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創業時に必要な資金調達は、多くの起業家にとって大きな関心事です。特に、自己資本の額は融資を受ける上で重要な要素のひとつとされています。しかし、自己資本は多ければ多いほど良いのでしょうか?また、会社の設立には登記が必要ですが、法律の専門家でなければ難しい作業です。
今回の記事では、創業融資の要件と自己資本の適切なバランスについて解説します。さらに、自己資本が事業に及ぼす影響についても考察します。
目次 ▼
1章 創業時の自己資金は多ければ多いほうがいい?
創業時には、一般的に非常に多くの費用がかかります。そのため、適切な自己資金の確保は事業を安定させる上で不可欠です。
自己資金が多いほど、融資の審査に有利とされますが、必ずしも多いほうがよいわけではありません。ここでは、自己資金の適切な額と、その資金が創業融資に与える影響について見ていきましょう。
1-1 日本政策金融公庫の新創業融資では10分の1以上の自己資金が求められる
日本政策金融公庫の新創業融資では、融資を受けるためには申請額の10分の1以上の自己資金が必要とされています。これは、創業者が自身の事業に対してもリスクを負担する意志があることを示す指標です。
自己資金の額が多ければ、それだけ融資の審査に通りやすくなる可能性が高まります。しかし、自己資金が少ない場合でも、事業計画の質や創業者の経験など、ほかの要素でカバーできる場合もあります。
融資の種類 | 自己資金の割合 | 主な特徴 | 補足 |
---|---|---|---|
日本政策金融公庫 | 最低10%・目安は30% | 金利が低く、返済期間が長い | 事業計画書や資金繰り表など、詳細な書類が必要 |
民間金融機関 | 30%以上 | 金利が比較的高い | 審査基準が厳しく、事業計画書の質が重要 |
エンジェル投資家 | 20%~50% | 出資者からのアドバイスや人脈も得られる | 出資者との交渉が必要 |
ベンチャーキャピタル | 20%~50% | 成長性の高い企業への出資に特化 | 厳しい審査基準を満たす必要がある |
クラウドファンディング | 10%~30% | 少額の資金から集められる | 目標金額に到達できない可能性もある |
【補足】
- 上記の割合はあくまで目安であり、融資機関や事業内容によって異なります。
- 自己資金がなくても融資を受けられる場合もありますが、審査基準は厳しくなります。
- 自己資金が多いほど、融資を受けられる可能性が高くなり、金利も低くなります。
自己資金を多くすることは、創業初期の財務安定にも寄与します。創業時には予期せぬ出費が発生することも少なくないため、余裕を持った資金計画が重要です。
一方で、自己資金を過剰に準備することは、ほかの有効な資源への投資機会を失う可能性もあります。適切な自己資金の額を見極めることが、事業成功の鍵を握ります。
1-2 自己資金が多ければキャッシュフローを健全化しやすい
自己資金が豊富な場合、企業はキャッシュフローの管理がしやすくなり、経営の健全化を図りやすくなります。それは自己資金が多いほど、運転資金に余裕が生まれ、短期的な資金繰りの問題を回避しやすいからです。
また、自己資金が多いと、外部からの融資や投資を受けやすくなります。これにより、事業の拡大や新たな投資の機会にも対応しやすくなるのです。
しかし、自己資金だけに依存した経営もリスクが伴います。キャッシュフローが悪化すると、一気に経営が立ち行かなくなる可能性があるため、資金管理には細心の注意が必要です。
債務超過を避けるためにも、自己資金の有効な活用とともに、外部融資とのバランスを適切に取ることが求められます。資金繰りの問題を早期に察知し、対処することが企業の持続可能な成長につながります。
なお、債務超過については、その意味や個人がそうなった場合の解消法を含め、以下の記事でくわしく取り上げています。そちらも、ぜひ参考にしてください。
1-3 自己資金は融資額の3分の1から2分の1を目標にしよう
創業融資を受ける際には、融資額の3分の1から2分の1を自己資金として用意することがひとつの目安とされています。この比率は、金融機関に対して自身の事業に対する強い責任感と成功への意思を示唆するものです。
また、自己資金を確保する際には、事業運営だけでなく、生活費も見越した計画が求められます。事業が採算ベースの軌道に乗るまでの生活を、安定させるために欠かせない要素です。
自己資金の準備には時間がかかることもありますが、焦らず計画的に行わなければなりません。事業計画を精査し、必要な自己資金の額を正確に把握することが成功への第一歩です。
また、自己資金だけでなく補助金や助成金など、利用可能な資金調達手段を幅広く検討することが推奨されます。それらの活用によって、資金繰り悪化のリスクを軽減し、事業の持続可能性を高めることが可能です。
2章 自己資金に含まれるもの
自己資金の範疇に含まれる、主な項目を挙げると次のとおりです。
- 代表者が用意したお金
- みなし自己資金
- 事業に使用しない代表者の個人資産
ひとつずつ見ていきましょう。
2-1 代表者が用意したお金
創業時に自己資金としてカウントされる主要な要素のひとつは、代表者(創業者)自身が事業のために用意したお金です。たとえば、個人の貯蓄や、前職の退職金などが挙げられます。
代表者が用意したお金は、信用の証として金融機関に評価されることが多いです。創業融資を受ける際、この金額が多いほど、融資の審査に有利に働くことがあります。
2-2 みなし自己資金
みなし自己資金とは、直接的に現金として事業に投じられないが、自己資金に準じる扱いを受ける資産のことです。たとえば、機械や設備などが該当します。
金融機関は、これらの資産が事業にとって重要な役割を果たすと認識しており、融資の際に自己資金の一部として考慮されることがあります。ただし、その価値は慎重に評価されるのが一般的です。
みなし自己資金を計画に含める場合は、その資産の市場価値や事業への貢献度を明確に示す必要があります。具体的な評価方法や基準は金融機関によって異なるため、事前に確認することが重要です。
2-3 事業に使用しない代表者の個人資産
事業に直接使用されない、代表者の個人資産も場合によっては自己資金として認められることがあります。そもそも、代表者を連帯保証人とすることが多い傾向にあります。しかし、親からの支援金が自己資金として認められるかどうかは、ケースバイケースです。
なお、個人資産は、その出所や利用の意図が明確でなければならず、融資機関によっては認められないこともあります。支援金を自己資金として扱う場合は、文書での契約や約束が必要になることが多いです。
3章 自己資金に含まれないもの
次に、自己資金に含まれない主なものとして、以下の3つが挙げられます。
- 消費者金融からの借入
- 友人や知人からの借入
- タンス預金
個別に見ていきましょう。
3-1 消費者金融からの借入
消費者金融からの借入は、創業時の自己資金には含まれません。これは、借入れた資金が負債であるため、自己資金とはみなされないからです。
融資を申し込む際、金融機関は申請者の財務状況はもちろん、信用情報をチェックします。そのため、消費者金融から借入があれば、信用情報によって必ずバレます。
消費者金融からの借入が発覚すると、信用度が低下する可能性は否めません。
3-2 友人や知人からの借入
友人や知人からの借入も、自己資金には含まれません。これは、個人間の貸し借りも負債とみなされるためです。
金融機関は、借入の背景や条件を詳細に検討します。友人や知人からの借入を、自己資金として申告することは、融資審査の信用度に悪影響を及ぼすことがあります。
つまり、友人や知人に「すぐ返すから」といって見せ金にする目的で融資してもらうのは、金融機関にバレる可能性が高いのでやめましょう。
友人や知人からの資金援助は、創業における支援として有効ですが、それを自己資金と誤認しないようにしましょう。正確な資金の状況を金融機関に伝えることが、信頼関係構築につながります。
3-3 タンス預金
タンス預金、つまり手元に保管している現金も、自己資金には含まれません。これは、その資金の出所や正当性が証明できないためです。
金融機関は、資金の正当性や安定した管理を求めます。「見せ金」としてタンス預金を使おうとすると、その資金が実際に事業に投資されるかどうかに疑問が生じかねません。
タンス預金を資金源として申告する場合、その出所を明確に説明する必要があります。基本的にタンス預金を自己資金とすることは、信頼を損ねて審査においてマイナスになるリスクがあります。
なお、そんなタンス預金も、こと自己破産においては申告が必須です。以下の記事でくわしく取り上げています。
4章 創業時に自己資金が少ないときの対処法
創業時に自己資金が少ないときには、次の3つの対処法があります。
- 自己資金を増やしてから融資を申し込む
- 創業から1年後に融資を申し込む
- 自己資金要件の緩和要件を満たす
それぞれを補足しましょう。
4-1 自己資金を増やしてから融資を申し込む
創業時に自己資金が不足している場合、まず考えるべきは資金の増強です。資産を正確に把握し、いつまでにどのくらい資金を増やしたいか、明確な目標を設定することが重要です。
そうやって自己資金を増やしてからのほうが、創業融資の審査は通りやすいでしょう。
資金を増やすことは、資産運用や節約、副業を通じて可能です。少額からでも始められる投資信託や株式投資を検討し、複利効果を利用して資金を増やしていく方法があります。
また、キャッシュフローの改善には運転資金の管理も有効です。売掛金の回収を早める、仕入れの支払いを遅らせるなどの方法で資金繰りを改善し、必要資金を確保することが重要です。
なお、日本政策金融公庫の資本性ローンというものがあります。ひと言でいえば「資本調達と融資のメリットを組み合わせた融資制度」です。情報として知っておいてください。
【資本性ローンの特徴】
- 負債ではなく資本とみなされる
- 無担保・無保証人
- 元金返済は期限一括
- 利益が出ていないうちは利率が安い
【メリット】
- 自己資本比率が改善
- 株式希薄化しない
- 返済負担が軽い
【デメリット】
- 対象となる企業が少ない
- 金利が変動する
- 期限一括返済が必要
4-2 創業から1年後に融資を申し込む
創業直後は、融資の申し込みが難しい場合があります。そのため、1年ほど待って、その期間を利用して事業の実績を積み重ね、信頼性を高めることが有効です。
1年間の経営を通じて、安定した収益を示すことができれば、金融機関からの信用度も向上します。そうなれば、融資を受けやすくなる可能性が高まるでしょう。
また、この期間には運転資金の管理を徹底し、資金繰りの良好な状態を保つことが重要です。金融機関に良好な経営状態をアピールするための、有効な戦略となります。
4-3 自己資金要件の緩和要件を満たす
特定の支援制度や融資プログラムでは、自己資金要件の緩和措置が設けられていることがあります。これらのプログラムの要件を事前に確認し、適用可能か検討しましょう。
なお、緩和要件を満たすためには、経営計画の具体性や実現可能性を高めることが求められます。
また、公庫の新創業融資の場合、審査に落ちた後は3ヶ月間は再申請ができません。申請にあたっては事業計画の充実や準備を徹底するのが賢明です。
まとめ
創業時に自己資金が少ない場合でも、複数の対処法を用いることで資金調達の道を開くことができます。自己資金を増やすためには、資産運用や副業、節約などを全方位的に活用するのが賢明です。
また、資金繰りの改善には、運転資金の効率的な管理が不可欠であり、売掛金の迅速な回収や仕入れの支払い条件の見直しが有効です。
創業から一定期間経過後に融資を申し込むことで、事業の安定性や信用度を高められます。この期間には、金融機関への良好な印象を与えるために、安定した経営実績を積み重ねることが重要です。
自己資金要件の緩和要件を満たすためには、特定の融資制度や支援プログラムの情報を収集し、適切な準備と計画を行うことが必要です。審査に落ちてしまった場合の再申請には時間がかかるため、初回から丁寧に申請書類を準備し、可能性を高めましょう。
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