「相続登記」ってなに?
聞きなれない言葉にわからないことだらけではないでしょうか。
相続登記とは「不動産の所有者が亡くなった際に行う名義変更の手続き」です。
法務省の統計では平成28年度に土地の相続登記の件数だけでも86万件もある手続きなのですが、一般の方は一生のうちに一度か二度関わるくらいでしょう。
そして自分で相続登記はできますが、一生のうちに一度か二度関わるくらいの手続きの為に勉強をするのも時間がもったいないと思いますし、報酬も一回あたりの相続登記なら平均で10万円位ですので、相続登記の専門家である司法書士に頼むのがおすすめです。
実際、司法書士である私が今まで数多くの相続登記の依頼を受けてきた中でも、多くの方が途中まで自分で手続きをしようとして、やっぱり面倒又はこれ以上どうすれば良いか分からないとなり、結局司法書士へ依頼されるケースが多く見受けられます。
さらに、2024年4月からは相続登記が法律上「義務」となり、相続開始から3年以内に登記を申請しなければ、10万円以下の過料という罰則を受ける可能性があります。これまで「急がなくてもよい」と考えられていた手続きが、今後は期限を守るべき法的義務へと変わったのです。
本記事は司法書士として数多くの相続登記を担当してきた私が、相続登記の内容と司法書士に依頼する場合の費用やメリットデメリットをご紹介致します。
相続登記とは、どんな手続きなのかご理解頂ける内容です。是非参考にして下さい!
また、以下の動画では「相続登記はどこまで自分で進められる?」「費用や期限で見落としやすい点は?」といった、実務の秘伝ノウハウを、グリーンの代表・山田が動画でわかりやすく解説しています。
\コラムの論点を“動画で補強”したい方はこちら/
目次
1章 相続登記とは、不動産をお持ちの方が亡くなったらその名義を変更するために必要な手続きのこと

相続登記とは、亡くなられた方が不動産を所有している場合に、その不動産を相続した方の名義へ変更する為に、必ず必要になる手続きです。
不動産の名義は、法務局が管理している登記簿に記録されています。持ち主が亡くなっても、この登記簿は自動では書き換わりません。
この手続きが行われなければ、法律上の権利関係と登記簿上の名義が一致しない状態となり、売却や担保設定などの処分行為ができません。そのため、手続きをして、名義を変更する必要があるのです。
相続登記の方法にはいくつかの種類があります。ひとつは、民法で定められた法定相続人が法定相続分に従って登記を行う方法です。もうひとつは、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって不動産を誰が相続するかを決め、その結果を登記する方法です。
また、被相続人(亡くなった人)が遺言を残していた場合には、その内容に基づいて登記を行うことになります。遺言の形態には自筆証書遺言や公正証書遺言があり、いずれの場合もその内容に従って登記が進められます。
さらに、被相続人が特定の人に財産を譲る意思を示していた場合(遺贈)にも、名義変更の対象となります。
このように、相続登記とは単に名義変更の手続きにとどまらず、第三者に対して不動産の帰属を公示するという重要な役割を果たします。相続登記を怠ると、のちの売却や担保設定はもちろん、相続人どうしでの紛争の原因となることも少なくありません。
とりわけ注意すべき点は、不動産を売却する際には必ず相続登記を完了させておかなければならないということです。買主は登記簿に基づいて所有権を確認するため、名義が被相続人のままでは売買契約が成立しません。
このような実務的な観点からも、相続登記は「いつかやればよい」ものではなく、相続が発生したら速やかに取り組むべき重要な手続きだといえるのです。
2章 相続登記は義務化された!期限内に手続きが必須になった背景
2024年4月の法改正により、不動産を相続した方は、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました。
正当な理由なく期限内に申請しなかった場合は、10万円以下の過料(行政上の金銭的制裁)が科される可能性があります。
この義務化は、相続登記が長年任意の手続きであったために放置されるケースが多く、所有者不明の土地が全国的に増加し、土地の利活用や公共事業に支障が生じていた問題を解消するための制度改正です。
すでに相続が発生している未登記の不動産も対象となるため、早めの対応が必要です。
相続登記の義務化は、現在すでに相続登記せず放置されている土地も無関係でなく、義務化の対象になります。期限についてまとめた下表をご覧ください。
| 相続・遺産分割のタイミング | 相続登記の期限 | |
| 2024年4月1日より前に不動産を相続した場合 | 2027年3月31日まで | |
| 2024年4月1日以降 | 相続が発生した場合 | 取得を知った日から3年以内 |
| 遺産分割が成立した場合 | 遺産分割が成立した日から3年以内 | |
参考:法務省「相続登記の申請義務化について」
参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
期限内に相続登記ができずにそのまま放置をすると、下記のようなリスクがあります。
もしも、相続登記をしないまま何十年も経過すると、相続人の一部が亡くなり、さらにその子や孫に権利が移る「数次相続」が発生します。結果として関係者が増え、権利関係が極めて複雑になってしまうでしょう。

義務化によって「相続登記を後回しにする」という選択肢は事実上なくなりました。今後は相続人にとって、登記申請を行うことが法的な責任となり、期限を守らなければならない義務となるのです。
相続登記の義務化について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
3章 相続登記を放置する事で起こる5つのリスク
相続登記が義務化されてなかったとしても、放置すると様々なデメリットがあります。場合によっては、かかる費用や手間との関係で相続登記をすることが困難になってしまうこともあります。
不動産を相続したら必ず相続登記をしましょう。
本章では、相続登記を放置した場合のデメリットをまとめていきます。
3-1 不動産の売却前に急いで相続登記をしなければならなくなり思わぬ出費がかかる場合があります
相続した不動産を売却する場合は、必ず相続登記をしなければ売却することができません。
良くあるケースとして、売却をしたいと思い不動産会社のところに行くと「相続登記がまだですが、とりあえず売却活動をしながら並行して相続登記を進めましょう」となるケースです。
この場合は不動産会社のアドバイスの元で遺産分割協議も進んでいくことが多いのですが、率直に言って「相続に詳しい営業担当」に当たらなければ、思わぬ落とし穴にはまることがあります。誰に相続登記の名義を入れるか等を十分に検討する時間が無い場合もあり、結果として思わぬ贈与税がかかってしまったりと余計な出費が増えてしまうこともあります。
時間に余裕があるうちに、司法書士等の専門家に相談又は依頼して手続きを済ましておきましょう。
司法書士への相談について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
3-2 相続人の数が増えてしまい、遺産分割協議が難航します
相続が発生して、何年も経過してしまうと相続人自体が亡くなってしまい、その子供たちが相続人になりどんどん相続人の人数が増えてしまいます。
そして次の世代になればなるほど相続人同士の関係性も薄くなりますので、連絡先や住所も分からずに相続登記をすることが困難になってきます。

上記イラストではどのように相続人が増えていくのかの例を記載しました。
最初は4人だった相続人がなんと16人になっています。あまり付き合いのない16人が遺産分割協議をするというだけでいかに大変かが想像できると思います。
実際に私も、これ以上に相続人の多い案件にも多数関わってきましたが、毎回本当に時間も費用も掛かります。
共同相続人について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
3-3 相続人が認知症等になってしまうと遺産分割が難しくなります

時間の経過とともに、相続人の方もお年を重ねていきます。そしてその方が認知症等になり判断能力が低下すると、遺産分割協議をするのが難しくなります。
遺産分割協議をする為に、成年後見の申し立てをしないといけないというケースもありますが、成年後見の申し立てをしてもその手続きが終わるまでに数か月かかりますし、とても負担が大きくなってしまいます。
認知症と相続について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
3-4 相続した不動産を差し押さえられる事があります
相続人が複数いる場合に、そのうちの誰か一人に対して債権を持っている場合は、その不動産に強制的に相続登記を入れた上で差押えをされる事があります。
例えば、遺産分割協議でその不動産を取得するのがAさんと決まっていても、相続登記をしないで放置しておくと、他の相続人であるBさんの債権者がその不動産を差し押さえられると、結果としてAさんがその不動産を取得することができなくなる恐れがあります。
このように相続登記を放置するとリスクしかありませんので、できるだけ速やかに相続登記の手続きをするのをおすすめいたします。
詳しくはこちらをご覧ください
3-5 公的書類の保存期間が経過して相続登記のための書類が準備できなくなる事があります

相続登記を申請するときには、戸籍などの公的書類を提出する必要があります。
しかし、公的書類には保存期間が定められていますので、時間がたってから手続をしようと思っても、書類が既に廃棄されてしまっている可能性があります。
このようなケースでは、最悪の場合、自分の不動産なのに名義を得ることができなかったり、特殊な書類が必要になって手続きに余分な労力がかかったりということもあります。
4章 相続登記は自分で行う方法と司法書士に依頼する方法の2つがあります

相続登記を行う場合は手間と知識が必要ですが、一般の人でも自分で手続きをされる場合も有ります。
実際には多くの方は司法書士に相続登記を依頼されています。
本章では、相続登記を自分でする場合と、司法書士に依頼する場合の2つのパターンを解説していきます。
4-1 相続登記を自分で行う場合
相続登記を、一般の方が行う場合の一番のメリットは司法書士に払う報酬を節約できるという事でしょう。
ただ、相続登記を自分で手続きするには、定年退職していて時間に余裕がある方や、登記手続きの知識が有る方でなければ、ご自身で行うのは現実的に見て難しいでしょう。
集める書類も、戸籍を筆頭に多岐に渡りますし、相続人が複数いる場合は民法の知識が必要になってきます。
メリット
- 司法書士に払う報酬を節約できる
デメリット
- 書類集め等で、非常に時間がかかる
- 遺産分割協議書や相続関係説明図等を作成するのは知識が無いと難しい
- 遺産の分け方で失敗してしまう可能性がある
自分でやりたいという方はこちらの記事を参考にしてください。
4-2 相続登記を司法書士に依頼する場合
相続登記を専門家である司法書士に依頼する場合の、一番のメリットはご自身は殆ど何もしなくて良いという事でしょう。その他にも、経験豊富な司法書士なら、将来売却をする場合を想定して誰の名義にする方が得か等の有益なアドバイスも受けられます。
ただし、司法書士に依頼するには、手続き報酬を支払わなければなりません。
司法書士報酬額は内容により、金額は変わりますがオーソドックスな相続人が2名くらいで土地のみの価格2000万円位という様な内容なら、相続登記申請の報酬は7万円~10万円程度の事務所が多いと思います。
それ位の金額ですので、司法書士に依頼して相続登記を行うのがオススメです。
メリット
- ほとんどの必要書類を司法書士が取得するので楽
- 相続の経験豊富な司法書士なら、アドバイスが受けられて安心
- 手続きがスムーズに進み早く終われる
デメリット
- 司法書士への報酬がかかる(自宅のみなら約7万円~10万円位)
司法書士報酬に関してはこちらの記事を参考にしてください。
5章 相続登記の流れ
本章では不動産をお持ちの方が亡くなってから相続登記の完了までの流れを解説していきます。下の図の流れで行いますので参考にして下さい。

5-1 不動産所有者の死亡
不動産をお持ちの方が亡くなれば、相続登記が必要になります。
大切な家族が亡くなって、葬儀等で大変だと思いますが、落ち着いたら速やかに手続きを進めていきましょう。
親が亡くなったらやる事について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
5-2 遺言書が有るか確認しましょう

故人が、遺言書をのこしていたかどうか必ず確認しましょう。
遺言書があればその内容にしたがった遺産の分け方になります。ただし相続人全員で同意すれば遺言書と違う遺産の分け方を選ぶことも可能です。
遺言には以下の主に以下の2つのパターンがあります、それぞれの概要を記載します。
①公正証書遺言・・公証役場で、公証人(元裁判官等が多いです)と証人2名立会いの下に作成する遺言です。公正証書で作成された遺言は、相続人であれば検索する事が可能ですので、存在を聞いていないがもしかしたらと思われたらお近くの公証役場で検索して調べましょう。
②自筆証書遺言・・文字通り本人の自筆で書かれた遺言書です、遺言を書いた方が亡くなられたら家庭裁判所に「検認」という手続きを申し立てなければその後の手続きができません。
遺言書の検認について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
5-3 相続人が誰か調べる為に戸籍を集めましょう
相続登記の申請のときの必要書類としても戸籍は必要ですし、戸籍の情報を読み解いていき今回の相続の相続人は誰なのかを知らべて行きます。
まれにご家族の知らない間に「認知」をされていてその方も相続人として登場してくるというケースもあります。
戸籍は法改正のたびに様式が変更されていたり、戦前の戸籍だと「戸主」という肩書の人がいたりと中々集めるのは難関です。
戦後生まれで、本籍地を変更したことが無いような方が亡くなった場合は、一般の方でも比較的容易に集められますがそうでなければ必要書類の中で一番皆様がつまずく部分でしょう。
司法書士に依頼していれば、こちらの作業もしてもらえますので安心してください。
相続人調査について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
5-4 相続した不動産を調査しましょう
相続した不動産について調査をしていきましょう。相続したと思っている不動産以外の不動産は無いか?その不動産の権利関係はどうだろう?の2点を主に調べます。
調査の為に必要なものを以下に記載します。
①名寄帳・・亡くなった方が所有する不動産の一覧が記載されています。市町村役場で取得しましょう。ただしその市町村の不動産しか記載されませんので、市町村が特定できないと調べるのが難しくなります。
②登記事項証明書・・対象不動産の面積や、所有者の情報が分かります。遺産分割協議書の作成等に使用します。お近くの法務局にて取得しましょう。
5-5 遺産分割協議書を作りましょう
相続人の全員で話し合い不動産を誰が相続するかを決めましょう。
もちろん全員で共有することもできますが、誰か一人に所有させるのがベストです。どうしても他に分けるものが無いという様な場合以外は不動産を共有するような遺産分割はやめましょう。
不動産の共有持分について、下記の記事で詳しく紹介しているので、ご参考にしてください。
そして話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成します。全員が実印を押印して印鑑証明書を添付しましょう。下記にひな形を添付しますので参考にして下さい。

5-6 相続登記を法務局に申請しましょう
遺産分割も終わり、必要書類も集まれば手続きの最終の登記申請です。
申請する先は、不動産の所在地の管轄の法務局になります。管轄を調べるにはこちらのサイトを参照して下さい(法務局管轄一覧)。
申請には3つのパターンがあります、
- 窓口申請
- 郵送申請
- オンライン申請
オンライン申請は、一般の方が利用するのは今は現実的ではありませんので窓口申請又は郵送申請を自分で申請するなら選びましょう。
遠方の法務局の場合は、郵送で申請しましょう。
申請書のひな形を添付しますのでイメージをわかせてください。
5-7 【保存版】相続登記必要書類チェックリスト
相続登記に必要な書類をまとめたチェックリストを作成しました。
相続登記必要書類チェックリストです。 ←こちらをクリックして下さい。
書類作成のポイントについてはこちらの記事を参考にしてください。
6章 相続登記にかかる費用
相続登記を進めるにあたり、多くの方が気になるのが「費用はいくらかかるのか」という点です。
相続登記にかかる費用は大きく分けて、①税金(登録免許税)、②戸籍などの取得にかかる実費、③司法書士など専門家へ依頼する際の報酬の3つに整理できます。
自分でしても司法書士に依頼しても、必ずかかる実費は以下のとおりです。(一例です)
”相続登記実費”
- 戸籍や住民票等の役所で取得する必要書類の取得費用 約1万円~3万円
- 登記申請する際にかかる登録免許税 固定資産評価証明書の中にある不動産の価格に0.4%をかけた金額がかかります。
例)価格1000万円の土地の相続登記でかかる実費2万円なら
1000万円×0.4%+2万円=6万円
6-1 登録免許税(国に納める税金)
相続登記を行う際には、まず登録免許税という税金を国に納める必要があります。これは不動産の名義を移すときに必ず発生する税金であり、税額は不動産ごとに異なります。相続の場合、税率は「不動産の固定資産税評価額 × 0.4%」です。
例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を相続する場合、登録免許税は 2,000万円 × 0.4% = 8万円 となります。固定資産税評価額は、市区町村から毎年送られてくる納税通知書や、役所で取得できる固定資産税評価額証明書で確認することができます。
なお、相続登記以外の手続き(例えば贈与による所有権移転登記など)では税率が2%となるため、相続登記における0.4%という税率は比較的低く抑えられているといえます。これは、相続による名義変更を円滑に進めてもらうための政策的な配慮でもあります。
登録免許税についての詳しい解説は、以下の記事を合わせてご覧ください。
6-2 実費(書類取得費用など)
登録免許税以外にも、登記に必要な書類を取得するための費用がかかります。代表的なものには以下があります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍、改製原戸籍:1通あたり数百円
- 相続人の戸籍謄本や住民票:1通あたり数百円
- 印鑑証明書:300円程度(市区町村によって異なる)
- 固定資産税評価額証明書:300円前後
- 登記事項証明書(登記簿謄本):1通600円
これらの書類は、不動産の数や相続人の数によって必要な通数が変わるため、全体で数千円から1万円程度になることが一般的です。特に、被相続人が高齢で亡くなった場合には、戸籍を出生まで遡る必要があるため、複数の役所に請求しなければならず、郵送代なども含めて実費がかさむことがあります。
6-3 司法書士報酬(専門家へ依頼する場合)
相続登記は自分で行うことも可能ですが、必要な書類が多く、申請書の作成には専門的な知識が求められます。そのため、多くの方は司法書士に依頼して手続きを代行してもらいます。司法書士へ依頼する場合には、報酬が必要です。
報酬額は事務所によって異なりますが、相続登記1件あたり5万円~10万円程度が相場です。相続人の数が多い場合や、遺産分割協議が必要な場合、また不動産の数が複数ある場合には、追加で費用がかかることもあります。一方で、単純に配偶者が1人で不動産を相続するケースなどは、比較的費用を抑えられることもあります。
司法書士報酬には、書類収集のための手数料、登記申請書の作成費用、法務局への提出代行などが含まれます。複雑な相続関係や数次相続が発生している場合には、専門家に依頼することで大幅に手間を省き、申請の不備を防ぐことができます。
このように、相続登記の費用は「税金」「実費」「報酬」という3つの要素から構成されます。特に登録免許税は不動産の評価額に応じて決まるため、事前に固定資産税評価額を確認して概算を把握しておくことが大切です。
ースでは、相続人の間で「特別受益」として相続分を調整することがあり、これが遺産分割協議に影響することもあります。
7章 特殊なケースの相続登記
相続登記と一口にいっても、すべてのケースが単純なわけではありません。
相続人全員が元気で所在も明確、遺産分割協議もスムーズに整うという状況はむしろ少なく、現実にはさまざまな特殊事情を抱えることが多いのです。
ここでは、典型的な特殊ケースとその対応方法を解説します。
7-1 相続放棄・限定承認がある場合
相続人は、必ずしも相続を受け入れなければならないわけではありません。民法には「相続放棄」と「限定承認」という制度があり、相続人が家庭裁判所に申述することで選択することが可能です。
- 相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます。そのため、その人の持分については他の相続人に移り、結果として登記するべき内容も変わります。
- 限定承認は、相続財産の範囲内で被相続人の債務を弁済するという制度で、プラスの財産もマイナスの財産もある場合に有効です。ただし、限定承認を選ぶためには相続人全員が協力する必要があり、登記の際にも複雑な手続きが求められます。
このような場合には、登記の前提として家庭裁判所での手続きが完了していることが必要になります。
7-2 生前贈与や遺贈がある場合
被相続人が生前に特定の人へ不動産を贈与していたり、遺言書で特定の人に不動産を与える旨を記していたりする場合には、その効力に基づいて登記を行います。特に「遺贈」の場合には、相続人以外の第三者が名義を取得することもあり、その場合には相続登記ではなく遺贈登記として手続きを進める必要があります。
また、被相続人の生前贈与と相続が重なっているケースでは、相続人の間で「特別受益」として相続分を調整することがあり、これが遺産分割協議に影響することもあります。
7-3 相続人不存在の場合と相続財産清算人制度
まれに、被相続人に相続人が一人も存在しないケースがあります。兄弟姉妹や代襲相続人もいない場合、法律上の相続人は存在しません。このような場合には、利害関係人や検察官の申し立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。
相続財産清算人は、亡くなった人の財産を管理し、債権者への弁済や、特別縁故者(法定相続人ではないが、被相続人の介護に努めた人など)がいる場合は財産分与に関する手続きを行います。最終的に相続人や特別縁故者が全くいないと確定した場合、残った財産は国に帰属します。
相続人不存在のケースでは、通常の相続登記は行われず、相続財産管理人が登記手続きを行うことになります。
7-4 行方不明者や認知症の相続人がいる場合
相続人の中に行方不明者がいる場合、そのままでは遺産分割協議ができません。この場合、家庭裁判所に申し立てを行い、不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。管理人が協議に参加することで、ようやく登記に進むことが可能になります。
また、相続人が高齢や病気などで判断能力を失っている場合には、成年後見人を選任する必要があります。後見人が代理人として協議や登記手続きを行うことで、不動産の所有権移転が適切に行われます。
7-5 相続欠格・代襲相続が生じる場合
相続人の中に相続欠格事由(被相続人を故意に殺害しようとした、遺言書を偽造した等)がある場合、その人は法律上当然に相続権を失います。その結果、その人の子が代襲相続人として相続権を取得することがあります。
この場合、相続登記においては代襲相続人が相続人として扱われるため、戸籍の確認作業がより重要となります。出生から死亡までの戸籍の流れに加えて、代襲が発生しているかどうかを丁寧に調査しなければなりません。
このように、相続登記にはさまざまな特殊ケースがあり、それぞれに応じた法的手続きや裁判所の関与が必要になります。単純なケースでは相続人が自ら登記を行うことも可能ですが、相続放棄や限定承認、相続人不存在、行方不明者や認知症の相続人が絡む場合には、専門知識が不可欠です。こうした複雑な事案では、司法書士や弁護士に相談し、適切な登記を進めることが不可欠といえるでしょう。
8章 相続登記は最初から司法書士に依頼することがおすすめです
相続登記は法律上「相続人が自ら行うことができる手続き」です。実際、法務局のホームページには登記申請書のひな型も公開されており、自分で必要書類を集めて作成し、申請することも可能です。
しかし、戸籍や除籍の収集、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、申請書の記載方法など、すべてを正確に行うのは容易ではありません。手続きが不完全であれば、法務局から補正を求められたり、最悪の場合は却下されてしまうこともあります。
こうしたリスクや手間を考えると、多くの方にとって司法書士・司法書士法人に依頼することは大きなメリットとなります。ここでは、その具体的な利点を整理します。
8-1 必要書類の収集を代行してもらえるから
相続登記の準備段階で最も大変なのが、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍、改製原戸籍の収集です。特に高齢で亡くなった方の場合、複数の市区町村にまたがって戸籍を取得しなければならず、郵送での請求や役所とのやり取りに多大な労力を要します。
司法書士に依頼すれば、こうした戸籍・住民票・戸籍の附票などを代理で収集してもらえるため、自分で全国の役所に問い合わせをする必要がなくなります。必要な書類を確実に揃えられるという安心感は大きな利点です。
8-2 複雑な相続関係にも対応できるから
相続人が多数に及ぶケース、数次相続が発生しているケース、あるいは行方不明者や認知症の相続人が含まれるケースでは、専門的な知識が不可欠です。司法書士はこうした複雑な権利関係を整理し、必要に応じて家庭裁判所への上申書や委任状の作成をサポートします。
また、遺言書の形式が不備なく有効であるか、相続放棄や限定承認の手続きがどのように登記に影響するかといった法的判断についても、司法書士は実務経験に基づいたアドバイスを提供できます。
8-3 登記申請の正確性とスピードが確保できるから
相続登記の申請書は、物件の所在地、固定資産税評価額、相続人の持分など、細かい部分まで正確に記載しなければなりません。誤記があれば法務局から補正を求められ、そのたびに時間を取られてしまいます。
司法書士に依頼すれば、こうした申請書の作成をプロに任せられるため、スピーディかつ確実に登記を完了させることができます。さらに、法務局とのやり取りも司法書士が代理で行ってくれるため、依頼者が直接窓口に出向く必要もありません。近年はオンライン申請も普及していますが、初めて利用する一般の方にとっては操作が難しいこともあり、司法書士に任せるメリットは大きいといえます。
8-4 費用対効果が高いから
司法書士に依頼する場合には、もちろん報酬が発生します。しかし、報酬の内訳には「戸籍収集代行」「申請書作成」「法務局提出代行」といった具体的な業務が含まれており、それによって依頼者自身の時間や労力を節約できます。
また、誤った申請によって登記が受理されなかった場合、再度の申請に時間と費用を要することを考えれば、最初から司法書士に依頼する方が結果的に安上がりになることもあります。さらに、将来的な売却や担保設定を考えると、早期に正確な登記を完了させること自体が資産価値を守ることにつながります。
個人の司法書士より司法書士法人への依頼がおすすめ!
個人の司法書士に依頼するのも一つの方法ですが、近年は複数の司法書士が所属する司法書士法人に依頼するケースも増えています
司法書士法人であれば、組織として対応できるため、業務が安定しており、複雑な案件や大量の書類を伴う案件でも迅速に処理できる体制が整っています。また、複数の司法書士の目が入ることで、申請書の精度も高まり、依頼者にとって安心感が増します。
このように、相続登記を司法書士に依頼することで、手間やリスクを大幅に減らし、確実に登記を完了させることができます。特に相続人が多い場合や相続財産が複数にわたる場合には、司法書士法人に相談することが最も合理的な選択肢といえるでしょう。
9章 相続登記について良くあるQ&A集
まとめ
相続登記は放置していると様々なデメリットがあります。相続登記の義務化も近く施行されることが確実なので、今のうちからできるだけ速やかに手続きを進めていきましょう。
そして不動産という大切な財産の名義を変える手続きですので、必要書類等も多岐に渡りその内容も複雑です。
司法書士に依頼しても通常は報酬もそこまでかかりませんので、よほど時間に余裕がある方以外は依頼するのが得策でしょう。














