社会保険料が払えないならまず相談!滞納すると差押え・倒産リスクも

司法書士山田 愼一

監修者:グリーン司法書士法人   山田 愼一
【所属】東京司法書士会 登録番号東京第8849号 / 東京都行政書士会所属 登録番号第10262380号 【保有資格】司法書士・行政書士・家族信託専門士・M&Aシニアエキスパート 【関連書籍】「世界一やさしい家族信託」著者・「はじめての相続」監修など多数

借金返済の知識
社会保険料が払えないならまず相談!滞納すると差押え・倒産リスクも

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 この記事を読んでわかること
  • 社会保険が払えない場合に生じるリスク
  • 社会保険を滞納してから差押えまでの流れ
  • 社会保険を払えない場合の対処方法

社会保険は健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険からなり、従業員の生活を守るための制度です。

社会保険料は会社と従業員で折半し、会社が責任をもって支払っていくものです。しかし、どんな大企業であっても事業の悪化によって払えなくなる事態に追い込まれないとは限りません。

今回は、社会保険料が払えない場合にどうなるのか、どのように対処していけばいいのかについて詳しく解説します。

1章 社会保険とは

社会保険は、病気やケガをしたときや失業、老後など、さまざまな生活のリスクに備えるための制度です。保険料の支払いは会社と被雇用者で折半していますが、毎月給料から保険料分を天引きして会社からまとめて支払います。

社会保険の種類は次の5種類です。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

このうち、雇用保険と労災保険をあわせて「労働保険」と呼び、健康保険・厚生年金保険・介護保険(狭義での社会保険)と分ける場合もあります。

狭義での社会保険と労働保険は手続きを管轄している部署がそれぞれ異なり、社会保険は年金事務所、労働保険は労働基準監督所が担当します。

1-1 社会保険の加入対象

法人事業者や5人以上の従業員がいる事務所・商店などの個人事業所であれば、社会保険に加入することが義務付けられています。

個人事業所でも、従業員が5人未満なら加入は任意です。また、以下の職種では5人以上従業員がいても、厚生労働大臣へ任意適用を申請して認可されると任意加入が認められます。

  • 農業・林業・水産業
  • 理容・美容業
  • 旅館・ホテル
  • 飲食店
  • クリーニング店
  • 社会保険労務士
  • 弁護士
  • 税理士
  • 神社・寺

2章 社会保険料が払えないために生じるリスク

社会保険は加入対象になっていれば必ず加入しなければなりません。しかし、物価高の影響で仕入れ値が上昇したり、あるいは売上が落ちたりして社会保険料の支払いが困難になることもあるでしょう。

ここでは、社会保険料が払えなければどのようなリスクがあるのかについて詳しく解説します。

2-1 金融機関からの融資が受けられなくなる

社会保険料を払えず滞納すると、その情報は引き落とし口座に設定している金融機関に共有されます。さらに、取引先や取引金融機関に取引照会状が送られ、社会保険料を滞納していることを知られてしまうこともあります。

経営資金を融資してもらいたくても、滞納しているということは社会保険料が払えないほど経営状態が悪いと判断され、融資申請が通らない可能性が高いのです。

なお、取引がなかった金融機関に融資を申し込んでも、提出書類の一つに社会保険料納入証明書を求められる場合があります。さらに、会社の決算書からも社会保険料の未納は判明するため、滞納を隠したまま融資を受けるのはやはり難しいといえるでしょう。

2-2 取引先との関係が悪くなる

社会保険料を払えずに滞納していることが取引先に気づかれると、取引先からの信用を失うリスクもあります。

経営状態の悪さが取引の不安材料になるうえ、滞納によって差し押さえられると倒産する危険性もあるので、取引先からは契約を切られてしまうかもしれません。

2-3 補助金・助成金が受けられない

社会保険料のうち、雇用保険と労災保険からなる労働保険を払っていなければ、助成金を申請しても受けられません。それは、助成金の財源が雇用保険であるためです。

労働保険は払っているが、健康保険や厚生年金保険などの社会保険は滞納しているという場合でも、補助金や助成金の審査に落ちてしまう可能性は高くなります。審査の際には企業の経営状況なども調査されるため、社会保険を滞納していると経営状況も悪いに違いないと判断されるでしょう。

2-4 社会的信用を失う

社会保険料の支払いは公的な義務です。その義務を欠いたことが周囲に知られると、社会的信用を失うのは想像に難くありません。

社会的信用を失えば、扱っている商品やサービスにも信用が薄れてしまうために離れていく顧客や取引先は多いでしょう。失った信用は、取り返すまでにかなりの時間がかかります。

2-5 従業員の離職をまねく

社会保険は従業員にとって社会保障を受けるために必要なものです。

勤めている会社が社会保険を払っていないことが発覚すれば、社会保障が受けられなくなるのではないかという不安をあおり、離職を選ぶ従業員が増えるでしょう。

また、社会保険料が払えないのはすなわち業績が悪化しているからだと受け取られ、従業員に給料を払えなくなるのではないかという不安も同時に抱かせます。

2-6 滞納すると延滞金が課せられて負担がさらに大きくなる

社会保険料の支払いが1日でも遅れると、過ぎた期間に対して延滞金が課せられます。

もしも滞納の可能性があるなら早めに手を打たなければ、滞納した期間に応じて延滞金が課せられるので支払いの負担は大きくなります。ただし、滞納後に送付される督促状へ記載された期日までに支払えば、延滞金はかかりません。

社会保険料の延滞金

延滞金の計算式は以下に示す通りです。

延滞金 = 納期限の翌日から3か月を経過する日までの延滞金(A)+ 納期限から3か月を経過する日の翌日から完納した日までの延滞金(B)

また、(A)と(B)の計算式は以下です。

(A)保険料額(1,000円未満切捨て)× 延滞金の割合(a)× 日数(納期限から完納した日あるいは3か月経過まで)÷ 365日
(B)保険料額(1,000円未満切捨て)× 延滞金の割合(b)× 完済までの日数(3か月を経過した日の翌日から)÷ 365日

(a)年7.3%、あるいは延滞税特例基準割合+1.0%のどちらか低い割合
(b)年14.6%、あるいは延滞税特例基準割合+7.3%のどちらか低い割合

延滞税の税率は固定されていません。延滞税特例基準割合は毎年見直されるため、年によって延滞金が変わる可能性があります。

参考:延滞金について/日本年金機構

2-7 事業が続けられなくなる

社会保険料の滞納が続くと、最終的に財産の差押えを受けます。会社が所有する不動産や設備、売掛金などを差し押さえられることになるため、事業を続けるのが難しくなるでしょう。

最後には廃業や倒産も検討しなければなりません。

3章 社会保険料を滞納して差し押さえられるまでの流れ

社会保険料は、支払期日を一日でも過ぎると滞納になります。滞納後、督促を受けてもそのままにしていると最終的に会社の財産は差し押さえられます。

ここでは、滞納から差押えまでの具体的な流れについて解説します。 

STEP1 郵便で督促状を送付される

納付期限までに社会保険料が支払われなければ、滞納して1か月前後で督促状が郵送されます。

督促状とともに納付用紙も同封されており、そこに記載された指定期限までに支払えば延滞金はかかりません。

STEP2 電話で督促される

督促状を無視していると、管轄の年金事務所から電話で督促されるようになります。その際に支払いが難しいことを相談すれば、納付指導を受け、納付計画書を立てたうえで分割払いでの支払いが認められる場合があります。

督促は電話だけでなく、年金事務所の職員の訪問を受けたり年金事務所へ呼び出されるケースもあります。

納付指導に応じなかったり、完納が難しいほど高額の場合は滞納処分をうけることになるのです。

STEP3 財務調査や強制捜査を受ける

滞納処分が決定すると、年金事務所の職員から財産状況の調査を受けます。

聴き取りで財産調査される他、金融機関へ預金残高の確認や売掛金の債権があるかどうか、不動産の有無など財産とみなされるものについてすべて洗い出されます。

財務調査の際、非協力的な行動や故意に財産を隠す行為があった場合は、調査よりも強制力のある強制捜査に発展することもあるので注意しましょう。

STEP4 財産の差押えを受ける

財産調査の結果を見て、差押え可能な財産を判別した後、延滞金を含んだ金額分を差し押さえられます。

差押えは即現金化できるものから優先的に行われるため、預貯金や売掛金が差し押さえられるケースが多いです。

差押えを受けると、事業に必要な資金が減ってしまうのはもちろん、他にもさまざまな悪影響が出ます。

例えば預貯金を差し押さえられれば取引先の銀行にバレて今後融資を受けられなくなる可能性があるなど、差押えされるとその事実を銀行や取引先に隠し通すのは難しいといえるでしょう。

4章 社会保険料を払えないときの対応策

社会保険料を払えなければ、事業の進退を左右するほどのリスクを被ることになります。しかし、突然の災害や社会情勢の変化によって急に業績が悪化し、社会保険料が払えなくなってしまう可能性はどの会社でもゼロではありません。

この章では、払えなくなるほど追い詰められたときに、どのような対応策をとるべきかについて解説します。

4-1 年金事務所・労働基準監督署へ相談する

社会保険料が払えないのがわかった時点で、支払期限前であってもすぐ関係各所へ相談しましょう。もし滞納した後だとしても、誠意をもって相談することが大切です。

なお、健康保険・厚生年金・介護保険の場合は年金事務所、雇用保険・労災保険は労働基準監督所へ相談しましょう。

社会保険料を払えない旨を相談すると、延滞金がある場合はそれも含めて毎月支払い可能な金額を設定し、分割払いで払っていくことになるケースがほとんどです。

支払いの猶予制度には、以下の2種類があります。

  • 換価の猶予
  • 納付の猶予

詳しくは以下で解説します。

4-1-1 換価の猶予を申請する

滞納期間が納付期限から6か月以内なら、換価の猶予を申請できます。

社会保険料を納付することで事業の継続が困難になる場合、納付の誠意があると認められれば、換価の猶予申請書を提出し、受理されれば分割での支払いが認められます。

納付期限から6か月以上滞納している場合は、年金事務所へ分割納付計画書を提出して交渉することになります(職権型換価の猶予)。ちなみに換価とは差押えた財産を金銭に代えることを指し、6か月以上滞納している場合は差押えの猶予を求める意味合いが強いといえるでしょう。

こちらも認められれば、分割納付計画書にしたがって分割払いしていくことになります。

4-1-2 納付の猶予を相談する

災害や盗難、病気、貸倒れなどで社会保険料の納付が難しくなった場合は、年金事務所で相談のうえ、納付の猶予を申請可能です。受理されれば、延滞金の全額あるいは一部が免除された金額を分納していきます。

申請の際には、災害証明書など納付困難に陥った原因が生じた事実を確認できる書類の添付が必要です。

4-2 会社を倒産・解散させる

社会保険料を分割で支払っていくめどもたたないほど業績が悪化している場合は、会社を手放す選択肢もあります。

法人の場合、倒産・解散すれば法人格が消滅するため、社会保険料の支払い義務もなくなります。いわばチャラになりますが、そのために従業員が社会保障を受けられなくなるということもありません。

ただし、個人事業主や合同会社の代表社員などには支払い義務が残ります。

会社の倒産・解散を検討する方は、こちらの記事も参考にしてください。

5章 会社が社会保険料を払えず未納でも従業員には影響ない 

社会保険に加入している会社が保険料を滞納して未納の状態でも、あくまで支払義務があるのは会社なので従業員に影響はありません。

未納の期間があるからといって、厚生年金が減額することもないでしょう。ただし、社会保険料が負担になるからといって社会保険の資格喪失届を提出していた場合は、その期間の分だけ厚生年金受給額が減ります。

6章 社会保険料が払えないことがわかった時点ですぐに相談しよう

社会保険料を払うのが厳しいことに気づいた時点で、まずは年金事務所や労働基準監督所へ相談しましょう。支払えないのは毎月の借金返済が理由ならば、借金問題を解決することで社会保険料の支払いが可能になるかもしれません。

グリーン司法書士法人では、借金問題解決のご相談を承っております。必要ならば債務整理の手続きも行いますので、借金で社会保険料のお支払いが難しいとお悩みの方は、ぜひグリーン司法書士法人へお問い合わせください。

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