認知症となった親の財産管理方法【まとめ】症状の進み具合別に解説!

認知症となった親の財産管理方法【まとめ】症状の進み具合別に解説!
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

親が認知症になってしまい判断能力を失うと、自分で財産管理を行うのが難しくなるので注意が必要です。
具体的には、「銀行口座の凍結」や「介護費用を捻出するための自宅が売却」ができなくなるなど、財産を自由に扱うことができなくなってしまいます。

その結果、認知症となった親の生活費や医療費、介護費用などの工面に困ってしまうケースもあるでしょう。
そんなときは成年後見制度を利用し、財産管理を行うしかありません。

しかし、認知症の症状が軽ければ、成年後見制度以外の財産管理方法も選択できる可能性があります。
本記事では、親が認知症になったときの財産管理で困ることや、症状の進み具合別の財産管理方法を紹介していきます。


1章 親が認知症になったときに財産管理で困る4つのこと

親が認知症になってしまうと、親が所有している「財産が凍結」されたり、判断能力を失っているので「契約行為ができなくなる」などの恐れがあります。
親が認知症になったときに財産管理で困ることは、主に以下の4つです。

  1. 銀行口座が凍結されてしまう
  2. 自宅の売却や不動産の活用ができなくなる
  3. 相続対策(遺言・贈与)ができなくなる
  4. 詐欺に巻き込まれるリスクがある

それぞれ詳しく解説していきます。

1-1 銀行口座が凍結されてしまう

親が重度の認知症になってしまい意思疎通ができなくなると、親名義の銀行口座が凍結されてしまいます。
銀行口座が凍結されると、預貯金の引き出しや定期預金の解約手続きができなくなります。

認知症により銀行口座が凍結されてしまうと、自然と凍結が解除されることはないので、成年後見制度を活用するか各金融機関で個別対応をしてもらうしかありません。
親が認知症になってしまい銀行口座が凍結されたときの対処法は、以下の記事でも詳しく解説しています。

1-2 自宅の売却や不動産の活用ができなくなる

親が認知症になり判断能力を失ったと判断されると、親が所有している自宅も売却できなくなってしまいます。
親が介護施設に入居するので、空き家になった住宅を売りたいのに売れない、といったケースも多いです。

認知症になった親の自宅を売却する際には、成年後見制度を活用するか親が亡くなった後に自宅を売却するしかありません。
そのため、自宅売却までに時間がかかり売り時を逃してしまうと、空き家を管理し続けなければならないなどの恐れもあります。

また、不動産を賃貸したり、土地活用を行うことも当然できなくなります。既に賃貸している場合でも、入居者との法的トラブルに対応することも難しくなります。

親が認知症になったら実家売却はできない!それでも売却する方法3選

1-3 相続対策ができなくなる

親が重度の認知症になってしまうと、遺言書の作成や生前贈与などの相続対策ができなくなってしまいます。
重度の認知症になった方は、判断能力を失ったと判断され、契約行為ができなくなってしまうからです。
具体的には、相続対策ができないことにより以下のトラブルに発展する恐れがあります。

  • 相続に関する親の意向がわからず相続人間で揉めてしまう
  • 相続税対策ができず多額の相続税が発生してしまう
  • 相続手続き完了後に認知症の親に借金があったと判明する

また、上記の他にも認知症となった親が法定相続人になった場合も非常に手間がかかります。
例えば、父が亡くなったときに、母が認知症になっていたようなケースです。
認知症になって判断能力を失っている方は遺産分割協議に参加できず、他の相続人も預金解約や不動産の名義変更などの相続手続きを進められなくなってしまうからです。

1-4 詐欺に巻き込まれるリスクがある

詐欺の中には、認知症になった高齢者をターゲットにしたものもあります。
また、詐欺とはいえないものの認知症患者や高齢者に対して、高額商品を販売してくるケースもあります。

認知症患者の場合、本人が詐欺にあったという自覚を持たない場合も多いです。
そのため、子供や親族が詐欺に気付いたときには犯人を捕まえるのが難しく、泣き寝入りするしかない場合もあり注意が必要です。

このように、認知症となった親は自分で財産管理を行うのが難しくなります。
次の章で、重度の認知症となった親の財産を管理する方法を紹介していきます。

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2章 重度の認知症となった親の財産管理をする方法

親が重度の認知症になってしまい判断能力がないと診断された場合、親の財産を管理する方法は成年後見制度しかありません。
成年後見制度とは、認知症になった親のかわりに成年後見人が財産管理や契約行為の支援を行うための制度です。
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類に分けられ違いは以下の通りです。

認知症となった親の財産管理方法について。成年後見制度の全体像を紹介

上記のように、すでに認知症の症状が進行していて、判断能力を失ったと判断される場合には法定後見制度しか利用できません。
法定後見制度は、家庭裁判所への申立てを行い、成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
法定後見制度の申立て手続きの概要と必要書類は、以下の通りです。

手続きをする人
  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 市区町村長
申立先

本人の所在地を管轄する家庭裁判所

かかる費用
  • 収入印紙:800円~
  • 登記費用:2,600円
  • 郵便切手代
必要書類
  • 申立書
  • 申立人の戸籍謄本(本人以外が申立てるとき)
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人の戸籍附票
  • 登記事項証明書
  • 診断書
  • 成年後見人候補者の戸籍謄本
  • 成年後見人候補者の住民票
  • 成年後見人候補者の身分証明書
  • 成年後見人候補者の登記事項証明書
  • 申立書附票
  • 本人に関する報告書

など

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3章 軽度の認知症となった親の財産管理をする方法

物忘れが時折あるものの意思疎通はできるなど、親の認知症が軽度の場合には、複数の財産管理方法を選択できます。
ただし、最終的に認知症の症状や判断能力を診断するのは医師であり、診断結果によっては利用できない方法もあるのでご了承ください。
軽度の認知症になった親の財産管理をする方法は、主に以下の4つです。

  1. 家族信託を活用する
  2. 遺言書を作成してもらう
  3. 生前贈与を活用する
  4. 任意後見制度を活用する

それぞれ詳しく解説していきます。

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3-1 家族信託を活用する

家族信託とは、親が元気なうちに家族間で信託契約を結び、受託者が信託財産の管理や運用をする制度です。
家族信託のイメージは、以下の通りです。

認知症となった親の財産管理方法について。家族信託のイメージ

認知症の症状が軽度なうちに家族信託を結んでおけば、認知症の症状が進み判断能力が失われても子供が親の財産を継続して管理できます。
家族信託は、成年後見制度よりも自由度が高く、子供が親の財産を管理しやすいのが魅力です。​
契約内容によっては預貯金の引き出しだけでなく、親名義の不動産の売却や積極的な運用も行えます。

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3-2 遺言書を作成してもらう

親の認知症が軽度であれば、遺言書を作成して親が亡くなった後に財産を受け継いでほしい人物を指定できます。

認知症となった親の財産管理方法について。遺言書を作成してもらう方法

例えば、将来的に介護をしてくれる子供に、多めに財産を遺すように遺言書で指定もできます。
ただし、法的に有効な遺言書を作成する際には、所定の形式を守る必要があります。
更に、遺言書を作成するときには他の相続人の遺留分を侵害しない内容で作成することも検討すべきです。

遺言書の作成は自分でもできますが、様々な法律上の問題を考慮して遺言書を作成したいのであれば、司法書士や弁護士といった専門家への相談もおすすめです。

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3-3 生前贈与を活用する

生前贈与を行えば、親が亡くなる前に子供に財産を引き継げます。
生前贈与後は財産の所有権自体が子供に移るので、子供が自由に財産を管理、処分できます。

認知症となった親の財産管理方法について。生前贈与を活用する

生前贈与を行うと贈与された側に贈与税がかかりますが、毎年110万円までであれば贈与税はかかりませんし、贈与の内容によっては控除や特例が使用でき、贈与税を節税できます。

生前贈与は贈与者と受贈者の合意があれば行えますが、司法書士や弁護士といった専門家に贈与契約書を作成してもらった方が安心です。

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3-4 任意後見制度を活用する

2章で紹介したように成年後見制度には2種類あり、認知症の症状が軽度であり意思疎通が可能であれば、任意後見制度を活用できます。
任意後見制度は法定後見制度とサポート内容に大きな違いはありませんが、以下の点が魅力です。

  • 契約時には家庭裁判所への申立てが必要ない
  • 本人が希望する人物を任意後見人に指定できる

認知症の症状が軽度なうちに、本人が任意後見制度で後見人を指定しておけば、認知症が進行したときに後見人によるサポートを受けられます。

【簡単解説】任意後見人とは?役割や仕事内容から手続きの流れ

まとめ

親が認知症になってしまい判断能力を失ってしまうと、親名義の財産を管理するのが難しくなります。
親が自分で財産を管理、処分できないだけでなく、子供や親族が親名義の財産を活用、売却することもできないのでご注意ください。

ただし、親名義の財産管理ができなくなってしまうのは、親の重度の認知症になってしまい意思の疎通が難しくなってしまったときです。
親が重度の認知症になった場合には、成年後見制度を活用して成年後見人に親の財産を管理してもらうしかありません。

一方で、親の認知症が軽度であれば、家族信託や任意後見制度など他の制度も活用可能です。
認知症の症状には個人差が大きく一気に症状が進行してしまう場合もあるので、これらの方法を選択するのであれば、早めに手続きを行うのが良いでしょう。
家族信託や任意後見制度の手続きは複雑なので、司法書士や弁護士といった専門家への相談もご検討ください。

グリーン司法書士法人では、家族信託や成年後見制度に関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能なので、まずはお気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

認知症になったら財産はどうなるの?

認知症になってしまい、判断能力を失ったと判断されると、その人名義の銀行口座は凍結されてしまいます。
銀行口座が凍結されてしまうと、預貯金の引き出しができなくなってしまい、生活費や介護費用などを工面するのも大変になります。
親が認知症になった場合の対策を早めにしておきましょう!
詳しくは下記リンク先をご参考にしてください。
▶認知症になった親の銀行口座は凍結される!預貯金を引き出す方法とは

認知症になった親の銀行口座はどうなる?

親が認知症になり判断能力を失ったことを銀行が知ると、銀行口座を凍結してしまいます。
入出金や口座振替の手続きが一切できなくなるのでご注意ください。
凍結を解除するには、金融機関に個別に問い合わせをするか成年後見制度を活用するしかありません。
▶認知症の人の銀行口座凍結について詳しくはコチラ

認知症になった親の財産管理方法とは?

重度の認知症になった親の財産管理を行うには成年後見制度を利用するしかありません。
一方で、軽度であれば家族信託や生前贈与、任意後見制度などを利用できる場合もあります。
▶認知症になった人の財産管理方法について詳しくはコチラ

認知症で親の銀行口座が凍結されるとどうなる?

認知症になり銀行口座が凍結されてしまうと、銀行口座が凍結されると、預貯金の引き出しや定期預金の解約手続きができなくなります。
▶認知症になった人の口座凍結について詳しくはコチラ

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