あなたは「親の土地の相続」に際して以下の様な疑問を今抱いてはいませんか?
- 土地の相続って何からはじめればいいのだろうか?
- 必要な手続きには何があってどこに行けばいいの・・?
この様に、人生の中でもそんなに機会のない「土地の相続」に際して疑問だらけだと思います。
しかし、親の土地を相続する場合、必要最低限の知識を理解していない状態で土地の相続を進めると、本来払う必要のない税金を払う事になったり、仲の良い兄弟でも相続が原因で揉めてしまってスムーズな相続が行えないケースなども非常に多く見られるのが実際のところです。
そのため相続のプロとして結論を言うと、土地の相続においては経験豊富な司法書士に依頼するのがベストです。
なぜなら、自分で土地の相続からの名義変更・生前贈与の場合はその手続きなど非常に多くの手間がかかってしまうからです。
この記事では、あなたの相続シチュエーションにあった土地の相続方法からその手順まで分かりやすく解説し、あなたが損をしない・揉めない相続のポイントを徹底的に解説していきます。
早速見ていきましょう!!
目次
1章 シチュエーション別 親の土地を相続する方法・手順を徹底解説
親の土地を相続するには、親が生きている間に土地を相続する「生前贈与」という方法があります。
しかし多くの人は相続に関する基礎知識がないばかりに、相続にかかる税金のシミュレーション計算などを十分に行わず、安易に生前贈与を実行して「こんなに贈与税がかかるなんて・・・・」と後悔してしまうケースが多々あります。
また親の死後に土地を相続する場合には「相続登記」という土地の名義を変更する手続きが必要となりますが、こちらも書類を作成するうちに想定外の税金がかかったり土地の売却が進められないという事例も多々あります。
まずは相続専門の司法書士が親の生前・死後それぞれのシチュエーションにおける相続の流れや見落としがちな注意点をわかりやすく解説しますので順を追ってみていきましょう。
1-1 親が生きている場合の土地相続方法
生前に親から土地を受け継ぐ方法として生前贈与があります。
検討から手続き終了まで、順をおって解説していきます。
Step1 物件調査
生前贈与を検討するには、まず、贈与する土地の所有者等の権利関係がどうなっているのかを調べましょう。
そのためには贈与対象物件の登記事項の状況を調べなければなりません。
お近くの法務局で登記事項証明書を取得して調査しましょう。
登記事項証明書とは、土地の地番や地積(㎡数)、所有者に関する事、担保に関する事が書かれている証明書の事をいいます。
土地の登記事項証明書を取得するには「地番」が分かれば法務局で取得する事が出来ます。地番は住所とは異なりますので注意しましょう。
「地番」を知る方法
① 固定資産税納税通知書で確認する
② 権利証の土地の記載を確認する
③ 法務局で住所から地番検索して調べる(「〇〇市 地番検索」と検索すれば問い合わせ電話番号を調べられます)
Step2 生前贈与のプランニング及び検討
検討に必要な情報が揃ったら、次にあなたが生前贈与を選択した方が得なのかどうかを判断する段階です。
場合によっては生前贈与を選択して不利益を被る場合もあるので、メリット・デメリットをしっかりと理解しておきましょう。
生前贈与のメリット
① 渡す相手を決められる。
生前贈与する事により相続発生前に、遺産分けをするのと同じ様な効果が得られて相続人間のトラブル防止になります。
② 相続税対策になる。
親から子供に財産が移りますので、贈与税と相続税を比較して、贈与税を払う方が相続税を払うより得であれば実行する事により節税効果を得る事ができます。
→相続時精算課税制度とは?メリデメから手続方法まで専門家が徹底解説③ 比較的短期間(約1か月)で贈与する事ができる。
一番時間がかかるのは生前贈与のプランニングです。内容がまとまれば実行の時間は1か月もあれば充分です。
生前贈与のデメリット
① 一年間で110万円を超える贈与には贈与税がかかります。しっかりとシミュレーションして検討しましょう。
→【簡単シミュレーション付】贈与税の計算方法と6つの節税方法を解説② 一度贈与するとやはりやめたと簡単にはできない。
一旦手続きした生前贈与を元に戻すには、もちろんお互いの合意が必要です。しかもまた登録免許税等の実費の負担が発生します。
③ 不動産取得税や登録免許税、司法書士費用がかかる。
贈与税だけがコストではありませんので注意してください。土地の市場価値により贈与税がかかる。
→不動産の生前贈与を失敗したくない人【必見】かかる費用と節税方法
この様に土地の相続はメリット・デメリットを比較検討して実行するかを決めなければなりません。その際は契約書の作成や、贈与税と相続税の計算等かなり広範囲な知識が必要になりますので、相続案件の経験豊富な司法書士・税理士・弁護士に相談したうえで実行するかどうかを決めるのがベストな選択となります。
① 親の土地の上に子供が所有する建物がある場合
このケースの場合はもし親が亡くなったら、他の兄弟と遺産分割協議しなければなりません、場合によっては土地が兄弟との共有となり、今後紛争の元となります。
生前贈与で土地と建物を所有している子どもが受け継いでいれば、相続が発生しても安心です。
② 相続税を払うより生前贈与の際の贈与税を払う方が節税効果がある場合
端的に言うと、「今贈与税やその他の贈与にかかるコストを全て足した金額よりも、生前贈与する事により相続税が減る金額が多い」場合です。
例えば、生前贈与のコストが1000万円かかるが、その効果で親の財産が減り、それにより相続税が2000万円圧縮されるというケースです。
Step3 贈与契約書作成
検討の結果、土地の生前贈与を実行する事になれば贈与契約書を作成します。
詳しい作成方法はこちら
贈与契約書は当事者間でのやり取りのみならずに税務署等に対しての贈与の証拠にもなります。注意点を参考に作成していきましょう。
注意点
① 不動産は住所ではなく、地番を記載します。Step1で取得した登記事項証明書通りに記載していきましょう。
② 日付・人物・贈与の事実をしっかりと記載しましょう。
③ 後で貰った貰っていないと争いにならないように、自署して実印を押印するようにしましょう。
④ 不動産の贈与契約書には収入印紙を200円貼ります。収入印紙はコンビニでも買えますので、必ず貼り付けて印紙に割り印をしましょう。
Step4 書類収集・登記申請
贈与契約書を作成したら、次は登記申請に向けて必要な書類を収集していきましょう。
そして書類が集まれば登記申請を必ずしましょう。
生前贈与に必要な書類
贈与する人が用意する書類 | ① 登記済権利証又は登記識別情報 対象の土地のもの ② 印鑑証明書 登記申請時点で発行後3か月以内のもの ③ 固定資産評価証明書 |
贈与を受ける人が用意する書類 | ① 住民票 |
双方で用意するもの | ① 贈与契約書 |
必要書類は基本的に上図の通りです。
必要書類を収集したら、いよいよ法務局への登記申請です。
必要な書類も多くて大変ですが、不動産の贈与の場合は必ずしなければなりません。
登記申請書を作成して、必要書類を添付して土地の管轄の法務局に登記申請しましょう。
登記申請の際は「登録免許税」という税金を納付して申請します。納付額は固定資産評価証明書に記載されている土地の価格に2%をかけた金額を納付します。たとえば、土地の価格が1000万円なら20万円を納付します。
申請はオンライン申請もできますが、オンライン申請の環境を整えるのはかえって手間になりますので郵送申請か窓口申請にしましょう。
申請後約1週間で手続きは完了します。
土地の贈与の場合は、名義変更後に不動産取得税という税金も発生します。
土地の固定資産評価額の1.5%が課税されます。(宅地を贈与した場合でかつ平成30年3月31日までの軽減措置です)
Step5 贈与税の申告
贈与税とは、自分以外の人から財産を無償で譲りうけた場合に課税される税金です。
一年間で基礎控除110万円を超える贈与を受けたら贈与税がかかります。
贈与税がかかる場合は必ず申告しましょう。
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までが贈与税の申告期限です。
納付期限も同じく翌年の3月15日になりますので注意しましょう。
ワンポイントアドバイス
相続時精算課税制度も検討しましょう!
相続時精算課税制度とは、簡単に言うと「贈与税を一部だけ支払い残りを相続発生時に精算する手続き」です。
この制度を使う為の要件は親子間であれば、親が60歳以上・子が18歳以上であれば他の細かい要件は有りますが基本的に使用可能です。
(注)「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。
メリットは2500万円までは贈与税が非課税、それを超えた贈与は一律20%というところです。
また、2024年以降は相続時精算課税制度に年間110万円の控除額が用意され、110万円以内の贈与であれば贈与税の申告や納税は必要ありません。
相続税がかからない予想の方であれば生前贈与の際に相続時精算課税制度を選択して贈与税を抑えましょう。
詳しい解説はこちら
1-2 親が亡くなった場合の土地相続方法
残念ながら親が亡くなってしまった場合は土地の相続登記が必要になります。
相続登記とは土地の所有者が亡くなってその所有権を受け継ぐ相続人に登記名義を変更する手続きです。
相続登記に今のところ期限は有りませんが、放置していると後々手続きを進めるのが困難になったりと不都合が出ますので必ずその土地を相続する人が決まれば申請しましょう。
“相続登記が義務化されました”
令和3年(2021年)に相続登記義務化の法案が可決され、令和6年(2024年)までに施行予定となっています。このため、次の相続が発生した時には義務化されている可能性が高いでしょう。今のうちから、なるべく早く手続きをされるのがオススメです。
その流れを本章で解説していきます。
相続登記を放置することによるリスクについて詳しく知りたい方はこちら
- 相続人および不動産に関する資料・書類を収集する
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 相続登記の申請を行う
相続登記は集める書類も多くて難易度も高いので、知識がある程度ある方や、仕事を引退されていて時間がある方、等であればご自身で登記申請も可能でしょう。
ご自身でしたいという方はこちらを参考にしてみてください。
しかし、司法書士に相続登記を依頼しても、報酬はほとんどの場合10万円前後位が相場です。
登記手続きを司法書士に依頼すれば、手続きの手間や遺産分割協議での大きな失敗も防げます。自分でやって誤るリスクとその時に発生しうる税金の額を考えると、依頼されることを強くおすすめします。
司法書士に依頼する場合の費用についてはこちらで詳しく説明しています。
Step1 相続発生
親が亡くなると、その時点で法律上当然に相続が始まります。
暫くは葬儀等でお忙しくされる事でしょう。それらも一区切りしたら下記の手順に従って相続登記の手続きを進めていきましょう。
- 落ち着いたらまずは遺言の存在を確認しましょう。
生前に遺言の存在を親から聞いていれば準備はされている事と思いますが、中には遺言を作成した事を子供に伝えてないケースも有ります。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言とはその名の通り全文を自筆で書いた遺言書です。その存在が確認できた場合は、封がされていれば封を開けずに家庭裁判所に検認という手続きを申し立てましょう。
公正証書遺言とは、公証役場というところで証人2人立会いの下に公証人が公正証書で作成する遺言のことです。
公正証書で作成している遺言の場合は公証役場というところ(公証役場一覧http://www.koshonin.gr.jp/list/)で遺言検索して調べられます。どこの公証役場でも大丈夫ですので調べましょう。
遺言書がある場合はその内容に従って土地の相続登記をします。ただし相続人全員で話し合って違う内容にする事も可能です。
遺言書がない場合は相続人全員で話し合い遺産分割協議をして土地の所有者を決めて相続登記をしましょう。
- 相続税の申告が必要かの判断
相続税の申告が必要かどうかの判定は、相続税の基礎控除額以上の財産があるかどうかの判定をします。
被相続人の財産が、基礎控除額3,000万円+(600万円×法定相続人数)を超える場合には相続税の申告が必要になります。
実際に相続する財産の金額が、基礎控除額を上回っている場合には相続税の申告が必要となる事を頭に入れておきましょう。
相続税の申告についての詳細はこちら
“注意点”
相続税の申告には期限があります。
被相続人が死亡した事を知った日の翌日から税務署に申告書を提出しなければなりません。(期限までに納めなければ延滞税がかかることも・・・)
土地の相続税計算はプロの税理士でも間違う事があるくらい複雑です。
できれば司法書士・税理士に相談して確認することをおすすめします。
Step2 書類収集
遺言の有無・相続税申告の有無を調べたら、土地を相続する最終地点である相続登記申請に向けて準備を進めていきます。
相続登記の手続きに必要な書類を集めましょう。
下記、表の中の書類は不動産の相続登記の際に必要になります。場合により他のものも必要になりますが基本的にはこちらを用意しなければなりません。
亡くなられた方(被相続人)の必要な書類 | ①出生から死亡までのつながりの分かる戸籍謄本(相続人が他にいないかの確認のために取得します。認知の有無等をしっかり確認しましょう。) ②住民票又は戸籍の付票 ③固定資産税の評価証明書 ④場合により取得時の権利証 |
相続人の方の必要な書類 | ①全員の戸籍謄本 ②全員の住民票 ③全員の印鑑証明書(遺産分割協議書添付の為) |
各種の書類は、お近くの役所で取れるものは直接役所に行って取るのが一番早い方法です。なお、亡くなられた方の戸籍謄本については、必ず「相続手続きに必要なので御庁で取得可能なものは全部出してください」と窓口の方に伝えて下さい。
遠い役所の場合は、郵送で取得します。必ず中に返信用封筒と小為替(①の場合は金額が郵送時点で不明な場合が有りますので多めに入れましょう。)を同封して発行後に自宅に郵送してもらいましょう。
この中で少し取得の難易度が高いのが、亡くなられた方の必要書類①の戸籍謄本です。
その方の出生から死亡までの全ての戸籍が必要となりますが、戸籍は何度も制度変更や改制をされており、その都度作り直されています。また、本籍地を変更されていると変更前の本籍地に別途請求しなければなりません。特に戦前のものは手書きで非常に読みにくい場合もありますので、そこでかなりの方が面倒になられます。
当事務所の様に戸籍取得の代行をしている行政書士の事務所に依頼されるのがベストでしょう。
Step3 遺産分割協議
次は相続人間の話し合いを進めて遺産分割協議を成立させましょう。
話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書とは、親が亡くなって相続が発生そた後に、その遺産分割をどうするのか、相続人全員で話しあった結果を記載する書面です。特に、遺産分割協議に基づく相続登記申請の場合は必ず必要になります。
書式を整えることはもちろんですが、この記載内容によってその後の税金に影響が出ることもあり得ますので慎重に作成しましょう。
① 具体的に書きましょう・・・内容が抽象的だと争いになったり、手続きもスムーズにいきません。人物・財産・内容をしっかりと具体的に!!
② 必ず実印を押印しましょう・・・今後登記申請をはじめ様々な手続きに使用する遺産分割協議書は実印で必ず押印して下さい。これを怠ると作り直しになってしまいます。
Step4 相続登記申請
遺産分割協議も完了して書類も収集できていれば、いよいよ相続登記です。
下記に相続登記申請に必要な書類を記載します。
一般的な場合の登記申請の必要書類です。 ① 登記申請書 ② 相続関係説明図 ③ 戸籍等全部又は相続証明情報 ④ 遺産分割協議書(遺言がある場合は遺言書になります。) ⑤ 相続人の印鑑証明書 ⑥ 固定資産税の評価証明書 |
上記をまとめて管轄の法務局に申請しましょう。
お近くに管轄法務局が有れば持っていきます。遠ければ郵送で申請することも可能です。
オンライン申請という方法も有りますが、電子署名等の環境を設定する必要が有りますので、そういう環境が無い方は持参または郵送の方が楽だと思います。
相続登記にかかる費用
① 登録免許税
法務局へ相続登記を申請する際にかかる税金です。申請書に印紙を購入して貼り付けて納付します。固定資産税評価証明書の土地の価格に0.4%をかけた金額がかかります。
例)固定資産評価証明書の土地の価格が1000万円の土地を相続登記する場合にかかる費用は?
1000万円(固定資産評価証明書の土地の価格)×0.4%=4万円
Step5 完了
相続登記の申請をして約1週間~2週間くらいで相続登記が完了します。
完了すれば法務局から登記識別情報通知という書類が発行されますが、その書類が土地を売却する際や担保に入れる際に必要になる重要な書類です。
大切に保管しましょう。
不動産の相続手続きに関してもっと簡単に詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック
2章 親の土地を相続する際の注意点、身内で揉めないためにはどうするべきなのか?
残念ながら、私も今まで相続業務に関わる中で、一定数の方は近しい家族同士で争いになっているのを何度も見てきました。
その経験上こうすればと思ったことをお伝えしていきます。
2-1 誰が相続人になるかを把握する
自分とともに誰が相続人になるのかを把握しなければ、相続対策ができません。
まずは、誰が相続人になるのかを必ず調べましょう。
相続順位表
相続順位 | 血族相続人 | 配偶者相続人 |
第一順位 | 直系卑属(子や孫) | 配偶者 2分の1 |
第二順位 | 直系尊属(父母や祖父母) | 配偶者 3分の2 |
第三順位 | 兄弟姉妹 | 配偶者 4分の3 |
上記表を元に相続人を確定させて次に相続割合を計算します。
配偶者の相続割合は相続順位表に記載しています。残りの割合をその順位の相続人で相続します。
例)Aさんは妻Bと長男C、次男Dの4人家族です。相続財産は現金4000万円です。 Aさんが亡くなった場合の相続人と割合及び金額は?
相続人 B C D
相続割合 B 4分の2 2000万円
C 4分の1 1000万円
D 4分の1 1000万円
2-2 兄弟で土地を共有する土地の生前贈与はやめましょう
親が生きている間なら、もめ事は少ないとしても、土地を生前贈与してその内容ややり方がまずいと後々に相続が発生してからもめるケースがございます。
兄弟等で土地が共有になるような生前贈与はやめましょう。残念ながら兄弟は他人のはじまりという言葉もあるように、小さい時は仲が良くても、それぞれ家庭も持ち独立すれば事情も変わってきます。共有はやめるのが正解です。
不動産の分割方法について詳しく知りたい方はこちら
2-3 遺留分に配慮して生前贈与をしましょう。
遺留分とは、相続人の生活の保障のため、最低限認められている取り分のことで、請求すれば必ず補償される制度です。たとえば相続人が子のみの場合は、遺留分は相続割合の1/2となります。
では、父が亡くなり相続人がその子AとBの場合、Aの遺留分割合はどうでしょうか?
【答え】
Aの本来の相続割合は2分の1なので、その2分の1の4分の1が遺留分となります。
土地の生前贈与については、生計を独立した子供に対して生前贈与を行えば、基本的に相続発生時に相続財産として計上しないといけません。そのため、土地の生前贈与はこの遺留分についても計算して行うのがベストです。
2-4 疎遠な相続人がいる場合の遺産分割協議
腹違いの兄弟がいる場合等は、お互いに連絡を取ったことがほとんどないケースが多いでしょう。
しかし、遺産分割協議は相続人全員で協議する必要があるため、連絡をとる必要がどうしても出て来ます。
必要以上に恐れずに誠意をもって接する事を心がけて進めましょう。
相手方も同じように恐れていると思って間違いありませんので、その心をやわらげらればスムーズにいきます。連絡先が分からなければ住民票を取得して住所を調べて、最初はやわらかな文章で相続発生をお伝えするような配慮しましょう。
相手方の心理を考えて行動を起こしましょう。
3章 専門家が教える!親の土地を相続する際に知って欲しい5つのポイント
ちょっとの知識が大きく資産や家族関係に影響します!知っておいて欲しいポイントを5つご紹介いたします。
3-1 親が認知症になる前に相続の話し合いを必ずしましょう
本当によくあるパターンが、親が重度の認知症等になって判断能力が無くなってからあわてて子供の側が何かできることは無いかと動きはじめるパターンです。
結論としては、土地の生前贈与をするという様な相続対策はほぼ何もできません。
親が元気なうちにしっかりと話しあい、親の土地の相続に備えるのが唯一の手段です。
3-2 「節税」ばかりじゃなく「分け方」についてもしっかり話しあおう
相続対策というと「相続税」ばかりにかたよった対策をされる方が多いのは事実です。しかし、税の事ばかりに焦点を当てすぎたことにより、相続発生後に相続人間でトラブルになるケースが多くあります。
例えば、土地を相続税の節税のために生前贈与をする場合に子供たちに共有させたところ、相続発生後にその土地を売却しようとしても意見が一致せず、結局土地が塩漬けになったしまったケースも良くあります。
うまく節税と遺産の分け方のバランスを考えて対策を立てましょう。
3-3 不要な土地を相続したら相続放棄を検討しましょう
意外と多いのが、親の土地を相続したが不要なのでどうすれば良いかという相談です。
田舎のへんぴな場所で売るにも売れないような土地を相続し、それをどうすれば良いかという例です。そのような土地の場合は、国も引き取ってくれる可能性が低くなります。
まずは近隣の方で買ってくれる方がいないかを地元の不動産業者にあたりましょう。
それでもだめなら相続放棄を検討します。しかし相続放棄しても管理責任は残るので最終的には相続財産管理人の選任を家庭裁判所に依頼する事になりますが、費用が100万円近くかかります。
固定資産税がほぼかからない土地ならそのまま置いておくというのも、仕方ありませんが一つの手段でしょう。
3-4 土地の共有はやめましょう!
親が住んでいた土地を相続した場合は、誰も住まなくなり売却されるケースが多くあります。
売却を前提とした土地の遺産分割協議をするポイントは2つです。
ポイント① 登記名義は1人にする
複数の方の共有にしてしまうと、今後の売却手続きに共有者が全員で署名押印等の手続きに関与しなければならなくなるからです。相続人間の仲が悪い場合は全員で登記名義を入れることもありますが、その後の手続きが非常に煩雑になります。また、購入を検討する方も登記名義に多数の方が入っていると嫌がる傾向があります。
売却代金の分け方は遺産分割協議書に記載すればある程度担保されるので、余程お互いが信頼できないという場合でなければ代表の方1人の登記名義にするのがベストです。
ポイント② 高齢者の方の登記名義にするのはなるべく避ける
遺産分割協議で高齢者の方を所有者又は共有者としてしまうと、売却までの間に病気や死亡又は認知症等の発症というリスクが高くなります。
売却活動の間にご高齢の方がご病気になられて、売却までのスケジュールが大幅に狂う原因になってしまったケースを今まで見てきました。なるべく若い方に登記名義を入れるのがベストです。
3-5 相続税の額は税理士により大きく変わる
年間で相続税の申告件数は、平均すると税理士一人あたりで1件あるかどうか、というのが実情です。
自分で申告される方も一定数いらっしゃいますし、相続税を専門であつかっている事務所には案件も集中してますので、実際はほとんど相続税の申告に関わっていないという税理士も多いでしょう。
実務の経験が少ないとどうしても教科書通りの相続税の計算になり、安全策をとり税額が多くなる傾向や進行が遅いケースがあります、依頼されるならそのあたりを見極めて依頼しましょう。
見極めるポイントは、①ホームページに取扱い実績が掲載されているか、②電話で話す際に年に何件くらい取り扱っているかの確認をして最低5件以上を目安にする、といった点が挙げられます。
税理士と言っても全ての税法に精通している訳ではありませんので注意しましょう。
まとめ
この記事では、「親の土地を相続する」ことについて生前と死後のシチュエーションに分けて必要な手続きを中心にご紹介いたしました。
少しの知識が、大切な財産と家族のきずなを守ります。
生前の親の土地の相続はタイミングが重要になります!
親が認知症になってしまって話し合いが出来なくなれば、生前贈与をはじめ相続対策がほぼ全て実行する事が出来なくなります。
お元気な内に必ず話し合いましょう。
残念ながら、親が亡くなって相続をきっかけに兄弟間で調停や裁判になるケースもございます。
兄弟や親子であっても、遺産分割協議は多少交渉という側面がある事は確かです。
ただ、何度も相続の際のもめ事を見てきた専門家の立場としては「スムーズに最後まで手続きを終える」という事が何よりの価値だと感じています。
アドバイスの一つ目としては、①感情に流されずに、ドライに考えるという事がポイントだと思います。相手の立場に立ち譲り合うところは譲り合って、それでも話し合いがつかなければドライに損得(例えば調停・訴訟等になった場合のコスト・手間・時間と少々取り分が減ってもその前者とのコストと比較して考えるような損得勘定)で考えるのも一手です。
二つ目としては、②土地の相続をした後の事(例えば売却)を視野に入れて必ず遺産分割協議をする事です。
本記事を参考にしていただき、無駄な争いにならないよう家族でしっかりと話しあい、安心で円満な相続に備えましょう。
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よくあるご質問
不動産の相続の方法は?
不動産の相続手続きの中でも、「遺産分割による相続登記」の全体の流れを説明します。
①不動産について必要な情報を集める
②戸籍謄本の等の必要書類を集める
③相続人全員で遺産分割協議を行う
④申請手続きに必要な書類を作成する
⑤法務局へ登記申請する
▶不動産の相続手続きはコチラ土地を相続しないとどうなる?
相続した土地をそのままにしておくと、以下のリスクが考えられます。
①固定資産税などの維持費がかかり続ける
②空地や空き家の管理義務を負わなければならない
▶姻族の範囲の図解はコチラいらない土地は相続放棄できる?
相続した土地がいらないとしても、土地だけを相続放棄することはできません。
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続できなくなるからです。
いらない土地だけ手放したいのであれば、相続土地国庫帰属制度の利用も検討しましょう。