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自己破産をすると就職できなかったり、選考に不利になったりするのでは?と不安を感じている人はいませんか?ほとんどのケースでは、自己破産が就職に直接大きな影響を及ぼすことはないと考えてよいでしょう。というのも、過去に自己破産をしたことを就職先に申告する義務はなく、自己破産をしたことがバレる可能性は低いからです。ただし、一部影響するケースもあります。
ここでは、自己破産が就職や仕事に影響するのかどうかということや、制限職種についてわかりやすく解説します。
- 自己破産しても就職に基本的には影響がないこと
- 信用情報機関や官報について
- 自己破産した場合の制限職種について
- 自己破産が就職に不利になるケースも一部ある
目次 ▼
1章 自己破産するとどこに記録されるのか?
自己破産をした人の情報は、信用情報と官報に記録されます。自己破産するとブラックリストに載るといわれているのは、信用情報機関で記録されることを意味します。
この章では、信用情報機関と聞きなれない官報についてそれぞれ解説します。
また、自己破産したことが記録されてしまうのでは?と心配される方が多いものについても、あわせて解説します。
1−1 信用情報機関
信用情報とは、ローンの申し込みやクレジットカードの利用履歴、支払い状況などについて記録したものです。個人の信用情報は、主に次の3つの信用情報機関で保有・管理されています。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
銀行や貸金業者、クレジットカード会社などは、これらの信用情報を提供する機関に登録しています。
新たにクレジットカードやローンの申込みがあると、登録してある信用情報を確認することで、新しくカードを発行したり貸付したりできるかどうかを判断しています。
自己破産をしたという情報は、信用情報機関に「事故情報」として一定期間、登録されます。しかし、これらの信用情報は、誰もが確認できるわけではありません。信用情報機関に開示請求をして情報を得ることができるのは、ご本人や代理人などごく一部の人に限定されています。そのため、自己破産についての情報が、信用情報機関を通して、第三者に知られてしまうことはまずありません。
1−2 官報
官報とは、国が出している広報物で国の新聞のようなものです。官報には、主に法令の公布や国会の議事日程、官公庁や裁判所などが行う「公告」などが掲載されています。
破産法では、破産手続きが行われたことについて、債権者に知らせるため公告しなければならいと定められています。公告とは「公衆に告知する」という意味で、官報に掲載することにより広く多くの人に知らせるのです。
官報には、自己破産をした人の氏名や住所が掲載されます。
官報を購入・閲覧することは誰でも可能で、インターネットでは、無料で過去30日分の官報を見ることができます。また、図書館で過去の官報を見ることも可能です。
しかし、一般の人が官報を購読したり、インターネットや図書館で破産者についての情報を日々見たりしているとは、到底考えられません。そのため、官報に掲載されたことで、会社に知られてしまう可能性は基本的にはないと考えてよいでしょう。
ただし、中には金融関係など日々官報をチェックする職業もあります。このような職業や会社については、この後の第2章で詳しく解説します。
1−3 自己破産の情報が記録されないもの
自己破産を検討されている方の中には、「自己破産したら、戸籍にも載るのか。」と心配される人がいらっしゃいます。自己破産をしたからといって、戸籍や住民票、マイナンバーカードなどにその事実が記載されることはありません。
2章 自己破産は就職に影響するのか?
自己破産をしたことが就職に影響するのか?就職活動の際、会社に申告しなければならないのか?ということは、気になる点ですね。
自己破産をしても、就職には基本的に影響はないといえます。
しかし、自己破産の手続き期間中は、一部の資格を使った仕事について制限があります。たとえば、保険外交員や宅地建物取引業などが該当します。
自己破産の就職への影響や職業制限を受ける職種について、解説します。
2−1 自己破産しても就職には基本的に影響はない
自己破産をしても、就職には基本的に影響はないと考えられます。
そもそも、就職希望者が自己破産していることを、一般の会社が知る可能性は、信用情報を見ることができるか、官報をチェックしていることが前提になります。
前章でも触れましたが、信用情報は加盟している金融機関しか閲覧することができませんし、官報を日々チェックしている会社はさほど多くはありません。
そのため、個人が自己破産しているかどうかを、会社が知る可能性はかなり低いといえます。
2−2 自己破産手続き中には一部職業制限を受ける
自己破産の手続き中には、一部の職業について制限を受ける期間があります。
具体的には、破産手続開始決定が出た後です。一部の職種に就くことが制限されることを資格制限といい、制限の対象となる職種は「制限職種」と呼ばれています。
制限職種の例としては下記のようなものがあり、それぞれの法律で規定されています。
職種 | 具体例 |
---|---|
よくある職種 | ・弁護士 |
・税理士 | |
・司法書士 | |
・保険の外交員 | |
・警備員 | |
士業 | ・弁護士 |
・弁理士 | |
・税理士 | |
・公認会計士 | |
・司法書士 | |
・行政書士 | |
・社会保険労務士 | |
・土地家屋調査士 | |
・通関士 | |
民法上の資格 | ・後見人 |
・後見監督人 | |
・保佐人 | |
・保佐監督人 | |
・補助人 | |
・補助監督人 | |
・遺言執行者 | |
役員・取締役・監査役・清算人など | ・理事以外の日本銀行 |
・信用協同組合または信用協同組合連合会 | |
・商工組合中央金庫 | |
・農林中央金庫 | |
・組合員の貯金または定期積金の受入れ、もしくは組合員の共済に関する事業を行う漁業協同組合 | |
・組合員の貯金または定期積金の受入れ、もしくは組合員の共済に関する施設に係る事業を行う農業協同組合及び農業協同組合連合会 | |
・保険会社 | |
・特定目的会社 | |
・金融商品館員制法人、自主規制法人 | |
・銀行等保有株式取得機構 | |
・特定非営利活動法人 | |
・商工会議所、役員商工会、商工連合会 | |
・地方公共団体情報システム機構 | |
・地方公共団体金融機構 | |
・地方公務員災害補償機構 | |
・地方公務員災害補償基金 | |
・共済事業を行う消費生活協同組合または消費生活協同組合連合会 | |
・地方公営企業 | |
・更生保護法人 | |
・清算無尽会社の清算人 | |
・原子力規制委員会、委員中央更生保護審査会 | |
委員会の委員長 | ・公安審査委員会 |
・公正取引委員会 | |
・公害等調整委員会 | |
・再就職等監視委員会 | |
・国家公務員倫理審査会 | |
・中小企業再生支援協議会 | |
・国会等移転審議会 | |
・公害健康被害補償不服審査会 | |
・労働保険審査会 | |
・社会保険審査会 | |
・調達価格等算定委員会 | |
・国地方係争処理委員会 | |
・原子力損害賠償支援機構の運営委員会 | |
・日本ユネスコ国内委員会の委員 | |
・農水産業協同組合貯金保険機構の運営委員会 | |
・預金保険機構の運営委員会 | |
・国家公安委員会 | |
・教育委員会 | |
・紛争調整委員会 | |
・地方競馬全国協会運営委員会 | |
・日本中央競馬会経営委員会 | |
・土地鑑定委員会 | |
・収用委員会の委員、予備委員 | |
・運輸安全委員会 | |
・都道府県公害審査会 | |
・土地利用審査会 | |
・開発審査会 | |
・建設工事紛争審査会 | |
・建築審査会の委員 | |
その他 | ・司法修習生 |
・固定資産評価員 | |
・公証人 | |
・国家公務員 | |
・証券外務員 | |
・警備員 | |
・警備業 | |
・探偵業 | |
・有料職業紹介事業における職業紹介責任者 | |
・派遣元責任者 | |
・交通事故相談員 | |
・陪審員 | |
・保護者 | |
・海事補佐人 | |
・船員等に関する調停員 | |
・犯罪被害者等給付金申請補助員 | |
・地方自治区の区長 | |
・動物取扱責任者 | |
・インターネット異性紹介事業者 | |
・風俗営業の営業所の管理者 |
ただし、職業制限を受ける状態はずっと続くわけではありません。
破産手続開始決定が出た後、手続きが進み最終的に免責許可決定が確定すれば、制限解除されます。(*取締役などの場合、委任関係が終了して一度退任することになりますが、手続き後に再選されるとすぐに復帰することができます。)
制限職種については、「借金返済ノウハウ」の下記の記事でも詳しく解説しています。
2−3 就職先に自己破産したことを申告する義務はない
就職の面接で、自己破産をしたことがありますかと聞かれることはまずないでしょう。また、ご自身で申告する義務はなく、履歴書に記載の必要もありません。
ただし、就職を希望する会社が、前章で述べた職業制限を受ける職種の場合は、面接で確認される可能性が高くなります。その資格を有していることが前提で採用を検討している可能性が高いからです。
このようなケースに該当する場合には、自己破産を依頼する司法書士や弁護士に事前に相談し、免責許可決定が確定してから就職活動をするなど対策するとよいでしょう。
3章 自己破産が就職に不利になるケース
自己破産をしても、就職には基本的に影響はないとお伝えしました。しかし、下記のようなケースでは就職に不利になる可能性があります。一つずつ見ていきましょう。
3−1 就職先での仕事内容が制限職種に該当する場合
希望する就職先での仕事内容が制限職種に該当する場合、手続きの期間と就職活動時期をよく検討する必要があります。
資格制限(一部の職種に就くことが制限されること)の期間は、破産手続き開始決定が出てから免責許可決定が確定するまでです。具体的には、5か月以内であることが多いようです。
自己破産手続きと就職活動をこれから行う場合は、事前に司法書士や弁護士に事情を伝えて相談されることをおすすめします。ご自身のケースに適したアドバイスをもらえます。
また、現在、制限職種に該当する仕事に従事していて、自己破産をする場合は、一時的にその業務に就けなくなりますが、手続きが完了したら仕事を再開することが可能になります。
3−2 就職先が官報を細かくチェックする職種である場合
官報を業務として細かくチェックする会社は、さほど多くありません。官報をチェックしている可能性があるのは、下記のような職種です。
- 信用情報機関の関係会社
- 金融機関(官報の情報を確認している部署)
- 税金を取り扱う公務員(国税庁や税務署など)
- 不動産業者(破産者などの不動産の売却を取り扱っている)
これらの会社に就職する場合、官報を通じて自己破産をしていることが知られる可能性がないとはいえません。もし知られた場合には、自己破産をしていることが就職に不利に働くおそれがあることは否定できません。
しかし、これらを除く一般の企業について、就職希望者が自己破産をしているかどうか官報を見て調べる可能性はほぼないといえるでしょう。
4章 自己破産を理由に解雇されることは原則ない
すでに就業していて、自己破産をしたら解雇されることはないのか?という点についても触れておきます。
通常、会社は自己破産したことを理由に、懲戒解雇することはできません。ご自身が自己破産手続きをしたことと、会社の業務とは何ら関係がないからです。もし、自己破産を理由に解雇されるようなことがあれば、不当解雇にあたる可能性が高いでしょう。
しかし、自己破産をしたことによって、結果的に解雇されてしまうケースは考えられます。2章で述べた職業制限で業務ができなくなったため、普通解雇されるというような場合です。その業務を行う契約で会社に雇用されている場合、自己破産したために契約通りの業務ができないとなると、解雇の合理的な理由になる可能性があります。
とはいえ、その業務に就けないのは一時的な期間です。手続きが完了したら仕事を再開できるようになります。
5章 まとめ
自己破産手続きをすると、信用情報と官報に氏名や住所が載ることは避けられません。しかし、戸籍や住民票、マイナンバーカードへは記録されませんのでご安心ください。
自己破産をしても、就職には基本的に影響はないといえますが、注意しなければならない点がありました。職業制限があることと、それに該当する場合は、手続きを行う時期について専門家に相談した方がよいという点です。他にも、就職希望先が官報をチェックする業務を行なっている場合には、注意が必要です。
自己破産手続きは、借金に悩む方を助けるために有用な制度です。しかし中には、就職に影響があるケースもあります。同じ法律で認められている債務整理の中でも、最も就職や転職に影響が少ないのが任意整理です。個人再生は、資格制限はありませんが官報へは掲載されます。
借金の返済が苦しいと感じていらっしゃる方は、早めに司法書士や弁護士にご相談ください。制限職種による制限や官報に名前が掲載されることがない任意整理手続きで、お悩みが解決できる可能性もあります。
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