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- 任意整理から自己破産に変更できるかどうか
- 任意整理から自己破産に変更する際の費用
- 任意整理から自己破産に変更する際の費用の支払いが難しい場合の対処法
特定の債権に限定して利息カットや長期分割払いの交渉を債権者ごとに行い、原則3年間で完済を目指す債務整理方法の任意整理。住宅ローンやカードローンを組んでいる場合でも、手放さずに借金問題の解決を目指せるというメリットがあります。
一方で、病気やケガ、リストラによって収入を失うと、計画通りに借金を返せなくなります。債権者との交渉で定めた返済計画を守れなくなるため、任意整理から自己破産への変更を検討しなければなりません。
また、任意整理の手続きを進めている途中で、安定収入を失う可能性があります。継続的な返済が任意整理の条件なので、そもそも交渉に応じてもらえない可能性が高いです。そのため、当初は任意整理で十分だと判断して手続きを進めていても、状況が変わって、収入条件のない自己破産に変更せざるを得ないケースもあります。
そこで「任意整理のために支払った費用は自己破産に引き継げるのか」「別で費用を支払わなければならないのか」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、任意整理から自己破産に変更する際の費用を解説します。任意整理から自己破産に変更する際の費用の支払いが難しい場合の対処法や変更時に注意点も説明しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次 ▼
1章 任意整理から自己破産への変更は可能だが費用は別途用意が必要
突然の病気やケガで働けなくなったり、リストラされたりして安定的な収入がなくなると、任意整理によって減額した借金の計画的な返済が難しくなります。任意整理は継続的に返済することが条件として定められているため、安定的な収入を失うと自己破産に変更する必要があります。
なお、任意整理から自己破産への変更は認められていますが、任意整理の手続きをそのまま引き継げるわけではありません。新しく自己破産の手続きを進めることになるため、任意整理とは別で費用を用意しましょう。
2章 任意整理から自己破産に変更する際の費用
任意整理から自己破産に変更する際、裁判所への予納金と申し立て費用(専門家への報酬)の支払いが必要です。ただし、自己破産の種類によって費用総額が異なります。
ここでは、同時廃止事件・少額管財事件・通常の管財事件に分けて、用意すべき費用を解説します。自身が利用する自己破産の種類を確認し、必要な費用を把握しましょう。
2-1 同時廃止事件
同時廃止事件とは、破産管財人(破産者の財産を管理する弁護士)を選任せずに手続きが進む自己破産です。書類審査だけで手続きが終わるため、自己破産の中でも最もコストを抑えられます。
同時廃止事件の場合、裁判所への予納金は1〜5万円が一般的です。そして、比較的簡単なものであれば専門家への依頼費用は総額で25〜35万円程度です。同時廃止事件は手続きが簡素な分、少ない費用で自己破産できます。
ただし、同時廃止事件は「20万円以上の財産がないこと」「免責不許可事由に該当しないこと」「個人事業主、法人の破産でないこと」が要件として定められています。もし要件を満たしていなければ、管財事件になる点に注意が必要です。
2-2 少額管財事件
少額管財事件は、弁護士が申立代理人になっている場合に限り認められる「予納金が少額」となる管財事件です。少額管財事件の場合、裁判所への予納金は20万円~、弁護士費用は30万円~必要になります。
手続きが簡略化されているため、通常の管財事件よりも少ない費用で自己破産を行えますが、弁護士に依頼しないと利用できません。そのため、同時廃止事件の要件を満たしていない場合に自己破産の費用を抑えたければ、弁護士に相談して少額管財事件として手続きを進められないか確認しましょう。
2-3 通常の管財事件
通常の管財事件は破産管財人が選定されるうえに、手続きが複雑で完了までに時間がかかります。そのため、自己破産の中でも費用が高額になりやすいです。
通常の管財事件の費用の目安は予納金が50万円~、弁護士費用は35万円~なので、総費用が100万円を超える傾向にあります。
3章 任意整理前の手続き状況に応じて自己破産への変更費用が異なる
債権者との交渉で和解して支払い中であれば、別で自己破産への変更費用が発生します。新たに自己破産の手続きを始めるわけなので、裁判所への予納金と申し立て費用(専門家への報酬)の支払いが必要です。
一方で、任意整理の手続きを依頼した後すぐであれば、自己破産の費用への移行対応をしている弁護士・司法書士が多いです。また、任意整理の和解活動中に変更したい場合、一部費用のみ移行できる可能性があります。
手続き状況や依頼する弁護士・司法書士によって、自己破産への変更費用を押さえられます。依頼直後は差額のみの支払いで済むケースもあるため、任意整理から自己破産に変更する際はすぐに依頼先の弁護士・司法書士に連絡しましょう。
4章 任意整理から自己破産に変更する際の費用の支払いが難しい場合の2つの対処法
返済困難に陥って任意整理から自己破産に変更するにあたって、「収入がなくなってしまったので、すぐに変更費用を用意するのは難しい」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
しかし、和解案通りに返済していなければ、借金を滞納しているのと同じ状況です。遅延損害金が発生しているうえに、差押えのリスクがともないます。
そのため、変更費用の支払いが難しい状況でも、放置してはいけません。そこでここでは、任意整理から自己破産に変更する際に、費用の支払いが難しい状況でも自己破産の手続きを進められる方法を解説します。
4-1 申し立て費用の分割払いを認めているところに相談する
専門家への報酬を一度に支払うと大きな負担になるので、申し立て費用の分割払いを認めている弁護士・司法書士に相談しましょう。
例えば、依頼費用を手続き完了までの期間で分割すれば、月々の収入から無理なく支払いを継続できます。分割払いの条件は専門家によって異なるため、事前に詳しく相談して現実的な返済計画を立てましょう。
なお、すべての弁護士・司法書士が分割払いの相談に応じているわけではありません。そのため、経済状況が苦しい場合は、任意整理から自己破産への切り替えで専門家に相談する前に、報酬の分割払いに対応しているか確認してください。
4-2 法テラスに相談する
法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に困難な状況にある方に対して法律相談や支援を行う機関です。自己破産手続きにかかる費用の支払いが難しい場合、法テラスに相談することで費用の立替え制度を利用できます。
法テラスが立て替えた費用は分割払いも認められているため、収入状況に応じた返済が可能です。これにより、経済的な負担を大幅に軽減しながら、任意整理から自己破産への変更手続きを進められます。
ただし、法テラスには収入や資産などの利用条件が定められていて、誰でも利用できるわけではありません。また、審査には約2週間、混みあう時期は1か月以上かかるため、すぐにでも依頼したい場合は弁護士・司法書士への相談がおすすめです。
5章 任意整理から自己破産に変更する際の注意事項
当初の見立てとは異なって任意整理から自己破産への変更を検討している方は、注意事項も把握しておきましょう。なぜなら、注意点を知らないまま自己破産に変更すると、必要な財産を失ったり、手続きに不備が生じたりする恐れがあるためです。
ここでは、任意整理から自己破産に変更する際の注意事項を解説します。
5-1 財産を残せない
自己破産を申請すると、大半の財産を清算して債務の返済に充てることになります。財産が少ないケースに適用される同時廃止事件を除けば、破産管財人が選定されて処分が実行されるため、財産を手元に残せないのです。
そのため、特定の債権を選んで交渉できる任意整理では守れていた不動産や車も失うことになります。ただし、以下のような財産は生活に最低限必要だと考えられていて、自己破産でも処分されません。
- 99万円以下の現金
- 自己破産の手続き開始後に得た財産
- ベッドやタンスなどの家具
- 冷蔵庫や洗濯機などの家電製品
- 衣服や台所用品
このように最低限の生活は守られるものの、多くの財産を失うことを把握しておきましょう。
5-2 すべての債権者を手続きに入れる必要がある
任意整理は一部の債権者とだけ交渉をすることが認められていますが、自己破産ではすべての債権者を手続きに入れる必要があります。もし債権者一覧表に漏れがあれば、免責が認められずに借金が残ってしまうかもしれません。
そのため、特定の債権者と交渉をしていた場合でも、自己破産に切り替える際は、任意整理で除いていた債権者も手続きに含めてください。
このように、任意整理から自己破産への変更には注意点もあるので、それぞれのメリットとデメリットを比較したうえで判断しましょう。なお、グリーン司法書士法人では、任意整理から自己破産への変更に関するアドバイスも提供しています。もし変更するかどうか迷っている方がいれば、お気軽にご相談ください。
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まとめ
任意整理から自己破産に変更する際の費用は、自己破産の種類や任意整理の手続き状況によって異なります。自己破産の種類による費用の一覧は以下の通りです。
同時廃止事件 | 少額管財事件 | 通常の管財事件 |
予納金:1~5万円 専門家への依頼費用:25~35万円程度 | 予納金:20万円~ 専門家への依頼費用:30万円~ | 予納金:50万円~ 専門家への依頼費用:35万円~ |
なお、任意整理から自己破産に変更する際、依頼直後であれば差額分だけの負担で済むケースが多いです。しかし、任意整理の和解交渉が終了している場合、自己破産の費用を全額用意しなければなりません。
もし費用の全額負担が難しい場合は、申し立て費用の分割払いを認めている専門家もしくは、法テラスへの相談を検討しましょう。すぐに申し立て費用を用意できなくても、自己破産の手続きを始められるためです。
またグリーン司法書士法人では、申し立て費用の分割払いにも対応しています。無料相談も承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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