家督相続とは?家督相続のように一人で相続するための3つの方法

家督相続とは、明治時代から終戦直後まで実施されてきた「相続制度」です。

基本的に「長男がすべての財産を相続する」ルールになっていて、現代の平等な相続制度とは大きく異なります。

ただし、今でも家督相続の考えが引き継がれて「長男がすべての遺産を相続するのが当たり前」と考えている方も少なくありません。

また、不動産(土地、建物)は分割できないため、親の遺言で長男が跡を継ぐケースは現在でも数多くあります。

今回は「家督相続」と「現代の相続制度」の違いや「現代でも家督相続のように一人で相続するための方法」や「家督相続のように一人で相続することに納得できない人がとる方法」について、相続の専門家がわかりやすく解説します。


1章    家督相続とは

そもそも家督相続とはどういった制度だったのか、今の民法との違いも含めて確認しましょう。

1-1 長男が全ての財産を相続する制度

家督相続は、「長男がすべての遺産を相続する制度」です。ある家の長男が財産を引き継いで「戸主」となり、その長男がまたすべての財産を引き継いで「戸主」になる、という繰り返しで財産を後の世代へ引き継がせていきます。

長男がすべての財産を相続するので、他の兄弟や妻には一切の財産相続権がありません。現代の感覚とはかけ離れた制度といえるでしょう。

家督相続とは

1-1-1 家督相続の発生原因

家督相続は、前戸主の「死亡」以外の原因で生じるケースもありました。たとえば次のようなケースです。

  • 前戸主が60歳以上になって隠居し、長男に家督が譲られるケース
  • 女性戸主が入夫婚姻をし、長男や夫に家督が譲られるケース

1-1-2 家督相続で相続人となる人の決め方

家督相続で相続人となるのは基本的に「長男」ですが、娘しかいなければ「長女」が相続人となります。これらの「法定家督相続人」がいない場合、前戸主は「次の家督相続人を指定」できました。

それでも家督相続人が決まらない場合、「前戸主の父母や親族が指定」したり、「前戸主の父母」が家督相続人となったりしていました。

1-2 昭和22年5月2日までに発生した相続に適用

家督相続は「明治31年7月16日から昭和22年5月2日まで」実施されていた制度であり、昭和22年5月2日までに死亡した人の相続で適用されます。それ以降に死亡した場合には改正後の民法が適用されるので、家督相続は行われません。

1-3 現代の遺産相続との比較

現代の遺産相続のルールはどうなっているのか、家督相続制度と比較してみましょう。

現行の民法では、配偶者が必ず相続人となります。

他の相続人には以下の通りの順位があります。

  • 子どもが第1順位
  • 親が第2順位
  • 兄弟姉妹が第3順位

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同順位の相続人は「すべて平等」です。たとえば子どもが3人いたら3人が3分の1ずつの権利を取得します。

それぞれの相続人に認められる相続割合(法定相続分)は以下の通りです。

  • 子どもと配偶者が相続人となる場合には配偶者が2分の1、子どもが2分の1
  • 親と配偶者が相続人となる場合には配偶者が3分の2、親が3分の1
  • 兄弟姉妹と配偶者が相続人となる場合には配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

現在の相続制度は、「長男が全部相続する」家督相続とは全く異なる考え方といえるでしょう。


2章 家督相続は今でも「先祖代々の土地の名義変更」に適用される可能性がある

家督相続が適用されるのは「被相続人が昭和22年5月2日以前に死亡したケース」なので、現在では適用される事案はないようにも思えます。

しかし、相続後も不動産の名義変更が行われず放置されている場合、まれに家督相続制度が適用されるケースが存在します。

人が死亡すると、不動産の所有権は相続人へと移ります。ただ名義変更の登記はしなくとも罰則等がないので、相続が発生しても名義変更の登記がされずに放置されるケースも少なくありません。

家督相続が適用されていた時代に人が亡くなって、相続による名義変更が行われないまま放置され、その後も何度か所有者が死亡して相続が発生したけれども相続による名義変更が行われなかった場合、現在の正しい名義人を表示するためには「家督相続の時代から現在までの相続関係を証明したうえで名義変更の登記手続き」をしなければなりません。

この場合には、家督相続制度を適用して相続人(土地や建物の所有者)を決定する必要があるのです。

約70年以上前から所有者が変更されておらず先祖代々の名義変更が必要な場合には、家督相続を適用しなければならないケースがあるので、心当たりのある方は司法書士に相談することをおススメいたします。


3章 家督相続のように一人で相続するための3つの方法

現代の法律下においても、家督相続のように一人で相続する方法は3つあります。
(なお、本章「3-4 遺言書、家族信託で、家督相続に近い相続をさせるときは「遺留分」に注意しよう」についても合わせて確認しておきましょう。)

それぞれの方法を確認してみましょう。

3-1 遺言書を作成してもらう

1つ目は、生前に「遺言書」を作成してもらう方法です。遺言者は、遺言によって自由に相続させる割合を指定したり、特定の人に財産を渡すことができます。遺言書で「長男にすべての遺産を相続させる」と書いてもらっておけば家督制度と同様に長男がすべての遺産を相続できるのです。

また遺言書であれば「長男以外の相続人」や「相続人以外の人」にも遺産を渡すことができます。

たとえば「次女にすべての遺産を相続させる」と書いても有効ですし、「お世話になった人」や「内縁の妻」に遺産を相続させることも可能です。

遺言書についてはこちらの記事もご参照ください。

これで遺言書が作成できる!遺言書の書き方・作成手順・注意点まで

3-2 家族信託をする

2つ目は、「家族信託をする」です。家族信託とは、財産を家族に預けて指定した目的に沿って、管理処分してもらう契約です。財産を預ける人を「委託者」、財産を管理する人を「受託者」、財産管理によって利益を受ける人を「受益者」といいます。

家族信託の仕組みを以下の図をもとに確認してみましょう。

家族信託契約は、委託者の死亡後、預けていた財産を承継する人を決めることができるので、遺言の代用として利用される例が多々あります。

たとえば長男に不動産を受け継がせたい場合、元気なうちに長男と家族信託契約をして、不動産の管理運用を任せておきます。そして「自分が亡くなった場合、預けている不動産は長男が一人で相続する」と契約内容で決めておけば、家督相続と似た効果が発生します。

また、その他にも状況によって柔軟に内容を決めることができるため、ケースによっては遺言より有用です。

3-3 遺産分割協議で他の相続人全員の同意を得る

最後は、遺産分割協議において他の相続人が全員「長男がすべての遺産を相続すること」に同意すれば、家督相続と同様に長男がすべての遺産を取得できます。

ただし、言い換えると一人でも反対すれば実現不可能なので、「遺言」や「家族信託」の方法を選択されることを強くおススメいたします。

3-4 遺言書、家族信託で、家督相続に近い相続をさせるときは「遺留分」に注意しよう

遺言書や家族信託で一人に遺産を集中させるときには「遺留分」に注意が必要です。

【遺留分とは】

兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分です。配偶者や子ども、親には遺留分があるので、遺言書で「長男にすべての遺産を相続させる」と書かれていても、これらの相続人は「遺留分」があるので、その範囲内の財産を取り戻せます。

具体的には遺言で遺産を全部相続した長男に対し「遺留分侵害額請求」という金銭請求を行い、遺留分に相当するお金(代償金)を払ってもらいます。話し合いがスムーズに進まなければ訴訟になってしまう可能性もあります。

遺言があっても遺留分請求される!【効果的な5つの遺留分対策とは】

遺留分侵害額請求とは?基礎知識や計算方法、請求の手順まで簡単解説

このように、安易に遺言書で法定相続人の遺留分を侵害すると、相続開始後に「遺留分トラブル」が発生してしまうリスクがあるので、注意しなければなりません。

遺留分を侵害する遺言書作成や家族信託を行うには、長男を含めた相続人たちときちんと話しをして、親としての希望や気持ちを伝えましょう。相続人らの希望も聞きながら、トラブルにならないよう作成しておくと安心です。

また、その他にも相続トラブルを防ぐための準備や、できる工夫はあるので、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談したうえで「遺言」や「家族信託」されることをおススメいたします。


4章 家督相続のように一人で相続することを主張する人がいるときの対処法

現代の法律では、家督相続を認めず「平等な遺産相続方法」を定めています。それでも古い考え方を持った長男(跡取り)が「自分が全部継ぐのが当然だ」と考えているケースがあり、トラブルのもとになりがちです。

たとえば長男が家督相続のように一人で相続することを主張したとき、他の相続人が納得できなければ以下のような対応をしましょう。

4-1 遺言書があるか確認する

まずは遺言書があるかどうかが重要です。遺言書によって「すべての遺産を長男へ相続させる」と指定されていたら、その内容が有効になるからです。一方遺言書がなかったら民法の定める法定相続が適用されるので、他の兄弟にも平等に遺産相続権が認められます。

自宅に自筆証書遺言がないか、公証役場に公正証書遺言が預けられていないかなど、確認しましょう。

4-2 遺言書がなければ話し合い

遺言書がない場合には、現代の平等な法律が適用されます。相続人全員で「遺産分割協議」を行って適切な遺産分割方法を話し合いましょう。

遺産分割協議は相続人全員が合意しないと成立しません。長男が「自分一人が遺産を相続したい」と主張しても、誰か1人でも納得できなければ協議は決裂してしまいます。

4-3 話し合いがまとまらないなら遺産分割調停

長男が家督相続のように「自分が全部の遺産を取得したい」と主張し、他の相続人が「認めない、平等に遺産を分けたい」と主張する状態が続くようなら、家庭裁判所で「遺産分割調停」をしなければなりません。

遺産分割調停では、調停委員が当事者の間に入って話し合いを調整してくれます。長男が「全部の遺産を取得したい」と言っていても、現代の民法では認められないので調停委員が長男を説得してくれることもあるでしょう。

それでも長男が納得しない場合には、遺産分割審判となって裁判所が遺産分割方法を決めてくれます。原則として裁判所の決定は「法定相続分」に応じた平等なものとなるので、家督相続のような結論にはなりません。結果的に長男の言い分は通らず、他の相続人は相続分に応じた遺産を受け取れます。

4-4 遺言書があれば遺留分請求

遺言書によって「すべての遺産を長男に相続させる」と指定されていたら、現代の民法のもとでも家督相続と同様の結果になります。

ただ現代の民法では、法定相続人(子供、配偶者、両親が相続人になった場合)に「遺留分」が認められます。遺留分とは、近しい法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。遺留分を侵害された相続人は侵害者へ取り戻しを請求できます。

つまり他の相続人は長男へ遺留分侵害額の支払いを請求できるのです。


まとめ

戦前の家督相続制度は現在の民法と全く異なります。ただ現在でも家督相続と同様の相続方法が主張されるケースがあり「無関係」とはいえません。遺言書や家族信託に関する正確な知識を持って、遺産相続にまつわるトラブルを防ぎましょう。迷ったときにはお気軽に司法書士までご相談ください。

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