
「父や母が亡くなったら具体的にいつまでに何をしなければいけないのか?」
「忘れるとまずい手続きって何なのかちゃんと把握していない・・・」
このように、生きていれば必ずいつかは訪れる「親の死」
実際にその時が来た際、あなたは何をどういう手順で進め準備すればいいのか把握できているでしょうか?
実際、この記事を書いている私自身も父の死を経験し、亡くなった後の忙しさを非常によく覚えています。
その際に驚いたのが、実際に親が亡くなった後から四十九日までは”家族の死という現実に向き合う間もなく様々な手続きと判断がどんどん要求される”という事です。
そんな状況でゆとりなくバタバタと四十九日を終え、死後数か月たった頃に、父の友人からきた1本の電話。
内容は「お父さんの焼香をさせてほしい」とのことで、後日我が家を訪ねて来られました。
その時に父の友人から言われた「お父さんにはお世話になったので葬儀に出たかった」の一言。
何気ない一言ですが、その時私はとても申し訳ない気持ちになりました。
「父が亡くなった時にゆとりをもって必要な手続きをこなし、父が葬儀に呼んで欲しい人の名前、連絡先にまで気を配れていれば・・・」と今も後悔が残ります。
そこで本日は、司法書士である筆者がこの記事を読んでいるあなたに同じ様な後悔をさせない為にも家族が亡くなった後、何を・どのタイミングで・どうすればいいのか・をわかりやすく解説していきます。
いざという時のためにぜひ保存してお役立てくださいね!
目次
第1章 親が亡くなった1日目から四十九日までの流れ
1日目 親が死亡した日
①親が亡くなられたらすぐに死亡診断書をもらいましょう。
死亡診断書は亡くなられた病院の医師や主治医が発行します。
・自宅で亡くなられた場合
→かかりつけのお医者さんに来ていただいて死亡診断書を書いてもらいましょう。
・特に持病等も無く死因不明で自宅で亡くなられた場合
→何も触れずにまずは警察に連絡しましょう。
死亡診断書は市区町村役場に死亡届を提出する際や、死亡保険金請求に必要になります。
死亡診断書は死亡届の申請書に記載される事がほとんどですので死亡届を提出すると戻ってきません。
必ずコピーを複数枚取得しておきましょう。
保険の請求が複数の場合はその数だけコピーが必要になります。
②葬儀社を決めましょう。
漫然と病院紹介の葬儀社を選ばずに、担当者の印象が良くて費用の説明をしっかりとしてくれる葬儀社を自分で選びましょう。社葬などの大きめの葬儀をする場合は、名前の通っている葬儀社がお薦めです。
葬儀規模一覧表
葬儀規模 | 内容 |
直葬(10人内位) | 臨終後火葬場の安置室へ直接搬送して、その場でお別れを告げる。 |
家族葬(30人内位) | 家族中心の小規模な葬儀。 |
一般葬(50人以上) | 故人の関係者の他、遺族の会社の関係者等も参列する。 |
社葬(大規模) | 会社の役員等が亡くなった場合にする大規模な葬儀。 |
※自社調べ
③遺体の搬送
遺体の安置場所を決めなければなりません、病院の安置室に安置できるのは通常数時間ほどです。自宅に安置する場所があれば自宅に搬送し、スペースが無い場合は葬儀社の安置場に搬送してもらうこともあります。
④お通夜・お葬式の打合わせ
葬儀担当者と、喪主や受付役などの役割を決めましょう。この時に死亡診断書を葬儀会社に渡して、死亡届や火葬許可証の手続きを頼みます。
喪主は、故人の関係者、職場等への連絡、喪服の準備、供花・供え物の手配をして行きましょう。
① 担当者の印象が良い
対応が雑な業者は避けましょう。電話の応対や、言葉遣いや身だしなみの印象が良い担当者を選べば良いサービスが期待できます。
② こちらの要望をしっかりと聞いて、説明も分かりやすい
ご遺族の立場に立ってしっかりと話を聞いてくれるかも一つの基準になります。自社のサービスや商品に対して自信があるからこそ説明も分かりやすいのです。
③ 葬儀費用について見積もりを使いしっかりと説明してくれる
費用について納得できる説明ができるかどうかは、非常に重要です。お互いに納得して葬儀を迎えられる様にしっかりと話し合いましょう。
④ 生前に葬儀社を選んでおくのがおすすめ
亡くなった後に葬儀社を探す場合は選択肢が限られてきます。事前に親と話し合い生前に葬儀社を選んでおけば慌てずに葬儀を迎えられます。
2日目 親の死亡翌日に通夜を!死亡届・火葬許可書の手続きも忘れずに。
①死亡届
死亡診断書を葬儀社の担当者に渡して、この手続きを代行してもらうのが一般的です。
ご自身で手続きをされる場合に備えて解説していきます。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡の場合は3ヶ月以内)に市区町村役場に提出しなければなりません。死亡届は死亡診断書と同じ用紙になっていますのでそこに必要事項を記入して提出します。提出前に必ず複数枚のコピーを取りましょう。
②火葬許可証の手続き
火葬許可申請は、死亡届を提出する際に合わせて申請します。窓口で処理後にその場で「火葬許可証」が発行されます。
提出先:亡くなった場所、亡くなった人の本籍地、届出人の所在地のいずれかの市区町村役場
添付書類:死亡診断書(死亡届の用紙と同じ用紙に記載される事がほとんどです。)
③お通夜
お通夜は以前、夜通し故人に付き添うのが習わしでした。近年は2時間程度で終了するお通夜もあるようです。
手順1 葬儀社と進行の打合せをしましょう。受付の段取り・席次・焼香の順番などを確認して、分からない事は必ず聞いておきましょう。
手順2 焼香もしくは通夜が終わると参列者を別室にお通しして、飲食をふるまい故人を偲びます。これを一般的に「通夜ぶるまい」といい、お清めとしてお酒もふるまいます。
3日目 お葬式・火葬
①葬儀・告別式
現代では葬儀・告別式は同じものと解釈して「お葬式」と呼ぶ事が一般的です。
お通夜と同じく事前に葬儀社の担当と、役割や段取りについて打合わせを念入りに行い参列者に失礼の無いように進行をして行きましょう。
自身の経験上、式中は言いようの無い悲しみが襲ってきましたが、特に喪主の方は感情に流されない様にしっかりと役割を務めましょう。
最後のお別れを終えると、遺族や親族の男性で棺を霊柩車に運び火葬場へ向かいます。
②火葬
手順1 ご遺体を火葬場で火葬
火葬炉の前で最後のお別れを行います。僧侶が同行していればお経を読み、焼香をします。本当にお顔を見るのはここが最後になります。しっかりと生前の愛情への感謝を伝えてお別れをしましょう。
火葬の待ち時間は1時間程度です。
手順2 骨上げ
火葬が終わると係員が伝えに来ますので、全員で収骨室に向かいます。
喪主は、収骨室で骨壺を持ってご遺骨の頭側に立ちます。
他の方は「骨箸」を持って、係員の指示に従い足の方から骨箸で遺骨を拾い上げ、喪主の持つ骨壺に収めていきます
骨上げが終わると骨壷と「埋葬許可証」を受取ります、埋葬許可証は埋葬時に必要になりますので大切に保管しましょう。
手順3 初七日法要
本来、初七日法要は亡くなってから7日目に行うのですが、近年は参列者等に配慮して、葬儀と同じ日に行うのが一般的です。
葬儀の式中に行う繰込式と、火葬後に行う繰上げ式が地域により異なります。葬儀社の担当と打合わせてどちらで行うのか決めましょう。
③葬儀費用の支払い
葬儀費用の支払いは、通常は葬儀終了直後から一週間程度に支払います。
現金をすぐに準備するのが難しいような場合は分割払いに対応してもらえる事も有りますので葬儀社の担当と事前に確認をしておきましょう。
死後四十九日以内にやっておきたい手続き
葬儀、初七日も終わり少し落ち着いたら以下の表の中の手続きを進めて行きましょう。
届出・手続き | 手続き先 | 期限 |
● 死亡届 | 市区町村役場(7日以内) | 死亡を知った日から7日以内 |
● 死体火葬埋葬許可申請 | 市区町村役場(7日以内) | 死亡届と同時に提出 |
● 世帯主変更届 | 市区町村役場(14日以内) | 死亡の事実が発生した日から14日以内 |
● 年金受給の停止 | 年金事務所又は年金相談センター | 国民年金は死亡日から14日以内 厚生年金は死亡日から10日以内 |
● 児童扶養手当認定請求 | 市区町村役場 | 世帯主変更届と同時 |
● 復氏届 | 市区町村役場 | 期限なし |
● 姻族関係終了届 | 市区町村役場 | 期限なし |
● 国民健康保険証資格喪失届 | 市区町村役場 | 死亡の事実が発生した日から14日以内 |
● シルバーパス | 市区町村役場 | 早めに |
● 子の氏変更許可申請 | 家庭裁判所 | 期限なし |
● 運転免許証 | 警察 | 早めに |
● 死亡退職届 | 勤務先 | 早めに |
● 死亡退職金 | 勤務先 | 早めに |
● 最終給与 | 勤務先 | 早めに |
● 社会保険証 | 勤務先 | 5日以内(通常は会社が手続) |
● クレジットカード | クレジットカード会社 | 早めに |
● 借金(負債の確認) | 金融機関・ローン会社 | 早めに |
● 生命保険・入院保険 | 生命保険会社 | 原則支払事由発生から3年以内 |
● 埋葬料の請求(社会保険) | 勤務先・社会保険事務所 | 死亡した日の翌日から2年以内 |
● 賃貸住宅の解約 | 管理会社・家主 | 方針決まり次第 |
● 電話加入権 | 電話会社 | 早めに |
● 光熱費 | 電気・ガス会社・水道局 | 早めに |
※自社調べ
第2章【時系列順】親の死後1年以内に済ませておきたい相続手続き
1年以内に済ませておきたい相続手続き一覧
四十九日も終わると次は相続手続きを進めて行きましょう。
特に期限を過ぎると、そもそも選択する事が出来ない「相続放棄」や期限を過ぎるとペナルティを受ける「準確定申告」「相続税申告」等については後ほどピックアップして紹介します。
この表を参考に、優先順位を付けて手続きを進めて行きましょう。
届出・手続き | 手続き先 | 期限・備考 |
● 相続人の確定(戸籍の収集) | 市区町村役場 | この後の手続きに必要になります。速やかに集めましょう。詳しくはこちら。 |
● 遺言書の検認(自筆遺言の場合) | 家庭裁判所 | 遺言者の死亡を知った後、遅滞なく。詳しくはこちら。 |
● 相続放棄・限定承認の申立 | 家庭裁判所 | |
● 所得税の準確定申告 | 税務署(税理士) | 相続開始を知った日の翌日から4カ月以内 |
● 遺産分割協議書の作成 | 相続人 | 期限は無いが目安は2~6ヶ月以内。詳しくはこちら。 |
● 不動産の名義変更登記(相続登記) | 法務局(司法書士) | 遺産分割協議成立後、相続税申告までに申請しましょう。詳しくはこちら。 |
● 相続税の申告 | 税務署(税理士) | 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。詳しくはこちら。 |
● 遺留分減殺請求 | 相続人 | 相続の開始と減殺すべき贈与又は遺贈のいずれかがあった事を知った時から1年。詳しくはこちら。 |
● 葬祭費の請求(国民健康保険) | 市区町村役場 | 葬儀を行った日の翌日から2年以内 |
● 埋葬料の請求(社会保険) | 勤務先・社会保険事務所 | 死亡した日の翌日から2年以内 |
● 高額療養費の請求(健康保険) | 市区町村役場・社会保険事務所 | 治療の翌月1日から2年以内 |
● 死亡一時金の請求(国民年金) | 市区町村役場 | 支給事由が生じた日の翌日から2年以内 |
● 遺族基礎年金の請求(国民年金) | 市区町村役場 | 支給事由が生じた日の翌日から5年以内 |
● 寡婦年金の請求(国民年金) | 市区町村役場 | 支給事由が生じた日の翌日から5年以内 |
● 遺族厚生年金の請求(厚生年金) | 社会保険事務所 | 支給事由が生じた日の翌日から5年以内 |
● 遺族補償年金・一時金の請求 | 労働基準監督署 | 死亡翌日から5年以内 |
※自社調べ
お墓の相続についても忘れずに!
- 親が管理していたもしくは実家にあるお墓の相続についても考えくてはいけません。
お墓の相続に関する詳しい内容は以下の記事をご参照ください。
【誰が継ぐ?】正しいお墓の相続方法をご紹介|遺産相続との違いについて
相続の手続きならグリーン司法書士法人にお任せください!
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絶対に忘れてはいけない期限のある相続手続き
1年以内に済ませておきたい相続手続きの中でも厳格な期限が決まっている手続きをピックアップします。
保存しておいてイザという時にお役立て下さい。
① 故人に借金がある場合は要注意!相続放棄の期限は3か月以内です。
相続は、忘れがちですが借金等の負債も全部引き継ぎます。故人に借金等が有る場合、相続放棄又は限定承認を検討しましょう。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【ポイント】
親は生きているうちには中々自分の借金について子供には言いにくいものです。子供の方から借金も相続するからとしっかりと話し合い把握するようにしましょう。
- 期限:自身が相続人となる事を知った時から3ヶ月以内
- 申立先:被相続人(亡くなった方)の住所地の管轄の家庭裁判所 ※自社調べ
② 故人の所得税の準確定申告は4か月以内にしましょう
故人に動産所得があったり自営業者等で所得税の確定申告が必要な場合は、相続人が代わりに確定申告をしなければなりません。これを準確定申告と呼びます。
【ポイント】
期限が4か月と非常に短いので注意しましょう。これを過ぎると延滞税等のペナルティを受けるリスクが有ります。忘れずに申告しましょう。
- 期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
- 計算期間:亡くなった年の1月1日~死亡日まで
- 申告先:被相続人(亡くなった方)の住所地の税務署
※自社調べ
③ 相続税の申告は10か月以内にしましょう
遺産の総額が、相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は相続税の申告が必要になります。
【ポイント】
相続税の申告が有る場合は、特に不動産をお持ちの場合は計算方法により相続税額が税理士によりかなり変わります。相続税の経験豊富な税理士に相談されるのをおすすめします。
- 期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(納税期限もこの日になるので注意しましょう!)
- 申告先:被相続人(亡くなった方)の住所地の税務署 ※自社調べ
相続税の基礎控除については、こちらの記事で詳しく解説しています。
④ 遺言に納得できない場合の遺留分減殺請求は1年以内にしましょう
遺言等があり、自身の相続する遺産が全く無い又は法定相続分より少ないというケースは「遺留分減殺請求」という請求をすることで一定の割合を取り戻せます。
例えば「全財産を愛人に相続させる」という様な遺言があったら、その妻や子は遺言どおりでは全く財産を相続する事はできませんが、この遺留分減殺請求をすることにより、一定割合の遺産を相続する事ができます。
遺留分減殺請求の際にどれ位の金額を請求できるのかの計算は、専門家でも難しいものです。遺留分減殺請求を検討される際には相続案件に強い弁護士に相談されるのがおすすめです。
遺留分の割合
※複数人いる場合は、頭数で平等に分配します
- 期限:相続の開始及び遺留分の侵害がある事を知った時から1年以内、又は相続開始から10年以内
- 相続人が亡くなった方の兄弟姉妹の場合は遺留分の権利はありません ※自社調べ
これは使える!相続手続チェックリスト
本記事をお読み頂いた方への特典として相続手続チェックリストを添付します。実際の相続発生の際にお役に立つと思いますので利用して下さい。
相続手続チェックリストをPDFでダウンロードする
第3章 相続関係の相談先の一覧
「相続手続きを自分でするのは知識も時間も無い」という様な方の場合、親の死後に相続についての相談をどこにすれば良いのかが分からなかった。というお声をよくいただきます。下記の表に、専門家の取り扱い業務等をまとめました。
基本的な考え方は、
遺産について既に紛争がおきている場合・・・・「弁護士」に相談
不動産の名義変更や相続の手続きを相談したい・・・「司法書士」に相談
相続税申告が必要な場合・・・「税理士」に相談
と考えておくと良いですね。
まとめ
親が亡くなったら、葬儀から相続手続きと人生であまり経験しない事の連続です。時間の無い方は上手く司法書士等の専門家の力を利用しながらスムーズに手続きを進めるといいでしょう。
これを機に一度家族と葬儀や相続についてのお話をしてみて下さい。
なお、相続手続きについてもう少し詳しく知りたい方は次の記事をお読みください。
〈参考文献・情報〉
■二村祐輔・内田麻由子監修「身内が亡くなったときの手続き」
■中田裕康・長谷部恭男 編集代表「有斐閣判例六法平成29年版」