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自己破産をした方、これから自己破産をしようか検討している方の中には、「自己破産をすると相続できなくなるのではないか?」と気になる方もいらっしゃるでしょう。
結論から言いますと、自己破産の経験の有無は原則として相続に影響はありません。
ただし、自己破産の手続き中に相続が発生した場合には、相続財産が得られなくなる可能性があります。また、遺産分割協議の方法も変わってきます。
そのため、難しいことではありますが、自己破産するタイミングは慎重に考えなければいけません。
この記事では、
- 自己破産が相続に与える影響について
- 自己破産をした人の遺産分割協議
- 自己破産によって遺産を失う可能性がある場合の対処法
について解説します。
目次 ▼
1章 自己破産は相続に影響しないのが原則
自己破産の経験の有無は、原則として相続権や相続分に影響はありません。
したがって、自己破産をしても家族や親族が亡くなり、相続人になれば遺産を受け継げます。
相続人が相続できないケースとは「相続欠格事由」に該当する場合であり、自己破産はその事由に該当しないからです。
つまり、自己破産をしたからといって、相続できない、相続分が減るということはありません。
しかし、相続が発生した時期によっては相続財産を失ったり、遺産分割協議に参加できなくなったりする可能性はあります。
具体的には、破産手続開始決定前に相続した遺産は破産財団に含まれ換価処分の対象となります。
人がいつ亡くなるかは分からないため、予測するのは難しいことではありますが、自己破産をするタイミングは慎重に検討する必要があるでしょう。
2章 自己破産をする時期によっては相続財産を失う可能性がある
自己破産をする場合、手続き前に所有している財産は、換価(売却)されて、債権者に分配されます。例えば、マイホームを持っている場合には、マイホームは売却され、そのお金が債権者に渡ることとなるのです。
相続が発生した場合、相続人は遺産を取得することとなり、その取得分は相続人の「財産」として扱われます。
一方、自己破産で債権者に分配される財産は、破産手続開始決定時点で所有していた財産に限ります。
これを踏まえると、以下のことが言えます。
- 破産手続き申立て前に相続が発生した場合→相続財産が残っていれば失う
- 破産手続き開始決定前に相続が発生した場合→相続財産を失う
- 破産手続き開始決定後に相続が発生した場合→相続財産を失うことはない
それぞれ、より詳しく見ていきましょう。
2−1 破産手続き申立て前に相続が発生した場合
裁判所に破産手続きを申し立てる前に相続が発生した場合、相続財産を取得することは可能です。
しかし、相続後、相続財産が手元にある状況で破産手続きの申立てをすると、その財産は債権者へ分配されますので、結果的に相続財産を失うこととなります。
相続財産で借金の全額ないしは大半を返済することができ、自己破産せずに済めば良いですが、相続財産を持っても自己破産を選択せざるを得ない状況なのであれば、大切な遺産を失わないよう相続放棄をしておくことをおすすめします。
相続放棄をすれば、債権者へ分配されることなく、他の相続人が相続財産を取得することが可能になります。
2−2 破産手続き開始決定前に相続が発生した場合
裁判所に自己破産を申し立てると、早くて当日、遅くても1ヶ月以内に破産手続き開始の決定がなされます。
破産手続き開始の決定時点で所有していた財産は、生活に必要な最低限のものと99万円以下の現金以外は「破産財団」に組み込まれ、債権者への分配の対象となります。
「破産財団」とは、破産手続きをする上で、破産管財人が管理・処分をする権利がある財産を指します。
破産手続開始決定前に相続が開始されていた場合、相続財産も同様に「破産財団」組み込まれます。
つまり、破産者兼相続人は、相続財産を「相続できない」のではなく、「相続した財産は、債権者に分配される」こととなります。
また、本人の財産だけであれば、比較的手続きが簡単な同時廃止で済むはずが、相続発生によって相続財産が含まれ、管財事件になってしまうというケースもあるため、注意が必要です。
自己破産手続きの種類
自己破産手続きには以下の3つの種類があります。
自身で選択することはできず、裁判所によって決定されます。
【同時廃止】
所有している財産が20万円未満で、免責不許可事由(ギャンブルによってできた借金など)に当てはまらない場合に適用され、手続きが比較的シンプルで、費用も安価な方法。
【管財事件】
以下のいずれかにあてはまる場合に適用される。
- 所有している財産が20万円以上
- 免責不許可事由にあてはまる可能性がある
- 債務額が5000万円以上
- 破産者が法人の代表や個人事業主
管財事件の場合、破産管財人が選任され、手続きが複雑になり、費用も同時廃止に比べ高額になる。
【少額管財事件】 管財事件が適用される場合で、弁護士に依頼した場合に適用される。 管財事件よりも手続期間は短くなる傾向にあり、費用も多少安くなる。
自己破産についての詳しい解説はこちら
2−3 破産手続き開始決定後に相続が発生した場合
破産手続開始決定後に得た財産は、「破産財団」に組み込まれません。
破産手続き開始決定後に得た財産や遺産については、破産手続きとは関係のない新しい財産として扱われるからです。
そのため、相続手続き開始後に相続が発生した場合、通常通りに相続が可能です。
3章 ご両親が高齢なら自己破産を検討しているなら早めに申立てをしよう
例えば、ご両親がご高齢で、いつ亡くなってもおかしくない状況であれば、1日でも早く自己破産の申立てをするべきです。
破産手続開始決定は、借金の原因がギャンブルであったり、所有している財産が多かったりしない限り、ほとんどの場合当日〜2週間以内に出されます。
開始決定さえ出れば、いつ相続が発生しても相続財産を失うことはありませんので、できるだけ早期に申立てをするのがよいでしょう。
一方で、破産手続開始決定に時間がかかりそうな場合は、不謹慎ではありますが、ご両親のご容態も鑑みて、申立てする時期を検討するべきと言えます。
裁判所へ自己破産の申立てをして、破産手続き開始の決定がなされる前に、ご家族が亡くなり、「このままだと、遺産を失ってしまう」という状況になった時、「自己破産、やっぱりやめます」という主張は通るのでしょうか?
結論としては、破産手続き開始決定前に申立てを取り下げることは可能です。
しかし、一度申し立てを取り下げたあと、受け取った遺産で借金返済ができず、結局自己破産が必要だった時、「やっぱりもう一回申立てします」という言い分が通るのは難しく、自己破産手続きを再度することはできないと考えておくべきでしょう。
4章 自己破産をした人がいる場合の相続
破産手続開始決定前に相続が発生して、まだ遺産分割協議が済んでいない場合、破産者は遺産分割協議に参加することはできず、裁判所が選任した「破産管財人」が遺産分割協議をすすめることとなります。
では、どのように遺産分割協議が進んでいくのか、詳しく見ていきましょう。
4−1 破産手続き開始前に相続が発生すると管財事件になる
自己破産には、大きく分けて「同時廃止」「管財事件」の2つがあります。
同時廃止は、借金の原因がギャンブルなど、免責不許可事由にあてはまることもなく、所有している財産も高額でない場合に選択され、手続き自体もシンプルで比較的短期間で終了します。
一方、管財事件は、借金の原因がギャンブルであったり、所有財産が高額だったりする場合に選択され、手続きも複雑かつ長期間になります。
そして、申立て後、破産手続き開始前に相続が発生した場合は、通常この「管財事件」が選択されます。
管財事件が選択された場合、裁判所によって破産管財人が選任され、財産の管理・処分が行われることとなります。
4−2 破産管財人が遺産分割協議へ参加する
破産手続開始決定前に相続が発生した場合、遺産分割協議には破産管財人が破産者の代わりに参加します。
遺産分割自体は、法定通りに相続する分には通常と変わりなく行われます。
また、「同居していた長男が不動産を相続して、現金をほかの兄弟で分け合う」など、法定通りでなくても、常識の範囲内で相続分に偏りが出る場合も問題はないでしょう。
一方、「自己破産したら、遺産を取得しても結局は失うから、破産した者には相続させないようにしよう」ということは、破産管財人によって拒否される可能性が高く、難しいと考えるべきです。
4−3 遺産を失わないためには相続放棄を検討する
破産者が遺産を取得し、その取得分が没収されてしまうのは、破産者自身にとっても、他の相続人にとっても避けたいことですよね。
このような場合、破産手続き「開始決定前」か「開始決定後」で、それぞれ考える必要があります。
「開始決定前」の場合は、相続放棄することも検討しましょう
まだ、破産申立て前や破産手続き開始決定前であれば、破産者が相続放棄をすることも検討しましょう。
破産者が相続放棄をすれば、そもそも相続権を失うため、遺産を取得することができなくなり、破産管財人が遺産分割に介入することもありません。
そのため、他の相続人たちが、遺産を失うことなく、すべてを分け合うことができるということです。
裁判所に没収されてしまうと、破産者や他の相続人、誰にとってもメリットはないので、相続放棄も検討しましょう。
「開始決定後」の場合は、相続放棄ができません
一方、破産手続開始決定が出たあとは相続放棄ができません。正確に言うと、相続放棄をしても限定承認の効果しか持たなくなってしまいます。
限定承認とは、遺産に借金などマイナスの財産がある場合に、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いてプラスの部分があれば、その部分だけを相続する手続きです。
そのため、遺産がプラスの場合は相続した後に、「破産財団」に組み込まれることは避けられません。
つまり、「遺産を失いたくないから相続放棄をする」という都合の良いことは許されないということです。
自己破産と相続の時期が重なりそうな場合には、その点もしっかりと考えた上で、申立ての時期や相続放棄の時期を検討する必要があるでしょう。
相続放棄には「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」という期限があります。
その期限を過ぎてしまうと、以降、相続放棄ができなくなってしまいます。
相続放棄をするのであれば、なるべく早めに対応しましょう。
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よくあるご質問
- 自己破産をすると相続はどうなる?
- 自己破産の経験の有無と相続については関係がありません。
ただし、自己破産手続き中に相続が発生した場合には、相続財産が没収される恐れがあります。
自己破産と相続の関係について詳しくはコチラ
- 自己破産をすると家族はどうなる?
- 自己破産後は自分名義の財産が差し押さえられるので、家族が車や自宅を使用できなくなる恐れがあります。
破産者名義の家族カードも使用できなくなってしまいます。
一方で、家族の財産が差し押さえられることはありません。
自己破産による家族への影響について詳しくはコチラ