家督相続とは?現代の遺産相続との違いを簡単に解説

家督相続とは?家督相続のように一人で相続するための3つの方法
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司法書士山田 愼一

 監修者:山田 愼一

この記事を読む およそ時間: 6

【この記事でわかること】

  • 家督相続とは何か
  • 家督相続と現代の遺産相続の違い
  • 現代でも家督相続が適用される例外的なケース

家督相続とは、明治時代から終戦直後まで実施されてきた「相続制度」です。
基本的に「長男がすべての財産を相続する」ルールになっており、現代の平等な相続制度とは大きく異なります。

ただし、今でも家督相続の考えが引き継がれていると考え「長男がすべての遺産を相続するのが当たり前」と主張する方も少なくありません。
また、不動産(土地、建物)は分割できないため、親の遺言で長男が跡を継ぐケースは現在でも数多くあります。

家督相続は「明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで」実施されていた制度ですので、それ以降に発生した相続については家督相続は行われません。

本記事では、家督相続とは何かや、現代の遺産相続との違いについて解説します。


1章    家督相続とは?簡単に解説

家督相続とは、代々、長男のみがすべての財産を相続すること

家督相続とは、「家督を継ぐ」などとも言われ、実家の財産を受け継ぎ次の世代へと伝えていくことです。

家督相続は「長男がすべての遺産を相続する制度」です。
ある家の長男が財産を引き継いで「戸主」となり、その長男がまたすべての財産を引き継いで「戸主」になる、という繰り返しで財産を後の世代へ引き継がせていきます。

長男がすべての財産を相続するので、他の兄弟や妻には一切の財産相続権がありません。
現代の感覚とはかけ離れた制度といえるでしょう。

1-1 家督相続の発生原因

家督相続は、前戸主の「死亡」以外の原因で生じるケースだけでなく、下記のようなケースで発生することもありました。

  • 前戸主が60歳以上になって隠居し、長男に家督が譲られるケース
  • 女性戸主が入夫婚姻をし、長男や夫に家督が譲られるケース

1-2 家督相続で相続人となる人の決め方

家督相続で相続人となるのは基本的に「長男」ですが、娘しかいなければ「長女」が相続人となります。
これらの「法定家督相続人」がいない場合、前戸主は「次の家督相続人を指定」できました。

それでも家督相続人が決まらない場合、「前戸主の父母や親族が指定」したり、「前戸主の父母」が家督相続人となったりしていました。

1-3 昭和22年5月2日までに発生した相続に適用される

家督相続と民法改正

家督相続は「明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで」実施されていた制度であり、昭和22年5月2日までに死亡した人の相続で適用されます。
それ以降に死亡した場合には、改正後の民法が適用されるので、家督相続は行われません。

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2章 家督相続と現代の遺産相続との違い

家督相続と現代の遺産相続では、遺産を相続する人物などに違いがあります。
現代の法律では、相続人になれる人物や順位は、下記のように決められています。

常に相続人になる配偶者
第一順位子供や孫
第二順位両親や祖父母
第三順位兄弟姉妹や甥・姪

同順位の相続人は「すべて平等」であり、相続分はそれぞれの相続人で等分します。
例えば、子供が3人いたら、3人が3分の1ずつの権利を取得します。

現在の相続制度は、「長男が全部相続する」家督相続とは全く異なる考え方といえるでしょう。

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3章 家督相続は今でも「先祖代々の土地の名義変更」に適用される可能性がある

家督相続が適用されるのは「被相続人が昭和22年5月2日以前に死亡したケース」なので、現在では適用される事案はないようにも思えます。
しかし、相続後も不動産の名義変更が行われず放置されている場合に、まれに家督相続制度が適用されるケースが存在します。

  1. 家督相続が適用されていた時代に相続が発生する
  2. 相続登記が行われないまま放置される
  3. その後も何度か所有者が死亡したが、相続登記が行われず放置される

上記のような不動産の名義人を正しく表示するには、「家督相続の時代から現在までの相続関係を証明した上で名義変更の登記手続き」をしなければなりません。
この場合では、家督相続制度を適用して相続人(土地や建物の所有者)を決定する必要があるのです。

したがって、約70年以上前から所有者が変更されておらず先祖代々の名義変更が必要な場合には、家督相続を適用しなければならないケースがあります。
心当たりのある方は司法書士に相談することをおすすめいたします。

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4章 家督相続のように長男が1人で相続する方法

相続対策をしておけば、現在の法律でも、家督相続のように長男が1人で遺産を相続することは可能です。
具体的には、下記の方法で対策しておくと良いでしょう。

  • 遺言書を作成してもらう
  • 家族信託を利用する
  • 遺産分割協議で他の相続人全員の同意を得る

それぞれ詳しく解説していきます。

4-1 遺言書を作成してもらう

遺言書を作成すれば希望の人物に遺産を譲れるため、家督相続のように長男に遺産を集中させられます。
遺言書にはいくつか種類がありますが、信頼性が高く、原本の紛失や改ざんリスクがない公正証書遺言を作成することをおすすめします。

ただし、遺言書で遺産を1人に集中させる場合、他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあるので注意しなければなりません。
遺留分とは、故人の配偶者や子供、両親に認められる最低限度の遺産を受け取れる権利です。

遺留分は遺言より優先されるため、遺留分を侵害する遺言書を作成してしまうと、トラブルに発展する恐れがあります。

これで遺言書が作成できる!遺言書の書き方・作成手順・注意点まで
遺言よりも遺留分が優先される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

4-2 家族信託をする

相続問題を起こさないための対策/家族信託を活用する

家族信託を利用しても、遺言同様に特定の人物に遺産を集中させられます。

家族信託とは、信頼する家族に自分の財産の管理や運用、処分を任せられる制度です。
家族信託では、自分が亡くなった後に財産を承継する人物も指定できるため、遺言の代用としても利用できます。

例えば、長男を受託者とした家族信託の契約を結べば、自分が亡くなったときに長男に遺産を譲れるでしょう。

家族信託とは|メリット・デメリットや活用事例をわかりやすく解説

4-3 遺産分割協議で他の相続人全員の同意を得る

故人が遺言書の作成や家族信託の利用をしていなかったとしても、相続人全員が遺産分割協議で同意すれば、長男に遺産を集中させられます。
遺産分割協議とは、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかを決める話し合いです。

ただし、遺産分割協議では相続人全員が合意する必要があるため、長男だけが遺産を受け取ることに反対する相続人が1人でもいれば、協議は成立しません。
確実に長男に遺産を相続させたいのであれば、これまで紹介した遺言書の作成や家族信託の利用を検討しましょう。

遺産分割協議とは?やり方や注意点・相談できる専門家まとめ

5章 家督相続のように長男が1人で相続すると主張したときの対処法

現代の法律では、家督相続を認めておらず「平等な遺産相続方法」を定めています。
それでも、古い考え方を持った長男(跡取り)が「自分が全部継ぐのが当然だ」と考えているケースがあり、トラブルのもとになりがちです。

例えば、長男が家督相続のように1人で相続することを主張したとき、他の相続人が納得できなければ以下のような対応をしましょう。

  • 遺言書の有無を確認する
  • 相続人同士で話し合う
  • 遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てる
  • 遺留分侵害額請求を行う

それぞれ詳しく解説していきます。

5-1 遺言書の有無を確認する

まずは、故人が遺言書を用意しているかどうかを確認しましょう。
遺言が用意されている場合、原則として、その内容通りに遺産分割を行うとされているからです。

一方、遺言書が用意されていなかった場合には、民法の定める法定相続が適用されるので、他の兄弟にも平等に相続権が認められます。

遺言書の保管方法や探し方については、下記の記事で詳しく解説しています。

【種類別】遺言書の保管方法とは?保管時の注意点も解説

5-2 相続人同士で話し合う

遺言書がない場合には、現代の平等な法律が適用されるため、相続人全員で「遺産分割協議」を行って適切な遺産分割方法を話し合いましょう。
長男が「自分がすべて遺産を受け取るはずだ」と誤解している場合には、現在の法制度を説明すれば納得する可能性もあります。

5-3 遺産分割調停・遺産分割審判を申し立てる

長男が家督相続のように「自分が全部の遺産を取得したい」と主張し、他の相続人が「平等に遺産を分けたい」と主張する状態が続くようなら、家庭裁判所で「遺産分割調停」をしなければなりません。

遺産分割調停では、調停委員が当事者の間に入って話し合いを調整してくれます。
長男が「全部の遺産を取得したい」と言っていても、現代の民法では認められないと調停委員が長男を説得してくれることもあるでしょう。

遺産分割調停では話し合いがまとまらない場合には、遺産分割審判へと手続きが進み、裁判所が遺産分割方法を決定します。
原則として、裁判所が下す決定は法定相続分に応じた平等なものとなるので、家督相続のような結論にはなりません。
結果的に長男の言い分は通らず、他の相続人は相続分に応じた遺産を受け取れるでしょう。

5-4 遺留分侵害額請求を行う

遺言などで「すべての遺産を長男に相続させる」と指定されていた場合でも、遺留分侵害額請求を行えば、他の相続人も最低限度の遺産を受け取ることが可能です。

遺留分侵害額請求を行えば、長男から遺留分侵害額相当の金銭を受け取れます。

遺留分の計算方法を具体例付きで解説!請求方法やかかる費用とは?

まとめ

戦前の家督相続制度は現在の民法と全く内容が異なります。
ただ現在でも、家督相続と同様の相続方法が主張されるケースがあり「無関係」とはいえません。

相続トラブルを防ぎたい場合や、自分が希望する人物に遺産を遺したい場合には、遺言書の作成や家族信託の利用を検討しましょう。

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よくあるご質問

家督相続とは?

家督相続は、「長男がすべての遺産を相続する制度」です。
ある家の長男が財産を引き継いで「戸主」となり、その長男がまたすべての財産を引き継いで「戸主」になる、という繰り返しで財産を後の世代へ引き継がせていきます。
▶家督相続について詳しくはコチラ

遺産相続はなぜ揉めるの?

相続は争続と揶揄されるほど揉めやすいものです。
金銭的なことが絡む場面では、どうしても感情的になりやすく、普段仲が良くてもトラブルに発展してしまうのです。
例えば不動産のように分割が難しい財産があると、分割方法で揉めることが多くなります。
相続トラブルを回避するためには、トラブルの原因を理解し、事前に対策をしておくことが大切です。
詳しくは下記リンク先をご参考にしてください。
▶遺産相続問題のよくある事例11選|知っておくべき相続トラブル対策

家督相続はいつまであったのですか?

家督相続は「明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで」実施されていた制度であり、昭和22年5月2日までに死亡した人の相続で適用されます。
▶家督相続について詳しくはコチラ

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