自己破産の予納金とは?金額の相場と払えないときの対処法

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

自己破産
自己破産の予納金とは?金額の相場と払えないときの対処法

この記事は約 13 分で読めます。

自己破産を申し立てる際には、予納金という手続費用を支払う必要があります。

ただでさえ借金で苦しい中、高額な費用を支払うとなると「いくらかかるのか?」と気になりますよね。

細かい金額は各裁判所によって異なりますが、同時廃止であれば2万円程度、管財事件であれば20〜50万円程度です。

この記事では、予納金の内訳や相場、払えないときの対処法などについて解説します。

1章 自己破産の予納金とは

自己破産の予納金とは

自己破産の「予納金」とは、自己破産の手続きをする際に裁判所に支払う費用です。
予納金の金額は破産者の財産金額によって異なりますが、財産がない場合は1万円前後であり、財産がある場合は20万円程度かかります。

原則、予納金を支払わなければ破産手続きを申し立てることはできませんので、自己破産をする上で必須のお金といえるでしょう。

「借金で生活が苦しい中でお金を用意するのは難しい」と思われるかもしれませんが、自己破産を司法書士などの専門家に依頼した時点で取り立てや督促がストップしますので、これまで返済に充てていた分を積み立てるなどして準備しておきましょう。

自己破産における予納金(よのうきん)とは、自己破産の手続き時に支払う手数料です。
予納金には下記の4つの費用が含まれます。

  • 手続手数料
  • 官報手数料
  • 郵便切手代
  • 引き継ぎ予納金

自己破産における予納金(同時廃止の場合)

東京地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:11,859円
郵便切手代:4,200円
【合計】17,550円
大阪地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:11,859円
郵便切手代:1,089円
【合計】14,448円
自己破産における予納金(同時廃止の場合)

1−1 手続き手数料:1,500円程度

自己破産の手続きに必要な基本的な手数料で、手続きの種類に関わらず支払わなければいけません。

金額は破産者が個人か法人かによって異なりますが、個人の場合は1,500円です。

手続手数料は、収入印紙を申立書に貼付する方法で納付します。

東京地裁 本庁

個人の場合1,500円
法人の場合1,000円
自己破産の手続き手数料(東京地裁 本庁

大阪地裁 本庁

個人の場合1,500円
法人の場合1,000円
自己破産の手続き手数料(大阪地裁 本庁

1−2 官報公告費:10,000円〜19,000円程度

自己破産をすると、官報という国が発行する新聞のような機関紙に掲載(公告)されますので、それにかかる費用が官報公告費です。

手続きの種類は地方裁判所や手続きの種類ごとに異なりますが、10,000円〜19,000程度が一般的です。

裁判所の会計窓口で現金で支払う方法と、銀行振込で支払う方法があります。

東京地裁 本庁

同時廃止11,859円
少額管財・管財事件18,543円
官報広告費(東京地裁 本庁

大阪地裁 本庁

同時廃止11,850円
少額管財・管財事件15,499円
官報広告費(大阪地裁 本庁

1−3 郵便切手代:4,000円程度

債権者への通知などのために使用する郵便切手代も裁判所に支払う必要があります。

金額は各地方裁判所によって異なりますが、おおよそ4,000円程度です。

切手は裁判所にてセット販売されているので、それを購入して納付するのが一般的です。

郵便切手代(東京地裁 本庁

同時廃止4,200円
少額管財・管財事件4,200円
郵送切手代(東京地裁 本庁

郵便切手代(大阪地裁 本庁

同時廃止1,089円
少額管財・管財事件3,510円
郵送切手代(大阪地裁 本庁

1−4 引継ぎ予納金:20万円〜(少額管財・管財事件の場合のみ)

予納金のうち、最も高額なのが管財事件の場合に必要となる「引継ぎ予納金」です。

引継ぎ予納金には、破産管財人への報酬や財産の処分にかかる費用が含まれます。

なお、破産管財人がつくのは少額管財・管財事件のみですので、同時廃止の場合には引継ぎ予納金はかかりません。

金額は各地方裁判所によって異なりますが、最低20万円としているところがほとんどで、それに加えて債権者の数、負債額などによって追加されることがあります。

引き継ぎ予納金(東京地裁 本庁)

東京地裁 本庁
少額管財事件20万円〜
管財事件個人の場合:20万5,000円〜50万円
法人の場合:70万円〜
引き継ぎ予納金(東京地裁 本庁)

引き継ぎ予納金(大阪地裁 本庁)

少額管財事件20万5,000円〜
管財事件20万5,000円〜50万円
引き継ぎ予納金(大阪地裁 本庁)

引継ぎ予納金は、代理人申立て(弁護士)か本人申立て(司法書士)か、あるいは当初同時廃止で申し立てたものが管財に移ったケースか、といった事情によっても変わってきます。

このほか、裁判所によっては債権者への通知のため、84円切手を債権者数分提出するように求められることもあります。

2章 【手続き別】自己破産の予納金の相場

1章では、予納金の詳細について解説しましたが、ここでは手続きごとの予納金の相場についてまとめました。

負債総額や地方裁判所によって金額は多少前後しますが、おおよその金額を把握しておくことで準備がしやすくなるかと思います。

なお、実際の金額の詳細については、依頼する専門家に問い合わせるようにしましょう。

なお、同時廃止・少額管財事件・管財事件の詳細については以下の記事をご確認ください。

2−1 同時廃止の場合

同時廃止は、個人の自己破産において一般的な手続き(※)であり、破産管財人がつくことがありませんので予納金が最も安くなります。

(※)破産法上は管財事件が原則とされ、同時廃止は例外的な手続きです。しかし、個人の自己破産に限った場合には、その多くが同時廃止事件として処理されています。

令和3年度司法統計によると、同年中に完了した全国の自己破産75,865件のうち個人(自然人)は70,162件で、そのうち43,790件が同時廃止となっています。割合にして6割以上が同時廃止なのです。

同時廃止の予納金

東京地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:11,859円
郵便切手代:4,200円
【合計】17,550円
大阪地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:11,859円
郵便切手代:1,089円
【合計】14,448円
同時廃止の予納金

2−2 少額管財事件の場合

以下の要件に当てはまり、かつ弁護士に依頼している場合には少額管財事件となることがあります。(弁護士に依頼しても、通常の管財事件になるケースも当然あります。)

  • 財産額が20万円以上
  • 借金額が5,000万円以上
  • 法人の代表や個人事業主
  • ギャンブルが原因の借金など、免責不許可事由に関する調査が必要

少額管財事件では破産管財人がつくため、引き継ぎ予納金を収める必要があります。

なお、少額管財は弁護士に依頼する必要がありますので、別途30〜80万円程度の弁護士費用がかかることは留意しておきましょう。

少額管財事件の予納金

東京地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:18,543円
郵便切手代:4,200円
引き継ぎ予納金:20万円〜
【合計】224,243円〜
大阪地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:15,499円
郵便切手代:3,510円
引き継ぎ予納金:20万5,000円〜
【合計】224,509円〜
少額管財事件の予納金

2−3 管財事件の場合

弁護士や司法書士に依頼せず、自分で裁判所に申立てをする場合には原則として管財事件となります。

また、弁護士や司法書士に依頼した場合でも、たとえば以下の要件に当てはまっているような場合には管財事件となります(その他の場合でも、裁判所の判断で管財事件となるケースはあります)。

  • 財産額が20万円以上
  • 借金額が5,000万円以上
  • 法人の代表や個人事業主
  • ギャンブルが原因の借金など、免責不許可事由に関する調査が必要

管財事件が自己破産の中で最も高額です。

なお、少額管財事件とは異なり、引継ぎ予納金が負債金額によって異なります。

負債総額に対する予納金(法人)

負債総額法人
5,000万円未満70万円
5,000万円〜1億円未満100万円
1億円〜5億円未満200万円
10億円〜50億円未満400万円
50億円〜100億円未満500万円
100億円以上700万円
負債総額に対する予納金(法人)

負債総額に対する予納金(個人)

負債総額個人
5,000万円未満50万円
5,000万円〜1億円未満80万円
1億円〜5億円未満150万円
負債総額に対する予納金(個人)

※上記は東京地裁の場合です

管財事件の予納金(負債額5000万円未満、個人の破産の場合)

東京地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:18,543円
郵便切手代:4,200円
引き継ぎ予納金:50万円〜
【合計】524,243円〜
大阪地裁 本庁手続手数料:1,500円
官報公告費:15,499円
郵便切手代:3,510円
引き継ぎ予納金:50万円〜
【合計】519,509円〜
管財事件の予納金

3章 自己破産の予納金が払えない場合の対処法

自己破産を検討されている場合、現時点で借金の返済に追われ、予納金を支払うだけの資金がないというケースも多いのではないでしょうか。

その場合には、以下のような方法で対処しましょう。

  • 依頼する専門家に積み立ててもらう
  • 法テラスを利用して立て替えてもらう
  • 裁判所に分割払いができるよう相談する

それぞれ詳しく解説します。

3−1 依頼する専門家に分割で預けておく

自己破産を専門家に依頼すると受任通知が送付され、取立てがストップしますので、その間に手続きの準備を進めるのが一般的です。

準備中は返済をしなくて大丈夫ですので、返済に充てていた分を積み立てておきましょう。

自身で積み立てることが難しい場合には、専門家にお金を預けて代わりに積み立ててもらうことも可能です。手続費用に加えて予納金まで準備したうえで申立てをすればスムーズに進みます。(対応しているかどうかは事務所によりますので、事前に問い合わせておきましょう)

3−2 法テラスを利用して立て替えてもらう

法テラスとは「日本司法支援センター」の通称で、法的トラブルを解決することを目的とした公的法人です。

法テラスを利用すれば、予納金だけでなく専門家の依頼についても安価に対応してくれます。

また、法テラスでは費用の立替も行っており、毎月5,000〜10,000円程度の分割払いも可能です。

ただし、法テラスで立替可能なのはあくまで手続き費用のみであり、予納金は対象外です(生活保護の人を除く。詳細は4章)。

したがって予納金は自費で準備する必要がありますが、手続費用だけでも立て替えてもらえるなら、予納金を準備しやすくなるでしょう。

法テラスを利用した場合の費用の目安は、以下のとおりです。

借金をしている会社の数実費着手金
1〜10社23,000円132,000円
11〜20社23000円154,000円
21社〜23,000円187,000円
法テラスを利用したときの費用の目安

※上記は法テラス埼玉の場合です。金額は地域によって異なる可能性があります

3−2−1 法テラスの利用条件

法テラスは低所得者向けのサービスですので、利用するためには以下のような条件があります。

  • ①収入等が一定額以下であること(※)
  • ②勝訴の見込みがないとは言えないこと
  • ③民事法律扶助の趣旨に適すること

①の一定額以下とは、以下の「収入基準」と「資産基準」を満たすことを指します。

【収入基準】

人数手取月収額の基準 (※1)家賃又は住宅ローンを負担している場合に
加算できる限度額 (※2)
1人18万2,000円以下
(20万200円以下)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下)
2人25万1,000円以下
(27万6,100円以下)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下)
3人27万2,000円以下
(29万9,200円以下)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下)
4人29万9,000円以下
(32万8,900円以下)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下)
法テラスを利用するための「収入基準」

(※1)東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
(※2)申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。

【資産要件】

申込み者とその配偶者が、資産を有している場合には、その合計額が以下の基準を満たしている必要があります。(無料相談は、現金・預貯金の合計額のみで判断される)

人数資産合計額の基準 (※1)
1人180万円以下
2人250万円以下
3人270万円以下
4人以上300万円以下
法テラスを利用するための「資産要件」

(※1):将来負担すべき医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。(無料法律相談の場合は、3ヵ月以内に出費予定があることが条件です。)

3−3 裁判所に分割払いができるよう相談する

予納金の中でも特に高額な管財予納金は、裁判所に申し出ることで、分割払いに対応してもらえることもあります。

実際、東京地裁では4回まで、大阪地裁では6回程度の分割払いが可能です。(大阪地裁では10回分割が認められたケースもありました)

ただし、必ず分割払いの許可が出るわけではありませんので、事前に依頼する専門家に相談するようにしましょう。

4章 生活保護受給中は予納金や専門家への報酬の支払いが猶予される

生活保護を受給している場合、受給している間は予納金や、法テラスを利用しての専門家への依頼費用の支払いを猶予してもらえます。3章で説明したとおり、生活保護受給者は予納金まで立替可能です。

なお、自己破産をすることで、生活保護の受給に影響はありませんのでご安心ください。

むしろ、生活保護受給中はどれだけ取り立てや督促が来ても借金の返済はできないため、生活保護を受給している(これからする予定)の場合には、自己破産をするべきと言えます。

なお、支払いが猶予されるのは生活保護の受給中だけですので、受給が停止されたら支払う必要がありますので注意してください。

5章 自己破産はグリーン司法書士法人にご相談ください!

グリーン司法書士法人では、これまで自己破産を含む債務整理のご相談を7,000件以上受任した実績がございます。

「予納金を支払う資金がない…」という場合には、積み立てにて対応しておりますのでご安心ください。

初回の相談は無料です。ご相談時には予納金がどの程度かかるか提示いたしますのでお気軽にご相談ください。

なお、オンライン相談にも対応しております。遠方の方や事務所までのお越しいただくのが難しい場合でもご相談いただけますので、ぜひご利用ください。

自己破産に関する記事を沢山公開していますので、合わせてご覧ください。

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よくあるご質問

予納金とは?
「予納金」とは、手続きをする上で裁判所に対して支払う手数料のようなものです。
自己破産の予納金について詳しくはコチラ
予納金の相場はいくら?
予納金の相場は、細かい金額は各裁判所によって異なりますが、同時廃止であれば2万円程度、管財事件であれば20~50万円程度です。
予納金の相場について詳しくはコチラ
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