任意整理から自己破産へ変更はできる?注意点もわかりやすく解説

司法書士市川有美

監修者:グリーン司法書士法人   市川有美
【所属】大阪司法書士会 登録番号大阪第4555号 【保有資格】司法書士

任意整理
任意整理から自己破産へ変更はできる?注意点もわかりやすく解説

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「任意整理の返済途中だけれど、生活状況が変わってしまい返済ができなくなりそう…」このような事態は、任意整理をする人の誰にでも起こる可能性があります。そんなとき、自己破産に変更することはできるのか?と不安に思っている人はいませんか。

この記事では、任意整理から自己破産へ変更はできるのか、その場合の注意点や変更できないケース、変更できない場合の対処法などについて解説します。

 この記事を読んでわかること

  • 任意整理から自己破産へ変更できる
  • 任意整理から自己破産へ変更するときに注意すること
  • 任意整理から自己破産へ変更できないケース

1章 任意整理から自己破産へ変更はできる?

任意整理で返済できなくなった借金について、自己破産を申し立てることは可能です。一度任意整理を行なったのに、途中から自己破産に変更などできないのではと考える人もいらっしゃいますが、心配は無用です。自己破産は、破産法という法律に基づいて行われる手続きなので、その要件を満たしていれば申立てすることができるのです。

1-1 任意整理から自己破産への変更は可能

任意整理から自己破産への変更は可能なので、まずは任意整理を依頼した事務所に事情を話して相談してみましょう。一度手続きを依頼しているため、当時の状況を理解している、資料が残っている可能性が高いなど手続きをする上で有用だということがあります。

また、任意整理の返済を事務所経由で行なっている場合も、依頼している事務所に相談する必要があります。

1-2 任意整理と自己破産をわける明確な基準はない

任意整理は任意で債権者と交渉する手続きですが、一方、自己破産は法律に沿って行われる手続きです。どのくらいの借金額なら任意整理で、それ以上だと自己破産というような明確な基準は法的にもありません。

どの手続きを行うのかは、手続きを行う人の個々の事情や状況によって決まります。ただし、法律に基づいて行われる自己破産は誰でも利用できるわけではなく、裁判所の定める一定の条件を満たしている必要があります。

1-3 変更前にしっかりと収支を把握しましょう

返済が難しくなってくると焦りばかりが先立ちますが、相談の前にまずは収支をしっかりと把握することが重要です。家計の収支状況が把握できると、自由に使える手取り収入がいくらあるのかも明確になります。任意整理を継続できる可能性はないのか、自己破産に変更すべきなのかという点も、専門家に相談しやすくなります。

2章 任意整理から自己破産へ変更するときの注意点

任意整理から自己破産へ手続きの変更をする際に、注意したい点がいくつかあります。デメリットやリスクともいえる事柄ですが、1つずつ見ていきましょう。

2-1 任意整理で返済したお金は返してもらえない

任意整理で返済したお金は返してもらえないということを認識しておきましょう。任意整理手続きでは、合意後に交わした和解書に基づき返済しています。正当に回収されたお金なので、金融機関側も返す義務はないのです。

2-2 任意整理とは別に自己破産の費用がかかる

任意整理を依頼した同じ事務所に自己破産を依頼した場合でも、任意整理手続きは終了していて、自己破産の費用は別に支払う必要があります。任意整理で支払った費用とは別に自己破産も費用がかかると聞くと、損をした気持ちになる人もいるかも知れませんが、それぞれ別の手続きであることを理解しておきましょう。

また、自己破産をご自身で申立すれば費用がかからないのではと考える人もいらっしゃるでしょう。確かにご自身で申立を行うことは不可能ではありません。しかし、専門的な知識が必要な上に、裁判所への対応や手続に必要な書類の収集・作成を一人で行うことになり、あまりおすすめできません。

2-3 自己破産のデメリットを理解しておく

自己破産のデメリットには下記のようなものがあります。事前に理解しておきましょう。

  • 家や車などの高価な財産は処分される
  • 手続き中に就けなくなる職業がある
  • 住所・氏名が官報に掲載される
  • 保証人や連帯保証人がいる場合は迷惑をかける
  • 一定期間は借り入れができなくなる
  • 信用情報に事故情報が登録される

一定期間は借り入れができなくなること、ブラックリストに載ることは、任意整理でも同様ですが、自己破産を申立することで、さらに期間が伸びるというデメリットがあります。

2-4 管財事件になる可能性がある

自己破産手続きには、同時廃止事件と管財事件の2種類があります。

  • 同時廃止事件 破産手続きの開始と同時に終了するため、かかる時間も費用も少ない
  • 管財事件 管財人が財産を調査・清算するので時間と費用がかかる

処分すべき財産や免責不許可事由(自己破産の手続きで免責が認められない事由)がなければ、同時廃止事件になる可能性が高くなります。

しかし、任意整理をした後で、再び支払いができなくなって自己破産をする場合、偏頗弁済(へんぱべんさい)を疑われる可能性があります。偏頗弁済とは、特定の債権者だけに弁済する行為で、免責不許可事由に該当するものです。偏頗弁済とみなされるケースでは、管財事件になってしまう可能性があります。

2-5 同じ事務所に依頼できない可能性もある

任意整理後に自己破産を申立する場合、任意整理を依頼した事務所に依頼すると手続きがスムーズに進みやすくなるでしょう。しかし、必ずしも同じ事務所に依頼できない可能性もあります。先に依頼した任意整理手続きは一度終了しているため、新たな依頼を受けるかどうかは事務所次第だからです。司法書士や弁護士の専門家の在籍数が少ない事務所の場合、引き受けられる件数に制限があるなどの事情もあります。必ずしも同じ専門家に依頼しなければならないわけではないので、その場合は別の事務所に相談しましょう。

3章 自己破産ができる条件と難しいケース

「任意整理の返済が厳しいから、自己破産に変更しよう。」と考えるのは特別なことではありません。しかし、自己破産は、本人が希望すればどんな場合でも手続きできるというわけではありません。この章では、自己破産ができる条件と難しいケースについて解説します。

3-1 自己破産ができる条件

自己破産できる条件として、次の3つがあります。

3-1-1 借金の返済が不能になっている

自己破産をするためには、借金の返済ができなくなっていることが必要です。借金が収入を上回り、どう算段しても支払うことができない状況であることが客観的に見て判断できる、という状態です。

3-1-2 借金の内容が免除非対象のものではない

自己破産しても支払いが免除されない借金があり、これを非免責債権と呼びます。非免責債権には次のようなものがあり、これらの支払い義務については自己破産しても免除されません。

  • 税金
  • 国民健康保険料
  • 養育費
  • 飲酒運転による交通事故での損害賠償
  • (個人事業主の場合)従業員に支払う給料
  • 裁判所に申告しなかった借金
  • 罰金

3-1-3 免責不許可事由がない

自己破産が認められない理由となる事情を、免責不許可事由といい、これらの行為をしていないことが条件になります。具体的には、次のような行為が免責不許可事由にあたります。

  • 差押えを逃れるために親戚や友人に財産を渡す
  • 特定の債権者にだけ返済する(友人からの借金だけ返すなど)
  • 浪費やギャンブル
  • 嘘をついて借金をする
  • 帳簿を隠したり、書き換えたりする
  • 虚偽の債権者一覧表・債権者名簿を提出する
  • 裁判所の調査を拒む、虚偽の説明をする
  • 破産管財人の職務を妨害する
  • 過去7年以内に破産した
  • その他破産手続上定められている義務に違反する

自己破産が認められる条件については、「借金返済ノウハウ」の下記の記事でも詳しく解説しています。

3-2 任意整理後の自己破産が難しいケース

任意整理後の自己破産手続が難しいケースもあります。具体的に見ていきましょう。

3-2-1 そもそも借金総額が少ない

自己破産をするにあたって、借金総額がいくら以上でないと手続きができないなどの決まりはありません。破産法で破産手続きを行う要件として、負債額などは定められていないからです。

とはいえ、自己破産手続きには、先に述べた「借金の返済が不能になっている」という要件があります。任意整理による返済で借金がいくらか減っていることもあり、明らかに借金総額が少ないと判断されるケースでは、自己破産手続きが難しくなる可能性があります

3-2-2 免責不許可事由がある

免責不許可事由があると、申立をしても免責を得ることが難しくなります。しかし、これらの事由があると、自己破産が一切認められないというわけではありません。考慮すべき事情などがある場合には、裁判所の裁量で免責が認められるケースもあります。その場合は、同時廃止事件ではなく管財事件になる可能性があります。

3-2-3 任意整理により債権者に不平等が生じている

任意整理は、対象にする債権者を選んで行うことができる手続きです。対象外の債権者に対しては返済をし続けていたけれども、対象にした債権者には一定の期間返済をしていなかったという不公平が生じています。

免責不許可事由の中には、「特定の債権者にだけ返済する」というものがありますが、先に行った任意整理が、これにあたる偏頗弁済なのではと、裁判所から疑問を持たれる可能性があります

ただし、もし偏頗弁済とみなされてしまった場合でも、ただちに免責不許可となるわけではありません。管財事件として、偏頗弁済した金額を用意して債権者へ配当することで、免責が許可される可能性があります。

3-2-4 保証人がついている借金がある

保証人や連帯保証人がついている借金がある場合、任意整理ではそれらの借金を除外して手続きすることが少なくありません。保証人がついている借金を整理すれば、保証人になってくれた人に迷惑がかかるからです。任意整理の手続きでは、このような選択が可能でした。

しかし、自己破産の手続きには債権者平等の原則というルールがあり、保証人がついている借金を除いて申立することはできません。すべての債権者を手続きの対象としなければならないため、どうしても保証人がついている借金は整理できない(保証人に迷惑はかけれらない)という場合、自己破産を行うことは難しくなってしまいます。

4章 任意整理から自己破産へ変更できない場合

任意整理の返済ができず、自己破産への変更も難しいからと、借金を放置していてもよいことはありません。いずれ債権者から裁判を起こされて、給料や預金口座を差し押えられる事態になってしまうでしょう。さまざまな事情によって任意整理から自己破産へ変更できない場合には、他の方法を検討することになります。

4-1 再度任意整理を検討する

任意整理をして支払えなくなった借金について、再度任意整理をすることは可能です。任意整理は裁判所の関わりなく、当事者どうしの話し合いにより和解を目指す方法なので、債権者が同意すれば交渉をすることはできます。

ただし、初回よりも厳しい和解条件を提示される、こちらの希望する和解内容に応じてくれないといった可能性が高くなります。二度目の任意整理では、一度和解契約を結んだのに約束通り返済できなかったことで債権者からの信用を失っていることを認識した上で、臨む必要があります。

4-2 個人再生を検討する

任意整理後に、個人再生の申立を行うことも可能です。個人再生には、自己破産のような免責不許可事由はなく、その点で利用しやすいといえるでしょう。ただし、すでに任意整理をしている債権者から見た場合、二度目の債務整理というよくない心象は拭えません。個人再生手続きの中で、再生計画案について債権者の同意をもらえないリスクには注意する必要があるでしょう。

5章 まとめ

さまざまな事情から任意整理が頓挫してしまったとしても、再度の債務整理を行うことが可能です。返済ができなくなったからとそのまま放置せず、早い内に司法書士に相談することで解決策を見出すことができるでしょう。

また、病気やリストラなど大きな事情変更が生じたわけではないのに返済不能になった場合は、最初の債務整理の選択に誤りがあったのかも知れません。債務整理の中でも手間や費用がかからない任意整理は、ご自身にあった整理方法か専門家に相談しないまま、自身で手続きをしてしまうケースもあります。

任意整理をしたけど返済に不安を感じている方や、自己破産、個人再生を含めてどの債務整理がご自身にあっているか聞いてみたいという方は、ぜひ一度グリーン司法書士法人グループへご相談ください。個々の事情にあったアドバイスをさせていただきます。

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