入院費を払えないときの対処法5つ|払わないでいるとどうなる?

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 登録番号第10262380号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
入院費を払えないときの対処法5つ|払わないでいるとどうなる?

この記事は約 14 分で読めます。

 この記事を読んでわかること
  • 入院費用の相場や内訳
  • 保険適用される費用・されない費用の違い
  • 入院費を払えないときの具体的な対処法
  • 利用できる公的支援制度
  • 入院費を滞納した場合のリスク

突然のケガや病気で入院すると、治療への不安だけでなく入院費についての心配を抱える方も少なくありません。

しかし、入院費をすぐに払えなくても、病院への相談や公的支援制度の利用など、対処できる方法はあります。

また、借金が原因で支払いが難しい場合には、債務整理によって生活を立て直せる可能性もあります。

この記事では、入院費を払えないときの対処法や、払わないでいるリスク、借金問題を解決する方法について解説します。この記事を読むことで、ご自身の状況に合った適切な選択ができるようになるでしょう。

1章 入院費用の相場はいくら?

入院費用は、病気やケガの内容、入院日数、個室利用の有無などによって大きく異なります。

公益財団法人生命保険文化センターの「2025(令和7)年度「生活保障に関する調査」によると、入院1日当たりの自己負担費用の平均は、24,300円となっています。

この金額には、主に次のような費用が含まれています。

  • 治療費
  • 食事代
  • 差額ベッド代
  • 交通費(家族のお見舞いにかかる交通費を含む)
  • 衣類や日用品代
  • 高額療養費制度を利用した後の自己負担額

入院が長引くと、想像以上に費用がかかるケースも少なくありません。そこで、健康保険が適用される費用と、自己負担となる費用について、確認しておきましょう。

1-1 保険適用される入院費用・されない入院費用

入院費用には、健康保険が適用されるものと、自己負担になるものがあります。

◼️保険適用される主な費用
診察料医師による診察
検査費用血液検査、画像検査など
手術費用手術やその処置にかかる費用
投薬費用薬代
リハビリ費用リハビリにかかる費用
入院基本料病室利用や医学管理・看護にかかる費用

健康保険が適用される場合、一般的な自己負担割合は3割です。たとえば、医療費総額が30万円なら、窓口負担は原則9万円程度となります。

◼️保険適用されない主な費用
差額ベッド代個室・少人数部屋を希望した場合の追加費用
食事代入院時の食事の自己負担分
日用品代有料テレビの視聴用カード、パジャマ、洗面用具、入浴用品、飲料など
先進医療費一部の高度医療

特に注意したいのが差額ベッド代です。個室を利用すると、1日数千円〜数万円かかる場合もあります。

また、入院日数が長くなると、保険適用されない費用がかさみ、想像以上の負担になることがあります。

2章 入院費が払えないときにすべき5つの対処法

入院費をすぐに払えない場合でも、何もしないまま放置するのは避けましょう。

事情を説明すれば、病院側が支払い方法の相談に応じてくれる可能性がありますし、公的支援制度を利用できる場合もあります。また、生活状況によっては、一時的に借入を利用する方法も選択肢になるでしょう。

この章では、入院費が払えないときに検討したい5つの対処法を紹介します。

2-1 分割払いの相談をする

入院費を一括で支払うことが難しい場合は、できるだけ早めに病院へ相談しましょう。退院することになってから相談するのではなく、入院時の段階で事情を伝えておくことが大切です。

病院によっては、分割払いに対応してもらえる場合があります。特に、公立病院や大規模病院では、医療費に関する相談窓口や医療相談室が設けられていることもあり、支払い方法について相談できるケースがあります。

大切なのは、「払えないから」と放置しないことです。
早めに事情を説明することで、

  • 毎月分割で支払う
  • 支払期限を延ばしてもらう
  • 一部のみ先に支払う

といった柔軟な対応を受けられる可能性があります。

一方で、無断で滞納を続けると、病院から督促を受けたり、弁護士を通じて法的手続きに関する連絡が来たりすることもあります。そのため、支払いが難しいと感じた時点で、まずは病院へ相談することが重要です。

2-2 公的支援制度を活用する

医療費の負担を軽減できる公的支援制度もあります。特に、高額療養費制度は、多くの方が利用できる代表的な制度です。

利用できる主な制度一覧
高額療養費制度医療費の自己負担額が一定額まで軽減される制度
限度額適用認定証医療費の窓口負担を自己負担限度額まで抑えられる制度 
高額医療費貸付制度高額療養費が支給されるまでの間、無利子で貸付を受けられる制度
傷病手当金働けない期間に給付金が支給される制度
付加給付制度高額療養費制度に上乗せして払い戻ししてもらえる制度(加入している健康保険組合による)
生活福祉資金貸付制度一時的な生活費などを貸付してもらえる制度
医療費控除1年間の医療費が10万円を超える場合に所得控除を受けられる制度
生活保護生活困窮者への支援

2-2-1 高額療養費制度

高額療養費制度とは、1か月の医療費自己負担額が一定額を超えた場合、超過分の医療費が払い戻される制度です。

自己負担限度額は、年齢や所得によって異なりますが、数十万円の請求でも最終的な自己負担が大きく軽減される場合があります。

2-2-2 限度額適用認定証 

高額療養費制度を利用する場合、通常は一度病院の窓口で医療費を支払い、その後、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。

ただし、払い戻しを受けるまでには、一般的に3か月程度かかることがあります。そのため、あらかじめ医療費が高額になることがわかっている場合には、「マイナ保険証」または「限度額適用認定証」を利用するのがおすすめです。

これらを病院の窓口で提示すれば、最初から自己負担限度額までの支払いで済むため、一時的に高額な医療費を立て替える必要がなくなります。

2-2-3 高額医療費貸付制度

高額医療費貸付制度とは、高額療養費が支給されるまでの間、医療費の支払いに充てるための資金を無利子で借りられる制度です。

高額療養費制度では、医療費をいったん自己負担した後、後日払い戻しを受けることになります。しかし、払い戻しまでには数か月かかることもあるため、一時的にまとまったお金が必要になります。

そのような場合に、高額医療費貸付制度を利用すれば、高額療養費の支給見込額の一定範囲内で借入をすることが可能です。

特に、マイナ保険証や限度額適用認定証を利用できず、窓口で高額な医療費を支払わなければならない場合には、有効な制度といえるでしょう。なお、後日支給される高額療養費は、借入金の返済に充てられます。

2-2-4 傷病手当金

傷病手当金とは、会社員など健康保険に加入している方が、病気やケガで働けなくなった場合に支給される手当金です。

連続する3日間を含めて4日以上仕事を休み、その間に給与が支払われない場合などに支給対象となります。

支給額は、おおよそ給与の3分の2程度で、通算して最長1年6か月まで受け取ることが可能です。

ただし、傷病手当金は主に会社員向けの制度であり、国民健康保険には原則として設けられていません。そのため、フリーランスや自営業者、国民健康保険に加入している方は、基本的に利用できない点に注意が必要です。

2-2-5 付加給付制度

付加給付制度とは、健康保険組合などが独自に設けている医療費の補助制度です。高額療養費制度を利用したあとでも、さらに自己負担額を軽減できる場合があります。

たとえば、「1か月の自己負担は2万5千円まで」など、健康保険組合ごとに独自の上限額が設定されているケースがあります。そのため、実際の医療費負担を大きく抑えられる可能性があります。

ただし、すべての健康保険に付加給付制度があるわけではありません。主に大企業の健康保険組合などで実施されており、国民健康保険には原則としてありません。利用できるかどうかは、加入している健康保険組合へ確認してみるとよいでしょう。

2-2-6 生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度とは、低所得者世帯や高齢者世帯、障害者世帯などを対象に、生活に必要な資金の貸付けや支援を行う制度で、各都道府県の社会福祉協議会が窓口になっています。

医療費や生活費の支払いが難しい場合に利用できる可能性があり、状況によっては比較的低い負担で借入れができることがあります。

ただし、申込みをしてもすぐに借りられるわけではなく、相談・申込みから実際の貸付決定まで、1か月〜数か月程度かかることもあります。

また、審査の結果によっては、希望どおりに貸付けを受けられない場合もあるため、できるだけ早めに相談することが大切です。

2-2-7 医療費控除

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。

本人だけでなく、生計を同じくする家族の医療費も合算できるため、入院や治療によって医療費負担が大きくなった場合には利用を検討したい制度といえるでしょう。

ただし、医療費控除を受けるには確定申告が必要です。入院時の部屋代や食事代、通院にかかった公共交通機関の費用等も対象となるため、領収書や医療費通知などを保管しておき、忘れずに手続きを行いましょう。

2-2-8 生活保護

生活保護とは、収入や資産が一定基準以下で生活が困難な方に対して、必要な保護を行う制度です。

病気やケガによって働けなくなり、収入が途絶えてしまった場合には、生活保護を利用できる可能性があります。生活保護を受給すると、生活費の支援を受けられるだけでなく、医療扶助によって医療費の自己負担が原則不要になります。

ただし、生活保護を受給できるのは、収入が国の定める保護基準(最低生活費)を下回る場合です。生活に困窮している場合には、市区町村の福祉事務所へ早めに相談することが大切です。

2-3 家族・親族や友人に借りる

家族や親族に相談できる場合には、一時的に援助してもらう方法もあります。カードローンなどよりも利息負担が少なく、柔軟に返済できる可能性があります。

ただし、お金の貸し借りは人間関係のトラブルにつながることもあります。
そのため、

  • 返済時期を決めて必ず守る
  • 借用書を作成する
  • 無理な借入をしない

など、借入の内容を、できるだけ明確にしておくことが大切です。

2-4 医療ローンを組む

医療ローンとは、病気・ケガの治療費や入院費用等の医療費の支払いを目的としたローンです。

医療費以外には使えないものの、使い道が自由なローンと比べて一般的に利息が低めです。ただし、使い道が分かる書類の提出が必要な場合があります。

医療ローンは、銀行系や信販系の金融機関で取り扱っており、病院と提携しているケースもあります。すでに他社での借入が多い場合、審査に通らない可能性もあるため注意が必要です。

2-5 医療ローン以外で借入をする

どうしても入院費用を用意できない場合には、フリーローンやカードローンなどを利用する方法もあります。

医療ローンは使い道が医療費に限定されているのに対し、フリーローンやカードローンは原則として自由に利用できるのが特徴です。そのため、入院費だけでなく、退院後の生活費や当面の支出にも充てることができます。

一方で、フリーローンやカードローンは、医療ローンより金利が高い傾向があります。そのため、借入額が増えると返済負担も大きくなりやすいため注意が必要です。

また、インターネットから簡単に申込みでき、審査も比較的早いため、気軽に利用しやすい点にも注意しなければなりません。

特に、消費者金融などから繰り返し借入をすると、

  • 借金が増えていく
  • 利息負担が大きくなる
  • 返済が長期化する

といったリスクがあります。

そのため、ローンや借入はあくまで一時的な対処法として考え、返済の見通しを立てたうえで利用することが大切です。

3章 入院費を払えない場合に起きるリスク・デメリット

「後で払えるようになったら払おう」と考えて、入院費を払わず放置してしまう方もいます。しかし、病院側も未払いをそのままにしておくわけではありません。

督促が届いたり、保証人へ連絡がいったり、最終的には裁判になる可能性もあります。また、医療費の支払いに追われることで、さらに借金が増えてしまうケースも少なくありません。

この章では、入院費を払えないまま放置した場合に起きるリスクを解説します。

3-1 病院から督促が届く

入院費を滞納すると、まずは病院から電話や郵便で督促が行われるのが一般的です。
支払期限を過ぎても放置していると、

  • 督促状
  • 催告書
  • 内容証明郵便

などが送られてくる場合があります。

また、病院によっては、未払い債権の回収を専門業者へ委託するケースもあります。そうなると精神的な負担も大きくなりやすく、早めの対応が重要です。

3-2 身元保証人に請求がいく

入院時に身元保証人を立てている場合、本人が支払えないと保証人に請求される可能性があります。

保証人には、たいてい家族や親族がなっていることが多く、経済的な負担をかけたくないと考える方は多いでしょう。

そのためにも、支払いが難しいとわかった時点で病院へ相談し、状況を説明しておくことが大切です。

3-3 訴訟を起こされる恐れがある

病院からの督促に応じないまま長期間滞納を続けていると、病院から司法書士や弁護士などの専門家を通じて請求を受ける可能性があります。

突然、専門家からの通知が届くと、不安や驚きから「どうしてよいかわからない」と感じる方もいるでしょう。しかし、そのまま放置してしまうと、事態はさらに悪化し、裁判を起こされる恐れがあります。

裁判で病院側の請求が認められると、預貯金や給与、財産などを差し押さえられる可能性もあります。そのため、督促や通知を無視せず、支払いが難しい場合には早めに病院や専門家へ相談することが大切です。

4章 入院費を払えない理由が借金なら債務整理を検討しよう

入院費が払えない背景には、もともとの借金問題があるケースも少なくありません。

たとえば、

  • 消費者金融の返済がある
  • クレジットカードのリボ払いが膨らんでいる
  • 生活費を借入で補っている

といった状況では、入院による収入減少や医療費の支払いがきっかけで、一気に家計が破綻してしまうことがあります。そのような場合には、借入を増やし続けるよりも、債務整理によって根本的な解決を図ることが重要です。

債務整理には主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。

4-1 任意整理

「任意整理」とは、裁判所を通さずに債権者と交渉し、借金の利息や返済方法などを見直すことで、返済の負担を軽減する手続きです。

将来利息のカットなどが認められると、毎月の返済額が抑えられ、家計の負担が軽くなったと感じられる方も少なくありません。

任意整理は、債務整理の方法の中でも、比較的利用されることが多い手続きです。ただし、元金そのものが減額されるわけではないため、借入額が大きい場合には適さないケースもあります。

また、任意整理は、整理の対象とする債権者を選ぶことができます。そのため、自動車ローンや保証人が付いている債務を対象から外したいという方にも向いている手続きです。

【任意整理の特徴】
対象支払いが困難な債務のみの選択が可能
メリット将来利息のカット、毎月の返済額軽減
デメリット信用情報への登録(ブラックリスト)

4-2 個人再生

「個人再生」とは、大幅に減額された借金を原則3年間で返済するための再生計画案を作成し、裁判所の認可を受けて返済を進めていく手続きです。

具体的には、借金の元本をおおむね5分の1程度まで減額できる可能性があり、再生計画どおりに返済を完了すれば、減額された分の借金については支払う必要がなくなります。

また、住宅ローンを返済中の場合でも、住宅ローン特則を利用すると自宅を手放さずに手続きができることも大きなメリットです。

ただし、減額後の借金を継続して返済していく必要があるため、安定した収入が求められます。無職の方や収入が不安定な場合には、利用が難しいこともあります。

【個人再生の特徴】
対象安定した収入がある個人
メリット大幅な債務の減額が可能・住宅の維持が可能
デメリット官報公告の掲載、信用情報への登録(ブラックリスト)、手続きが複雑

4-3 自己破産

「自己破産」とは、税金など一部の債務を除き、借金の返済義務を法的に免除してもらう手続きです。

原則として借金の返済義務がなくなるという大きなメリットがある一方で、持ち家や車など一定以上の価値がある財産は処分の対象となる可能性があり、失ってしまうリスクがある点には注意が必要です。

また、ギャンブルや浪費など、法律で定められた「免責不許可事由」に該当する行為がある場合には、免責が認められない可能性もあります。そのため、不安がある場合は事前に専門家へ相談することをおすすめします。

【自己破産の特徴】
対象収入や返済能力がない人
メリット借金が全額免除される
デメリット財産の処分、官報公告の掲載、信用情報への登録(ブラックリスト)、一定の職業制限(一時的)

5章 入院費が払えないときは早めに相談を!

入院費を払えないからといって、治療を諦める必要はありません。病院へ分割払いを相談したり、高額療養費制度などの公的支援を活用したりすることで、負担を軽減できる可能性があります。

一方で、何もせず放置すると、督促や訴訟などにつながる恐れがあります。また、すでに借金がある場合、医療費がきっかけで返済不能に陥るケースも少なくありません。そのような場合には、債務整理によって、生活を立て直せる可能性があります。

「入院費が払えない」「借金もあり、どうしていいかわからない」という場合には、一人で抱え込まず、専門家へ早めに相談することが大切です。

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