
「相続登記ってどれ位のお金がかかるの?」
人生のうちで1回か2回しか経験しない相続登記という手続きにかかる費用について、多くの方がそんな疑問を持っています。
相続登記を仕事として何百件も処理してきた、司法書士の私が「誰でも・すぐ分かる」を心がけて解説していきます。
- 相続登記に必ず必要になる戸籍等必要書類の取得費
- 相続登記を法務局に申請する際にかかる登録免許税
- 相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬
主に上記の3点が、相続登記の費用の内訳になります。
本記事をお読みの方が、分かりにくい相続登記の費用について理解して頂き、損をしない選択ができるようになって頂ければ幸いです。
0章 相続登記とは
相続登記とは、不動産を所有されている方が亡くなると、その不動産の名義を相続人に変える為に必要になる手続きです。相続登記をいつやるかについて、これまでは特に期限はありませんでした。
しかし、令和3年(2021年)に相続登記義務化の法案が可決され、令和6年(2024年)までに施行予定となっています。このため、次の相続が発生した時には義務化されている可能性が高いでしょう。今のうちから、なるべく早く手続きをされるのがオススメです。
相続した不動産を売却されるとき等は、必ず相続登記が必要になりますので慌てて相続登記をする事にならないよう事前に進めておきましょう。
相続登記についての詳しい解説はこちら
1章 相続登記にかかる費用
相続登記を行うには、様々な費用が発生します。その中には自分で手続きを全て行ったとしても、必ずかかる費用と、司法書士に依頼する場合にかかる報酬があります。本章では相続登記をする上で必ずかかる費用について説明します。
1-1 相続した不動産を調査する為にかかる費用は約2000円~3000円
相続した不動産を調査するためにかかる費用があります。不動産の数が増えれば、その分調査費用も増えます。自宅のみを亡くなられた方が所有していた場合の調査にかかる費用は、約2000円~3000円位の場合が多いです。
その内訳を下記に記載いたします。
① 名寄せ帳の費用→ 殆どの役所で一通300円(無料の役所もあります)
この書類は相続した不動産に、漏れや間違いが無いか調査する為に取得します。取得先は、相続した不動産がある市町村役場です。
② 固定資産評価証明書の費用→地域により異なりますが、不動産一件につき数百円
この書類は相続した不動産の評価額を調査する為に取得します。評価額は、相続登記申請の際の登録免許税の計算に使用します。取得先は、相続した不動産がある市町村役場です。
③ 登記事項証明書の費用→一通あたり600円
この書類は相続した不動産に、抵当権等の担保が付いていないか、他に共有者はいないか等の権利関係を調べる為に取得します。取得先はお近くの法務局です。
1-2 相続登記の申請に必要な書類を集める為にかかる費用は約1万円~3万円
相続登記を申請する際にはケースごとに様々な書類を用意しないといけません。その中で主に費用がかかるのが、戸籍や住民票等の取得費用です。この費用は、相続人の人数が増えれば増える傾向にあります。
総額で約1万円~3万円位の費用が必要になる事が多いです。
その内訳を下記に記載していきます。
| 書類 | 取得費用 |
●亡くなられた方の書類関係 | ||
① | 亡くなられた方の出生から死亡までのつながりの付く戸籍謄本等 | 1通450円~700円 |
② | 亡くなられた方の住民票の除票 | 1通200円~400円 |
●相続される方の書類関係 | ||
③ | 相続人全員の戸籍謄本 | 1通450円位 |
④ | 不動産を相続される方の住民票 | 1通200円~400円 |
⑤ | 相続人全員の印鑑証明書 | 1通200円~400円 |
●共通してかかる費用 | ||
⑥ | 取得の郵送費(往復分必要) | 1件あたり500円前後 |
取得先は全て、市町村役場です。この中で一番手間と費用が必要なのは①の亡くなられた方の戸籍謄本等の取得です。司法書士に依頼する場合は⑤の印鑑証明書以外は全て代行して取得してもらえます。
1-3 相続登記を法務局に申請する際にかかる費用
相続登記を法務局に申請する際に、「登録免許税」という税金がかかります。
1-1で取得した、固定資産税評価証明書の中にある、固定資産評価額に0.4%をかけた金額を納付しなければなりません。
例えば、評価額が3000万円の土地があり、その土地について相続登記申請するなら、3000万円×0.4%で登録免許税は12万円になります。
登録免許税についての詳しい解説はこちら
1-4 相続登記の司法書士報酬の相場
相続登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬が必要になります。
1-4-1 一般的な相場は約6万円~9万円
不動産の数や評価額、地域により報酬額は変わりますが、一般的な(自宅のみ評価額2000万円位)相場としては6万円~9万円の間位でしょう。
ここで言う報酬部分は相続登記申請の報酬ですので、他に不動産の調査や、遺産分割協議書作成等も一緒に依頼すると9万円~15万円位になります。
ちなみに当ブログを運営するグリーン司法書士法人は、相続登記申請のみなら約6万円位が平均になります。
1-4-2 どこまで頼むかで報酬は変わる
相続登記を行う場合は、登記申請以外にも事前に調査や戸籍取得等の作業が必要になります。司法書士に依頼すれば、ほとんどの部分を代行して取得してもらえて、遺産分割協議書等の書類も作成してもらうことができます。
報酬を少しでも下げて節約したい方は、ご自身で書類収集等を行えばその分報酬を安く上げる事も可能です。
時間が有る方や、勉強してみたいという方ならオススメです。ただし、戸籍取得等も難易度は少し高いですので節約額と比較して検討して下さい。
1-4-3 司法書士からの見積書には実費と報酬があるのを知りましょう
司法書士からの見積書に関しては、人生で何回も見るものでは有りませんので、中々理解しづらい部分が有るでしょう。まずは下記に当事務所の、相続登記の際の見積書のサンプルを掲載します。
上記見積書の中の、①が報酬部分で②が実費部分(自分でした場合でも必ず発生する費用)となります。基本的には②の実費の部分はどこに依頼しても変わらないものです。
1-5 相続登記の費用総額の計算例
例えば、評価額3000万円の土地を遺産分割協議を経て相続登記をするケースの場合の相続登記にかかる費用の総額はどれくらいでしょうか?
① 不動産調査費・・・1200円
② 戸籍等取得費用・・・1万2000円
③ 戸籍等取得郵送費・・・3000円
④ 登録免許税・・・12万円
⑤ 司法書士報酬(戸籍取得から登記申請まで全て依頼するとして)10万8000円
合計で24万4200円となります。
2章 相続登記は自分で行うか司法書士へ依頼するかどっちが良いの?
相続登記は必ず司法書士に依頼しなければできない事はありません、ご自身で書類を集めて行う事も可能です。
本章では、自分で相続登記を行う場合のメリットと司法書士に依頼する場合のデメリットをご紹介します。そして司法書士に依頼する場合のオススメの選び方もご紹介します。
こちらの記事も合わせてご覧ください
2-1 相続登記を自分で行う場合と司法書士に依頼する場合のメリットデメリット
相続登記を依頼するかどうかの判断材料として下記のメリット・デメリットをご覧ください。
自分で相続登記を行う最大のメリットは、報酬が節約できるということです。
単純な内容の相続登記なら、ご自身で行う事も可能です。例えば、相続人があなただけで遺産分割協議も必要ない様なケースです。
① 相続人間で話し合いをしなければならない
② 平日に手続きに行く時間がとれない
③ 相続した不動産の所在が自宅から離れている
④ 急いで相続登記をしなければならない
上記の①~④に該当する方は、報酬を払っても司法書士に依頼して任せてしまうのが得策だと思います。私の経験上、インターネット等で自分で出来るというサイト等を見て途中までしてみたが、やっぱり途中で時間が取れないという理由や面倒になったという理由で依頼しにくる方は非常に多く見受けられます。
残念ながら、現状の登記申請のシステムでは一般の方がご自身で手続きを終わらせるのは結構ハードルが高いのが現状です。
途中までの時間や費用が無駄になるので、それなら最初から依頼してしまうのが良いでしょう。
相続登記を自分でやりたい人は次の記事をご参考ください。
2-2 相続登記を依頼する司法書士のオススメの選び方
相続登記を司法書士に依頼するなら、どんなポイントを押さえれば良いかを解説します。
下記の2点を参考にして司法書士選びを考えてみてください。
①相続登記の費用が記載されているホームページが有る
一般の方に向けて料金を公開している事務所なら、相場をきちんと調べて適正な料金の可能性が高いでしょう。
②相続登記以外の相続に関する業務にも精通している
相続登記を通じてその他の周辺の部分のアドバイスを受けられる可能性が高いです。相続登記にも様々なパターンが有ります。例えば、相続した不動産を売却する前提で相続登記をする場合に、誰に名義を入れてから売却するかにより、譲渡所得税が大きく変わるケース等も有ります。
相続業務に精通している司法書士で有れば、そのあたりも経験していますので適切なアドバイスが受けられるでしょう。
相続専門のホームページが有るかや、電話した際に実績を確認してみて判断しましょう。
こちらの記事も是非参考にしてみてください。
3章 相続登記の費用に関するQ&A
本章では、良く依頼された方から、相続登記の費用に関して質問される事項をまとめました。参考にして下さい。
相続人の話し合いで決めます。良くあるのは①相続した不動産を売却して、売却代金を分ける場合は皆で負担②特定の方がその不動産を相続する場合は、その方が負担する。というケースです。
特に誰がと法律で決まっていませんので、①②を参考に話し合いをして下さい。
まとめ
相続登記の費用は大きく分けて下記の2点です。
① 実費の費用→登録免許税や書類の取得費等の必ずかかる実費です。
② 司法書士の報酬→専門家に依頼する場合に支払う報酬の費用です。
ここまでお読み頂いて、そんなにいるんだと思われた方や、そんなもんなんだと思われた方と様々でしょう。
相続登記は不動産を相続されると必ずしなければならない手続きです、本記事を参考にして自分に合った司法書士選びや、予算の把握をして頂ければ幸いです。