うちは兄弟仲がいいから、相続トラブルなんて心配しなくて大丈夫!
このように「相続トラブルは起きない」と思い込んでいる方が多いですが、そんな人ほど注意が必要です。
なぜなら以下のデータにもあるように、年々遺産相続に関するトラブル件数は右肩上がりで増えており、その3割以上は遺産額1000万円以下で発生しています。
たとえ、仲が良かった兄弟でも、お金が関わるとトラブルになってしまう可能性は高くなりますし、お金だけでなく親の世話や介護などを原因に揉めてしまうことも少なくありません。また、疎遠になっている兄弟や、母違い(父違い)の兄弟であれば、なおさら揉めるリスクは高くなるでしょう。
相続における兄弟間トラブルを回避する上で、最も大切なポイントは次の2つです。
- 遺産内容を明確にする
- しっかりとコミュニケーションをとる
兄弟間で揉める多くのケースでは、遺産内容が明確にされていなかったり、じっくり話し合う機会がないため疑心暗鬼になってしまうことが少なくありません。
ですので、遺産内容を明確にすること、しっかりとコミュニケーションをとることがとても大切と言えます。
本記事では、兄弟間でよく起こる実際のトラブルケースを見ながら、揉めないためのポイントや揉めてしまった時の対処法まで徹底的に解説します。
ぜひご参考いただき兄弟みんなで協力し円満な相続を実現してください!
目次
1章 兄弟姉妹同士が相続人となるケース
相続とは、亡くなった人の財産を配偶者や子などの相続人が引き継ぐことを言います。
相続が発生したときに誰が遺産を受け継ぐかは、法律によって下記のように決められています。
常に相続人になる | 配偶者 |
第一順位 | 子供や孫 |
第二順位 | 親や祖父母 |
第三順位 | 兄弟姉妹や甥・姪 |
優先順位の高い相続人が1人でもいる場合、優先順位の低い人物が相続権を持つことはありません。
また、それぞれの相続人の相続割合についても、法律で下記のように決められています。
法定相続人 | 法定相続分 | 備考 | |
配偶者のみ | 配偶者100% | ||
配偶者+子 | 配偶者 | 1/2 | 子が複数人いる場合は均等に分配 |
子 | 1/2 | ||
配偶者+両親などの直系尊属 | 配偶者 | 2/3 | ・親が複数人いる場合は均等に分配 ・被相続人に最も近い世代のみが相続人となる。親・祖父母ともに存命の場合でも、親のみが相続人となります。 |
両親などの直系卑属 | 1/3 | ||
配偶者+兄弟・姉妹 | 配偶者 | 3/4 | |
兄弟・姉妹 | 1/4 | ||
子のみ | 子100% | ||
両親などの直系尊属のみ | 両親100% | 親が複数人いる場合は均等に分配 | |
兄弟・姉妹のみ | 兄弟・姉妹100% | 兄弟・姉妹が複数人いる場合は均等に分配 |
この前提をもとにして、兄弟姉妹同士が相続人となるケースを詳しく見ていきましょう。
1-1 亡くなった人の子供が相続人になるケース
親が亡くなったとき、子供はそれぞれ相続人になります。
亡くなった人に複数人の子供がいた場合、それぞれが平等に相続権を持ちます。
したがって、親が亡くなったときは、兄弟姉妹同士が相続人として遺産分割協議などの相続手続きを進めていく必要があります。
1-2 亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になるケース
亡くなった人に子供がいなく、両親や祖父母もすでに他界している場合は、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となります。
なお、配偶者は常に相続人となるため、亡くなった人に配偶者がいても兄弟姉妹が相続人となる可能性があります。
亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となるときの相続割合は、下記の通りです。
配偶者がいる場合 | 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1 |
配偶者がいない場合 | 兄弟姉妹:全額 |
なお、兄弟姉妹が複数人いる場合は、相続割合が等分されます。
2章 兄弟間の相続トラブル事例5選と揉めないためのポイント
兄弟間で起きる相続トラブルはある程度決まっており、主に下記の5つです。
- 遺産総額のうち不動産価値の占める割合が高いケース
- 兄弟間で親の介護負担に偏りがあるケース
- 兄弟間で相続に対する考えが違うケース
- 親の相続財産が明確になっていないケース
- 親の残した遺言の相続額に兄弟間で偏りあるケース
それぞれ解説していきます。
【事例① 遺産総額のうち不動産価値の占める割合が高いケース】
不動産は高額なものが多いため、遺産総額のうち不動産価値の占める割合も高くなります。
また、土地や建物は物理的に分割できないので、兄弟間で不平等な分割内容にせざるを得ないケースが出てきます。
そこで事前準備や分割方法の工夫が必要になってくるので、事例をもとに見ていきましょう。
父の遺産は土地2000万円と預貯金200万円のみ。父名義の土地には長男名義の家が建っており、生前はそこで一緒に暮らしていた。
長男の主張
家も建っているし、私が土地を取得するということで兄弟たちも納得してくれるだろう。
次男、長女の主張
本来であれば3等分のはずなので、長男が一人で相続するのは不公平だ。
このケースでは財産が不動産に偏っていることが揉めるポイントになっています。
仮に預金が数千万円あったなら、土地と預金を等分でわけることもできますが、今回は預金が200万円しかないため柔軟な分割ができません。
【生前の準備】
生前に準備できたことは、父から土地を長男へ相続させる旨の意向を直接他の兄弟に説明してもらい、さらに遺言を書いてもらうことです。
また、居住している建物があるという事情を踏まえると、父から長男へ生前贈与により不動産の名義変更しておくという選択肢もありました。
【結論】
このような対策をとっていなかった以上、相続割合は法定相続分になることを理解しないと話はまとまりまらないので、長男としては共有名義となることを避けるため、土地を取得する代わりに相当額を次男らに渡す代償分割や、売却して現金化してから分割する換価分割も含め検討する必要があります。
不動産の分割方法についての詳しい解説はこちら
【事例② 兄弟間で親の介護負担に偏りがあるケース】
親と同居している(または近くに住んでいる)子供に親の介護負担が集中してしまうケースがあります。
親の介護を一人でしていた子供が「長い間介護してきたのだから、多くの遺産を取得したい」と考えることがあります。
しかし、介護をしていない兄弟から「親子なんだから近くにいる者が介護するのは当然だ。」と反論され、トラブルに発展してしまうことがあります。
このような場合「寄与分」が認められるかどうかを判断し、建設的な話し合いをおこなうことが必要になってくるので、事例とともに寄与分の解説も見ていきましょう。
一人暮らしの母の近所に長男夫婦が住んでおり、夫婦で協力して母の面倒を見ていた。
次男、長女は遠方に住んでいたので、顔を出すのは盆と正月の年2回程度。
母が認知症になってからは特に大変だったが、夫婦で協力して最期まで介添した。
長男の主張
病院へ連れて行ったり、必要なものを差し入れしたり、妻にも大変な苦労をかけた。自分が多くの財産を相続するのは当然だ。
次男、長女の主張
私達は遠方に住んでいたのだから仕方がない。近くに住んでいるのだから介護するのは子として当然。兄弟なんだから法律で決まっている相続割合は平等だ。
このケースでは「寄与分」について理解が足りないこと、「介護負担への労いと感謝の気持ち」がないことが揉めるポイントになっています。
【生前の準備】
生前に準備できたことは、介護の方法や兄弟間の負担について事前に話し合っておくことです。しっかり話し合っておくことで相互理解が深まり、わだかまりが軽減できる可能性が高くなります。また、介護の大変さは経験してみないとわからないと言われているので、介護をしてくれた兄弟には労いと感謝の気持ちを表すことが大切です。
【寄与分について】
寄与分とは相続人や親族が、親の財産の維持や増加について特別な寄与をしてくれた場合に、その貢献行為を金銭的に評価し相続財産から相当額を取得してもらう制度です。
例えば、母と同居していた息子夫婦が3年間自宅で介護したことについて、合計300万円分の貢献があったと評価し、遺産から優先的に300万円を取得してもらうようなケースです。息子夫婦が自宅で介護することで、介護施設に入った場合と比べ費用の支出が少なくなり、母の財産を維持したことが寄与になるのです。
一方で通常の親子関係であれば行うようなお世話程度であれば、寄与分が認めらないこともあります。
仮に寄与分が認められなければ兄弟の相続分は平等なので、年に1回しか顔を出さなかった他の兄弟と相続割合は同じということになります。
【結論】
このままでは紛争に発展してしまうので、次男長女側として、まずは長男夫婦が介護してくれたことを労い感謝の気持ちを伝えて妥協点を探りましょう。反面、長男側としては、介護したからといって全ての財産を相続できるわけではないので、金額面での譲歩は必要といえるでしょう。
法改正により、寄与分を主張できる人の範囲が変わりました。詳しくはこちらをご覧ください。
【事例③ 兄弟間で相続に対する考えが違うケース】
長男や家業を継いでいる兄弟が家督相続を主張して相続トラブルに発展することがあります。
旧民法で定められていた家督相続では「長男(跡取り)がひとりで全ての遺産を相続する。」とされていました。戦後に法律が改正され、現在の法定相続分(兄弟は平等)になりましたが旧時代的な考え方が根強く残っています。団塊の世代を境に「長男がひとりで遺産を相続する。」ということに違和感を覚える人も増えているため、兄弟の相続に対する考えの違いから遺産分割協議がまとまらないことがあるのです。
家督相続についての詳しい解説はこちら
それでは事例を見ていきましょう。
長女は結婚を機に実家を出ており、長男は近くに住んでいる。
父は生前から実家の土地は先祖代々引き継いでいるものなので、長男に引き継がせると言っていた。
長男の主張
長男なんだから私が財産すべて引き継ぐのは当然だ。父も生前からそう言ってた。
長女の主張
長男だからと言って無条件に全ての財産を引き継ぐというのは時代錯誤。また、父からそのような話は聞いたことがない。
このケースでは長男が法定相続分を理解していないこと、事前の対策を何もしていなかったことが揉めるポイントになっています。
【生前の準備】
お父さんの意向として長男へ相続させたかったのであれば、遺言書を残しておくか、生前贈与して不動産の名義変更しておくという選択肢がありました。
【結論】
遺言書がない以上は、法定相続分として兄弟で平等に相続することが原則なので、調停や裁判になっても長男の主張は不利と言えます。
自分の考えを押し通すだけでは話はまとまらないので、相手の考え方や立場を理解するように努めることが大切です。また、不動産の共有名義はできるだけ避けたほうが良いので、不動産を取得する代わりに現金を渡すなどの代償分割や、財産を売却して売却代金を分配する換価分割も検討しましょう。
【事例④ 親の相続財産が明確になっていないケース】
思っていたより親の遺産が少ない場合など「他の兄弟が財産を隠していたり、使い込んでいたのではないか?」と疑心暗鬼になって、相続トラブルに発展してしまうケースがあります。このようなケースは「財産内容が明確になっていないこと」が大きな原因になっていることが多いです。
それでは事例を見ていきましょう。
長女は父と同居しており、認知症になってからは通帳の管理なども行っていた。
父が亡くなった後、遺産分割について兄弟で話し合ったが言い争いになった。
長男の主張
思っていたより財産が少ない。証拠の資料もないし、このまま協議をすすめるわけにはいかない。
長女の主張
私が財産の使い込みをしたり、財産を隠していると疑っているのか。
このケースでは相続財産が明確になっていないことが揉めるポイントになっているので、兄弟間でしっかりとコミュニケーションをとって、財産内容を資料とともに開示することが大切です。
また、財産調査には1か月~数か月程度かかるので、その間に「不安」が「疑い」に変わることがあります。財産内容の調査から遺産分割協議までのスケジュールは兄弟間で共有しておきましょう。
【生前の準備】
生前にできたことは、お父さんにエンディングノートや遺言書を作成してもらい、相続財産の詳細を明らかにしておくことです。
また、長女が父の財産管理を始めるときに兄弟間で話し合って財産管理方法を決めておくこともできたと思います。
他にもお互いが信用できない場合は、家庭裁判所の監督指導のもと財産管理を行う成年後見制度を利用することも一つの選択肢です。
【結論】
今後の対処方法としては、通帳の入出金履歴などの財産調査をしっかりと行い、相続財産を明確にしたうえで遺産分割について話し合いましょう。
預金口座の数や不動産が多い場合には、遺産目録として相続財産を一覧できる資料を作成するのも良いでしょう。
【事例⑤ 親の残した遺言の相続額に兄弟間で偏りあるケース】
遺言書を書くことで、兄弟間で相続させる財産に偏りが生じる場合は注意が必要です。
財産を相続できないということはもちろん、親が自分より他の兄弟を優先したということ自体にショックを受ける人もいます。相続トラブル防止のために書いた遺言が原因となってトラブルが起きてしまったら本末転倒です。
事例をふまえ見ていきましょう。
父の遺言を開封すると、次男に全ての財産を相続させるという内容であった。
遺言は父が亡くなる3年前に作成されたものであった。
次男の主張
父の意思で書かれた遺言なので、父の気持ちを理解してほしい。
長男、長女の主張
父が次男だけを優遇する理由がわからない。こちらとしては遺留分請求も検討している。
このケースでは偏った内容の遺言が揉めるポイントになっています。
【生前の準備】
生前に準備できたことは、お父さんが遺言を作成するときに他の兄弟にもしっかり説明しておくことや、付言事項や手紙などで遺言をどのような気持ちで書いたのか伝えれば、一定の効果があるでしょう。
妻や子供などの相続人には、遺留分という相続に際して取得することが法律上保証されている最低限の相続分(相続割合)があります。
ですので、遺留分を侵害しない内容の遺言書にしておくことを検討する必要はあったでしょう。
また、財産が不動産に偏っているなど遺留分を侵害する内容で遺言を作成せざるを得ないこともあります。そのような場合は遺留分を請求されることも想定して、現金で補填するための資金を準備しておくことも必要です。
そのほか、裁判所の許可を得れば「あらかじめ遺留分を放棄してもらうこと」も可能です。お父さんから他の兄弟に「遺留分の放棄」をお願いしてもらうのも一つの方法です。
【結論】
遺留分は法律で定められている権利なので、請求されてしまうと相当額の支払いは必要になります。次男側からすると、話がこじれる前にお父さんの意向や遺言を書くまでの経緯を丁寧に説明するしかないでしょう。また、遺留分として他の兄弟に支払う金額は、双方の合意があれば自由なので、金額的な落としどころを探ってみましょう。
3章 相続トラブルを防止するためにすべきこと
本章では相続トラブルを防止するためにすべきことを「親が生きている間」と「親が亡くなった後」に分けて解説したいと思います。
3-1 親が生きている間にすべき5つのこと
まずは親が生きている間に行うべき5つのことをご紹介いたします。
まずは相続トラブル対策の一丁目一番地ともいえる遺言から順に見てきましょう。
相続トラブル防止の方法として遺言書は一番効果的です。
高齢の親に遺言書を書いてほしいとお願いしにくいですが、遺言書があれば無駄な紛争を防止でき、トラブルの大部分を回避できると言っても過言ではないので、「遺言を書いてもらっておけばよかった。」と後悔しないために、親にしっかりと説明して公証人役場へ一緒に行ってあげるなど、積極的に行動しましょう。
また、「弁護士や司法書士などの専門家に一度相談しよう!」と連れ出して、作成しておくメリット、作成しておかないデメリットを専門家に直接説明してもらえば、説得力もあるので行動に移してくれる可能性も高まることでしょう。
遺言書の作成について詳しくしりたい方はこちら
生前のうちに親にエンディングノートを書いてもらうようアプローチしてみましょう。
エンディングノートは、家族関係、財産、介護、葬儀など「最期」にまつわることを書き残しておくノートです。遺言書のように法的効果はありませんが、本人の意向や財産の内容を確認できるのでとても便利です。
相続財産が不明瞭なことや、葬儀や埋葬方法について意見の食い違いから、相続トラブルに発展することがあります。「エンディングノート」で財産の明細や介護や葬儀の意向が確認できれば、トラブル発生を抑えることができるでしょう。
ただし、エンディングノートは「単なる記録と希望」なので、遺言のような法的効力はありません。
エンディングノートの無料ダウンロードはこちら
施設入所などをきっかけに子供が財産管理を行うときの注意点をご紹介します。
はじめに通帳などの資料をもとに「財産の種類と額」を把握しましょう。次に兄弟間で管理方法や入出金のルールを決めておきましょう。管理方法としては月ごとに入出金の帳簿をつけ、領収書や支払明細をしっかり残しておくなどです。他の兄弟が希望しなくても、通帳や明細を定期的に共有してあげれば良好な関係を継続できるでしょう。
また、「1ヶ月に使える上限額」や「○○万円以上の支出は他の兄弟に事前確認をとる」などのルールを定めてもよいでしょう。
認知症対策の方法を詳しく知りたい方はこちら
兄弟間で親の介護方針や負担について話し合っておくことが大切です。話し合うことで別居している兄弟も介護について考える良い機会になるでしょう。特に自宅介護の場合は身体や時間的な負担だけでなく、精神的にも負担が大きくなるので長期戦になることも想定して検討しておく必要があります。
同居しているのか、遠方に住んでいるのかなど兄弟間での違いを理解し、相手の立場もふまえ役割分担について考えましょう。
また、施設への入所時期や介護方針について、意見の食い違いからトラブルに発展することもあるので、重要事項の決定については必ず話し合いの場を設けるようにしましょう。
生前のうちから相続税の目安をつけておけば相続発生後に慌てなくて済むので、親に財産を明らかにしてもらい、相続税がかかるかどうかの試算をしておきましょう。結果によっては相続税対策を始める良い機会にもなります。
また、両親の一方が亡くなる一次相続だけでなく、もう一方が亡くなったときの二次相続についても合わせて検討しておきましょう。
3-2 親が亡くなった後にすべき9つのこと
次に親の死後、兄弟間の相続トラブルを防止するためにすべき9つのことを時系列の順に見ていきましょう。
なお、親の死後にすべき相続手続き全般についてはこちらの記事も合わせてご覧ください
多くの場合は誰が相続人になるのか明確だと思いますが、戸籍を調べてみると前妻との間に子供がいることがわかったり、兄弟と思って育ったが戸籍上は兄弟ではなかったりするケースも一定数あります。
相続人が間違っているなか、遺産分割協議を進めても無効になります。戸籍調査により相続人が確定してから遺産分割協議をすすめるようにしましょう。
相続人調査(戸籍収集)の詳しい方法はこちら
遺言書があれば、原則、遺言の内容に沿って遺産相続することになるので、まずは遺言書がないか調べる必要があります。
公正証書で遺言を作成していれば、公証人役場で調べることができるので公証人役場で調査してもらいましょう。
また、手書きの遺言書は、故人の金庫や仏壇、タンスの中などをくまなく探すか法務局で保管されていないか調査しましょう。手書きの遺言書を発見した時は封を開けず、そのままの状態で家庭裁判所に持ち込み検認手続(開封作業)を行う必要があります。
遺言書の検認について詳しく知りたい方はこちら
相続人のなかに認知症などによって意思能力・判断能力を欠く人がいる場合、代わりに成年後見人という代理人に遺産分割協議に参加してもらう必要があります。成年後見人は、成年後見制度に基づいて、家庭裁判所で選任してもらうことになります。成年後見人の選任を家庭裁判所へ申し立てるには、様々な書類を提出する必要があるため、申立の書類の準備から選任審判まで大体3~6ヶ月程度の期間がかかります。
不動産売却の予定や相続税申告の必要がある場合など、遺産分割協議を急ぐ必要がある場合は早めに行動しましょう。
成年後見人について詳しく知りたい方はこちら
借金(債務)もマイナスの財産として相続人が引き継ぐことなります。
相続した不動産に抵当権などの担保はついていないか、銀行口座から返済の記録は読み取れないか、ローンに関する郵便物は届いていないかなど、借金についてしっかりと調査しましょう。また、銀行や消費者金融からの借金に関しては、信用情報機関と呼ばれる「信用情報会社」への調査が有効です。
なお、借金の有無が明確になる前に、相続財産の処分や名義変更を行なってしまうと、後に多額の借金があることが判明した場合でも「相続放棄」ができなくなるので注意が必要です。借金の有無や総額がハッキリとするまで、遺産には手を付けないようにしましょう。
相続放棄は相続開始を知ってから、3ヶ月以内に家庭裁判所に申立する必要があります。借金の調査期間が足りない場合など、3ヶ月の期間を伸長してもらう申立てを家庭裁判所にすることもできます。
相続放棄について詳しく知りたい方はこちら
相続人調査や財産調査にはそれなりの時間がかかります。お仕事の合間にご自身で手続きされる場合は尚更時間がかかるでしょう。あまり時間がかかってしまうと財産調査について自身で動いていない相続人がイライラしたり、財産隠しなど怪しむこともあるので、いつ頃に財産調査が終わり、遺産分割の話し合いを進める予定などと、スケジュールを共有しておくようにしましょう。
一般的には相続人調査や財産調査に「2~3ヶ月程度」かかります。
相続の全体スケジュールについて詳しく知りたい方はこちら
相続財産を資料とともに明示してから、遺産分割協議を進めるようにしましょう。なぜなら、財産隠しの疑いから相続トラブルに発展するなどもあるので、相続財産は資料と合わせて開示するのがベストです。
財産の種類が多い場合は一覧できる目録にしておくのがおススメです。預金の残高証明書、入出金履歴や不動産の評価証明書や査定書などの資料をもとに話し合いをすすめましょう。
相続財産について詳しく知りたい方はこちら
法定相続や遺留分という法律があることを理解しましょう。法定相続では、兄弟の相続割合は平等ということが決まっているので、長男だから多めにもらうというような主張は通りません。また、遺言書があったとしても、遺留分という最低限守られた相続分を侵害することはできないので、遺留分請求された場合は真摯に応じる必要があります。
相続トラブルや遺産分割調停に発展すれば時間もお金もかかり、精神的な苦痛もともなうことになるので、感情論はできるだけ抑え、冷静に話し合いで解決する努力をしましょう。
遺留分について詳しく知りたい方はこちら
遺産分割の話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成し、署名および実印で押印しましょう。また、遺産分割協議書は人数分作成し各自保管しておくのが良いでしょう。
一回の話し合いで合意できない場合は、論点や進捗内容を記録して共有しておけば、次の話し合いもスムーズに進みます。
遺産分割協議書について詳しく知りたい方はこちら
4章 兄弟間で相続トラブルになった場合の対処法
話し合いで解決できれば良いですが意見の食い違い、感情のもつれなどにより話がまとまらない場合があります。
下記のような状態になっているのであれば「いつか解決できる日がくる」などと先延ばしはせず、どこかで見切りをつけて弁護士に相談するのが得策でしょう。
- 感情的になり冷静に話すことができない
- 長期間連絡がつかず没交渉になっている
- 分割内容について大きく意見が異なる
弁護士に依頼することで直接相手方と話し合いしなくて済むため精神的な負担は軽減されます。
しかし弁護士に依頼すると数十万円から数百万円単位の弁護士費用がかかることになるので、依頼する際には報酬の計算方法などしっかりと確認しておきましょう。
また、ひとえに弁護士と言っても得意分野があるので、相続問題を数多く扱っている弁護士を選びましょう。その他の基準も合わせてご参考にしてください。
“弁護士を選ぶ基準”
- 相続に関するHPがあるか
- 相続に関する著書があるか
- 料金を明確に説明してくれるか
- 10年以上の経験年数があるか
- 話をしっかり聞いてくれるか
- 話しやすいか、相性はいいか
一方の相続人に弁護士がついた途端に相手方も慌てて弁護士をつけて、即裁判手続きに発展するケースも多いので、話がまとまる可能性が残されている場合、弁護士への依頼は慎重に判断しましょう。
また、多少意見の食い違いがあっても話し合いで解決できる可能性がある場合は、戸籍調査や財産調査、遺産分割協議書の作成、各種名義変更の手続きを司法書士にサポートしてもらいながら、少しずつ相続手続きをすすめるという方法もあります。
弁護士を雇うことを考えると費用も安価に済むので状況に応じてそのような方法も検討してみてください。
弁護士以外も含めた専門家の選び方はこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
生前の対策であれば「遺言書を書いてもらうこと」が一番のポイントになります。
また、生前・死後にかかわらず、「兄弟間でしっかりと話し合うこと」「財産を明確すること」が大切になります。
相続について少しでも不安を感じているのであれば、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続相談の豊富な実績があります。お気軽に無料相談をご活用いただければ幸いです。
よくあるご質問
相続トラブルの解決方法は?
相続トラブルが顕在化すると当人同士の解決は難しいでしょう。
その場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
▶相続トラブルの対処法について詳しくはコチラ
兄弟の相続割合は?
亡くなった人に配偶者がいる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ずつ相続します。
亡くなった人に配偶者がいなく他の相続人もいない場合には、兄弟姉妹がすべて財産を相続します。
▶兄弟の相続について詳しくはコチラ
遺産相続で揉めない方法はありますか?
遺産相続でトラブルを回避するには、下記の対策をしておきましょう。
・遺言書やエンディングノートを書いてもらう
・財産管理やルールについて話し合う
・親の介護について話し合う
・相続税の計算をしておく
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