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会社経営者は会社の債務の連帯保証人になっているケースが多いです。
そのため、会社が破産してしまうと会社経営者も自己破産するのが原則になっています。
自己破産の手続き中は再び起業することは難しいですが、自己破産後は職業の制限もなくなるので起業可能です。
ただし、自己破産すると新たに借入や融資が難しくなるなどの理由から起業をしようとしても資金調達が思うように進まないかもしれません。
そのため、自己破産後の起業を成功させるには融資を受けなくてすむように、自己資金を貯めて起業する、共同経営者を見つけるなどの工夫が必要です。
本記事では、自己破産をした後に起業はできるのか、起業を成功させる方法をわかりやすく解説していきます。
自己破産については、下記の記事で詳しく解説していますのでご参考にしてください。
目次 ▼
1章 自己破産の後も起業はできる
結論から言うと、自己破産後も起業は禁止されていません。
自己破産の手続き中には一部生活や職業に制限がありますが、自己破産が完了し免責が決定すると復権し法律上は全ての制限が解除されます。
そのため、自己破産の手続きが完了し免責が確定すれば起業や個人事業主として働くことは可能です。 ただし、自己破産後は融資を受けることが難しいため、起業や事業を行う際の資金繰りに苦しむ恐れはあるでしょう。
裁判所が借金の返済義務を免除すると決定することです。
ただし、自己破産の手続き中は起業ができませんし、自己破産後も融資が受けられないなどの問題が発生します。
詳しく見ていきましょう。
1-1 自己破産の手続き中は一部職業に就けず起業できなくなる
自己破産の手続き中は、以下のような一部職業に就くことができません。
- 弁護士、弁理士、司法書士、税理士、公認会計士などのいわゆる「士業」と呼ばれる資格
- 警備員
- 生命保険募集人
- 建築業を営む者
- 質屋を営む者
- 貸金業者として登録している者
- 商工会議所や金融商品取引業、信用金庫、日本銀行、労働派遣業など団体企業の役員
- 会社の取締役・執行役員・監査役
会社の取締役や執行役員になることもできないので、手続き中の起業は現実的ではありません。
1-2 自己破産をすると取締役は退任になる
自己破産をすると代表取締役は退任になってしまいます。
取締役と会社は民法上の委任契約で結ばれていますが、自己破産をすると契約関係は終了してしまいます。
会社法以前の民法では、自己破産をした人は取締役に就任できない決まりがありました。
しかし、2006年に民法から会社法にかわったことで、自己破産後の取締役就任に関しては制限がなくなりました。
1-3 自己破産によって財産が没収される
自己破産をすると20万円を超える財産は、没収されてしまいます。
また、20万円を超えない財産だとしても合計99万円を超える現金は回収され、債権者に分配されます。
1-4 自己破産後は借入や融資が難しくなる
自己破産をすると、一定額以上の財産を回収されるだけでなく、新たな借入や融資で開業資金を調達することが難しくなります。
また、保証人や保証会社を用意しなければ事業用のオフィスや店舗を借りることも難しいです。
自己破産などの債務整理を行うと、信用情報機関にブラックリストとして登録されてしまいます。
ブラックリストに登録されると、5〜10年間は新たな借入や融資ができません。
借入や融資で起業資金を調達するのは難しいと考えておきましょう。事業をする上で融資を受けられないというのは致命的です。
本章で解説したように、自己破産後の起業は理論上は可能ですが、実際のところ、開業資金を用意するのが難しい側面があります。
次の章では、自己破産後の企業を成功させる方法、開業資金を用意する方法を紹介していきます。
2章 自己破産後の起業を成功させる方法
先ほどの章で解説したように、自己破産後の起業は開業資金を用意できるかが重要となってきます。
自己破産後に開業資金を用意し、起業を成功させるには下記の4つの方法があります。
- 自己資金を貯めて起業する
- 初期費用を抑えて起業する
- 共同経営者を見つける
- 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の利用を検討する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 自己資金を貯めて起業する
先ほど解説したように、自己破産の手続き後には財産が没収されてしまいますがその後の貯金は問題ありません。
そのため、起業に必要な資金を貯めてから開業すれば借入や融資をせずに経営を始められます。
ただし、新たに事業を開始する業種によってはかなりの開業資金が必要です。
2-2 初期費用を抑えて起業する
自己破産後に起業するには、自分で費用を用意しなければなりません。
少しでも早く起業するのであれば、初期費用が少ない業種で事業を行うのが良いでしょう。
また、自己破産後は保証人を用意する、保証会社を用意しなければオフィスを借りることも難しくなります。
そのため、初期費用を抑えるためにも実店舗が必要ない業種で起業するのもおすすめです。
2-3 共同経営者を見つける
起業にあたり共同経営者を見つけておけば、自分の代わりに借入や融資を行なってもらえます。
共同経営者の信用情報がブラックリストに載ってなければ検討しても良いでしょう。
2-4 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の利用を検討する
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)を利用すれば、自己破産をした人でも融資を受けられます。
再挑戦支援資金については、次の章で詳しく解説していきます。
3章 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)とは
再挑戦支援資金は、自己破産後でも利用できる融資制度です。
利用要件や融資限度額・返済期間、利用時の注意点について詳しく見ていきましょう。
3-1 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の利用要件
再挑戦支援資金を利用するには、以下のすべてを満たす必要があります。
- 廃業歴等がある個人または経営者が営む法人である
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みである
- 廃業の理由・事情がやむを得ないものである
あくまでも、再挑戦支援資金は一度事業に失敗した人が再びチャレンジするための制度です。
そのため、上記に書かれている通り、自己破産をしている人も利用できます。
3-2 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の融資限度額・返済期間
再挑戦支援資金の融資限度額と返済期間は、それぞれ下記の通りです。
対象者 | 個人事業主向け | 中小企業向け |
融資限度額 | 7,200万円 (運転資金は4,800万円) | 7億2,000万円 (運転資金は2億5,000万円) |
返済期間 | 設備資金20年以内運転資金7年以内 | 設備資金20年以内運転資金7年以内 |
上記のように、個人事業主でも中小企業であっても返済期間は7年(設備資金は20年)となっており余裕があります。
3-3 再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)を利用するときの注意点
自己破産後に再挑戦支援資金の融資を受ける場合には、下記の点に注意が必要です。
- 自己破産の免責を確定後に制度を利用する
- 過去7年以内に廃業履歴がある場合に制度が利用できる
- 日本政策金融公庫による審査を通過しなければならない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-3-1 自己破産の免責を確定後に制度を利用する
先ほど解説したように、再挑戦支援資金は過去の廃業による債務を整理しておかなければなりません。
3-3-2 過去7年以内に廃業履歴がある場合に制度が利用できる
また、再挑戦支援資金は廃業から7年以内に制度を利用する必要があります。
廃業からすでに7年経過している場合には、事故情報が削除された後に銀行などで借入を行いましょう。
3-3-3 日本政策金融公庫による審査を通過しなければならない
再挑戦支援資金は、日本政策金融公庫の制度であり審査を通過しなければなりません。
審査時には、主に以下の項目を見られます。
- 事業計画
- 収支計画
- 返済能力
自己破産後に起業や再挑戦支援資金の利用を検討している場合には、制度の利用手続きや審査に向けてすべきことを自己破産を依頼した司法書士や弁護士に相談しておきましょう。
まとめ
民法から会社法に法律が変わったことによって、自己破産後も取締役に就任し起業できるようになりました。
とはいえ、自己破産時には必要最低限以外の財産を没収されてしまう、手続き後は借入や融資を受け入れられなく等の理由から開業資金を用意するのは大変です。
自己破産後の起業を成功させるには、資金を貯めてから起業する、再挑戦支援資金を利用するなどの方法があります。
再挑戦支援資金とは、事業に失敗し自己破産などをした人を対象にした融資制度です。
再挑戦支援資金は、日本政策金融公庫による審査があるので制度利用を検討している人は、自己破産を依頼した司法書士や弁護士に相談しておくと良いでしょう。
なお、すでに事業をしている方が破産する場合、会社と個人と両方を一気に破産させることとなり、この場合には基本的には弁護士が対応すべき問題となります。
グリーン司法書士法人では、自己破産を始めとした債務整理に関する相談をお受けしています。
弁護士へ依頼が必要になったケースでは、信頼できる弁護士の紹介も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。
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よくあるご質問
- 自己破産した人は起業できる?個人事業主になれる?
- 自己破産後も起業は禁止されていませんし、個人事業主として仕事も可能です。
自己破産の手続き中には一部生活や職業に制限がありますが、自己破産が完了し免責が決定すると復権し法律上は全ての制限が解除されます。
- 起業して破産したらどうなる?
- 自己破産をすると代表取締役は退任になってしまいます。
取締役と会社は民法上の委任契約で結ばれていますが、自己破産をすると契約関係は終了してしまいます。
起業した人の自己破産について詳しくはコチラ
- 自己破産後も事業は継続できる?
- 自己破産をすると事業に使用する資産や設備も含めて、没収され借金の清算に充てられます。 そのため、現実的には自己破産をしたら事業を継続できない可能性が高いでしょう。