して何の対応もせず、裁判にも出廷しなければ、裁判所から仮執行宣言付きの判決が出される可能性が高いでしょう。仮執行宣言付きの判決や、支払督促の確定を基に、カード会社は強制執行の手続きを進めることができます。

1-6 財産を差し押さえられる

強制執行の手続きが可能になると、クレジットカード会社は次のような財産を差し押さえることができます。 

  • 給料(手取りの4分の1まで)
  • 預貯金
  • 不動産
  • 生命保険
  • 自動車・貴金属
  • 有価証券

給料差押えのために、裁判所から勤務先に通知が送付されます。

この段階になると、勤務先にカードの支払いを滞納していることが知られることとなり、生活への甚大な影響は避けられません。

2章 クレジットカード料金を踏み倒し時効を成立させることは難しい

クレジットカード支払いの消滅時効期間が経過した時点で、援用手続きを行えば消滅時効が成立し、支払い義務はなくなります。

しかし、実際には消滅時効を成立させることは大変難しいといえます。

「消滅時効の成立」については、次の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。

2-1 クレジットカード支払いの消滅時効は「5年」

クレジットカード支払いの消滅時効までの期間は、原則5年です。当然1年の滞納では、時効は成立しません。

2-2 消滅時効が成立する前に裁判を起こされる可能性が高い

消滅時効が成立する前に、クレジットカード会社は内容証明郵便などで催告したり、裁判を起こしたりします。

これらの行為は「完成猶予事由」に該当し、時効の完成猶予が成立します。

◆時効の完成猶予とは
時効の完成猶予とは、一定の完成猶予事由によって時効の完成が先延ばしにされる制度です。

また、次のような事由があった場合には、「時効が更新」されます。

  • 債務の承認
  • 裁判の確定
  • 強制執行の確定
◆時効の更新とは
時効の更新とは、特定の事由が発生すると、進行していた時効期間のカウントをリセットするという規定です。

そのため、現実的に時効の完成は非常に困難です。「踏み倒せるのでは?」という安易な考えは、多くのリスクを抱えることになってしまいます。

 

3章 クレジットカードを1年滞納してしまったときは債務整理を検討しよう

クレジットカードの支払いを1年滞納してしまうと、自力での完済が難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、債務整理で借金を減額・免除してもらうといった解決策があります。

債務整理には次に示す3つの方法があり、司法書士や弁護士に相談することで、自分に適した方法を選ぶことができます。

3-1 任意整理

「任意整理」とは、裁判所を通さずに債権者と交渉し、借金の返済条件の見直しを交渉する方法です。裁判所を介さない分、比較的気軽にできる手続きです。

また、任意整理は、整理の対象に含める債権者を選ぶことができるため、自動車ローンや保証人付きの債務を除外したい場合にも柔軟に対応できます。

【任意整理の特徴】
項目内容
対象支払が困難な債務のみの選択が可能
メリット将来利息のカット、毎月の返済額軽減
デメリット信用情報への登録(ブラックリスト)

3-2 個人再生

「個人再生」とは、大幅に減額してもらった借金を原則3年間で完済するよう再生計画案を作成し、裁判所に認可をもらう手続きです。

住宅ローンの支払いを続けながら整理することも可能です。

【個人再生の特徴】
項目内容
対象安定した収入がある個人
メリット大幅な債務の減額が可能、住宅の維持が可能
デメリット官報公告掲載、信用情報への登録(ブラックリスト)、手続きが複雑

3-3 自己破産

「自己破産」とは、税金の滞納分などを除いた借金の返済義務を法的に免除してもらう手続きです。生活再建の最終手段として利用されることが多く、収入がない人でも申立が可能です。

【自己破産の特徴】
項目内容
対象収入や返済能力がない人
メリット借金が全額免除される
デメリット財産の処分、官報公告掲載、一定職業制限(一時的)、信用情報への登録(ブラックリスト)

クレジットカードを1年滞納すると、遅延損害金、ブラックリストへの登録、カード使用不可、訴訟、差押えなど、さまざまな不利益が発生します。しかも、滞納して1年では時効は成立せず、むしろ裁判を起こされるリスクが高まるばかりです。

「放置する」のではなく、「専門家に相談する」「債務整理を検討する」ことが、解決への近道です。滞納が1年を超えてお悩みなら、早めに専門家へ相談しましょう。

まとめ

クレジットカードの支払いを1年滞納すると、遅延損害金の増加やカードの強制解約、信用情報のブラック登録など、生活や将来に直結する深刻な不利益が一気に現実化します。さらに、滞納が長期化すれば、カード会社から訴訟を起こされ、最終的には給与や預金の差押えに至る可能性も高まります。

また、「1年も滞納したら時効で払わなくてよくなるのでは」と考える方もいますが、クレジットカード債務の時効は原則5年であり、実際にはその前に催告や裁判で時効が止まるケースがほとんどです。時効を狙って放置することは、リスクを積み上げるだけの危険な選択といえるでしょう。

もし返済の見通しが立たないなら、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理によって、負担を減らし生活を立て直す道があります。1年滞納した時点は、まだ対処の選択肢が残っている段階です。これ以上状況を悪化させないためにも、早めに専門家へ相談し、現実的な解決策を一緒に探していきましょう。

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