- 相続登記の際にかかる登録免許税とは
- 相続登記の際にかかる登録免許税の計算方法
- 相続登記の際に登録免許税を納める方法
故人が遺した不動産を相続したときには、相続登記、すなわち不動産の名義変更手続きが必要です。
相続登記の手続きでは、登録免許税という税金がかかりますが、不動産評価額から計算して納付する必要があります。
また登録免許税は自動で計算されるわけではなく、相続登記時に自分で計算しなければなりません。
相続登記の手続きは登録免許税の計算や納付だけでなく、登記申請書の作成や必要書類の収集などを行わなければならず、大変手間がかかります。
自分で相続登記を行うのが難しい場合やミスなく手続きを終えたい場合は、司法書士に相続登記を依頼可能です。
本記事では、相続登記時の登録免許税の計算方法や納付方法をわかりやすく解説します。
相続登記に関しては、下記の記事もご参考にしてください。
目次
1章 相続登記の登録免許税とは
登録免許税とは、不動産の名義変更手続きを行うときに課税される税金です。
不動産の名義変更手続きは不動産を購入、取得したときだけでなく、相続によって故人から相続人に名義変更するときにも行う必要があります。
相続によって不動産の名義変更手続きを行うことを「相続登記」と呼び、相続登記にかかる登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」で計算します。
なお、登録免許税は不動産の名義変更時にかかる税金であり、相続税とは別物です。
そのため、相続税を申告、納税した人も相続登記時には登録免許税がかかります。
2章 相続登記の登録免許税を計算する方法
登録免許税の金額は不動産の価値によっても変わりますし、登記する理由によっても変わります。
相続登記の際にかかる登録免許税を計算する流れは、下記の通りです。
- 相続した不動産の固定資産税評価額を調べる
- すべての不動産の評価額を合算する
- 合算額のうち1,000円未満の端数を切り捨て課税標準額を計算する
- 課税標準額に税率0.4%を掛ける
- 税額のうち100円未満の金額を切り捨てる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
STEP① 相続した不動産の固定資産税評価額を調べる
まずは、相続した不動産の固定資産税評価額を調べましょう。
相続登記の登録免許税は「相続した不動産の固定資産税評価額×0.4%」で計算するからです。
固定資産税評価額は、下記の方法で調べられます。
- 課税明細書
- 固定資産評価証明書
課税明細書とは、毎年4~5月頃に送られてくる固定資産税の納税通知書(振込用紙)についてくる書類です。
課税明細書には不動産の固定資産税評価額が記載されており、見本は下記の通りです。
故人宛に届いた課税明細書が見つからない場合は、固定資産評価証明書を用意する必要があります。
固定資産評価証明書とは、各市町村が管理している不動産評価額などの情報が記載された証明書です。
自治体ごとに細かいフォーマットは異なりますが、下記のサンプルに近いものが発行されます。
固定資産評価証明書は市役所の市税課や政令指定都市クラスの市税事務所にて発行可能です。
固定資産評価証明書の発行方法は、下記の通りです。
発行できる人 |
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発行先 |
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発行費用 | 1物件300円程度 |
必要書類(相続後に取得するとき) |
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なお、登録免許税の計算に使用する固定資産税評価額は最新のものを使用しなければなりません。
そのため、固定資産評価証明書を取得する際は、最新年度のものを用意しましょう。
STEP② すべての不動産の評価額を合算する
相続した不動産の固定資産税評価額がわかったら、すべての不動産の固定資産税評価額を合算しましょう。
- 固定資産評価額1,327万8,421円の建物
- 固定資産評価額2,112万3,974円の土地
- 固定資産評価額376万5,923円の土地
例えば、上記の不動産を相続して名義変更手続きをする場合は、3,816万8,318円の不動産に対して登録免許税がかかります。
STEP③ 合算額のうち1,000円未満の端数を切り捨て課税標準額を計算する
不動産の固定資産税評価額を合算したら、1,000円未満を切り捨て課税標準額を計算しましょう。
例えば、先ほどの例である3,816万8,318万円であれば、課税標準額は3,816万8,000円です。
なお、市区町村によっては固定資産評価証明書に記載されている評価額が、最初から1,000円未満の端数を切り捨てた額で記載されている場合もあります。
STEP④ 課税標準額に税率0.4%を掛ける
相続登記の登録免許税は「課税標準額×0.4%」で計算できます。
そのため、課税標準額が3,816万8,000円であれば登録免許税は「3,816万8,000円×0.4%=15万2,672円」が登録免許税の金額です。
STEP⑤ 税額のうち100円未満の金額を切り捨てる
最後に計算した登録免許税のうち、100円未満の金額は切り捨てます。
先ほど例であれば、15万2,600円が最終的な登録免許税の納税額です。
3章 相続登記の登録免許税が一律1,000円になるケース
本記事の2章で解説した登録免許税の計算方法は、一般的な建物や土地を相続したときの計算方法です。
一方で、相続した不動産の価値が低く登録免許税が1,000円未満の場合は、税額が1,000円未満の場合は一律1,000円の登録免許税を納めなければなりません。
登録免許税の最低税金額は1,000円と定められているからです。
田舎の土地を相続したケースなどでは、不動産の価値が低く登録免許税が1,000円未満になる場合もあります。
4章 【注意】固定資産税がかからない土地を相続した場合も登録免許税がかかる
固定資産税がかからない土地であっても、登録免許税の課税対象になるので注意が必要です。
固定資産税がかからない土地とは、私道や墓地など公共性の高い土地などです。
固定資産税評価額がわからない土地を相続した際、登録免許税の計算が複雑になるので、自分で登記申請を行うのではなく司法書士に依頼するのがおすすめです。
5章 相続登記時の登録免許税の納付方法
登録免許税は現金で納付するのではなく、金額分の収入印紙を購入して登記申請書に貼り付けて法務局に提出するかオンラインで納付します。
ただし、オンラインで納付する場合、相続登記の申請もオンラインで行う必要があり、手続きのハードルが上がる点に注意しなければなりません。
収入印紙を購入できる場所は、主に下記の通りです。
- 郵便局
- コンビニ
- 一部の法務局
なお、小さい法務局では収入印紙の販売を行っていない恐れがあるのでご注意ください。
コンビニでは200円程度の少額の収入印紙しか購入できないので、郵便局での購入がおすすめです。
6章 相続登記時の登録免許税の免税措置
相続登記時の登録免許税には、2つの免税措置が用意されています。
適用要件を満たせば登録免許税を節税できるので、不動産を相続したときには確認しておきましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
6-1 相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した場合
相続により土地を取得したものの相続登記前に亡くなったケースなどでは、複数代にわたり土地の相続登記が行われていない場合もあります。
このような土地は相続登記の中間省略が認められておらず、過去の相続分も名義変更手続きが必要です。
しかし、令和7年3月31日までに相続登記を行えば、すでに亡くなった相続人へと名義変更する相続登記に関しては登録免許税が課税されません。
ただし、登録免許税の免税を受けるには「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と登記申請書に記載する必要があります。
なお、先祖代々土地の名義変更が行われていない場合、必要書類の数が増え収集自体が難しいこともあるでしょう。
自分で手続きするのはあまり現実的ではないので、司法書士に依頼することをおすすめします。
6-2 相続した不動産の価額が100万円以下の土地の場合
相続もしくは遺贈によって取得した土地の課税標準額が100万円未満の場合、令和7年3月31日までに登記申請をすれば登録免許税がかかりません。
まとめ
土地や建物などの不動産を相続したときには名義変更手続きが必要であり、法務局で手続きをする際には登録免許税がかかります。
相続登記の登録免許税は「相続した不動産の固定資産税評価額×0.4%」で計算します。
固定資産税評価額が決められている土地であれば自分で登録免許税を計算できますが、固定資産税がかからない土地を相続した場合は計算が複雑になるので司法書士への依頼をご検討ください。
また相続した土地が先祖代々名義変更されていなかった場合は、すべての相続に対して登記申請が必要であり、手続きに手間と時間がかかります。
このような複雑なケースは自分で相続登記を行うことが難しいので、司法書士に相談しましょう。
グリーン司法書士法人では相続登記に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですのでまずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
相続登記の登録免許税はいくら?
相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額×0.4%で計算できます。
▶相続登記にかかる登録免許税について詳しくはコチラ相続登記の登録免許税はいつ払う?
登録免許税は、収入印紙を購入し、それを名義変更の申請書に張り付けて法務局へ支払います。
▶相続登記の登録免許税の納付方法について詳しくはコチラ相続登記の登録免許税はどこで払いますか?
登録免許税は現金で納付するのではなく、金額分の収入印紙を購入して登記申請書に貼り付けて法務局に提出することで納付します。
▶登録免許税の納付方法について詳しくはコチラ相続登記の登録免許税を用意できないとどうなる?
相続登記の登録免許税を用意できないと登記申請を行うことができません。
なお、2024年4月から開始される相続登記の義務化では、正当な理由があれば相続登記をしていなくても過料の対象にならないと決められています。
そして、正当な理由のひとつには「相続登記の義務者が登記申請の費用を用意できないケース」も含まれるとされています。
したがって、経済的に困窮していてて登録免許税を用意できない場合は、相続登記義務化違反の過料が発生しない可能性が高いです。