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- 第三債務者とは
- 第三債務者の義務
- 債権回収における債権者・債務者・第三債務者の関係
第三債務者とは、債務者に対して債務を負っている「第三者」です。
販売代金を支払ってもらえないときや、受注した工事代金の入金がない場合など、債権回収に向けて本来の債務者ではない第三債務者に対する債権の差押えなどの手続もあります。
自身が第三債務者として支払う立場なのか、それとも債権者として第三債務者に請求する立場なのかによって今後の動きも変わってきます。
ただし、債権回収時に第三債務者が関係してくるケースは非常に限られているので、あらかじめ把握しておくと良いでしょう。
そこで、第三債務者とはどのような立場なのか、その義務と債権回収における債権者や債務者との関係について3つの章に分けて詳しく説明していきます。
目次 ▼
1章 第三債務者とは
第三債務者とは、債権関係において債務者に対してさらに債務を負っている人を指します。
例えば、債務者が「銀行預金」を有している場合、預金先の「銀行」など金融機関が第三債務者となります。
1-1 強制執行時に第三債務者が影響してくるケース・具体例
債務者が借金を滞納し続け、強制執行が行われる際に第三債務者が影響してくるケースは非常に限られています。
強制執行時に第三債務者が影響してくるケースは、主に下記の通りです。
債権の種類 | 第三債務者 |
---|---|
給与 | 雇用主 |
預金 | 銀行など金融機関 |
売掛金 | 取引先 |
2章 第三債務者の義務・役割
債権差押命令における第三債務者は、「債権執行」に協力することが義務とされています。
債権執行とは、債権を対象とした強制執行のことです。
債務者が支払いに応じないときに強制執行をする場合、財産の「差押え」が行われます。
「差押え」の対象となるのは、「不動産」や自動車などの「動産」、そして預金や売掛金などの「金銭債権」です。
「金銭債権」の差押えの場合、第三債務者から弁済してもらえれば回収に手間がかかりませんが、不動産のように登記されていないため債権の「存在」が不明確といえます。
すでに別の第三者が差し押さえている可能性もあるため、債権執行においては対象となる債権が本当に存在しているのか、差押えを受けていないか「陳述催告」で第三債務者に回答を求めます。
このとき、第三債務者が故意・過失によって回答しないときや、虚偽の陳述をしたことにより「損害」が生じたときには、第三債務者は「損害賠償」の義務を負うことになるとされています。
2-1 供託による回避
第三債務者は、本来であれば債権者にお金を支払う義務を負うだけであるはずなのに、
「なぜ強制執行に巻き込まれなければならないのか」
と不満を感じることもあるでしょう。
この場合、「供託所(法務局)」に差押え対象の債権全額を預ける「権利供託」を利用することで、責任を免れることができます。
なお、第三債務者が自らの意思で行う権利供託に対し、他の債権者からも差押えや配当を求められたケースにおいては、供託が義務づけられる「義務供託」が必要です。
「義務供託」は、第三債務者がどの債権者を優先するべきか勝手に判断して支払ってしまい、債権者の平等が害されることを防ぐことを目的としています。
3章 債権回収における債権者・債務者・第三債務者の関係
債権回収における「当事者」は以下の3者です。
- 債権者
- 債務者
- 第三債務者
そして債権回収の「方法」は、主に次の4つの種類があります。
- 債権の差押え
- 債権者代位権の行使
- 債権に対する質権の行使
- 相殺による回収
債権回収の方法ごとの3者の関係について、それぞれ説明していきます。
3-1 債権の差押え
債権者が債務者から債権の「差押え」で回収する場合において、「銀行預金」が対象であれば第三債務者となるのは「銀行」です。
取引先に有する「売掛金(売掛債権)」に債権執行するときには、「取引先」が第三債務者となります。
第三債務者が拒否した場合
第三債務者が債権を差し押さえる債権執行を拒否した場合にも、債権者にはその旨は主張できません。
債権執行で債権の差押えを行った場合、裁判所から第三債務者に「債権差押命令」と「陳述催告」が送られます。
しかし何の回答もせず無視することや虚偽の陳述をしたことで、損害が発生すれば先に述べたとおり損害賠償義務を負います。
また、債権執行後に第三債務者が最初の債権者(債権を差し押さえた債権者からみた債務者)に支払いをしても「無効」として扱われるため、差押えの債権について支払うように請求されても拒むことはできません。
3-2 債権者代位権の行使
「債権者代位権」とは、債権者が債権を回収するために債務者の有する第三債務者に対する権利を、債務者に代わって行使する権利のことです。
たとえば債務者B社が債務超過に陥っている状態で、債権者A社に対する支払いを遅滞しているのに、第三債務者C社に対する債権を回収しようとしなかったとします。
この場合、債権者A社は自己が有する売掛債権の保全のため、債務者B社に代わり第三債務者C社に対する債権を行使できます。
債権者代位権を行使するときには、債権者として第三債務者と直接交渉し、お金を受領します。
第三債務者から支払ってもらったお金は債務者に帰属するため、債権者が受領しても債務者に「返還」しなければなりません。
しかし金銭債権を回収した場合には、「返還」義務と「回収」する金額を「相殺」することで、債権を回収できます。
第三債務者が拒否した場合
債権者代位権において債権者が行使するのは、その債権において債権者である債務者の「第三債務者」に対する債権です。
第三債務者が債権者代位権による行使に関し、拒否できる「正当な事由」があれば拒むことができます。
拒否できる「正当な事由」として挙げられるのは以下のとおりです。
- 履行期が到来していないこと
- 同時履行の関係にある債務が履行されていないこと
上記のような正当な事由がないまま拒んだ場合には債務不履行となります。
3-3 債権に対する質権の行使
「質権」とは担保物権1つであり、債権者が債務者または第三者から受け取った物品や権利書などを、債務が支払われるまで保管・占有する権利です。
支払いがないときには、担保を売却し現金に換えて、「優先」して返済に充てることができます。
質権を設定できる対象は、物品だけでなく「債権」に対しても行うことが可能であり、これを「債権質」といいます。
債権に質権を「設定」するときには、債務者が第三債務者に対して「通知」を行いますが、設定段階においては債権者と第三債務者に関わりはありません。
第三債務者が拒否した場合
債権質の目的となっている債権は、債権者が第三債務者から「直接」取り立てを行うことになります。
たとえば、Aさんから借りた貸付金に質権が設定されていた場合、返済できなくなったときにはAさんが直接取り立てに訪れるというイメージです。
第三債務者が取り立てに応じないときには、裁判を起こし強制執行をすることができます。
3-4 相殺による回収
「相殺」とは、債務者に対する債権と、債務者が支払う債務を、同じ金額で打ち消し合うことです。
たとえばA社がB社に100万円の債権を有している一方、B社もA社に100万円の債権を有していれば、双方の債権を打ち消し合うことでそれぞれが債権を回収できます。
第三債務者が拒否した場合
同様の例で、A社がB社の債務者C社に対する債権を差し押さえているとします。
しかしC社がB社に債権を有している場合には、C社がB社に相殺を主張することで、差押えを免れることができます。
この場合のA社・B社・C社との関係において、A社は債権者・B社は債務者・C社は第三債務者となります。
なお、第三債務者C社は、差押え後に取得したB社に対する債権で相殺することを、債権者Aに主張することはできないとされています。
まとめ
債権回収の場面において、第三債務者は債務者の味方であることが多いことから、タイミングを考えて回収に挑まなければ成功しない可能性も少なくないといえます。
第三債務者は債権回収に協力する義務を負うため、正当な理由もなく支払わないことは認められないといえるものの、訴訟などに発展すれば後々面倒です。
もしも第三債務者を含めた債権回収など検討しているときや、自身が第三債務者の立場で支払いをしなければならない状況に追い込まれているときには、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
また、グリーン司法書士法人グループでもグリーンネットワークにより協力事務所の専門家と連携しています。
最初から弁護士に相談することは敷居が高く感じ躊躇してしまうという場合などは、気軽にグリーン司法書士グループにご相談ください。
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よくあるご質問
- 第三債務者とは?
- 「第三債務者」とは、債務者に対しさらに「債務」を負う者であり、債務者が「債権」を有している相手のことです。
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