
- DNA鑑定をする理由
- DNA鑑定をする流れ
- DNA鑑定によって親子関係がないことがわかったときの対処法
DNA鑑定は、血縁関係や親子関係の有無を科学的に確認するために行われます。
また、刑事事件の捜査や行方不明者や災害時の身元確認のためにDNA鑑定を行うこともあります。
ただし、個人でDNA鑑定を行う場合、適切な方法で鑑定しなければ裁判などの証拠として使用できない点に注意しなければなりません。
また、DNA鑑定の結果だけで、自動的に法律上の親子関係や戸籍の記載が変わるわけではないことも理解しておきましょう。
本記事では、DNA鑑定を行う主な理由や実際の流れ、鑑定結果によって親子関係が否定されたときの対処法について解説します。
目次
1章 DNA鑑定をする理由
DNA鑑定の目的は複数あり、主に以下のような理由で行われます。
- 親子関係や血縁関係の確認をするため
- 法的手続きの必要書類を収集するため
- 刑事事件などの犯人特定をするため
- 行方不明者や災害時の身元確認のため
上記のように、DNA鑑定の利用目的は、個人的な確認や安心のために行う「個人利用」と、医療や法的手続きに必要とされる「公的利用」に分けられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 親子関係や血縁関係の確認をするため
DNA鑑定は、親子関係や血縁関係を確認するために行われることも多くあります。
例えば、自分と子供が本当に血がつながっているのかを確かめたい場合や、祖父母と孫との関係を知りたい場合にDNA鑑定が活用されます。
近年では、海外製のキットを使った簡易検査や、国内の民間検査機関によるサービスも増えており、個人の好奇心や安心感のために利用されるケースも少なくありません。
ただし、これらの個人向け検査は法的効力を持たない点には注意しなければなりません。
1-2 法的手続きの必要書類を収集するため
親子関係や血縁関係を法的に争う場面では、DNA鑑定が重要な証拠のひとつとなります。
例えば、強制認知の手続きや、親子関係不存在確認の訴えなどでは、DNA鑑定の結果が証拠として扱われます。
DNA鑑定の結果をこのような手続きの証拠として使用する場合、裁判所が指定する鑑定機関や所定の流れで鑑定をしなければなりません。
1-3 刑事事件などの犯人特定をするため
DNA鑑定は刑事事件の捜査で使用されることがあります。
事件現場に残された毛髪や唾液などの遺留物からDNA型を抽出し、容疑者や被疑者と照合し、犯人特定や冤罪防止に役立てています。
従来の指紋鑑定や目撃証言に比べて科学的な精度が高いため、証拠能力も非常に強い点も特徴です。
しかし、刑事事件におけるDNA鑑定は専門機関で厳密な手続きのもと実施される必要があり、個人の依頼で簡単に行えるものではありません。
1-4 行方不明者や災害時の身元確認のため
災害や事故などで多くの犠牲者が出た際、身元確認にDNA鑑定が活用されることもあります。
遺体の損傷が激しく、指紋や外見による識別が難しい場合でも、遺族のDNAと照合することで身元を特定できる場合があるからです。
東日本大震災や各地で発生した自然災害でも、DNA鑑定が被災者の身元確認に利用され、多くの遺族が故人を迎え入れることができました。
また、行方不明者の捜索や認知症高齢者の身元確認といったケースでも活用が進んでいます。
2章 DNA鑑定をする流れ
DNA鑑定は、目的によって手続きの流れが大きく異なります。
ここでは、個人的な目的で利用されることが多い親子関係や血縁関係の確認目的で行うDNA鑑定の流れを紹介します。
個人でDNA鑑定を行う場合の流れは、主に以下の通りです。
- 検査機関の選定と申し込み
- 検査キットの受け取り
- DNAサンプルの採取
- サンプルの返送
- 検査と結果の通知
ただし、上記のように個人の利用を目的としてDNA鑑定を行った場合、裁判などの証拠としては認められません。
証拠として提出したい場合には、以下のような流れで手続きを進めます。
- 弁護士など専門家に今後の手続きの流れやDNA鑑定が必要かについて相談する
- 裁判所や指定鑑定機関への申し立てをする
- 検査日の指定と本人確認が行われる
- DNAサンプルが採取される
- 鑑定結果を提出する
DNA鑑定の結果を証拠として提出する場合、手続きや結果の管理方法が厳密に決められており、その分費用や期間もかかります。
3章 DNA鑑定によって親子関係がないことがわかったときの対処法
DNA鑑定の結果、想定していた親子関係が存在しないことが明らかになった場合、精神的ショックは計り知れません。
同時に、今後の生活や法律上の立場についても冷静に判断していく必要があります。
本章では、主に婚姻関係にある夫婦の子供が自分の実子でないと判明した場合を前提として、選択肢となり得る対処法を紹介します。
3-1 配偶者に慰謝料を請求する
DNA鑑定により子供が夫の実子でないと判明した場合、妻の不貞行為や婚姻関係の信頼を裏切る行為があったと考えられます。
そのため、配偶者に対して慰謝料を請求することが可能です。
なお、慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償であり、離婚をしなくても慰謝料を請求できます。
慰謝料の相場は、ケースバイケースですが、100万〜300万円程度とされており、婚姻年数や夫婦関係の状況、裏切りの悪質性によっても金額は変動します。
また、慰謝料は配偶者だけでなく、不貞相手(子供の生物学上の父親)に対しても請求可能です。
3-2 配偶者と離婚について話し合いをする
DNA鑑定結果の結果、妻の裏切りが発覚した場合、婚姻関係を続けることが難しいと感じる方も多いでしょう。
その場合、妻と離婚について話し合いを進めることになります。
話し合いで離婚について合意できれば、協議離婚として比較的スムーズに手続きを行えます。
一方で、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の離婚調停に進みます。
調停でも合意できなければ、最終的に裁判で離婚が認められるかどうかを判断してもらわなければなりません。
3-3 嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の裁判を起こす
DNA鑑定で妻が産んだ子供と自分との間に血縁関係がないことがわかっても、それだけでは法律上の親子関係は解消されません。
婚姻関係にある妻が産んだ子供は、原則として夫の子供であるとされる嫡出推定という考え方があるからです。
法律上の親子関係を解消したい場合には、裁判所で以下のような手続きをしなければなりません。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 嫡出否認の訴え |
|
| 親子関係不存在確認の訴え |
|
上記の手続きが認められれば、法律上の親子関係が解消され、子供の養育義務などがなくなります。
まとめ
DNA鑑定は、個人の目的で利用されるだけでなく、裁判の証拠提出や刑事事件の捜査のひとつとして行われることもあります。
DNA鑑定の目的によって、手続きの流れや鑑定方法が異なるのでご注意ください。
また、DNA鑑定の結果、親子関係がなかったことがわかっても、自動的に法律上の親子関係や戸籍の記載が変わることはありません。
法律上の親子関係を解消したいのであれば、嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の訴えを行う必要があります。
DNA鑑定の結果をもとに相続関係が争いになるケースでは、専門家への相談が不可欠となります。
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