期限の定めのない債務とは?債務の弁済期限と何年で時効により消滅するのか解説

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

時効の援用
期限の定めのない債務とは?債務の弁済期限と何年で時効により消滅するのか解説

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 この記事を読んでわかること
  • 期限の定めのない債務とは
  • 期限の定めのない債務の弁済期限
  • 期限の定めのない債務の時効期間と成立要件
  • 期限の定めのない債務を弁済しないデメリット

期限の定めのない債務とは、履行期日を定めいていない種類の債務です。たとえばお金の貸し借りについて、返済時期を明確に決めていないケースです。親族や友人からの借金では、返済時期を明確に定めないことも多いでしょう。

しかし当然ながら、期限の定めがないからといって無期限に返済しなくてよいという訳ではありません。この場合にはいつを弁済期限とすればよいのでしょう。

また、期限の定めのない債務である以上、いつの時点から所定の期間返済しなければ時効により請求権が消滅するのか、判断が難しいといえます。

そこで、期限の定めのない債務に関する弁済期限や消滅時効について4つの章に分けて説明してきます。

返済時期を決めずにお金を借りたり貸したりしたものの、いつまでに返さなければならないのか、時効でいつ消滅するのかわからないときの参考にしてください。

1章 期限の定めのない債務とは

「期限の定めのない債務」とは、お金の貸し借りにおいて、具体的にいつが返済期限か決めていない借金です。

銀行や貸金業者からお金を借りるときには返済期限を決めなければならないのに対し、親しい間柄の人との金銭の貸し借りでは具体的な期限を定めないこともめずらしくありません。

たとえば親や親戚からお金を借りるとき、いつまでに返すと決めて借りることもあれば、次のように伝えられて返済期限を決めない場合もあります。

「返済はいつでもいい」

「出世払いでいいよ」

「落ち着いたら返して」

ただ上記の場合、

  • 「いつ」でもよいとはどのタイミングなのか
  • 「出世」した状態はどのように判断するのか
  • 「落ち着いた」という基準は何か

など判断に迷うことになり、返済しないまま放置してしまうことも少なくないといえるでしょう。

2章 期限の定めのない債務の弁済期限

期限を定めずお金の貸し借りをしたとしても、借りたお金は返さなければなりません。

たとえ返済期限を定めていなくても、いつまでも返さなくて良い、ということにはもちろんなりません。

民法では、期限を定めなかった債務の「弁済期限」について、次のように規定しています。

民法第412条(履行期と履行遅延)

  1. 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
  2. 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
  3. 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

このように、債務者は「期限の定めのない債務」について、「履行の請求を受けたとき」から、遅滞の責任を負うことになります。

この意味は、「支払うように求められた時点以降、返済しないと遅延損害金が発生するようになる」ということです。

債務者が履行の請求を受けたときから遅滞の責任として、遅延損害金を支払うことになるため、借金総額が増えることになってしまいます。

3章 期限の定めのない債務の時効期間と成立要件

期限を定めていない状態でお金の貸し借りをしてい場合も下記のいずれかの早いタイミングで消滅時効を迎えます。
なお、期限を定めていない債権の消滅時効の起算点は貸付時となります。

  • 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき
  • 債権者が権利を行使することができるときから10年間行使しないとき

ただ、「期限の定めのない債務」の「時効期間」と「成立要件」については、以下の3つの要件を満たしていることが重要になります。

  1. 「催告」から5年経過していること
  2. 「消滅時効の援用」をしていること
  3. 「時効の更新」がないこと

それぞれの要件について説明していきます。

3-1 「催告」から5年経過していること

期限の定めのない債務の時効期間の成立要件の1つめは、催告から5年経過していることです。

いつ返済してもらうべきか、期限を定めてない状態であれば、債権者はいつでも債務者に返してほしいと請求ができます

そのため先に説明した、次の2つは「同時点」であると考えられます。

  • 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき
  • 債権者が権利を行使することができるときから10年間行使しないとき

なお民法では、金銭消費貸借契約で当事者が返還時期を定めていなかった場合、貸主に対し返還時期の定めの有無にかかわらず相当の期間を定めて返還の催告ができるとしています。

金銭消費貸借契約とは
金銭消費貸借契約とは、種類・品質・数量の同じ物を返す代わりとして、金銭・その他の物を受け取る契約のことです。
要するに、借金の契約は法律上金銭消費貸借契約と扱われるのです。

「相当の期間」とは通常1週間程度

「相当の期間」について、具体的にどのくらいの「期間」とすればよいのか、具体的な日数まで民法に明記されているわけではありません。

これは取引する上で一般に必要とされる期間と解釈されるため、目安としては「1週間前後」と考えられます。

もちろん、その「取引」の内容次第で期間は変化しますが、通常の借金であれば1週間程度と見ておけばよいでしょう。

3-2 「消滅時効の援用」をしていること

期限の定めのない債務の時効期間の成立要件の2つめは、消滅時効の援用をしていることです。

時効期間が経過しただけで自動的に借金が消滅するわけではなく、時効により借金がなくなったことを主張する「消滅時効の援用」が必要です。

援用の方法は何でも構いませんが、後々のトラブルを防ぐために内容証明郵便で送ることが一般的です。

3-3 「時効の更新」がないこと

期限の定めのない債務の時効期間と成立要件として、「時効の更新」がないことが挙げられます。

消滅時効期間を過ぎる前に次のような行動があったときには、時効は「リセット」され新たに進行することになります。

  • 借金の一部を支払った
  • 借金の存在を認めた
  • 借金返済を求めて裁判を起こされた
  • 強制執行で財産を差し押さえられた

裁判を起こされた場合には判決確定まで時効の完成は猶予されることになり、請求を認める判決が確定すれば、時効は「更新」され判決確定から「10年」の時効期間となります。

4章 期限の定めのない債務を弁済しないデメリット

期限の定めのない債権について、いつ返すべきか決めていないことを言い訳に弁済しなくてもよいわけではありません。

たとえ定めはなくても、結果的にいつかの時点では期限が到来したものと解釈されるためため、弁済しなければならない時期はいつか必ず到来します。

そのため、期限の定めのない債務を弁済しなかった場合には、次の2つのデメリットがあると留意しておきましょう。

  • 「期限の利益」を喪失する
  • 「遅延損害金」が加算される

それぞれのデメリットについて説明します。

4-1 「期限の利益」を喪失する

期限の定めのない債務を弁済しなかった場合、「期限の利益」を喪失することがデメリットです。

期限の利益を喪失すると、一括請求になり、分割払いや、返済を待ってもらうことができなくなります。

期限の利益
「期限の利益」とは、一定期日到来までの間は債務を履行しなくてよい利益のことです。
たとえば銀行などでローン契約を結んでお金を借りれば、契約書によりいつまでに返済しなければならないか期限を定めることになります。
「いつまで」という取り決めがある以上、その返済期日までお金を返す必要はない「利益」を得ているといえます。
しかしローン契約などでは、債務者が契約に違反した場合には「期限の利益喪失条項」により期限の利益を喪失させることが可能となっており、喪失させられれば前倒しで全額返済しなければならなくなります。
それまでは返済しなくても問題のなかった借金の返済期限が一挙に到来し、直ちに全額支払わなければならなくなることを意味します。これは期限の定めのない債務でも同様です。”]

4-2 「遅延損害金」が加算される

期限の定めのない債務を弁済しなかった場合、「遅延損害金」が加算されることがデメリットです。

遅延損害金とは
遅延損害金とは、金銭債務の履行が遅滞したとき、損害賠償するために支払われる金銭です。

金銭の貸し借りで返済期限の定めがあれば、返済期限の翌日が遅延損害金の起算点となります。

しかし、期限の定めのない債務の場合は返済期限が明確になっていません。そこで相当の期間を定め「催告」した後で遅延損害金を請求することになります。

催告せずに訴訟を起こしたときには、「訴状送達の日の翌日」が遅延損害金の起算点として扱われます。

いずれにしても余計な出費が増えるだけであるため、借りたお金は早急に返したほうがよいといえるでしょう。

まとめ

期限の定めのない債務とは、いつ返済するべきかその期日を事前に決めずにお金の貸し借りをしたことによって発生した請求権です。

親や親戚、友人など親しい人から借金をしたときやお金を貸したときに発生しがちな債務といえますが、期限を決めていなくても返済しなくてよいわけではありません。

返済期限はあると解釈されることになり、その時期はいつか訪れることになるため、返さずに放置することにはデメリットしかないと留意しておいてください。

もしも期限を定めずに借りたお金があるときや、借金の返済が厳しい状態であるときなどは、問題解決にむけてグリーン司法書士法人グループへ一度ご相談ください。

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期限の定めのない債務とは?
「期限の定めのない債務」とは、お金の貸し借りにおいて、具体的にいつが返済期限か決めていない借金です。
期間の定めのない債務について詳しくはコチラ
期限の定めのない債務の返済期限はいつ?
期間の定めのない債務の返済期限は払うように求められた時点以降です。
期限までに返済しないと遅延損害金が発生します。
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