任意売却は住宅ローン滞納なしでもできる?疑問点をわかりやすく解説

   司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 会員番号第14026号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

住宅ローン問題
任意売却は住宅ローン滞納なしでもできる?疑問点をわかりやすく解説

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任意売却を考えている人の中には、「住宅ローンを滞納していなくても任意売却は利用できるのか?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

任意売却の利用は、住宅ローンの滞納なしにはできないことが基本です。だからといって、すぐにわざと滞納をするのは早計です。滞納なしでも任意売却を利用できるケースや、任意売却を行うときの注意点などを解説します。

1章 任意売却とは?

任意売却とは、住宅ローンの支払いができなくなったときに、抵当権者(金融機関)の同意のもと、不動産を売却することをいいます。任意売却をすると、売却後も住宅ローンは残ってしまいますが、ローンを減らすための手段として大変有効です。

通常、住宅ローンを滞納すると期限の利益(ローンを分割で返済する権利)が失われて、金融機関は住宅ローンの残金を一括返済するようにと請求してきます。一括で返済できない場合、金融機関は自宅を強制的に売却することで、その売却代金からお金を回収しようとします。この、自宅を強制的に売却されることを競売といいます。

任意売却では、所有者の希望する条件をある程度組み込んだ上で、一般市場での売却活動ができますが、競売は所有者の意思とは関係なく売却されるため、任意売却と比べて低価格で売却される傾向にあります。そのため、競売にかけられる前に、任意売却を希望する人は少なくありません。

2章 任意売却は住宅ローンの滞納なしでは基本的には利用できない

任意売却を検討される場合、住宅ローンの支払いが限界で滞納が始まってしまったという状況の人がほとんどです。しかし中には、まだ滞納していないが将来的に不安というような方もいらっしゃるでしょう。

通常の不動産売却を行って、残ローンを一括返済できるのであれば問題はないのですが、自宅を売却してもなお残債がある場合、その不動産を売却することはできません。残債があっても自宅を売却できる任意売却は、基本的に住宅ローンを滞納していることが前提となります。

2−1 期限の利益を喪失していないと任意売却ができないため

なぜ、住宅ローンの滞納なしでは任意売却ができないのでしょうか。

任意売却の手続きを行う事情には、「期限の利益(ローンを分割で返済する権利)を喪失して、金融機関から残金の一括返済を求められているが、支払いができない」ということがあります。任意売却は、この返済資金を作るために行われる手続きです。

まだ滞納していない人に対し、金融機関が「期限の利益の喪失」を通知することはありませんし、一括返済を請求することもないため、任意売却を行う理由もないことになります。

2−2 金融機関や保証会社が同意しないため

金融機関の立場としては、売却せずに当初の予定通り完済するまで払ってもらいたいと考えています。なぜなら、任意売却をしてしまうと、将来予定していた金利収入を得ることができなくなるからです。

また、任意売却で残債がある状態で売却されてしまうと、その残債に対する担保が消えてしまうことになります。そのため、任意売却をされると債権が無担保となってしまうのです。このような理由から、金融機関は住宅ローンを滞納していない人の任意売却を認めないことが一般的です。

3章 滞納なしでも任意売却を利用できるケースもある

しかし、滞納していなくても任意売却を利用できるケースもあります。金融機関に事情を説明して同意を得られれば、滞納していなくても任意売却の利用が可能になるからです。ただし、金融機関に相談すればすべて同意してくれるわけではなく、認められやすい事情というものがあります。この章では、認められやすい事情と、同時に認められないケースについても解説します。

3−1 滞納なしでも任意売却が認められやすい事情とは?

例えば下記のような事情で、今後のローン支払いがどうしても難しいと判断される場合は、任意売却が認められやすいといえます。

  • 転職や失業、リストラなどで収入が激減した
  • 予測していなかったケガや病気、家族の介護により収入が減った
  • 元々の住宅ローンの返済額が高すぎる
  • 予想していたより退職金が少ない
  • すでに税金などを滞納している
  • 離婚により夫名義の自宅に妻と子どもが住み続ける(夫が途中で支払いを止める可能性がある)

現在は住宅ローンを滞納していなくても、近い内に滞納する可能性が高く、「早めに任意売却してもらったほうが良い」と判断されるかどうかが目安になります。

3−2 滞納なし以外で任意売却が認められないケースとは?

滞納していないという理由以外でも、下記のような理由で任意売却が認められないケースがあります。

3−2−1 住宅ローンの返済開始から日が浅い場合

ローンを組んでから短期間で返済不能になってしまう状況では、借り手の信用を大きく疑わざるを得ません。金融機関としては、任意売却は認められないケースがほとんどです。

3−2−2 住宅ローン残高が高額な場合

住宅ローン残高が高額で、売却価格を大きく上回る場合、自宅を任意売却しても多くの残債が生じることになります。このような場合、金融機関から認めてもらうのは難しくなります。

3−2−3 競売の期日が迫っていて売却活動を行う余裕がない場合

競売の予定日が近いため、売却活動を行う時間的余裕がない場合、一般的に金融機関との合意は難しいとされています。任意売却の活動期間は、一定の長さの期間が必要だからです。

3−2−4 連帯保証人・共同名義人の同意が得られない場合

連帯保証人や共同名義人の同意なしに、不動産を売却することはできません。これらの人たちとの人間関係がうまくいっていない場合、短い期間に同意を得ることは容易ではないでしょう。

4章 任意売却するときの注意点

任意売却が一般的な不動産売却と大きく異なる点に、売却後にローンが残ってしまうことがあげられます。ローンが残ることで、他にも影響が及びます。実行する前には、売却後どうなるのかをきちんと理解して、事前に準備をしておくことが重要です。

4−1 任意売却しても住宅ローンは残ってしまう

住宅ローンの残額よりも高い金額で自宅が売却できれば、ローンはなくなります。しかし、ほとんどの場合、任意売却をしても住宅ローンが残ってしまいます。住宅ローン契約時から年数が経つとともに、不動産の価値は下がっていくからです。住宅ローンの残債がある場合、任意売却ができたら終わりではなく返済義務が残るということは、頭に入れておく必要があります。

4−2 連帯保証人に連絡や請求がいく

任意売却をしてローンが残ってしまう場合、残った借金について連帯保証人にも請求がいきます。連帯保証人は返済について、基本的にご本人と同等の責任を負うことになるからです。そのため、ご本人が返済できない場合、連帯保証人が代わりに返済しなければならなくなります。連帯保証人に請求の通知が届く前に、直接連絡をして事情を説明しておくべきでしょう。

4−3 任意売却に慣れた不動産業者に依頼する

任意売却は、一般的な不動産売却と異なる特殊な売却方法です。担保を有する金融機関の承諾がないと売却はできず、不動産の売却価格も債権者である金融機関に決定権があります。このような理由から、任意売却を実行する不動産業者には、金融機関とスピーディーに話し合って売却を進めていける、専門の知識やノウハウが求められます。任意売却に慣れている、または任意売却を専門にしている不動産業者へ依頼することが大切です。任意売却を急ぐあまり、任意売却に慣れていない不動産業者に依頼してしまうことのないよう注意が必要です。

5章 任意売却を考える前に

住宅ローンの支払いが難しくなったからといって、すぐに任意売却を考えるのは得策ではありません。売却をしないで解決する方法があるかも知れないからです。どのような方法があるのか、考えてみましょう。

5−1 まずは金融機関に相談する

住宅ローンの支払いが難しいと感じたら、早めに対処することが重要です。まずは金融機関に、条件変更の相談をしてみましょう。条件変更というのは、支払いやすいように返済スケジュールを緩和してもらうことです。リスケ(リスケジュール)とも呼ばれています。

失業や病気により一時的に支払いが厳しくなったなど、金融機関が納得できる理由をきちんと説明すれば、了承してもらえる可能性が高いでしょう。ただし、条件変更の期間が終了してしまうと、これまで同様の返済額に戻ってしまいます。そのため、返済ができるようになる時期をしっかりと見据えて、期間や減額幅を決めていくことが重要になります。

5−2 住宅ローン以外の債務がある場合は、債務整理も視野に入れる

住宅ローンの支払いは厳しいが、他の金融機関での借り入れがない場合は、金融機関に条件変更の相談をすることで解決に向かう可能性が高くなります。しかし、住宅ローン以外にも債務がある場合は、専門家の力を借りることも一案です。

司法書士や弁護士に相談して、債務整理手続きをとる方法も視野に入れましょう。債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生の主に3つの手続きがあります。中でも住宅ローン特則付き個人再生という手続きを利用すると、住宅ローン以外の借金(カードローンや自動車ローン等)を大幅に圧縮することができます。住宅ローンはこれまで通り支払いながら、減額してもらった借金を決められた計画表どおりに支払っていく手続きです。

また、不動産を任意売却した後の残債について、専門家に相談した方がよい場合があります。不動産業者に依頼して任意売却だけを行ったとしても、その後の残債について自力で解決できないケースもあるからです。グリーン司法書士法人では、法律相談を伺う中で任意売却をする場合、任意売却に強い不動産会社をご紹介できる、司法書士 × 不動産のサポート体勢が整っています。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

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5−3 やってはいけないこと

住宅ローンやカードローンなどの借金が増えてしまい、もう簡単には解決できそうにないと考えたとき、やらないでほしいことがあります。

  • ひとりで抱え込んでしまう
  • 新たな借金をして借金を返そうとする
  • 現実から逃避しようとする

などです。これらの行為は、借金問題をさらに深刻化させてしまいます。なぜ問題がより深刻になってしまうのか、1つずつ考えてみましょう。

5−3−1 どこにも相談しないで1人で抱えてしまう

住宅ローンの支払いに悩んだら、まずは金融機関に相談してみることです。しかし、住宅ローン以外にも借金があって解決できそうにない場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。債務整理手続きをとることで支出を減らしたり、受任通知を送ることで返済が止まっている間に解決方法を検討したりすることができるからです。

どこにも相談しないで放置したい気持ちになるのもわかりますが、放置しても事態はどんどん悪くなってしまいます。1人で抱えこんでしまうことは避けましょう。

5−3−2 キャッシングやカードローンで新たな借入をする

目の前の住宅ローン支払いのために、新たにキャッシングやカードローンで借金を増やしてしまうという行為も絶対に止めましょう。一時しのぎために、住宅ローン利息よりはるかに高金利の借金を増やしてしまうだけに過ぎないからです。返済するためにお金を借りるという行為の積み重ねによって、多重債務に陥るケースは多いのです。

5−3−3 夜逃げや自殺

中には、夜逃げや自殺をすることによって、一から新たな生活をしたり現状から逃れたりしようと考える方もいらっしゃるかも知れません。しかし、夜逃げをしても新たな生活のために資金を得ることは簡単ではありません。信用情報に事故情報が登録されている・住所不定という状態では、借り入れすることも定職につくことも難しいでしょう。また、自殺も悩みの解決にはなりません。残されたご家族や連帯保証人になってくれた方に、悲しい思いをさせたり迷惑をかけたりするだけです。なにより、借金問題は通常の範囲内であれば、必ず解決できるお悩みです。一時的な感情で行動することは、絶対に避けましょう。

まとめ

任意売却は、基本的には住宅ローンを滞納していることが前提となります。しかし、現在滞納なしの状態でも、金融機関に認められる事情があれば、任意売却できるケースがあります。そのため、もし住宅ローンの返済に困ったらまずは金融機関に相談しましょう。早めに相談することで、さまざまな選択肢から解決方法を選ぶことが可能になります。

金融機関以外の相談先として、弁護士や司法書士の専門家があります。特に、住宅ローンだけでなく複数の業者からの借り入れによって支払いが困難になっているような場合には、専門家の力を借りることは大変有効です。

グリーン司法書士法人では、これまで7,000件以上の債務整理に関するご相談に対応してまいりました。初回相談は無料です。オンラインでのご相談にも対応していますので、お気軽にご相談ください。

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