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- ハードシップ免責とはどのような制度か
- ハードシップ免責が認められるための4つの要件と判断ポイント
- 申立ての流れや主な必要書類
- 申立て前に検討すべき対応策やしてはいけない行動
個人再生とは、裁判所の認可を受けて、返済すべき借金を大幅に減額できる手続きです。住宅を守りながら生活を立て直せる可能性もあり、多くの方が利用しています。
しかし、再生計画が認可された後に、思いがけない出来事に直面し返済が続けられなくなることがあります。「もう一度立て直そう」と決意して始めた返済が続けられなくなると、不安や焦りは大きくなるでしょう。そのような場合に検討できる制度のひとつが「ハードシップ免責」です。一定の要件を満たせば、返済の途中であっても残りの借金の支払いが免除される可能性があります。
今回は、ハードシップ免責の内容や手続きの流れ、申立て前に確認すべきポイントなどを解説します。
目次 ▼
1章 ハードシップ免責とは
ハードシップ免責とは、個人再生の再生計画に基づく返済を一定程度行った後、やむを得ない事情によって計画どおりの支払いができなくなった場合に、残りの債務について免責(支払い義務の免除)を受けられる可能性がある制度です(民事再生法第229条3項)。
たとえば、次のような、債務者に責任のない事情により返済継続が極めて困難になった場合に、例外的に残債務の免責を認めるのがハードシップ免責です。
- 勤務先の倒産や解雇による収入の大幅減少
- 病気やけがによる長期療養
- 家族の介護による就労困難
- 自然災害による生活基盤の喪失
通常の個人再生との違いは次のとおりです。
| 通常の個人再生 | ハードシップ免責 | |
|---|---|---|
| 返済 | 再生計画どおり完済が必要 | 一定額支払後、残額免除の可能性 |
| 要件 | 計画どおり履行 | 要件を満たす必要あり |
| 免責が認められる可能性 | 原則どおり履行すれば確実 | 例外的制度のため厳格 |
2章 ハードシップ免責の要件は4つ
ハードシップ免責は、再生計画どおりの返済が難しくなったからといって、すぐに認められるものではありません。次の4つの要件をすべて満たした場合にのみ適用されます。
2-1 債務者に責任のない事情で再生計画通りの返済が極めて困難になった
最も重要なのが、「債務者に責任のない事情」であることです。たとえば、重病で長期間入院せざるを得ない状況になった場合や、会社の倒産やリストラにより失業し再就職の努力をしてもどうしても再就職ができない場合などです。
一方で、自己都合退職して収入が途絶えたなどの事情では、債務者に責任のない事情とは認められにくいでしょう。
2-2 借金総額の4分の3以上を返済している
ハードシップ免責が認められるためには、再生計画に基づく弁済額の4分の3以上をすでに支払っていることが必要です(当初の借金総額の4分の3以上ではない)。
僅かな返済で免責が認められてしまうと、債権者が一方的に損失を被ることになってしまいます。誠実に返済を続け、客観的に見ても「相当程度の努力を尽くした」と判断できることが前提となります。
2-3 ハードシップ免責の決定が債権者の一般の利益に反しない
個人再生における最低弁済額は、債務者が仮に自己破産をした場合に債権者へ配当される金額を下回ってはいけないという規則があります。これを「清算価値保障の原則」といいます。
- ◆清算価値保障の原則とは?
- 再生手続きにおいては、債務者が保有する財産の合計額に相当する金額(清算価値)を、最低限弁済する必要があるという原則。
そのため、仮に前章2-2の要件(再生計画に基づく返済総額の4分の3以上の返済)をクリアしていても、それまでの返済額が清算価値の金額に達していない場合は、ハードシップ免責が認められないことになります。
清算価値については、こちらの記事でも解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
2-4 再生計画を変更しても支払いの継続が困難である
個人再生手続きでは、状況に応じて「再生計画の変更」という制度があります。
しかし、収入が回復する見込みが立たなかったり、返済期間を延長しても支払い原資が確保できなかったりするなど、計画を変更しても支払いが困難で解決に結びつかない場合があります。また、再生計画変更自体が困難なケースもあります。
このような場合には、再生計画を変更しても支払いの継続が困難であると認められる可能性があります。
3章 ハードシップ免責を手続きする流れ・必要書類
ハードシップ免責の申立て手続きは、個人再生の手続きをした裁判所に申し立てます。大まかな流れは、次の通りです。
- 専門家へ相談(再生計画変更の可否やハードシップ免責の要件について確認)
- 申立書を作成
- 裁判所へ申立て
- 個人再生委員の選任
- 債権者の意見聴取
- 免責の決定
<主な必要書類>
- ハードシップ免責申立書
- 診断書や離職届、罹災証明書、陳述書等(債務者に責任がないことの証明)
- 返済状況一覧表、振込依頼書、領収証等(4分の3以上の弁済があることの証明)
- 清算価値算出シート、財産目録等
また、手続きに必要な費用としては、申立書に貼付する収入印紙(1000円程度)の他に、裁判所予納金、個人再生委員の報酬などがありますが、裁判所ごとに運用が異なります。
ハードシップ免責の申立ては手続きが複雑な上、適切な証拠資料が必要です。そのため、申し立てする際には、専門的知識を持つ司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
4章 ハードシップ免責を申し立てる前にすべきこと
やむを得ない事情によって再生計画どおりの返済が難しいと感じたとしても、すぐにハードシップ免責の利用を検討するのは慎重であるべきです。
というのも、ハードシップ免責は申立ての要件が厳しく、あくまで最終手段として位置づけられている制度だからです。誰にでも容易に認められるものではないため、申立てを行う前に、ほかに取り得る解決策がないかを十分に検討する必要があります。
この章では、申立て前に確認しておきたい2つのポイントについて解説します。
4-1 再生計画案を延長する
やむを得ない事情により返済が難しくなった場合でも、原則3年とされている返済期間を、最長5年まで延長できる可能性があります。たとえば、一時的な収入減にとどまるようなケースでは、返済期間を延ばすことで家計を立て直せることもあります。
もっとも、小規模個人再生では、一定数の債権者が再生計画案の変更に反対すると、変更が認められない場合があります。この点には十分注意が必要です。
4-2 債権者と交渉する
勤務先の倒産や病気など、急に生じた事情によって借金の返済が難しくなった場合には、まず債権者へ事情を説明し、相談することが大切です。状況によっては、一時的な調整に応じてもらえる可能性もあります。
特に、これまで誠実に返済を続けてきた実績がある場合には、一定の配慮を受けられるケースもあります。何も連絡せずに滞納してしまうよりも、早めに事情を伝えるほうが、結果として柔軟な対応につながりやすいといえるでしょう。
もし、債権者と直接話し合うことに不安を感じる場合は、専門家を通じて対応することをおすすめします。専門家が間に入ることで、適切に交渉を進めることができるでしょう。
5章 再生計画案通りの返済が難しくなったときにしてはいけないこと
返済が難しくなると、強い不安を感じたり、精神的に追い詰められたりすることもあるでしょう。しかし、そのような状況で誤った対応をしてしまうと、これまで積み重ねてきた努力が無駄になってしまうおそれがあります。
この章では、特に注意して避けるべき行動について確認していきます。
5-1 債権者に連絡せず放置する
再生計画どおりに返済が行われないと、債権者の申立により手続きが取り消される可能性があります。
- ◆民事再生法
(再生計画の取消し)第百八十九条 - 再生債務者等が再生計画の履行を怠った場合、裁判所は再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。
1度の支払い遅れで、債権者が再生計画取消しを申し立てるとは限りませんが、返済が難しいと分かった時点で何も連絡をしないままでいるのは非常に危険です。
期日に間に合わないと思ったら、できるだけ早く債権者へ連絡し、返済が遅れる理由と支払える見込みを説明しましょう。延滞への対応は、債権者によりますが誠実に事情を説明することで理解を得られる場合もあります。
最も避けるべきなのは、債権者に連絡をせず放置することです。無断で延滞状態が続けば、再生計画の取り消しだけでなく、再生手続きが終了してしまうリスクもあります。
5-2 闇金・個人間融資を利用する
返済が難しくなったときに、「ブラックでも借りられます」と宣伝している業者や、SNS上での個人間融資に頼るのは絶対に避けましょう。こうした形でお金を貸しているのは、いわゆる「闇金」と呼ばれる違法業者である可能性が高いためです。
闇金を利用すると、法外な利息によって借金が一気に膨らんだり、執拗で厳しい取立てを受けたりするおそれがあります。その結果、精神的な負担もさらに大きくなり、状況は一層悪化してしまいます。さらに、提供した個人情報が悪用され、思わぬトラブルや犯罪に巻き込まれる可能性も否定できません。
6章 再生計画の返済に不安を感じたら早めに専門家へ相談を
個人再生後の返済が難しくなっても、解決策がゼロというわけではありません。ハードシップ免責という制度も、そのために用意されています。
ただし、ハードシップ免責の要件は非常に厳しく、認められるケースはごくわずかです。そのため、過度な期待で判断を誤ると取り返しがつかなくなる可能性もあります。
要件を満たさない場合には、早めに他の対処法を検討する必要があります。返済が難しいと感じた時点で、できるだけ早く専門家へご相談ください。
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