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住宅ローン破綻とは、住宅ローンの支払いが困難になる状態のことを指します。
フラット35などを提供している、住宅金融支援機構の「統合報告書2023」(※)によると、リスク管理債権(破綻先債権、延滞債権、3ヶ月以上の延滞債権、貸出条件緩和債権)の割合は約3%とされています。
つまり100人に3人は住宅ローン破綻に陥っているということです。
一方、住宅ローン破綻に陥ってはいないものの、今後、住宅ローン破綻に陥る可能性がある「住宅ローン破綻予備軍」はそれ以上に多いでしょう。
住宅ローンは20年、30年と長い期間返済し続けるものですので、その間に不測の事態が起こり住宅ローンの支払いが難航する方も珍しくありません。
住宅ローン破綻しないためには、「予備軍」の時点、もしくは予備軍に至る以前に状況を把握し、早い段階で対策することが大切です。
この記事では
- 住宅ローン破綻予備軍とはなにか
- 住宅ローン破綻する原因
- 住宅ローン破綻予備軍の特徴
- 住宅ローン破綻しないための対処法
などについて解説します。
目次 ▼
1章 住宅ローン破綻予備軍とは?
住宅ローン破綻予備軍とは、言葉の通り「住宅ローン破綻」に至りそうな状態の人を指します。
そもそも住宅ローン破綻とは、経済的に住宅ローンの返済ができない状況に陥ることです。
フラット35などを提供している住宅金融支援機構の「統合報告書2023」(※)によると、リスク管理債権(破綻先債権、延滞債権、3ヶ月以上の延滞債権、貸出条件緩和債権)の割合は約3%でした。つまり100人に3人は住宅ローン破綻に陥っているということです。
一方、まだ破綻はしていなくても、今後破綻する可能性がある「予備軍」はそれよりも多く存在するでしょう。
詳しくは後述しますが、以下のことに当てはまる場合は「予備軍」として注意が必要です。
- ローンの返済が遅れることがある
- ローンの返済がギリギリの状態が続いている
- 支出が収入を超えて、貯金を切りくずることがしばしばある
- 無駄遣いはしていないのに貯金がほとんどできない
2章 住宅ローン破綻する原因
住宅ローン破綻に陥る原因としてよくあるのが、以下の4つです。
- 収入の減少
- 定年後の収入不足
- 金利の上昇
- 世帯収入の減少
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2−1 収入の減少
住宅ローン破綻に至る原因として多いのが、収入の減少です。
住宅ローンは長いですので、その間に失業や転職、傷病などによって減ってしまうこともあるでしょう。住宅ローンを組んだ当初は払えると思っていても、長い期間の中で状況が変わってしまうこともあります。
ここ数年では、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人が急増しました。
「絶対に大丈夫」ということはありませんので、万が一のときのためにしっかりと貯蓄をしておくのが大切です。
2−2 定年後の収入不足
住宅ローンは最長35年まで組むことができますので、例えば35歳でローンを組んだのであれば、完済するのは70歳です。
多くの人は60歳〜65歳で定年を迎えるため、70歳までは年金や貯蓄から支払いを続けなければいけません。
正社員として働いていたときよりも大幅に収入が減りますので、定年後は十分な貯蓄がなければ支払いが困難になってしまう可能性があります。
2−3 金利の上昇
変動金利で住宅ローンを組んでいる場合、金利の上昇に伴い返済額が上がることがあります。
2000年頃からかなりの低金利が続いていて、ここ数年間は大幅に金利が上がることはありませんでした。しかし、今後経済状況によっては急激に上昇する可能性はあります。
もしも、将来金利が急上昇した場合にはそれが原因で住宅ローンが支払えなくなることがあります。
2−4 世帯収入の減少
ローンを組んだ時には共働きで、単独ローンだとしても「二人の稼ぎがあれば支払っていける」と背伸びをして借入れをしてしまうと、以下のようなことで世帯収入が減り、支払いができなくなる可能性があります。
- 妻が育休・産休を取った
- 妻が育児をきっかけに仕事をやめた
- 離婚した
そのため、ローンを契約していている人が「一人の収入でも支払える」だけの返済額に抑えておくことが大切です。
3章 近年住宅ローン破綻予備軍が急増している
住宅金融支援機構によると2010年には8%ほどあった住宅ローン破綻率も、令和4年には3%まで減少しています。
しかし、昨今の新型コロナウイルスの影響によって住宅金融支援機構のコールセンターへの相談件数は下記のように急増しています。
年月 | 相談件数(単月) |
---|---|
令和2年2月 | 15件 |
令和2年3月 | 214件 |
令和2年4月 | 1,158件 |
令和2年5月 | 878件 |
主な相談内容は
- 「今月分は入金できない。支払いを待ってほしい」
- 「収入が不安定になったので、返済期間を延長して返済額を下げたい」
- 「ボーナスが減りそうなので、ボーナス返済を取りやめたい」
などが多いようです。
このことから、まだ住宅ローン破綻はしていないものの、破綻寸前の「住宅ローン破綻予備軍」になっている人が多いことが分かります。
新型コロナウイルスは落ち着いてきましたが、まだまだ経済状況は芳しくありません。今後も住宅ローン破綻予備軍は増えていく可能性はあります。
これから住宅ローンを組む方は、そういった情勢も踏まえつつ検討するようにしましょう。
4章 これに当てはまったら注意!住宅ローン破綻予備軍の特徴
以下のような人は住宅ローン予備軍に該当している可能性があります。
- ローンの返済が遅れることがある
- ローンの返済がギリギリになることがある
- 支出が収入を超えて、貯金を切りくずしていることがしばしばある
- 無駄遣いはしていないのに貯金がほとんどできない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4−1 ローンの返済が遅れることがある
通常、ローンの支払いは指定した銀行口座から自動で引き落とされるものです。多くの人は引き落としができなくなることを避けるため、給与口座と引き落とし口座を同じにしているでしょう。
それにもかかわらず、返済が遅れるということは、収入に対して支出が多く、ローンの返済が間に合っていない状態です。
ただ単に「振込を忘れてしまった」という程度ならすぐに振り込めば問題はありませんが、残高不足による遅れが起こる場合には注意が必要です。
4−2 ローンの返済がギリギリ
住宅ローンの返済がギリギリで、固定費を支払ったことでお金がほどんど残らないような場合には注意が必要です。
万が一、急な出費が発生したときに住宅ローンが支払えなくなってしまう可能性があります。
「住宅ローンを支払っても、お金が残る」という状態が理想ですので、それを踏まえて他の支出を抑えるようにしましょう。
4−3 支出が収入を超えて、貯金を切りくずしていることがしばしばある
支出が収入を超えて、貯金を切り崩す状況が頻繁に起こる場合、生活水準が適切でない可能性があります。
収入が減ったのであればそれ相応の水準に下げなければいけませんし、収入が変わっていないのに貯金ができなくなっているのであれば贅沢をしすぎているということです。
そのまま生活していると、いつか貯金が尽き、ローンの返済ができなくなる可能性があります。
4−4 無駄遣いはしていないのに貯金がほとんどできない
特に無駄遣いしていないにもかかわらず、貯金ができない状態は、住宅ローンを含め固定費が収入に見合っていない可能性があります。
「貯金はできていなくても、返済はできているからいい」と思われるかもしれませんが、貯金がなければ万が一のときに支払いができなくなります。
突然病気になって治療費がかかったり、急な自動車事故で車の買い替えが必要になったりと、不測の事態で大きな出費が発生することもあるでしょう。
貯金がないことで、不測の事態の際に住宅ローン破綻してしまう可能性があります。
5章 住宅ローン破綻しやすいケース
以下のようなケースでは住宅ローン破綻しやすい傾向があります。
- 50〜60代の世代の人
- 貯金がなく、頭金なしで購入している人
- ボーナス払いを設定している人
- 完済予定が70歳を超えている人
特徴を知っておくことで、自身の状況と照らし合わせることができます。
詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
5−1 50〜60代の世代の人
住宅ローン破綻をしやすい世代が、50〜60代です。
この世代は、病気や怪我によって休業・失業したり、事業を失敗したりする方が多いからと考えられます。
また、子供が独立したことで離婚をする夫婦も多く、それによって世帯年収が減少することも考えられます。
さらに、20年〜30年程前の住宅ローンと昨今の住宅ローンでは金利差が4~7%程あります。
例えば、2,000万円の残高がある人で考えると、1%で借りている人に比べて5~8%で借りている人は月々の返済額が6~12万程度変わってきますので、破綻率は高くなるのです。
住宅ローンを組んだときから20年以上経過すれば、生活状況の変化しているかと思います。
当時は払えると思っていたはずが、経済状況が変わり支払えなくなってしまうケースもあるでしょう。
5−2 貯金がなく、頭金なしで購入している人
頭金を用意せず、フルローンで購入している方は破綻しやすい傾向があります。
フルローンでは月々の支払額が多いことも当然ですが、住宅購入に向けて貯蓄をしていなかったという家庭は、予定外の収入の減少や出費に対応できないケースが多い傾向があります。
また、頭金なしで購入した場合、ローンの残債が不動産の価値を超えている可能性が高いです。万が一住宅ローン破綻をしたときに売却をしても借金が残ってしまうというリスクがあります。
5−3 ボーナス払いを設定している人
ローンにボーナス返済を設定している場合、なにかのきっかけでボーナスが受け取れなくなったときに破綻する可能性があります。
ボーナス返済は、通常の返済よりかなり高く設定している人が多いのではないでしょうか。ボーナスがなくなってしまうと、途端に返済ができなくなってしまいます。
また、当然定年するとボーナスはなくなりますので、定年後もローンの支払いが続く場合には支払いが困難になります。
このようなことから、ボーナス払いは住宅ローン破綻する可能性が高まるため、あまりおすすめはできません。
5−4 完済予定が70歳を超えている人
住宅ローンの完済予定年齢は80歳を上限としているものが多いですが、完済予定年齢が70歳を超えると住宅ローン破綻に陥るリスクが高くなります。
多くの人は60歳〜65歳で定年退職をします。最初の数年は貯金を切り崩しながら生活ができるかもしれませんが、途中で貯金が尽きてしまう可能性があるでしょう。
高齢になると、介護費用や医療費なども増えてきます。できるだけ、定年前に完済するスケジュールでローンを組むように計画しましょう。
6章 住宅ローン破綻しないための対処法
「住宅ローン破綻してしまいそう…」と感じたら、早急に以下のような対処を取り、破綻を防ぐようにしましょう。
- 収入を増やす
- 家計を見直す
- 個人再生をする
それぞれ詳しく解説します。
6−1 収入を増やす
まずは、収入を増やすよう努めましょう。現在の収入でローンの支払いが難しいのであれば、増やすのが得策です。
可能であれば、副業などを検討してください。最近ではクラウドソーシングなどを利用して仕事を得ることもできます。
また、配偶者が働いていないのであればパートに出てもらうのもよいでしょう。
6−2 家計を見直す
家計の中に余分な出費がないか、一度見直しておきましょう。
- スマートフォンを格安スマホに替える
- 外食を控える
- 交遊費や趣味にかけるお金を抑える
- 光熱費の節約をする
など、出費を減らすよう心がけることが大切です。
塵も積もれば山となる。小さな心がけでも積み重ねれば、支出を抑えることができます。
生活水準を変えるのは難しいと感じるかもしれませんが、生活がぎりぎりになっている状況であれば、家計を見直すようにしましょう。
6−3 個人再生をする
住宅ローン以外にも借金があるのであれば、個人再生を検討しましょう。
個人再生とは、裁判所に申し立てることで借金を5分の1〜10分の1程度まで圧縮し、それを減速3年で完済する再生計画を立てる手続きです。
個人再生では、住宅ローン特則を利用することで、住宅ローン以外の借金のみを対象として手続きが可能であり、それにより住宅を残したまま借金を大幅に減額することができます。
「住宅ローン以外の返済で、住宅ローンの支払いに手が回らない」というケースでは、個人再生で解決できる可能性があります。
6−4 金融機関に相談する
自身での解決が難しい場合には、金融機関に相談してみましょう。
相談することで、返済の猶予を設けてくれたり、返済期間を延長してくれたりと、提案してくれることもあります。
6−5 住宅ローンの借り換えをする
最近は金利が低下している傾向がありますので、今より金利の低い他の住宅ローンで借り換えることで月々の負担を減額できる可能性があります。
ただし、住宅ローンの借り換えには、以下のような手数料がかかります。
- 印紙税
- 保証会社に払うお金
- 金融機関への事務手数料
- 全額繰越返済手数料
- 登記手数料
それぞれの機関にもよりますが、全部で5万円〜10万円程度かかることもあるため、その点は留意しておきましょう。
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7章 まとめ
住宅ローン破綻に陥る人は、約3%と言われています。一方、近年の新型コロナウイルスの影響もあり、「住宅ローン破綻予備軍」と呼ばれる、破綻寸前の人も多いのが現実です。
住宅ローン破綻に陥ってしまう前に、収入を増やしたり、節約をしたりしてどうにか住宅ローンの返済に充てられるだけの資金を確保しなければいけません。
また、住宅ローン以外にも借金があるのであれば、個人再生も有効です。
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よくあるご質問
- 住宅ローンが払えなくなる人の割合は?
- 住宅金融支援機構によると、令和4年の住宅ローン破綻率は3%まで減少しています。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、住宅金融支援機構のコールセンターへの相談件数は急増しています。
- 住宅ローンが破綻する理由とは?
- 住宅ローンが破綻する理由として考えられるのは、主に下記の通りです。
・収入の減少
・定年後の収入不足
・金利の上昇
・世帯収入の減少