
【この記事でわかること】
- 相続が発生すると遺産はいつもらえるのか
- 遺産をもらうまでの期間に影響する要素とは何か
- 相続が発生し遺産を受け取るまでの流れ
相続が発生し遺産をもらうことになった場合「いつ受け取れるのだろうか」「相続税の支払いに遺産を充てられるのか」と考える人も多いのではないでしょうか。
相続が発生してから遺産をもらえるまでの期間はケースバイケースですが、最短で2週間から1ヶ月程度はかかります。
相続人の人数や遺産の種類が多い場合や、遺産分割協議がまとまらない場合は、さらに時間がかかると思っておきましょう。
遺産を早く受け取りたいのであれば、司法書士や行政書士に相続手続きを依頼するのもおすすめです。
本記事では、相続が発生すると遺産をいつもらえるのか、受け取るまでの流れを解説します。
なお、家族や親族が亡くなると準確定申告以外にも様々な手続きが必要です。
家族や親族が亡くなったときの手続きの流れは、下記の記事でも解説しているのでご参考ください。
目次
1章 相続が発生すると遺産はいつもらえる?
相続が発生してから遺産を受け取るまでの期間は、最短で2週間から1ヶ月程度です。
ただし、2週間程度で受け取れるケースは遺産が預貯金のみの場合などに限られています。
遺産に不動産が含まれる場合、登記申請を行い故人から相続人へ名義変更を行う必要があります。
そして、登記申請には最短でも1ヶ月程度かかることが多いと理解しておきましょう。
また、2週間から1ヶ月といった期間はあくまで最短で手続きが完了した場合です。
相続人の人数が多い場合や相続トラブルが発生した場合は、遺産を受け取るまでに数年かかることもあるのでご注意ください。
次の章では、遺産を受け取るまでにかかる期間に影響する主な要素を紹介していきます。
2章 遺産をもらうまでの期間に関係する要素
相続発生から遺産をもらうまでにかかる期間はケースバイケースであり、主に下記の要素が影響します。
- 遺言書の有無・種類
- 相続人の人数・関係性
- 遺産の種類
- 相続財産調査の難易度
- 相続トラブルの有無
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 遺言書の有無・種類
故人が遺言書を用意していた場合、遺産を受け取るまでの期間が短くなります。
というのも、遺言書があると相続人全員で遺産分割協議を行う必要がなくなり、遺言書の内容通りに相続手続きを進められるからです。
また、相続対策で用いられる遺言書には3種類あり、種類によって家庭裁判所で行う検認手続きの要否が変わります。
遺言書の種類 | 検認手続きの要否 |
---|---|
公正証書遺言 | 検認手続きは不要 |
自筆証書遺言 | 検認手続きが必要 (法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用した場合は不要) |
秘密証書遺言 | 検認手続きが必要 |
したがって、検認手続きが不要である①公正証書遺言もしくは②法務局による保管制度を利用した自筆証書遺言があった場合は、最も早く遺産を受け取れる可能性があります。
2-2 相続人の人数・関係性
相続人が1人のみか少ない場合も遺産を受け取れるまでの期間が短くなります。
遺言書がなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの遺産を受け取るかを話し合う必要があるからです。
相続人が1人の場合はそもそも遺産分割協議を行う必要がありませんし、相続人の人数が少ない場合も意見がぶつかりにくく円満解決できる傾向にあります。
他には、相続人同士が円満な関係であり協力して手続きを進められる場合も、遺産をスムーズに受け取りやすくなるでしょう。
一方、代襲相続が発生していて相続人の人数が多い場合や関係性が疎遠な人物が相続人になっているケースでは、遺産分割協議が難航し遺産受け取りに時間がかかる可能性があります。
2-3 遺産の種類
預貯金や現金など分割しやすい遺産しかない場合、相続手続きがスムーズに進み遺産を受け取りやすくなります。
例えば、遺産が預貯金のみの場合は、法定相続分で預貯金を分割すれば良いため、トラブルが起きにくく手続きを進めやすくなります。
一方、遺産のうち不動産が占める割合が多い場合、誰がどのように不動産を受け取るか話し合わなければなりません。
- 不動産をそのまま受け継ぐのか現金化するのか
- 不動産を誰が受け継ぐのか
- 不動産を受け取った相続人は代償金を払うのか、支払う場合はいくら払うのか
遺産のうち不動産が占める割合が多いと、上記について話し合う必要があり、遺産分割協議が完了するまでに時間がかかってしまう場合もあります。
また、不動産を現金化して売却代金を分割する「換価分割」の場合、不動産売却まで遺産を受け取れず時間がかかってしまう可能性が高くなります。
2-4 相続財産調査の難易度
相続財産調査が難航する場合も、遺産分割協議を始めるのに時間がかかり、遺産受け取りまでに時間がかかってしまいます。
相続財産調査とは、名前の通り、遺産の内容や金額について調査することです。
例えば、故人と相続人が長年疎遠であり、故人がどんな資産を有していたかわからない場合は相続財産調査が難航するでしょう。
他には、故人が複数の不動産を持っていた場合や様々な種類の財産を持っていた場合も相続財産調査に時間がかかってしまいます。
相続財産調査を自分で行うのが難しい場合、司法書士や行政書士に調査を依頼することも可能です。
ミスなく確実に調査を終えたい場合やできるだけ早く遺産を受け取りたい場合は、専門家への依頼を検討しましょう。
2-5 相続トラブルの有無
相続トラブルが起きてしまうと、当然、遺産分割協議がまとまらず遺産を受け取るまでに時間がかかってしまいます。
そして、当事者同士のみでは話し合いが成立しない場合は、遺産分割調停や審判へと手続きが進みます。
遺産分割調停とは、法定相続人(法律で決められた相続人)が全員参加して、相続財産の分け方を決定するための裁判所の手続きです。
遺産分割調停は調停委員が間に入るため話し合いが成立しやすい一方で、あくまで話し合いのため不成立に終わる場合もあります。
遺産分割調停が不成立となった場合は審判へと手続きが進み、最終的には裁判所が遺産分割内容を決定します。
遺産分割調停や審判へと手続きが進むと、遺産を受け取れるまでに数年かかるケースもざらにあるのでご注意ください。
3章 相続発生から遺産を受け取るまでの流れ
故人が亡くなり相続が発生してから遺産を受け取るまでには、相続人調査や相続財産調査など様々な手続きをしなければなりません。
- 遺言書の有無を調査する・検認手続きを行う
- 相続人調査を行う
- 相続財産調査を行う
- 遺産分割協議を行う
- 遺産の名義変更手続きを行う
それぞれ詳しく紹介していきます。
STEP① 遺言書の有無を調査する・検認手続きを行う
相続が発生した際には、最初に遺言書がないか探しましょう。
遺産分割協議完了後に遺言書が見つかってしまうと、協議がやり直しとなる可能性もあり、最悪二度手間になってしまうからです。
見つかった遺言書が①遺言書保管制度を活用していない自筆証書遺言もしくは②秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認手続きもしなければなりません。
検認手続きの方法および必要書類は、下記の通りです。
手続先 | 故人の最後の住所地の家庭裁判所 |
手続できる人 | 遺言書の保管者・遺言書を発見した相続人 |
必要なもの |
|
手数料 |
|
STEP② 相続人調査を行う
遺言書が見つからなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
そのため、まずは相続人調査を行いましょう。
相続人調査とは、故人の戸籍を収集し相続人を確定させる作業です。
具体的には、下記のように故人が死亡したときの戸籍謄本から順番に取得し、最終的には生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を取得します。
戸籍謄本の取得方法は、下記の通りです。
取得できる窓口 | 本籍がある(あった)市区町村役場※郵送可 |
取得できる人 |
|
手数料の目安 |
|
必要なもの |
など |
STEP③ 相続財産調査を行う
相続人を確定させたら、次は相続財産調査を行いましょう。
遺産分割協議を行った後に新たな遺産が見つかると、再び遺産分割協議を行う必要があり手間がかかるからです。
相続財産には下記のように様々なものが含まれます。
【プラスの相続財産】
- 現金や預貯金などの現物財産
- 不動産
- 借地権など不動産上の権利
- 自動車や貴金属などの動産
- 株式や国債などの有価証券
- その他証券
- 著作権などの知的財産権
- 亡くなった人が受取人の生命保険金
【マイナスの相続財産】
- 借金やローンなどの負債
- 連帯保証などの保証債務
- 損害賠償債務
- 未納の税金などの公租公課
- 買掛金
- その他、未払債務
相続財産調査では、これらの財産があったかどうか、あった場合はどんな財産がいくらあったかをひとつずつ調査していかなければなりません。
故人が財産目録を作成していない場合、非常に骨が折れる作業であり、専門的な知識・経験が必要となる場合が大半です。
自分たちで相続財産調査を行うのが難しければ、相続に強い司法書士や行政書士に依頼することも検討しましょう。
STEP④ 遺産分割協議を行う
相続人調査および相続財産調査が完了したら、遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議とは、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかを決める話し合いです。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、全員で同意した内容をもとに遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書を作成した後は、相続人全員で署名・押印をし、遺産の名義変更手続き時に提出します。
STEP⑤ 遺産の名義変更手続きを行う
遺産分割協議書の作成が完了したら、いよいよ各遺産の名義変更手続きに移ります。
遺産ごとの手続き先は、下記の通りです。
遺産の種類 | 手続き先 |
---|---|
預貯金 | 金融機関 |
不動産 | 不動産の住所地を管轄する法務局 |
株式・投資信託 | 証券会社 |
自動車 | 運輸局 軽自動車検査協会(軽自動車の場合) |
遺産の種類や相続の状況によって手続き方法や必要書類が異なるので、事前に確認しておきましょう。
4章 相続発生時に遺産をできるだけ早く受け取る方法
故人の遺産をできるだけ早く受け取るには、故人に遺言書や財産目録を作成しておいてもらうのが有効です。
万が一、故人が急死したケースなどでは相続手続きを司法書士・行政書士に依頼して手続きをスムーズに進めてもらうのも良いでしょう。
遺産をできるだけ早く受け取る方法は、下記の通りです。
- 元気なうちに遺言書を作成してもらう
- 元気なうちに財産目録を作成してもらう
- 相続手続きを司法書士・行政書士に依頼する
それぞれ詳しく紹介していきます。
4-1 元気なうちに遺言書を作成してもらう
遺産をスムーズに受け取りたいのであれば、故人に遺言書を作成しておいてもらうと良いでしょう。
遺言書があれば、遺産分割協議を行う必要がなくなり遺言書の内容通りに遺産を受け取れるからです。
ただし、認知症になり判断能力を失うと遺言書を作成できなくなるので、遺言書を作成してもらうのであれば遺言者が元気なうちに手続きしてもらいましょう。
遺言書は何度でも書き直せるので、老後を考え出した段階で一度作成しておき、状況が変わったら再度作成することも可能です。
4-2 元気なうちに財産目録を作成してもらう
遺言書の作成だけでなく、元気なうちに財産目録を作成してもらうのもおすすめです。
財産目録とは、財産を一覧にまとめた書類であり、用意しておけば相続財産調査の手間を軽減できます。
遺言書を作成するにあたり「誰にどの財産を受け継いでもらうか悩んでしまう」といった場合には、まずは財産目録を作成して資産を整理してみるのもおすすめです。
財産目録により資産を整理すれば、生前対策や老後資産は足りているかなども考えやすくなります。
なお、自筆証書遺言と異なり財産目録に関してはパソコンで作成することが認められていますし、財産に関する証明書類を用意しておくだけでも認められます。
資産の種類が多く財産目録を自分で作成するのが難しい場合は、司法書士や行政書士などの専門家に財産目録作成サポートの依頼も可能です。
相続に強い専門家であれば、財産目録作成後に相続対策や認知症対策も提案できます。
4-3 相続手続きを司法書士・行政書士に依頼する
遺産を早く受け取りたい場合は相続人が自分で手続きするのではなく、相続手続きを司法書士・行政書士に依頼するのも良いでしょう。
相続人調査や相続財産調査を専門家に依頼すれば、調査もスムーズに進みやすく漏れも発生しにくいため二度手間を防ぐことができます。
また、相続に精通した司法書士であれば、相続人や遺産の状況に合った遺産分割内容を提案可能です。
相続人同士ですべて手続きするよりも時間や手間を軽減できますし、トラブルも起きにくくなります。
5章 相続手続きが完了する前に遺産を受け取る方法
相続人や遺産の状況によっては、相続手続きが完了し遺産を受け取るまでに予想以上の時間がかかることもあるでしょう。
また、場合によっては葬儀費用や故人の入院費用、相続税の支払いなどでまとまった現金が必要になることもあるはずです。
相続手続きが完了する前に遺産を受け取りたいのであれば、下記の方法を検討しましょう。
- 預貯金の仮払い制度を活用する
- 預貯金債権の仮分割の仮処分を申し立てる
- 生命保険金を請求する
それぞれ詳しく紹介していきます。
5-1 預貯金の仮払い制度を活用する
遺産分割協議が完了する前に故人の預貯金を引き出したいのであれば、預貯金の仮払い制度を利用しましょう。
預貯金の仮払い制度は、遺産分割協議や遺産の名義変更が完了する前であっても、一定額まで相続人が故人名義の預貯金を引き出せる制度です。
預貯金の仮払い制度では、遺産の使い道は限定されていないので引き出した預貯金は葬儀費用や入院費用の支払い、遺族の当面の生活費にも充てられます。
預貯金の仮払い制度で引き出せる上限額は、以下のうちいずれか低い金額です。
- 死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1
- 150万円
仮払い制度で引き出せる金額は金融機関ごとに設定されているため、150万円で足りない場合は複数の金融機関で手続きすることも検討しましょう。
5-2 預貯金債権の仮分割の仮処分を申し立てる
先ほど解説した預貯金の仮払い制度を超える金額を引き出したい場合は、家庭裁判所にて「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申し立てなければなりません。
家庭裁判所へ仮処分を申し立て、預貯金を引き出さなければならない緊急の事情があると判断されれば、上記の金額を超えて預貯金を引き出せます。
ただし、家庭裁判所に仮処分の申立てをする際には、事前に遺産分割調停の申立てや審判を行っていなければなりません。
遺産分割調停の申立て準備には数ヶ月かかる場合も多くあります。
そのため、葬儀費用や故人の入院費用の支払い目的であれば、本記事の3章で解説した方法で出来るだけ早く遺産分割協議を終えることを目指しましょう。
5-3 生命保険金を請求する
葬儀費用や故人の入院費用の支払いなどまとまった現金が必要な場合は、生命保険金の請求もおすすめです。
生命保険金は遺産ではなく受取人固有の財産として扱われるため、遺産分割未完了でも受け取れます。
生命保険金の請求に必要な書類も、故人の死亡を証明する書類や受取人であることを証明する書類のみですむことが多いため、比較的すぐに用意できるはずです。
まとめ
相続発生から遺産受け取りまでは、最短でも2週間から1ヶ月程度かかります。
ただし、相続トラブルが起きた場合や相続人の人数が多い場合は、遺産を受け取るまでに数ヶ月以上かかってしまう場合もあるのでご注意ください。
遺産をできるだけ早く受け取りたいのであれば、故人が元気なうちに遺言書や財産目録の作成など、相続対策を行ってもらうと良いでしょう。
他にも、司法書士や行政書士に相続手続きを依頼すれば、自分で手続きを行うよりも時間と手間を軽減できます。
できるだけ早く遺産を受け取りたい、ミスなく確実に手続きを行いたいのであれば、専門家への依頼もご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。