空き家管理の3大原則と空き家を所有すると生じるコストとリスク

空き家管理の3大原則と空き家を所有すると生じるコストとリスク
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 4

「実家が空き家になってしまったがどう管理すればいいのだろう」 このような悩みをお持ちではないでしょうか?

他のことにも手がかかるので、空き家の管理はなかなか難しいですよね。

そもそもどうやって管理していけばいいのかもわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でも、適切な管理方法を学べば空き家でもきちんと維持管理することができるのです。

そこでこの記事では、 空き家を適切に管理する方法とその注意点についてご説明します。空き家の管理で困っている方は、ぜひこちらの記事をご活用ください。


1章 空き家の管理方法【3大原則】

人が住んでいなければ家は急速に老朽化していきます。しかし、適切に管理する方法を知っていれば完全に老朽化を止めることはできないまでも、遅らせることができます。ここでは適切な管理方法について学んでいきましょう。

1-1 換気をしっかりする

人が住んでいない空き家が老朽化してしまう一番の原因は湿気です。

家は人が暮らしていないと湿気がたまっていってしまいます。このたまった湿気のせいで、家が腐っていってしまうのです。

これを防ぐには、定期的に換気をすることが大切になってきます。定期的に空気を入れ替えてあげることで、家のなかにたまった湿気を逃がしてあげる事が必要です。

換気をするときには注意点があります。とくに靴箱、押し入れ、クローゼットなどは湿気が溜まりやすいです。このようなところを徹底的に換気するとより効果的です。

1-2 通水をしておく

空き家を管理するために通水も欠かせません。というのも水道を使わずに放置してしまうと、水道管が錆びてきてしまいます。するとその錆が原因となって水道管が破裂してしまう事も起こりえるのです。

通水の必要性はそれだけではありません。長い間水道を使わずに放置しておくと、水道管のなかにある水が蒸発して乾いてしまいます。結果として、下水管からの空気が水道管を伝って流れ込み、家のなかの悪臭を招くことにもなるのです。

最悪の場合、水道管から害虫やネズミや侵入することもあります。こうなることを防ぐために、定期的に通水をして、異変が無いかどうか確認する必要があるのです。

最低でも1か月に1回くらいは通水の確認をしなければなりません。

チェックすべき点は、水の出方は悪くないか、錆びが混じったような赤茶色の水が出ないかなどです。通水は1分くらい水を出しっぱなしにして行います。

1分程度水を出すだけでも水道管に新しい水が送りこまれるので乾くことを防止できます。同時に錆びやなにかしらの異常が無いかを確認することが可能です。

1-3 雨漏りしていないか確認する

もし、空き家で雨漏りしていたら大変です。そのまま放置しておくと、壁や畳に大量のカビが発生します。そのうえ、天井や柱の木造部分を腐らせてしまう原因にもなり、資産価値の大幅な低下を引きおこしてしまいます。

雨漏りしているかどうかは壁紙の一部が剥がれていたり、天井にシミがあったりすることで見極めることができます。

空き家を見に行くときには欠かさずチェックするようにしましょう。

とはいえ、雨漏りのやっかいなところは気づかずに進行していることもあるという点です。雨漏りを実際に発見した時点で、既に悪化している場合もあります。

ある日空き家を覗いてみたら、クローゼットや押し入れにカビが発生していたり、部屋に入った時に悪臭があるときは雨漏りしていることを疑ってみるべきです。

雨漏りは悪化するまで発見することが難しく、また仮に見つけたとしても自分で修理するのは難しいことが多い厄介なものです。

少しでも早く見つけるためにもこまめに確認してみましょう。

1-4 掃除

空き家でも掃除はきちんとおこないましょう。室内の掃き掃除から庭の手入れまできちんとしておくことが大切です。

特に庭の手入れは重要です。庭を放置したままだと害虫が発生する原因となったり、近隣住人とのトラブルになることもあります。

庭をそのまま放っておくと、どんどん雑草が生い茂っていきます。すると、庭に生い茂った雑草が害虫たちの家になってしまうこともあるのです。

こうして大量に発生した害虫は、家や近隣にも悪影響を与えることがあります。

また、自分の家の敷地からはみだした雑草や樹木を隣の家の人は勝手に切ることができません。場合によってはそのことがもとで、近隣トラブルに発展してしまう、なんてことも起こりえます。

もし、遠くに住んでいてなかなか空き家の庭の手入れができないというのなら、防草シートや除草剤などを活用することも一つの手です。

空き家 管理

1-5 その他

1.雨樋や外壁などの確認

塗装の剥がれ、ひび割れやカビなどを確認しましょう。

2.近隣の確認

近隣の変化や境界付近の異常などを確認します。

3.防犯上の管理の確認

長い間放置されている空き家は、犯罪に巻き込まれる危険性もあります。

たとえば空き家に知らない人が住み着く、放火の被害に遭う、または犯罪の拠点として使われるというこも少なくありません。

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2章 空き家を所有するコストとリスク

空き家を所有するにはどうしてもコストがかかります。それは空き家を管理する時間的なものだったり、税金などの費用的なものだったります。

ここでは空き家を維持する上でかかってくるコストとそのリスクについて説明します。

2-1 固定資産税

空き家はたとえ誰もそこに住んでいなくても、その不動産を所有しているひとに固定資産税がかかってきます。

固定資産税は毎年1月1日の時点でその不動産を所有している人に納税義務があります。固定資産税の税率はほとんどの地域で1.4%ほどですが、都道府県や市町村で税率を定めることができるので、税率が異なる地域も存在します。

ただし、固定資産税は不動産の上に(空き家であっても)家が建っていると軽減税率が適用されます。その土地に建物があれば評価額が軽減されるから、固定資産税も安くなるというわけです。

空き家の固定資産税は最大6倍!高くなるケースや対処法を解説

2-2 特定空き家に指定されてしまう

特定空き家とは2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」で新しく規定された空き家のことです。具体的には、

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

だと思われる空き家のことを指します。

この特定空家に指定されてしまうと、土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなるなど、所有者にとっても大きなデメリットがあります。ですから空き家の管理をきちんとおこなわないといけないのです。

2-3 管理費用

空き家の管理をわざわざ自分たちで行うのは面倒と感じられるかもしれません。空き家の管理は意外にやるべきことが多く、手間がかかります。

そこで空き家管理サービスを使うこともあるでしょう。その場合、どうしても費用がかかってしまいます。費用は会社やプランによってマチマチですが、概ね月々5,000円~10,000円程度です。例えば管理サービス大手の大東建託管理を例にしてみましょう。

通水や喚起など空き家の管理をすべてやってもらうということになると、月々10,800円(税込み)ほどになります。庭の手入れだけなど限定的な管理ですと月々5,400円(税込み)くらいになります。

また、どうしても費用を抑えたいということでしたらNPO法人空き家・空き地管理センターの100円管理サービスというものもあります。こちらは月当たり100円という価格で空き家を管理してくれるサービスです。ただ、基本サービスに含まれる内容は少なく、オプションで必要な項目を追加していくスタイルになっています。自分で必要なサービスをオプションでつけていくという方針になります。

ただし、このような空き家管理サービスを利用したとしても空き家の老朽化を完全にとめることはできません。

空き家管理サービスはたしかに定期的に空き家を管理してくれますが、その頻度はせいぜい月に1回程度です。頻度が低いですから、いくら管理しているとはいえ、防犯のリスクや空き家の老朽化を完全に防ぐことができるわけではありません。

空き家 管理

2-4 住宅用火災保険が使えない

多くの火災保険は、空き家だと加入できません。たとえ、以前入っていた火災保険に継続して加入してるとしても、空き家の場合、実際に保険金が支払われるというのはまれなようです。

たしかに、空き家であっても以前加入していた火災保険をそのまま継続しておくことは可能です。火災保険会社は、住民票などをチェックしているわけではありませんから、本当なら所有者の変更や住所変更などを保険会社にきちんと伝えなければいけません。ですから空き家になっていることをこちらから保険会社に伝えなければ保険会社は空き家になったことを知らず、そのため継続して保険料の支払いができてしまうのです。

しかし、多くの火災保険は空き家は保証の対象外となっていますから、仮に保険料を払い続けていたとしても、たとえ火災になったとしても保険金が支払われない可能性があるということになります

空き家 管理

相続する不動産によってはその不動産独自のお金がかかってくることもあります。もし仮に、相続する不動産がマンションだった場合、そのマンション全体で支払う修繕積立金や管理費なども月々かかるでしょう。

また、もしも相続する空き家に住宅ローンが残っていたら、その負債も一緒に相続しることになります。この場合、住宅ローンの支払いもかかってきます。


3章 家の売却したときのメリット

空き家を所有しているとどうしても一定のコストとリスクがあります。これを避けるためには空き家を売却するというのも一つの手です。ここでは空き家を売った時のメリットについてみていきましょう。

3-1 管理コストとリスクの消滅

空き家を売却すれば、さきほどのコストとリスクはなくなります。

わざわざ空き家を管理するために家に赴いて通水や換気をする必要もありませんし、管理会社にお願いをすることもありません。

また、家は将来的に値下がりする可能性もありまし、そもそも売れるときに売っておかないといざ売りたいと思っても売れないなんてこともあります。

このようなコストとリスクを無くせるのですから空き家を売るというのも一つの手でしょう。

3-2 空き家売却の優遇税制もある

2015年5月より「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称・空家法)」が制定されました。これにより、家を相続して、その家を売却したときにかかる税金の一部が控除されるようになったのです。

亡くなったひとが暮らしていた家を相続した相続人は、その家を取り壊して土地を売った場合、その家、もしくはその土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除してもらえる、というものです。ちなみにこの控除が受けられるのは相続日から3年を経過する日が属している年の12月31日までです。

このように税制上の優遇処置もありますので、空き家の売却も選択肢の一つとして考慮してみるのもいいかもしれません。

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まとめ

たとえ空き家でも価値があります。資産的な価値はもちろんですが、思い出などの値段が付けられない価値もあります。

自分で手入れするのもいいですし、管理会社にお任せするのもいいでしょう。または売ってしまうというのもいい判断です。

しかし、どちらにせよ、空き家を放置するというのは一番避けるべきです。たとえ今すぐに答えが出せないとしても、相続した空き家の所有にはコストとリスクが存在します。

そのことを踏まえて空き家の運用や活用方法はご家族と話し合って今後も検討していって下さい。

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