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- 滞納している国民健康保険料の時効
- 国民健康保険の滞納によって起きること
- 滞納した国民健康保険の支払いが難しい場合の対処法
「滞納している国民健康保険がいつ時効を迎えるのか知りたい」
「時効まで待てば国民健康保険の支払いがなくなるのではないか」
借金や未払いの公共料金は、時効を迎えると支払い義務が消滅します。そのため、滞納している国民健康保険についても、上記のように考えている人がいるのではないでしょうか。
しかし、公の債権である国民健康保険はほかの例と異なり、基本的に時効が成立しません。本記事では国民健康保険の時効年数を説明した後、時効が成立しにくい理由を解説します。
また、国民健康保険の滞納によって起きること、支払いが難しい場合の対処法も紹介します。国民健康保険が支払えずに困っている人は、ぜひ参考にしてください。
目次 ▼
1章 国民健康保険を滞納した場合の時効は何年?
国民健康保険を滞納した場合、法律で定められている時効が適用されます。ただし、国民健康保険料もしくは国民健康保険税のどちらの方式で賦課するかは市町村に委ねられており、方式によって時効までの年数が異なる点に注意が必要です。
国民健康保険料と国民健康保険税に大きな違いはありませんが、時効の期間が異なるので、滞納している人は自分の住んでいる自治体がどちらの方式を採用しているかチェックしましょう。
また、冒頭でも述べた通り、国民健康保険は滞納から一定の期間を経過しても時効が成立しにくいです。ここでは、国民健康保険の時効期間や時効になりにくい理由を見ていきましょう。
1-1 国民健康保険料は2年
国民健康保険法によって定められている国民健康保険料の場合、2年で時効を迎えます。公的な債権である国民健康保険料は、時効期間の満了で支払い義務が消滅するのが特徴的です。
借金や家賃、電気代などの私的な債権は、時効の利益を受けることを配達証明付きの内容証明郵便で債権者に伝える時効の援用を行わなければなりません。
一方、国民健康保険料は時効を迎えた時点で支払い義務が消滅するため、時効の援用自体が不要です。
1-2 国民健康保険税は5年
地方税法が適用される国民健康保険税の場合、時効が成立するまでに5年かかります。法律上は国民健康保険税の方が上位の債権だと定められていて、国民健康保険料よりも時効期間が長いです。
ただ、加入者から見ると時効期間の長さに差がある程度で、それほど大きな違いはありません。そして国民健康保険税も公的な債権なので、国民健康保険料と同様に時効援用は不要で、5年が経過すると時効が成立します。
1-3 そもそも国民健康保険は時効が成立しにくい
国民健康保険料と国民健康保険税ともに、一定年数が経過した時点で時効が成立します。そのため、「援用が不要なら時効になりやすいのだろう」と考えている人がいるでしょう。
しかし、以下の2つの理由から国民健康保険は時効が成立しにくくなっています。
- 債権者が督促するだけで時効が更新される
- 自治体が時効が成立しないように努めている
国民健康保険は通常の債権と違い、債権者が督促した時点で時効が更新されます。自治体が保険料・保険税を支払うように請求している間は時効が更新されるので、基本的に支払い義務が消滅することはありません。
また、国民・住民の負担の公平性を保つために、定期的に督促を行って時効を更新しています。請求権が消滅しないように各自治体が努めているため、時効が成立することはほとんどないでしょう。
2章 国民健康保険の滞納によって起きること
国民健康保険の支払いは義務なので、滞納者には不利益なことが起こります。国民健康保険の滞納によって起きることは、以下の通りです。
- 延滞金が発生する
- 督促状が届く
- 保険を適用できなくなる
- 財産を差し押さえられる
それぞれ詳しく解説するので、国民健康保険を滞納している人は確認してください。
2-1 延滞金が発生する
国民健康保険を滞納してしまうと、納付期限の翌日から納付が完了した日までの日数に応じた延滞金の支払い義務が発生します。
延滞金の利率は納付期限の翌日から3か月以内までは年2.4%、納付期限の翌日から3か月以降は年8.7%に設定している自治体が多くなっています。また、延滞金の利率は定期的に変更されていて、現在の利率は令和4年1月1日から令和6年12月31日まで適用されるのが一般的です。
ただし、自治体によって利率が異なるケースがあるので、延滞金の金額を計算する際は居住地域のホームページを確認しましょう。
2-2 督促状が届く
国民健康保険を滞納した人に、最初に自治体から届くのが督促状です。時効が成立して保険料・保険税を回収できないことがないように、自治体は定期的に督促状を送付します。
また、支払い期日が記載されている督促状を受け取った後も、そのまま滞納し続けていると催告書が送られてくるでしょう。催告書の送付は、期限までに支払わなければ法的措置を取ることを意味し、督促状よりも支払いを強く求める姿勢が表れています。
2-3 保険を適用できなくなる
国民健康保険を滞納している期間が長くなると、保険を適用できなくなります。滞納期間に応じた処置を表にまとめているので、チェックしてみましょう。
滞納期間 | 処置 |
1年未満 | 有効期限が短い短期被保険者証に切り替え |
1年以上1年半未満 | 被保険者資格証明書に切り替え |
1年半以上 | 保険給付の停止 |
滞納期間が1年未満の場合、通常の保険証の代わりに有効期限が短い短期被保険者証が交付されます。通常の保険証の有効期間が1年間なのに対して、短期被保険者証は半年間しか利用できません。
そして滞納期間が1年を超えると、被保険者資格証明書に切り替わります。被保険者資格証明書で病院を受診した場合、窓口では医療費の10割の支払いが必要です。その後、自治体の役所で申請手続きを行うと、支払った医療費の保険者負担分(7割または8割分)が滞納している国民健康保険の支払いに充てられます。
なお、滞納期間が1年半以上になると保険給付が停止され、国民健康保険制度を活用できなくなります。医療費が全額自己負担になるうえに、特別療養費や高額療養費も受給できないため、病気や怪我の際にも病院で適切な診療を受けられないでしょう。
2-4 財産を差し押さえられる
滞納した国民健康保険の督促に応じずにいると、今後振り込まれる給料を含む財産が差し押さえられます。国民健康保険は税金と同様に裁判所を通す必要がないため、ある日突然財産を差し押さえられる可能性があるのです。
一般的には、生活必需品を除いて一定以上の価値がある財産が差押え対象です。イメージしやすいように、差押えの対象になるものとならないものの例を以下の表にまとめているので、ぜひ参考にしてください。
差押えの対象になるもの | 預貯金・現金・不動産・金融商品・自動車・骨董品・宝石 |
差押えの対象にならないもの | 食料・衣類・家具・書籍・印鑑・PC(仕事に必要なもの) |
3章 滞納した国民健康保険の支払いが難しい場合の対処法
国民健康保険を滞納したままでいると、延滞金が発生したり、保険を適用できなくなったり、財産を差し押さえられたりします。
多くの不利益が生じるのでなるべく早めに対応すべきですが、国民健康保険を支払う余裕がない人もいるでしょう。滞納した国民健康保険の支払いが難しい場合、以下の対処法を検討してください。
- 軽減・減免を申請する
- 分割払いへの変更を認めてもらう
- 社会保険に加入できる企業に入る
- 国民健康保険組合に加入する
- 借金がある場合は弁護士・司法書士に相談して債務整理を検討する
ここでは、それぞれの対処法の詳しい手順を解説します。
3-1 軽減・減免を申請する
国民健康保険の支払いが難しい場合、すぐに自治体の国民年金課に電話で連絡しましょう。一定以下の所得の人は所得の軽減、所得が減少した場合は保険料・保険税が減免されます。
国民健康保険は法定減額制度が定められていて、前年中の世帯所得が国の定める所得基準を下回っている人が申請すると、保険料が減額されるのです。令和5年度(2023年度)以降の所得基準と金額に応じた減額割合は以下の通りです。
前年中の所得が下記の金額以下 | 減額割合 |
43万円+[10万円×(給与所得者等の数-1)] | 7割 |
43万円+[(被保険者数+特定同一世帯所属者の人数)×29万円]+[10万円×(給与所得者等の数-1)] | 5割 |
43万円+[(被保険者数+特定同一世帯所属者の人数)×53.5万円]+[10万円×(給与所得者等の数-1)] | 2割 |
出典:神戸市「保険料の減額」
また、所得が減少したことで保険料を支払えなくなった人は減免を受けられます。保険料・保険税の減免の条件は以下の通りです。
- 震災・火災・風水害などを被災
- 退職・倒産・廃業・営業不振などに収入減少
- 障がいやひとり親
- 刑事施設収容
- 生活保護
そのほかの条件でも減免される可能性があるので、減免金額の確認も兼ねて国民年金課に相談してください。
3-2 分割払いへの変更を認めてもらう
支払いが難しいものの軽減・減免が認められなかった場合、自治会に分割払いの相談をしましょう。失業や病気などやむを得ない事情があれば、保険料・保険税の分納が認められるケースがあるためです。
窓口のほか電話でも対応している自治会が多いので、軽減・減免が難しい場合は分割払いも検討してください。
ただし、分納によって保険料・保険税の納付額が引き下げられるわけではない点に注意が必要です。支払うべき金額の不足分は、滞納扱いになることを把握しておきましょう。
3-3 社会保険に加入できる企業に入る
国民健康保険は個人事業主や年金受給者などが加入する保険制度で、被保険者は保険料・保険税の全額を負担しなければなりません。しかし、会社員が加入する社会保険は労使折半なので、保険料の半分を企業が支払います。
同程度の所得水準であれば、社会保険の方が負担額が小さくなるため、支払いに困っている人は社会保険に加入できる企業への転職を検討しましょう。
また、国民健康保険には扶養の概念がなく、収入のない配偶者や子どもの保険料を支払う必要があります。一方で、社会保険は世帯主が加入していれば、一定の収入以下の配偶者や子どもは扶養家族として扱われ、世帯主分の保険料で全員が保険に加入できます。
「週の所定労働時間が20時間以上」「2か月以上の雇用の見込みがある」などの条件を満たしていれば、アルバイトやパートでも社会保険に加入可能です。正社員として働くのが難しい場合は、アルバイトの求人サイトで社会保険完備と記載されている求人に応募しましょう。
3-4 国民健康保険組合に加入する
国民健康保険組合とは、特定の職業や業種に従事する人が組合員となる組織です。国民健康保険組合の組合員の保険料は給与によって変わらない固定制なので、支払いが一律になって保険料が安い傾向にあります。
ただし、国民健康保険組合の加入条件には業種や地域が定められていて、誰でも加入できるわけではありません。それぞれ加入条件を公開しているので、国民健康保険組合への加入を希望する場合は入れそうな組合がないか確認しましょう。
また、国民健康保険組合は国民健康保険と同様に、扶養の考え方がありません。そのため、収入のない配偶者や子どもも、保険料の支払いが必要です。
3-5 借金がある場合は弁護士・司法書士に相談して債務整理を検討する
国民健康保険を滞納している人の中には、借金が原因で返済に困っている人もいるでしょう。借金問題が解決すると保険料・保険税の支払いが楽になるので、弁護士・司法書士に相談して債務整理を検討してください。
自己破産や任意整理といった債務整理をおこなうことによって、借金がなくなったり、返済額を減額できたりするためです。国民健康保険の滞納は債務整理の対象外ですが、ほかにも借金がある場合は債務整理をすることによって支払えるようになるでしょう。
ただし、個人で債務整理を行うと手続きがうまくいかずに、借金問題の解決が遠のく恐れがあります。そのため、債務整理を検討している人には、弁護士・司法書士への相談がおすすめです。
グリーン司法書士法人では、一人ひとりの状況に合った債務整理の方法を提案し、スムーズな借金問題の解決に努めています。オンライン相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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まとめ
国民健康保険料は2年、国民健康保険税は5年の時効が設けられています。そのため、滞納してから一定の年数が経過すると、国民健康保険の支払い義務は消滅します。
しかし、滞納している国民健康保険は自治体が督促した時点で時効が更新されるので、基本的に支払い義務が消滅することはありません。そればかりか延滞金の支払いや財産の差押え、保険の適用不能など、被保険者に不利益が生じます。もし支払いが難しい場合は、以下の対処法を検討してください。
- 減免・猶予を申請する
- 分割払いへの変更を認めてもらう
- 社会保険に加入できる企業に入る
- 国民健康保険組合に加入する
- 借金がある場合は弁護士・司法書士に相談して債務整理を検討する
グリーン司法書士法人では、借金問題を解決するために債務整理のサポートをしています。初回相談は無料で、オンライン相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
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