- 相続登記の義務化とは何か
- 相続登記をオンライン申請するメリット・デメリット
- 相続登記をオンライン申請する際の注意点
不動産の所有者が亡くなったときには、亡くなった人から相続人への名義変更手続きが必要です。
不動産の名義変更手続きは「相続登記」と呼ばれ、2024年4月からは義務化されました。
相続登記は不動産の住所地を管轄する法務局で行う必要がありますが、オンラインでの申請も可能です。
オンライン申請を行えば、不動産の管轄法務局に行く必要がなくなるため手軽に手続きできます。
一方で、オンライン申請できるのは登記申請書のみであり、戸籍謄本や遺産分割協議書などの添付資料はオンラインで提出できません。
本記事では、相続登記をオンライン申請するメリットやデメリット、申請時の注意点を解説します。
目次
1章 相続登記の義務化とは
相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義変更手続きです。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続開始から3年以内に登記申請を行わないと10万円以下の過料が発生する恐れがあります。
相続登記の義務化は過去に発生した相続についても適用されるので、まだ登記申請がお済みでない不動産をお持ちの人はできるだけ早く手続きを行いましょう。
相続登記は自分で手続きもできますが、司法書士に数万円程度で依頼も可能です。
グリーン司法書士法人でも相続登記についての相談をお受けしているので、お気軽にお問い合わせください。
2章 相続登記はオンライン申請もできる
相続登記は不動産の住所地を管轄する法務局にて手続きしなければならないのですが、オンラインでの申請も可能です。
ただし、オンライン申請を行うには専用のソフトをダウンロードする必要があります。
オンライン申請を活用すれば、不動産の管轄法務局まで足を運ぶ必要がなくなるなどのメリットがあります。
次の章では、相続登記をオンライン申請するメリットを詳しく見ていきましょう。
3章 相続登記をオンライン申請するメリット
相続登記をオンライン申請すれば、不動産の住所地を管轄する法務局まで行って手続きをする必要がありません。
他にも、相続登記をオンライ申請すると下記のメリットがあります。
- 不動産の管轄法務局に行く必要がない
- オンライン上で登記申請書を修正できる
- 夜9時まで申請できる
- 登録免許税をオンラインで支払える
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 不動産の管轄法務局に行く必要がない
相続登記の申請をオンラインで行えば、自宅などから手続きを行えます。
相続登記は、不動産の住所地を管轄する法務局にて手続きを行わなければなりません。
相続不動産が自宅から離れた場所にある場合、登記申請書の提出に行くのも大変だと感じることもあるでしょう。
一方で、オンライン申請であれば自宅のパソコンを通じて手続き可能です。
3-2 オンライン上で登記申請書を修正できる
相続登記をオンライン申請すれば、万が一、登記申請書に誤りがあってもオンライン上で修正可能です。
一方で、登記申請書を郵送もしくは窓口にて提出した場合、登記申請書を修正するには再度郵送するか窓口まで行って提出しなければなりません。
相続不動産が自宅から離れている場合、オンライン申請の方が登記申請書の修正にも対応しやすいといえるでしょう。
3-3 夜9時まで申請できる
相続登記をオンラインで申請する場合は、平日8時30分から21時まで対応してもらえます。
一方で、法務局の窓口は平日8時30分から17時15分までなので平日日中に法務局に行くことが難しい人はオンライン申請を検討しましょう。
3-4 登録免許税をオンラインで支払える
オンライン申請をする場合、登録免許税もインターネットバンキングを通じてオンラインにて支払えます。登録免許税とは、相続登記をする際に支払う税金であり、郵送・窓口申請の場合は収入印紙の購入が必要です。
オンライン申請であれば、収入印紙を購入する手間も省けます。
4章 相続登記をオンライン申請するデメリット
相続登記のオンライン申請は便利な点もありますが、登記申請用ソフトを用意しなければならず初心者にはハードルが高いです。
また、戸籍謄本や遺産分割協議書などの添付書類は別途提出しなければなりません。
相続登記をオンライン申請するデメリットは、下記の通りです。
- 登記申請用ソフトを用意しなければならない
- 電子署名の準備をしなければならない
- 戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類はオンライン提出できない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
4-1 登記申請用ソフトを用意しなければならない
相続登記をオンラインで申請する場合、登記申請用ソフトをダウンロードしなければなりません。
ダウンロード自体は無料でできますが、wordなどで作成した登記申請書をそのままオンライン申請で提出できるわけではないと理解しておきましょう。
4-2 電子署名の準備をしなければならない
オンラインで相続登記する場合は「電子署名」をしなければなりません。
電子署名をするには、マイナンバーカードやICカードリーダーが必要であり、人によっては難しいと感じることもあるでしょう。
4-3 戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類はオンライン提出できない
相続登記をオンラインで申請しても、すべての書類をオンラインで提出できるわけではありません。
下記の書類については、オンライン申請をしたとしても不動産の住所地を管轄する法務局に持参もしくは郵送で提出する必要があります。
- 戸籍謄本類
- 遺産分割協議書
上記のように原本提出が求められる書類は、オンラインでの提出は認められていません。
すべての手続きがオンラインで完結するわけではないので、相続登記のオンライン申請はあまり行われていないのが現状です。
5章 相続登記のオンライン申請をする流れ
相続登記のオンライン申請をするには、他の申請方法と同様に必要書類を収集した後に、ソフトなどの準備を行う必要があります。
相続登記のオンライン申請をする流れは、下記の通りです。
- 必要書類を収集する
- パソコンやソフトなどを準備する
- 相続関係説明図を作成する
- ソフトに申請情報を入力する
- 添付書類の提出と電子署名をする
- 申請情報を送信する
- 登録免許税を納付する
- 添付書類を持参・郵送する
- 手続が完了したことを確認する
- 登記識別情報通知を受け取る
それぞれ詳しく見ていきましょう。
STEP① 必要書類を収集する
まずはオンライン申請をするとしても、他の申請方法と同様に相続登記に必要な書類の収集を行いましょう。
例えば、遺産分割による登記申請を行う際の必要書類は、下記の通りです。
- 亡くなった人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本類
- 亡くなった人の住民票除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続関係説明図
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 相続不動産の固定資産評価証明書
- 登記申請書
- 委任状(代理人が申請する場合)
など
相続登記に必要な書類は、下記の記事で詳しく紹介しているので、合わせてお読みください。
STEP② パソコンやソフトなどを準備する
続いて、オンライン申請に必要なパソコンや電子署名の準備を進めていきましょう。
相続登記のオンライン申請を行う際には、下記を用意しなければなりません。
- パソコン(推奨OSはWindows 10またはWindows 11)
- 電子証明書入りのマイナンバーカード
- ICカードリーダー(マイナンバーカード対応)
- 申請用総合ソフト(無料でダウンロード可能)
申請用総合ソフトをダウンロードする手順は、下記の通りです。
- 登記・供託オンライン申請システム(登記ネット・供託ネット)にアクセスする
- 「申請者情報登録」を選択し必要事項を入力する
- 「ダウンロード(ソフトウェア・操作手引書)」を選択し、パソコンにソフトをダウンロードする
STEP③ 相続関係説明図を作成する
続いて、相続関係説明図を作成しましょう。
相続登記をオンライン申請する場合、登記原因証明情報として相続関係説明図のPDFデータの提出が必要だからです。
相続関係説明図とは、名前の通り、亡くなった人と相続人の関係性を示す書類です。
相続関係説明図は正確に作成する必要があるので、作成が難しいと感じる場合は、登記申請自体を司法書士に依頼することをおすすめします。
STEP④ ソフトに申請情報を入力する
相続関係説明図の作成が完了したら、申請用ソフトに必要情報を入力していきましょう。
入力する流れは、下記の通りです。
- 申請用総合ソフトにログインする
- 「申請書の作成」を選択する
- 「登記申請書(権利に関する登記)(4)所有権移転(相続)」を選択する
- 指定された情報を入力する
入力した情報がそのまま相続登記に使用され、登記簿謄本に反映されるので正確に入力しましょう。
STEP⑤ 添付書類の提出と電子署名をする
申請用総合ソフトへの入力が完了したら、添付書類の提出と電子署名を行いましょう。
添付書類の提出および電子署名の流れは、下記の通りです。
- ファイル添付ボタンを選択する
- 相続関係説明図のPDFデータを添付する
- 署名付与ボタンを選択する
- 電子署名を行う
- プレビューで内容を確認する
電子署名にはマイナンバーカードを使用するので、事前に申請用総合ソフトにマイナンバーカード情報を入力しておくと良いでしょう。
STEP⑥ 申請情報を送信する
プレビューを確認し内容に誤りがないことを確認したら、メニュータブの「申請データ送信」をボタンを押しましょう。
正しく送信できた場合は「受付確認」が表示されるので、内容を確認し控えを保管します。
控えの保管はスクリーンショットを撮影しておく、スマホで撮影するのでも良いですが、可能であれば印刷して保管しておくことをおすすめします。
STEP⑦ 登録免許税を納付する
申請完了後は登録免許税を納付しましょう。
オンライン申請を選択した場合、納付方法は下記の3種類です。
- 電子納付
- 現金
- 収入印紙
それぞれの納付方法の流れは、下記の通りです。
【電子納付】
- 申請用総合ソフトの「納付」を選択する
- インターネットバンキングなどを利用して納付する
【現金・収入印紙】
- 申請用総合ソフトで「登録免許税納付用紙」を印刷する
- 現金納付の場合はそのまま金融機関で納付する、収入印紙の納付の場合は法務局や郵便局で購入後に金融機関にて納付する
オンライン申請で手軽に手続きを完了したいのであれば、電子納付を選択するのが良いでしょう。
STEP⑧ 添付書類を持参・郵送する
登録免許税の納付までが完了したら、戸籍謄本類や遺産分割協議書など原本の提出が求められる書類や相続関係説明図を郵送もしくは法務局に持参しましょう。
また、登録免許税を現金もしくは収入印紙で納付した場合は、領収書もしくは「登録免許税納付用紙」も同封する必要があります。
添付書類などを郵送する流れは、下記の通りです。
- 申請用総合ソフトで「書面により提出した添付情報の内訳表」を印刷し押印する
- 内訳表を先頭にして原本書類一式をホチキスなどでまとめる
- 「登記申請書(権利に関する登記)(4)所有権移転(相続)」を選択する
- 申請受付日から3日以内に法務局へ届くように郵送する
相続登記が完了した後に、原本書類を返してもらいたい場合は、合わせて原本還付請求を行っておきましょう。
原本還付請求の方法は、下記の通りです。
- 原本のコピーを取る
- 原本と相違がないことを明記し、署名捺印をする
- コピーと返信用切手を貼り付けた返信用封筒(またはレターパック)を原本を同封する
郵送の場合、申請受付日も含めた3日以内に法務局に届くように書類を郵送しなければなりません。
郵送で間に合わない場合は、法務局へ持参することも検討しましょう。
STEP⑨ 手続が完了したことを確認する
STEP⑧までの手続きに問題がなければ、1~2週間ほどで申請が完了します。
申請の処理状況は申請用総合ソフトで確認可能であり、手続き完了すると「手続終了」と表示されます。
STEP⑩ 登記識別情報通知を受け取る
相続登記が完了すると、登記識別情報通知と登記完了証が書面とオンラインで受け取れます。
登記識別情報通知は不動産を所有していることを証明するための書類ですので、大切に保管しましょう。
6章 相続登記をオンライン申請するときの注意点
本記事で解説してきたように、相続登記のオンライン申請は決して楽ではないので、手軽に登記申請を完了させたいのであればオンライン申請ではなく司法書士への依頼も検討しましょう。
相続登記をオンライン申請するときには、下記の点にご注意ください。
- 登記申請を手軽にすませたい場合は司法書士に相談する
- 添付書類の提出は申請受付日から3日以内に行う
- 申請書や添付書類に不備があると「補正のお知らせ」が届くので完了まで気を抜かない
- 相続関係説明図の差し替え・再送信は認められない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
6-1 登記申請を手軽にすませたい場合は司法書士に相談する
本記事で解説してきたように、相続登記のオンライン申請はすべてオンラインで完結するわけではなく、決して簡単な手続きではありません。
「オンライン申請=手軽にできる」と誤解した状態で手続きを始めてしまうと、こんなはずじゃなかったと挫折してしまう恐れもあるでしょう。
相続登記を手軽に済ませたいのであれば、オンライン申請ではなく司法書士へ相談するのがおすすめです。
一般的な相続登記であれば、数万円程度で司法書士に依頼可能です。
多くの司法書士事務所では、無料相談を行っておりますので、まずは相談して見積もり依頼を取得してみるだけでも良いでしょう。
グリーン司法書士法人でも、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
6-2 添付書類の提出は申請受付日から3日以内に行う
本記事の5章でも解説しましたが、郵送もしくは法務局に持参する必要がある添付書類は、申請受付日から3日以内に提出しなければなりません。
また、登録免許税を電子納付する場合は、申請日の翌日中に納付する必要があるのでご注意ください。
期限を過ぎてしまうと相続登記の申請自体が却下されてしまう恐れがあります。
6-3 申請書や添付書類に不備があると「補正のお知らせ」が届くので完了まで気を抜かない
相続登記をオンライン申請したものの申請情報や添付書類に訂正や不備があると、法務局から「補正のお知らせ」が届きます。
法務局が申請情報を訂正してくれることはないので、申請者が自分で補正情報を作成し電子署名を付与して、再び申請しなければなりません。
また、戸籍謄本類や遺産分割協議書など原本提出が求められる書類の場合、追加提出や差し替えが求められることもあります。
これらの対応は期限が設けられている場合も多く、期限を過ぎると登記申請自体が取り消される場合があるのでご注意ください。
そのため、登記申請が完了まで気を抜かず、ソフトの申請画面を定期的にチェックしておきましょう。
万が一、期限内に補正の対応をすることができなくても、お知らせを無視せず法務局に連絡して指示を仰ぎましょう。
6-4 相続関係説明図の差し替え・再送信は認められない
相続登記のオンライン申請では、原則として相続関係説明図の差し替えや再送信は認められないのでご注意ください。
提出した相続関係説明図に不備があった場合、訂正はできないので登記申請の取り下げとやり直しが必要になります。
そのため、相続関係説明図の作成、送信には細心の注意を払いましょう。
まとめ
相続登記はオンライン申請も可能ですが、すべての手続きがオンラインで完結するわけではなく、専用ソフトのダウンロードも必要なのでそれほど手軽とはいえません。
登記申請自体に不慣れな人がオンライン申請をしようとしても、難しくて挫折していまう可能性もあるでしょう。
相続登記を行う時間がない、ミスなく確実に行いたい場合は、オンライン申請ではなく司法書士に依頼することを検討しましょう。
司法書士であれば、数万円程度から相続登記を代行可能です。
グリーン司法書士法人では、相続登記についての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問合せください。