代理人が銀行口座から預金を引き出す方法|準備や認知症対策も紹介

代理人が銀行口座から預金を引き出す方法|準備や認知症対策も紹介
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 7
 この記事を読んでわかること

  • 銀行口座で本人以外が引き出せるのかがわかる
  • 代理人が銀行口座を引き出す方法・必要書類がわかる
  • 代理人に銀行口座を引き出してもらうときにすべきことがわかる

銀行で預金の引き出しを行えるのは原則本人のみですが、代理引き出しも可能です。
代理引き出しをするときは家族であっても委任状の提出や口座名義人および代理人の本人確認書類などが必要です。

また、ケガや病気などによる入院、高齢になってきて銀行に行くことが難しい場合は代理人カードの作成や代理人指名手続きを利用をおすすめします。
代理人カードの作成や代理人指名手続きを利用すれば、事前に登録しておいた代理人がATMや窓口で預金を引き出し可能です。

本記事では、代理人が銀行で預金を引き出す方法や必要書類、代理人が引き出す際に準備すべきことを解説します。


1章 銀行口座の代理引き出しは認められている

親の口座から預金を引き出す方法

結論から言うと、銀行口座の代理引き出しは犯罪ではなく、認められています。

ただし、本人確認が厳格になったため、現在は同居の家族であっても本人以外が代理で引き出すときは委任状が必要です。
さらに、委任状を用意していても窓口で手続き時に電話で本人に対して意思確認を行うケースもあります。

また、口座名義人が認知症になり判断能力を失っていると、たとえ委任状があっても預金を引き出せない可能性もあるのでご注意ください。
銀行が口座名義人が認知症になり判断能力を失ったと知ると、銀行口座を凍結し預貯金を引き出せなくしてしまいます。

次の章では、代理人が銀行口座から引き出しをする方法や必要書類を詳しく解説します。

認知症になった親の銀行口座は凍結される!預貯金を引き出す方法とは
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2章 代理人が銀行口座の引き出しをする方法・必要書類

口座名義人がケガや病気で入院し銀行口座から引き出しをできない事情がある場合、代理人カードの作成や代理人指名手続きをしておくと口座名義人以外も預金を引き出せます。

代理人カードの作成や代理人指名手続きを利用するには、口座名義人が事前に金融機関にて手続きする必要があります。
メガバンクで代理人カードや代理人指名手続きを利用するときの必要書類は、それぞれ下記の通りです。

金融機関代理人になれる人必要書類
三井住友銀行2親等以内の親族【口座名義人による申し込み時】

  • 本人確認書類
  • 銀行印
  • 通帳もしくはキャッシュカード


【代理人による出金時】

  • 本人確認書類
  • 銀行印
  • 通帳
みずほ銀行配偶者もしくは二親等以内の親族(血族)【口座名義人による申し込み時】

  • 本人確認書類(本人および代理人)
  • 銀行印(本人)


【サービス利用開始時】
みずほ銀行所定の診断書

三菱東京UFJ銀行口座名義人と生計を一にする16歳以上の親族【口座名義人による申し込み時】

  • 本人確認書類(本人および代理人)
  • キャッシュカード
  • 銀行印(本人)


【代理人による出金時】
代理人カード

なお、代理人カードや代理人指名手続きを利用しなくても、下記を持参すれば代理で銀行口座を引き出せます。

  • 口座名義人の通帳
  • 銀行印
  • 委任状
  • 本人確認書類(口座名義人および代理人)

毎回、窓口で委任状を提出するのは大変ですし、取引状況によっては別の書類が必要になるケースもあります。
そのため、長期にわたり口座名義人が引き出しできないのであれば、代理人カードの作成や代理人指名手続きを行うのが良いでしょう。

代理人が銀行で引き出したときは領収書も保管しておく

家族や親族が代理で銀行口座から引き出したときは、引き出した金額の記録や支払い時に受け取った領収書などを必ず保管しておきましょう。
口座名義人が亡くなったときに、相続人が代理人による財産の使い込みを疑いトラブルに発展する可能性があるからです。

余計なトラブルを避けるためにも、本人のかわりに引き出しを行った際は記録を残しておくことが大切です。


3章 代理人が銀行口座を引き出すときの上限額

本人のかわりに代理人が銀行口座から引き出すときの上限額は、10万円としている金融機関が多いです。
ただし、本記事の2章で紹介した代理人カードの作成や代理人指名手続きを利用している場合は、10万円を超える金額を引き出せる場合もあります。

まとまった金額を本人のかわりに引き出したい場合は、利用している金融機関に問い合わせてみることをおすすめします。


4章 銀行口座を代理人に引き出してもらうときの準備

自分で預金を引き出せず代理人に依頼するケースとしては、ケガや病気などで入院して自分が身動き取れない状況が考えられます。
入院などで長期にわたり代理人に銀行預金の引き出しを依頼するのであれば、下記の対策を行い代理人の負担を軽減することも大切です。

  1. 各種料金の支払いはキャッシュレスにしておく
  2. 入院時には限度額適用認定証を用意しておく
  3. 銀行口座をひとつにまとめておく
  4. 認知症対策をしておく

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 各種料金の支払いはキャッシュレスにしておく

入院などで銀行に行けない状態が続くと予想されるときは、事前に家賃や公共料金の支払いをキャッシュレスにしておきましょう。
支払いをキャッシュレスにしておけば、現金が必要になる機会を減らせるからです。

また、金融機関のダイレクト送金などのサービスを利用登録しておけば、入院中でも自分で振込や支払いを行えます。

4-2 入院時には限度額適用認定証を用意しておく

入院や手術などで高額な医療費がかかると予想できる場合は、入院前に限度額適用認定証を用意しておきましょう。
限度額適用認定証を医療機関に提出しておけば、窓口での医療費負担を自己負担限度額まで抑えられます。

限度額適用認定証とよく似た制度に高額療養費制度がありますが、高額療養費制度は窓口で払い過ぎた医療費が後から返還される制度です。
窓口の立替払いを極力抑えたいケースや医療費がかかることがあらかじめわかっている場合は、限度額適用認定証を利用すると良いでしょう。

限度額適用認定証は、加入している健康保険組合から発行してもらえます。
入院や手術などを控えている場合は、事前に健康保険組合に問い合わせをしてみましょう。

4-3 銀行口座をひとつにまとめておく

複数の金融機関を使い分けている人も多いですが、代理で引き出しを依頼するのであれば銀行口座をひとつにまとめておくと、代理人の負担を減らせます。
代理人に預金の引き出しを依頼する際に、銀行口座をまとめておくメリットは下記の通りです。

  • 代理人および口座名義人が預金残高を把握しやすい
  • 代理人が引き出したものの残高不足だったという状況を回避できる

なお銀行口座をまとめる際には、代理人の自宅や職場近くに支店があり引き出しやすい金融機関を選ぶのもおすすめです。

4-4 認知症対策をしておく

本記事の1章で解説したように、認知症などで判断能力を失った人の預金は代理人が委任状を持っていても引き出せなくなってしまいます。
口座名義人が認知症になり銀行口座が凍結された場合には、成年後見制度を利用しない限り凍結は解除されません。

また、定期預金や不動産などの財産は銀行の代理人カードを所有していても、代理人が管理や運用、処分を行うことはできません。
そのため、元気なうちに家族信託や任意後見制度などで認知症対策をしておくことを強くおすすめします。

次の章では、認知症になった親の財産管理方法を詳しく解説していきます。

認知症となった親の財産管理方法【まとめ】症状の進み具合別に解説!

5章 認知症になった親の財産管理方法

認知症になり判断能力を失うと、銀行口座が凍結され各種料金の引き落としや預貯金の引き出しができなくなってしまいます。
認知症になった親の財産管理方法は、症状の進行度合いなどによっていくつかの方法が考えられます。

  1. 家族信託
  2. 任意後見制度
  3. 成年後見制度

それぞれ解説していきます。

5-1 家族信託

家族信託の基本的な仕組み

家族信託を利用すれば、高齢になった親の財産を子供などが管理や運用、処分できます。
家族信託では、あらかじめ定めておいた契約内容に従って信頼できる家族に預金の管理などを行ってもらえます。

契約内容によっては柔軟な財産管理や運用、処分を行えるので、受託者である家族が自宅の処分や賃貸用不動産のリフォームなどを行うことも可能です。

家族信託で高齢になった親の財産管理や認知症対策を行うメリットは、下記の通りです。

  • 柔軟な財産管理を行える
  • 受託者の自宅の売却や賃貸用不動産のリフォームなどもかわりに行える
  • 自分が亡くなった後の次の相続まで指定できる
  • 成年後見制度や任意後見制度と違って家庭裁判所の介入が必要ない
  • 家族に財産管理を任せるのでランニングコストがかからない

ただし、家族信託の契約書を結ぶ際には判断能力が必要であり、認知症になり判断能力を失った人は制度を利用できません。

家族信託は認知症発症後でも利用できる?軽度なら可能?基準を解説

5-2 任意後見制度

任意後見制度とは、自分が元気なうちに後見人を選び契約内容を定めておく制度です。
自分が認知症などで判断能力を失ったときに、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立を行い、任意後見人が被後見人の財産の管理を行います。

成年後見制度と比較したときの任意後見制度のメリットは、下記の通りです。

  • 自分で任意後見人を選べる
  • 事前に決めた内容に従って後見業務を行ってもらえる

任意後見制度は成年後見制度よりも柔軟な財産管理を行いやすい点が魅力です。
しかし、元気なうちに後見人の選任や任意後見契約を結ぶ必要があるので、認知症になり判断能力を失った状態の人は制度を利用できません。

【簡単解説】任意後見人とは?役割や仕事内容から手続きの流れ

5-3 成年後見制度

成年後見制度とは、認知症や知的障がいによって判断能力が不十分な人が生活をする上で不利益を被らないよう、「成年後見人」が本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うための制度です。

認知症の症状が進行しすでに判断能力を失った人が利用できるのは、成年後見制度のみとなっています。
残念ながら、認知症の症状が進行していて家族信託や任意後見制度の利用が難しい場合は、成年後見制度の利用を検討しましょう。

成年後見制度の利用を開始する際には、成年後見人の申立て手続きを家庭裁判所に行う必要があります。

成年後見制度とは?利用方法からメリットデメリットまで簡単理解!

まとめ

委任状や口座名義人、代理人の本人確認書類を用意すれば、代理人が銀行で預金を引き出せます。
ただし、取引状況や口座名義人の状況によっては委任状に加えて電話確認が必要であったり、代理人による引き出しを断られる恐れもあります。

口座名義人の入院などで長期にわたり代理人が銀行で引き出しを行う場合は、代理人カードの作成や代理人指名手続きの利用も検討しましょう。
そして、高齢になった親のかわりに銀行で引き出しを行うのであれば、将来の認知症リスクに備えて家族信託や任意後見制度の利用も検討するのがおすすめです。

認知症対策には様々な方法があり、本人の希望や資産状況によってベストな選択肢が異なります。
自分に合った選択肢がわからない人は、認知症対策に詳しい司法書士や弁護士に相談がおすすめです。

グリーン司法書士法人では、認知症対策に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。


よくあるご質問

本人以外が預金を引き出しすると罪に問われる?

口座名義人以外が預金の引き出しをしても、本人が同意していれば引き出した人が罪に問われることはありません。

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