認知症の人が相続人になったときに起きうる5つの問題と対処法まとめ

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重度の認知症になってしまうと「意思や判断能力」を失ってしまいます。
そのため、認知症の人が相続人になった場合、遺産分割や相続手続きをスムーズに進められなくなる可能性があります。

例えば、父が亡くなった時点で、母が認知症になっているようなケースです。

なぜなら、認知症などにより判断能力を失った人は遺産分割協議や相続放棄等といった法律行為ができなくなるからです。
もちろん家族による代理行為もできないので「相続手続きを放置」するか「成年後見制度を活用」して手続きを行うかの二者択一になってしまいます。

認知症患者が相続人の一人になったときに困らなくてすむように、相続発生前から準備をしておくことが大切です。
本記事では、認知症の人が相続人になったときに発生しうる問題や対処法を解説していきます。


1章 認知症の人が相続人になったときに起きる問題

相続人の一人に認知症患者がいるときには、他の相続人含めて相続手続きをスムーズに進められなくなる可能性があります。
認知症患者が相続人になったときに起きうる問題は、以下の5つです。

  1. 認知症の人は遺産分割協議に参加できない
  2. 家族でも勝手に代理で遺産分割協議を進められない
  3. 認知症になった相続人を外して行った遺産分割協議は無効
  4. 家族が勝手に署名押印するのは犯罪になる恐れがある
  5. 認知症の人は相続放棄すらできない

それぞれ詳しく解説してきます。

1-1 認知症の人は遺産分割協議に参加できない

遺産分割協議とは、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を決める話し合いです。
遺産分割協議も重要な法律行為のひとつであり、判断能力を失っている認知症患者は遺産分割協議に参加できません。

【遺産分割協議】大原則ルールと知っておくべき注意点や協議の進め方

1-2 家族でも勝手に代理で遺産分割協議を進められない

家族であっても、認知症になった人の代理として遺産分割協議を進めることはできません。
家族といっても「法律上の正当な代理権」を与えられていないので、代わりに遺産分割を進める根拠や権限がないからです。

1-3 認知症になった相続人を外して行った遺産分割協議は無効

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるので、認知症患者のみを外して行った遺産分割協議は無効になってしまいます。
なお、遺産分割協議は相続人全員が判断能力を持って参加する必要があります。
認知症になっても相続権を失うわけではありませんが、遺産分割協議には参加できません。

1-4 家族が勝手に署名押印するのは犯罪になる恐れがある

代理権のない人(家族)が認知症患者のかわりに署名押印をすることは、認められていません。
私文書偽造罪に該当してしまう恐れもあるので、いくら子供などの家族であっても認知症になった人の代わりに署名押印するのは絶対にやめましょう。

1-5 認知症の人は相続放棄すらできない

認知症の相続人がいる限り遺産分割協議を進められないのであれば、最終手段として本人に「相続放棄」させる方法が考えられます。

しかし、認知症が進行して意思能力が失われている方の場合には、相続放棄すらできません。
相続放棄も一種の法律行為であり認知症で判断能力が失われている状態では、本人がその内容をきちんと理解しているとはいえないからです。

【相続放棄の手続き完全版】流れ・費用・必要書類・注意点を簡単解説

以上のように、認知症の人が相続人の一人になっている場合には遺産分割協議も進めることができず、かといって本人を外すこともできず、遺産相続手続きがまったく進まない状態に陥ってしまいます。

そのため、家族や親族に認知症の人がいる場合には、相続発生前に対策をしておくのがおすすめです。
次の章では、認知症患者が相続人になりそうなときにしておきたい対処法を紹介していきます。


2章 相続人になりそうな認知症の人がいるなら遺言書がおすすめ

先ほど解説したように、相続人に重度の認知症の方がいる状態で相続が発生してしまったら、相続人たちは大変困った事態に陥ってしまいます。
そのような事態を防ぐために、認知症の人が相続人になりそうなときには、事前に対策しておくのが重要です。
対策方法として特におすすめなのは、遺言書を用いた相続対策です。詳しく確認していきましょう。

認知症/相続対策は事前準備が決め手!知らないと損する相続対策4選

2-1 遺言書で認知症の人以外の相続人に遺産を相続させる

遺言書を作成しておけば、認知症の人以外の相続人に遺産を相続させられます。

遺言書を作成すると、遺産の承継先を自由に指定できます。
認知症の相続人を外してすべての遺産相続方法を指定しておけば、死後に相続人たちが遺産分割協議をする必要がなくなります。
結果として、認知症の相続人がいてもスムーズに相続を進められるでしょう。

なお、遺言書を作成するときには、認知症の人が遺産を相続しないように記載しておきましょう。
もしも認知症の相続人に相続させると、認知症の相続人が不動産の登記などの申請をする際に自分でできないので問題が発生します。
結局、相続登記等の手続きを行うために成年後見人などの選任が必要になり、手間や費用がかかってしまいます。

はじめから認知症の相続人がいることがわかっているのなら、認知症の人を外して遺産を相続させるのが賢いやり方です。

遺言書に認められる10個の効力と遺言書が無効になるケースを解説

2-2 認知症の人にも財産を遺すなら遺言執行者を指定する

父が亡くなって認知症の母が相続人になるケースなどでは、認知症の母親にも自宅などの不動産を相続させたいニーズがあるものです。
遺言書で認知症になった相続人に財産を遺すように記載したいのであれば、遺言執行者を指定しておきましょう。

遺言執行者とは、遺言に書かれている内容を実現する役割を負う人です。
相続人として指定された人の代わりに不動産の名義を書き換えたり預貯金の払い戻しを行って本人に渡したりします。

認知症の人にも相続財産を遺すなら遺言執行者を指定しましょう

遺言執行者さえ選任しておけば、認知症になった人のかわりに、遺言執行者が相続手続きを行ってくれます。
遺言執行者は遺言によって指定できますし、相続人のうち一人を遺言執行者に指定することも可能です。
ただし、認知症の人を遺言執行者に指定すると、認知症である故に遺言執行も困難となるので、必ず別の人を指定しましょう。

例えば、父親が被相続人、相続人として認知症の母親と子どもたちがいる場合には、子供たちのうち一人を遺言執行者に選任しておくとスムーズに進むケースが多いでしょう。

遺言執行者とは|誰がなれる?選任方法や仕事内容を徹底解説【完全版】

2-3 遺言書を作成するときの注意点

遺言書を作成するときには、いくつか注意すべき点があります。

  1. 公正証書遺言を利用する
  2. すべての遺産の相続方法を指定する

それぞれ詳しく解説していきます。
最悪の場合、遺言書が無効になってしまう、遺産分割協議が必要になってしまう等の恐れもあるので、ご注意ください。

公正証書遺言を利用する

遺言書を作成するときには、必ず「公正証書遺言」を利用しましょう。
公正証書遺言とは、公証人が公文書として作成してくれる遺言書です。
公正証書遺言を作成するメリットは、以下の通りです。

  • 公文書なので信頼性が非常に高い
  • 作成時には本人確認が行われるので偽造リスクを下げられる
  • 原本は公証役場で保管されるので、書き加えや隠ぺいなどのトラブルも起こらない

被相続人の死後に確実に遺言内容を実現するには、公正証書遺言が最も適切です。
公正証書遺言を作成したいときには、お近くの公証役場に申し込みをして2名の証人を用意し、公証役場で遺言書への署名押印の手続きをします。
証人を用意できない場合、公証役場から紹介してもらうことも可能です。

元気なうちに遺言書を作成しておくのが良いですが、被相続人が寝たきりの状態であっても公証人に出張してきてもらって遺言書を作成することも可能なので、早めに申し込みをしましょう。

公正証書遺言の作成にかかる費用を徹底解説【計算チェックリスト付】
公正証書遺言の証人資格・準備方法・必要物・当日の流れ・責任とは?

すべての遺産の相続方法を指定する

遺言書によって遺産の相続方法を指定するとき、「漏れなくすべての遺産相続方法を指定する」ことが重要です。

たとえば「○○の不動産は妻に、××の預貯金は長男に」などと個別に指定していても良いのですが、「漏れ」が発生してしまうと、遺言によって指定されなかった遺産については「遺産分割協議」が必要になってしまいます。
すると認知症の相続人がいる限りその遺産を分けられないため、放置するか後見人を選任するしかありません。

認知症の相続人がいても相続手続きをスムーズにすませるために、遺言書を作成した意味がなくなってしまいます。
そのため、遺言書によって相続方法を指定するときには、漏れのないように以下のように記載しておきましょう。

「○○の不動産は妻、××の預貯金は長男、△△の株式は次男、その他の遺産はすべて長男に相続させる」

「その他の遺産はすべて~」の部分を追加することで、「指定されていない遺産」が生じなくなってトラブルを防止できます。

これで遺言書が作成できる!遺言書の書き方・作成手順・注意点まで

3章 すでに認知症の人が相続人になってしまったときの対処法

遺言書の作成等の相続対策が間に合わず、すでに認知症になった人が相続人の一人になってしまったときの対処法は、主に以下の3つです。

  1. 認知症の症状や程度を診断してもらう
  2. 法定相続通りに遺産分割を行う
  3. 成年後見制度を活用する
  4. 認知症の人が亡くなるまで相続手続きを放置する

ただし、上記の中でも相続手続きの放置はあまりおすすめできる対処法ではありません。
それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 認知症の症状や程度を診断してもらう

認知症の人が相続人の一人になってしまったときには、まずは認知症の症状や判断能力がどれくらい残っているかを医師に診断してもらいましょう。
認知症の症状には個人差が大きく、判断能力を完全に失っている人もいれば、「物忘れが激しくなってきた」等の比較的軽度の症状の人もいるからです。

認知症の症状が軽度である場合には、判断能力が残っているとされ、遺産分割協議や相続手続きを行える可能性があります。
ただし、認知症の症状は本人や家族が判断することは難しいので、かかりつけ医等の診断を受けておきましょう。

また、もし軽度の認知症と診断され、相続手続きができそうな場合には、スムーズに手続きを進めるためにも司法書士等の専門家に手続きを依頼してしまうのもおすすめです。

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3-2 法定相続割合に応じて遺産分割を行う

相続人の一人が重度の認知症であると判断された場合でも、法定相続分による分け方であれば遺産分割を行えます。

法定相続分とは、民法が定めている原則的な相続方法です。
法定相続分で遺産分割を行えば、現金や預貯金はすべて法定相続分どおりに分け、不動産は法定相続分に応じた共有状態になります。

ただし、共有状態では、不動産を活用することが困難です。
共有者全員の合意がないと、抵当権を設定したり増改築を行ったり売却、建物の取り壊しなどの処分はできません。
認知症の人が共有持分を持っている限り、有効な合意をとれないので不動産を放置するしかなくなります。

相続権とは?|法定相続人の範囲と相続割合をわかりやすく解説
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3-3 成年後見制度を活用する

成年後見制度とは、家庭裁判所に申し立てをして「後見人」を選任してもらい、本人の代理人として財産管理を行ってもらう制度です。

すでに認知症の人が相続人になってしまったときの対処法、成年後見制度位を利用。成年後見制度の全体像

上記の図のように、成年後見制度には2種類ありますが、認知症の症状が進行している人が利用できるのは法定後見制度のみです。

本人が認知症であっても後見人が選任されれば、後見人が正当な代理権を持つ代理人として遺産分割協議や相続登記を進められます。
ただし、法定後見を利用すると、遺産分割協議が終わった後も本人が死亡するまで一生その後見人が本人の財産を管理します。

弁護士や司法書士が選任されると、毎年30~60万円程度の報酬が発生するので将来の遺産も目減りします。
また、家庭裁判所の監督下で財産管理が行われることもあり、柔軟な対応は難しくなります。

このように成年後見制度にはデメリットも多いので、利用するかどうかは慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

【成年後見人とは?】現役の成年後見人である司法書士が徹底解説!

3-3 認知症の方が亡くなるまで相続手続きを放置する

法定相続分による相続にも、成年後見制度にもそれぞれ大きなデメリットがあります。
それであれば、いっそのこと何もしないで認知症の相続人が亡くなるまで放置することも考えつくかもしれません。

しかし、放置すると不動産が被相続人名義のままになり、預貯金なども一切払い戻しをしないので、世間的には「誰の所有物か、誰の預金か」がわからなくなって混乱が生じる可能性が高くなります。

相続人の一人が勝手に自分の持分だけを第三者に売却してトラブルになる可能性もないとはいえないので、放置はあまりよい方法ではありません。

また、2024年より相続登記は義務化されるので、認知症の人が相続した土地を登記せずにそのままにしていると、罰則の対象になってしまいます。

【不動産の名義変更(相続登記)していない方は司法書士へ相談しよう!】

相続登記は2024年より義務化されるので、認知症の人が相続した土地を未登記の状態のまま放置することはできません。
認知症の人が土地を相続している場合には、成年後見制度の活用等を検討し、早めに相続登記をすませておきましょう。
司法書士であれば、成年後見制度の手続きや相続登記を代行できます。

相続登記の義務化に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

相続登記の義務化は2024年4月!法改正で変更される4つのポイント


まとめ

認知症の人が相続人の一人になってしまうと、遺産分割協議への参加ができず他の相続人も含め、相続手続きが滞ってしまう恐れがあります。
また、遺産分割ができたとしても、認知症になった人は相続登記等の手続きを行うことができず、相続した財産の管理を行うことも難しいでしょう。

このような問題を回避するために、家族や親族に認知症の人がいる場合には、遺言書を作成し認知症の人以外に財産を遺すようにしておくのがおすすめです。
認知症の人以外に財産を遺すように遺言書に記載しておけば、遺産分割協議の必要がなくなります。

また、すでに認知症の人が相続人の一人になってしまっている場合には、法定相続分で遺産分割を行うか成年後見制度を活用するしか選択肢はありません。
どちらもデメリットが大きいので、自己判断が難しい場合には相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

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