
上手く活用すると、高齢者の方の財産管理や相続対策に非常に効果を発揮する「家族信託」をご存知でしょうか?
- 親が認知症になっても、子供がスムーズに親の財産管理ができる
- 遺言書ではできない資産の渡し方が可能
他にも様々な機能が家族信託には有りますが、一番大きい点は上記の2点でしょう。
2017年に、家族信託はテレビ等のメディアで取りあげられる事も増えて、当事務所への相談も急激に増えています。
ただ、残念ながら家族信託を提案できる専門家がまだ少ないと感じるのが実情です。それにより、本来は家族信託を使えば悩みを解決できたはずの方が救われていない現状が有ります。
そんな状況を少しでも改善する為、早くから家族信託に取組み、数多くの家族信託の設計に関わってきた筆者が分かり易く家族信託を解説していきます。
本記事では家族信託の概要とメリット・デメリットから有効な活用シーンまで、「家族信託」について徹底的に分かりやすく解説していきます。
是非お読み頂いて、あなたのお悩みを解決する一助にして下さい。
家族信託のわかりやすい解説をYouTube動画でも公開中!
本記事の内容である「家族信託」について代表司法書士の山田が初めての方向けにわかりやすく解説しています!
ぜひ動画も併せてご覧ください(8分46秒)。
【家族信託】相続を考え始めた人に知って欲しい家族信託という方法
目次
1章 家族信託とは
本章をお読み頂けば、家族信託がどんな制度なのかの大枠をつかんで頂くことができます。
1-1 家族信託とは
家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産を託して適切な方法で財産を管理・処分を任せる為の方法です。
信託銀行の関与や、裁判所の関与は不要ですので、家族間で自由に契約内容を決めて非常に柔軟な財産管理を行う事が可能です。
信託はアメリカ等の欧米では一般的に「リビングトラスト」と言われて親しまれていますが、日本ではこれからが本格的に浸透していく制度です。
家族信託とはどんなものかを理解していただく為のイラストを下記に載せますのでご覧下さい。
1-2 家族信託は成年後見や遺言ではカバーできない部分も補える新しい制度
成年後見制度や遺言では出来なかった様な、財産管理や相続対策等が家族信託ではできます。
ご自身の想いやニーズにより合致した認知症対策や相続対策が可能です。
1-3 家族信託の基本的な仕組み
家族信託の基本的な仕組みは下記のイラストの通りです。
イラストでは、父が委託者兼受益者、息子が受託者の例を載せます。
主に登場する家族信託の役割としては以下の3つがあります。
① 委託者→財産を託す人
② 受託者→財産を託されて、管理・運用・処分をする人
③ 受益者→信託した財産から発生する収益を受取る権利(受益権と言います)を持つ人
この例では、父が息子に不動産と金銭を信託しています。
息子は受託者として管理・運用・処分を行いますが、不動産から得られる家賃収入や売却した際の売却代金は受益者である父のものです。
家族信託とはについてより詳しく知りたい方は以下の記事をチェック
2章 家族信託の5つのメリット
本章では家族信託の5つのメリットについて解説をしていきます。
2-1 認知症対策として使える
家族信託を元気な内に設計しておけば、家族に財産管理を託せますし、もし本人が認知症になって判断能力が低下したとしても受託者が本人に代わって財産管理を行えますので、認知症になっても資産が凍結状態にならないので受託者によりスムーズな財産管理が行えます。
例えば、子供を受託者にして家族信託をしておけば、親が老人ホーム等に入所して空き家になった実家を子供の判断で処分して親の生活費にあてるというような事が可能なのです。
2-2 成年後見の代わりに柔軟な財産管理ができる
成年後見制度とは、認知症等により判断能力が十分でない方の財産管理や契約行為を援助する為に家庭裁判所に申立をしてその方を援助する成年後見人を選んでもらう制度です。
成年後見制度には以下の様なデメリットが有ります。
- 家庭裁判所の監督を受けるので定期的な報告の義務が有る。そしてその事務の負担が大きい。
- 司法書士等が後見人に選任されると生涯に渡り報酬がかかる。(月額2万~5万)
- とにかく本人の財産を保全する事しか出来ない。例えば相続税対策は一切できなくなる。なぜなら相続税対策は本人の資産の評価を減らして圧縮するのが一般的ですので、それは本人の財産を保全する事にはならないからです。
成年後見と違い家族信託は家族間で行いますので、報酬も不要(設定する事は自由)ですし、信託契約の目的の範囲内なら受託者が財産を運用したり処分する事もできますので相続税対策も可能なのです。
2-3 自分が亡くなった後の次の相続についても指定できる
家族信託を使うと、自分が亡くなった後の次の相続についても誰に相続させるのか指定する事が出来ます。これを「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と言います。
例えば、一旦後妻に自宅を相続させて、後妻が亡くなったら実子に自宅を相続させるという様な事が可能なのです。
遺言では自分が亡くなった時の事しか指定が出来ませんので、次の相続についても指定できるのは家族信託の大きなメリットです。
2-4 倒産隔離機能によって財産が守られる
家族信託では、財産を受託者に託します。仮に受託者が自分の借金等で自己破産する様な事になっても、託した財産は守られます。
なぜなら受託者個人の私有財産と託した財産は法的に分けられていますので、託した財産が破産等の影響を受けないのです。
2-5 不動産の共有を回避できる
どうしても不動産を共有し無ければならない様な場合に、家族信託を使って実質的に共有を解消する事に近い形を作る事ができます。
これにより、不動産を共有する事によるトラブルの防止や、不動産を売却できなくなる不動産の塩漬けの防止をする事が出来ます。
例えば、不動産を共有しているAさんとBさんのご兄弟がいます。共有を解消する為にはどちらかが相手の持分を買い取るか、売却して売却代金を分ける位しか今までは方法が有りませんでした。
しかし、家族信託を使って下記の図の様にAさんの持分をBさんに信託をすれば、その不動産から得られる収益や売却の際の売却代金はAさんに入るようにしたままで、今後はBさん1人で管理・処分が可能となり、実質的には共有を解消したのと近い状態を作れます。
上手く使えば収益性の高い不動産を無理に売却をする必要も無く、そして売却の必要性が生じた時にはBさん1人の判断で売却をする事も可能ですので不動産が塩漬けになってしまう事も防止できるのです。
3章 家族信託の注意点
本章では家族信託を設計する際に注意すべき点を解説していきます。
3-1 当事者を長期間拘束する
家族信託契約で、2-3で解説したように自分が亡くなった後の相続についても指定する事が可能です。これはメリットでも有りますが、その裏返しとして当事者を長い期間家族信託契約の影響下に置く事になります。
家族信託を検討する段階では、自分の想いを実現する事とその影響下に置かれる家族とのバランスを取る事を考えて家族信託を設計しましょう。
3-2 信託不動産から出た損失を他の所得と合算できない
収益不動産を家族信託契約の対象にした場合は、その不動産が年間収支で赤字であったとしてもその赤字は無かったものとみなされます。
ですので信託した不動産に関する損失は、信託財産以外からの所得と通算する事が出来ないのです。信託契約を複数に分けた場合も、信託契約をまたいでの損益通算は出来ないので注意しましょう。
家族信託を検討する際は、専門家と良くしミューレーションをした上で進めましょう。
3-3 家族信託を行う事自体は節税にはならない
家族信託を行う事自体では節税にはなりません。
ただし、家族信託契約で将来必要な時に相続税対策もできる様な内容にしておけば、結果として相続税が節税になることは有ります。
詳しい解説はこちらの記事をお読みください。
3-4 遺言に比べて手間がかかる
家族信託は契約ですので、委託者と受託者の合意が無いと成立しません。それに対して遺言は自分一人の判断で作成する事が出来るので家族信託と比較すると手間がかかりません。
家族信託に遺言と同じような効果を持たせる事が出来ますが、その効果を得るだけの目的なら遺言を選択するのがベストです。
例えば、2世代先の相続について指定したい等家族信託を使わなければ実現できない事が有れば、家族信託を選択しましょう。
3-5 身上監護権が無い
身上監護権とは、医療・介護などに関する契約を本人に代わって行う権利の事です。
家族信託契約では、身上監護権を受託者に与える事は出来ません。
それに対して成年後見制度の場合は、後見人が身上監護権を持って医療・介護などに関する契約を本人の代わりに行う事が可能です。
ただし、実際のところはお子さんで有ればほとんどの場合は医療・介護の手続きを進められる場合が多いので成年後見制度を使うべきかどうかは司法書士・弁護士等と相談の上決定しましょう。
3-6 受託者に司法書士・弁護士等がなる事は出来ない
信託契約の受託者に我々の様な法律専門職がなる事は出来ません。
なぜなら、我々が報酬を頂いて受託者に就任すると信託業法違反になってしまいますので就任する事は出来ないのです。
3-7 対応できる専門家が少ない
家族信託を提案して設計できる司法書士・税理士等の専門家は現時点では少数派です。
理由は主に次の2点です。
- 結論が判例等で確立していない部分が残されていて提案するのに消極的な専門家が多い
- 法改正からまだ時間がたっていないのでそもそも家族信託について理解していない専門家が多い
これから対応できる専門家は増えていくと思いますが、本記事を読まれてご自身に家族信託は使えるかもと思われたらホームページ等を良く確認して家族信託に対応できる司法書士等の専門家を探して相談しましょう。
4章 家族信託と遺言・成年後見の比較
家族信託を理解するのには、遺言と成年後見制度との比較を見ると理解し易いです。
本章では家族信託と遺言・成年後見との比較を解説していきます。
4-1 家族信託と遺言の比較
家族信託では出来るが遺言では出来ない事、その逆に遺言では出来るが家族信託では出来ない事が有ります。
下記に表にします。
| 家族信託 | 遺言 |
①誰にも知られずにできる | × | ○ |
②二次相続以降の指定 | ○ | × |
③全財産を相続させる | △ | ○ |
④遺留分減殺請求を受けた場合の財産の指定 | × | ○ |
⑤手続きにかかる費用 | 遺言と比較すると高い、現時点では精通した専門家に依頼しないと自分で行うのは困難 | ご自身で行う事も可能。専門家に依頼した場合の費用は家族信託に比較して安い |
① 誰にも知られずにできる
家族信託の場合は、最低でも委託者と受託者の2名の合意が無いと成立しませんので、自分以外の誰にも知られずに手続きを行う事は出来ません。
遺言の場合は、自分一人で行う事が可能ですので誰にも知られずに手続きを行う事ができます。
② 二次相続以降の指定
家族信託の場合は、二次相続についても誰に受益権を取得させるのか指定をする事が可能です。ですので二次相続以降の指定が可能なのです。
遺言の場合は自身が亡くなった際の相続については、どの遺産を誰にと決める事は出来ますが、その次の相続(二次相続)については指定する事は出来ません。
③ 全財産を相続させる
家族信託の場合は、家族信託契約を締結した後に獲得した財産も追加する様に設計する事も理論上は可能ですが、その都度一定の手続きをしなければなりませんので少し手間がかかります。
遺言の場合は、「全財産をAに相続させる」という内容で遺言を作成すれば作成した後に獲得した財産であってもAに相続させることが可能です。
④ 遺留分減殺請求を受けた場合の財産の指定
相続発生後に遺留分減殺請求を受けて遺産を渡さなければならない場合、遺言で有ればこの順番で渡しなさいと指定をする事が可能です。
家族信託の場合は、その様な順番を決める事は出来ません。
⑤ 手続きにかかる費用
家族信託の場合にかかる費用は、主に専門家に支払う報酬、不動産を信託財産に入れる場合の登録免許税等の実費が有ります。仮に5000万円位の不動産を信託財産に入れて家族信託を行う場合、約50万円~90万円位の費用がかかるでしょう。
遺言の場合は自筆証書遺言と言って自分一人だけで作成できる遺言書なら費用は0円です。専門家に依頼をして、公正証書で作成をしたとしても通常は15万円~30万円位の費用で済みますので、コストの面では遺言の方がかなり安く済みます。
4-2 家族信託と成年後見の比較
続いて家族信託と成年後見の比較について解説をしていきます。
下記の表を見てください。
| 家族信託 | 成年後見 |
①相続対策 | ○ | × |
②投資(大規模修繕等) | ○ | × |
③裁判所の関与 | 無し | 有り |
④施設入所等の契約の代理 | × | ○ |
⑤費用 | 家族信託契約設定時にかかるが、ランニングコストはほとんどかからない | 申し立て時に数万円~10万円程度。司法書士等が後見人になると毎月2万円~5万円位が生涯に渡り発生する |
① 相続対策
家族信託なら信託契約の目的の範囲の中で自由に受託者が資産を処分する事が可能です。よって相続対策も可能な様に設計すれば問題なく相続対策ができます。
成年後見制度は、本人の財産を保全することが徹底された制度ですので、本人の利益にならない事は出来ません。よって、相続対策は本人ではなく相続人となる人の為に行う行為ですので相続対策は一切できないのです。
② 投資(大規模修繕等)
家族信託契約なら、収益不動産の入居率を上げるための積極的な投資(大規模修繕等)も受託者の判断で行える様に設計をする事が出来ます。
対して、成年後見制度の場合は必要最低限の補修等の為の修繕なら可能ですが、投資にあたる様な行為はできません。
③ 裁判所の関与
家族信託契約は裁判所の関与は必要有りません。
成年後見制度の場合は、申し立てからご本人が亡くなるまで裁判所の監督下に置かれます。具体的には毎年の収支の報告や、自宅不動産の売却時の裁判所の許可等の事務の負担が有ります。
④ 施設入所等の契約の代理
家族信託の場合は、受託者が本人の代わりに施設入所等の代理を行う権限を与える事はできません。
対して成年後見制度は、成年後見人がほぼ全ての契約を本人に代わって行う事ができます。
⑤費用
家族信託の場合は、設定する段階で専門家報酬等が発生しますが、ランニングコストについてはかからない様に設計する事が可能です。
成年後見制度の場合は、家庭裁判所の判断で毎月の後見人に対する報酬が決定されます。約2万円~5万円くらいが生涯に渡り発生します。
5章 家族信託の手続きの流れと費用
本章では家族信託の手続きの流れと、家族信託にかかる費用の概要を解説していきます。
5-1 家族信託の手続きの流れ
Step1 家族信託を行う目的を決めよう
まずはどんな目的で家族信託を行うのかを決めましょう。
様々なニーズの中から自分たち家族にとって大切な事を目的に選んでいきましょう。
Step2 信託契約の内容を決めよう
次に目的を達成する為にはどんな内容の契約にするかを検討します。
ここが一番時間をかけて考える部分です。専門家に依頼している場合は専門家のアドバイスを受けながら進めていきましょう。
Step3 信託契約の内容を書面にしよう
内容が決まればその内容を契約書として書面に落とし込んでいきます。
この際のポイントはあいまいな表現はなるべく避けて作っていく事と、後の手続き(相続発生の際等の手続き)まで視野に入れて作る事です。我々が関わる場合は、事前にこの内容で登記手続きは大丈夫か等を法務局等と打ち合わせる事も有ります。
Step4 信託契約書を公正証書にしよう
ここは必須では有りませんが、公正証書で作成される事をオススメします。理由としては後の紛争を防ぐという所です。
Step5 不動産の名義を変更しよう
不動産を信託財産に入れる場合は、必ず法務局に対して登記申請をしましょう。
Step6 お金を管理する専用講座を作って送金しよう
信託した金銭をきっちりと信託財産として管理する為に専用の信託口座を開設しましょう。
5-2 家族信託にかかる費用
家族信託を行う場合にかかる費用について表にまとめましたのでご覧下さい。
上記はあくまでも目安です。財産の額や契約内容でかかる費用は変わります。
5-3 家族信託にかかわる税金
家族信託を行う際にどんな時に税金が発生するのかを本章では解説していきます。
5-3-1 受益権の動きで贈与税や相続税が課税される
信託契約の場合は、受益権の設定の仕方と設定後に受益権が動いた場合に贈与税や相続税が課税されます。
まず信託契約のスタートの段階では、委託者と受益者が同一人物で有れば贈与税は課税されません。しかし、委託者と受益者が異なる人物でスタートする場合は贈与税が課税される事も有りますので慎重に設計しましょう。
信託契約がスタートした後は、受益権を誰かに無償で譲渡した場合は贈与税が課税される可能性が有ります。
そして受益者が亡くなった場合は相続税が課税される可能性が有ります。
5-3-2 不動産が有る場合は登録免許税がかかる
家族信託契約の中に不動産が有る場合は、登記申請をしなければなりません。
その際は、評価額に0.4%(土地については平成31年3月31日まで0.3%)をかけた金額の登録免許税が必要になります。
仮に土地1000万円と建物1000万円の不動産を登記申請する際は、1000万円×0.4%=4万円、1000万円×0.3%=3万円、合計で7万円の登録免許税が必要になります。
6章 家族信託の活用事例3選
本章では家族信託で良く使われる代表的な事例をご紹介いたします。
6-1 認知症対策の事例
【状況】
今年78歳になるAさんは収益不動産を所有しています。妻は2年前に他界。子どもは同居する長男Bさんと、結婚して遠くに暮らす長女Cさんの2人。
最近、体力の衰えを感じ始めるようになりました。自身が急に体調を崩したり、認知症になったら収益不動産の管理を子どもに託したいが何か良い方法は無いかと調べたところ、家族信託なら解決できそうと思い、司法書士に相談。
【家族信託内容】
① 長男Bを受託者、自身Aを受益者として収益不動産を信託財産とする家族信託契約を締結
② 長男の判断で管理・運用・処分できる権限を与えた
③ 長男に毎月1万円の事務報酬を支払う内容
④ 自身が亡くなったら受益権を2分の1ずつBとCに相続させる内容
【効果】
① Aさんの体調が急変しても、Bさんが自身の判断で収益不動産を適正に管理する事ができ、売却して資金化する事も可能。
② 長男に報酬を払う事により、兄弟間の不公平感を削減。
③ Aさんが死亡しても、収益不動産の管理はBが続けながら、収益だけを兄弟に公平に分配する仕組みが作れて争族の防止になった。
6-2 自分の血縁者に相続させたい方の事例
【状況】
Aさん(75歳)には長男B(50歳)と次男C(48歳)の子が2人。妻は5年前に他界。長男夫婦と同居している。次男夫婦には孫E(25歳)がいるが、長男夫婦には子どもがいない。Aさんの悩みは、自分が亡くなったらBとCには公平に相続をさせたいと考えているがBには子どもがいないので、Bの死後にBの妻Dが遺産の大半を取得して最終的にDの兄弟に自分の遺産を取得されてしまうという点です。
【家族信託内容】
① Aさんを委託者、孫Eを受託者、受益者はAとして家族信託契約を締結。
② Aさんが死亡したら受益権はBとCに2分の1ずつ相続させる内容
③ Bが死亡した際にはDがBの受益権を相続する内容
④ DがBの受益権を相続した後に死亡したらその受益権は孫Eが相続する内容
【効果】
① 子どもBとCに公平に相続させる事が出来る。
② 世話になった長男の嫁Dの生活も保障できる。
③ 最終的に自分の築いた財産を自分の孫であるEに相続させる事が出来る。
6-3 障がいのあるお子様の為の事例
【状況】
Aさん(73歳)とBさん(72歳)のご夫婦には障がいをお持ちの長女Cさんと健常者の長男Dさんの2人の子どもがいます。
Aさん夫婦の心配事は、自分たちが今後高齢になり認知症等になってしまった時の長女Cさんの生活費の事です。現時点でも毎月10数万円必要なCさんの施設利用費等を、自分たちが認知症になったり万が一死亡した様な際にでもCさんが金銭的に困らない様にする方法は無いか?という点です。
【家族信託内容】
①Aさんの財産について、受託者をDさん、受益者をAさんとして家族信託契約を締結。
②毎年一定額をCさんの施設利用費等に使用する事を家族信託契約の中で定めた。
③Aさんが死亡したら受益権をCさんとDさんで2分の1ずつ相続させる内容。
④Cさんの受益者代理人として司法書士法人甲を指定。
⑤Cさんが死亡したら受益権はDさんに相続させる内容。
【効果】
①Aさんの判断能力が低下してもDさんが財産管理を行える。
②Aさん死亡後もCさんに必要な生活費が遺産の中から給付される仕組みが作れた。
③Cさんが死亡したら貢献してくれたDさんに財産が承継されるので納得感が高い。
7章 家族信託はどこに相談するのか?
本章では家族信託を検討されている方がどこに相談をすれば良いのかを解説していきます。
7-1 家族信託に詳しい司法書士がオススメ
家族信託を取り扱っている士業の中では、家族信託に詳しい司法書士を選ばれるのがオススメです。
そもそも家族信託契約を行う際には不動産が入るケースが多いので、不動産登記の専門家である司法書士を選択すればワンストップでアドバイスが受けられます。
7-2 ホームページで実績を確認しましょう。
家族信託等で検索して出てくるホームページやブログを読んで、家族信託の実績等を確認して選びましょう。
私の経験上、最低でも今まで20件以上は受けた事が有る事務所がオススメです。
8章 家族信託は元気なうちに!
家族信託はあくまでも契約ですので、認知症になってしまった後に行う事は基本的にできません。
少しご自身の体調の変化等を感じ出したら検討しましょう。
早めに行う対策があなたの家族と築いた財産を守る最も有効な手段です。
まとめ
家族信託を使えば認知症対策や相続対策が非常に柔軟に行えます。
今までは不可能だった相続対策ができる事も有ります。
本記事を読まれてご自身の悩みが解決できるかもと感じられたら是非ご検討下さい。