生活の中で日常的に使用している銀行口座は、届出事項に変更があった場合や所有者が亡くなり相続が発生した場合には、口座の名義変更手続きを行わなければなりません。
しかし、相続が発生すると様々な手続きをしなければならず、以下の点に悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
- 相続手続きといってもどこから手をつけていいかわからない
- 銀行口座の名義変更手続きに用意すべき書類がわからない
- 自分で銀行口座の名義変更手続きができるかわからない
本記事では上記のようにお悩みの人に向けて、相続が発生したときの銀行口座の名義変更手続きの手順や必要書類、注意点をわかりやすく解説していきます。
目次
1章 口座を名義変更するシチュエーション
銀行口座の名義変更が必要になるシチュエーションは、主に以下の通りです。
- 相続が発生したとき
- 口座名義人の氏名や住所が変更になったとき
- 個人事業主から法人へ移行する「法人成り」があったとき
- 口座開設している法人の情報に変更があったとき
相続が発生したときには、銀行に名義変更の届出をして、預貯金を受け継ぐ相続人の口座にお金を移す手続きが必要です。
また、結婚や離婚等で氏名が変わったときにも、銀行口座の名義変更手続きが必要です。
事業を営んでいて法人口座を開設している場合には、代表者や社名、本店所在地が変更になったときに法人口座の名義変更手続きが必要になります。
また、近年ダミーカンパニーを利用したマネーロンダリングが国際的に横行しています。
それにより、金融機関は法人口座に関係する手続きを厳格化しているので、ご注意ください。
法人口座の名義変更手続きは以下の記事で詳しく解説しています。
次の章では、相続発生時の銀行口座の名義変更手続きや必要書類を詳しく解説していきます。
2章 相続が発生した場合の名義変更
1章で解説したように、相続が発生したときには預貯金を受け継ぐ相続人に口座のお金を移す手続きが必要です。
故人のキャッシュカードを相続人が使用すれば、ATMで預貯金を引き出すことは不可能ではありません。
しかし、他の相続人とのトラブルが起きるリスクもありますし、金融機関は口座名義人の死亡を確認すると口座を凍結し預金を引き出せなくしてしまいます。
そのため、亡くなった人の預貯金を引き出し相続人で分け合うのであれば、本記事で紹介する名義変更手続きを行いましょう。
名義変更手続きの手順や必要書類を詳しく解説していきます。
2-1 亡くなった人の預貯金を家族が引き出しても良い?
故人のキャッシュカードが手元にある場合、ATMを使用すれば預貯金を引き出せると考える相続人も多いです。
確かに、家族が故人のキャッシュカードを使用すれば、ATMで預金を引き出せます。
亡くなった人の入院費用や葬儀費用等の支払いなどの理由があれば、死後に預金を引き出すのも違法にはなりません。
しかし、銀行等の金融機関は口座名義人の死亡を知ったタイミングで、口座を凍結し預金を引き出せなくしてしまいます。
口座が凍結されてしまうと、名義変更手続きを完了させるまでは預金を引き出せなくなるのでご注意ください。
2-2 相続時の口座名義変更手続きの流れ
相続発生時に銀行口座の名義変更手続きを行う流れは、以下の通りです。
- 口座のある銀行に連絡する
- 残高証明書を取得する
- 相続手続きの用紙をもらう
- 必要書類を集める
- 銀行に書類を提出する
- 預金を払い戻してもらう
それぞれ詳しく見ていきましょう。
Step1 口座のある銀行に連絡しよう
まずは、口座のある銀行の支店に電話をして口座名義人が亡くなったことを伝えて手続きをスタートしましょう。
ただし、亡くなった人がどの銀行や支店で口座開設をしていたかわからない場合もあるでしょう。
その場合には、遺品の中に通帳やキャッシュカードがないかまずは探してみてください。
Step2 残高証明書を取得しよう
遺産分割協議や相続税申告の資料としてよく使われるのが「残高証明書」です。
残高証明書は相続手続き全般で使用する重要書類なので、「被相続人死亡時点での」残高証明書を取得しておきましょう。
Step3 相続手続きの用紙をもらおう
用紙は銀行窓口でもらえます。
また、口座のある支店が遠方の場合には郵送で送ってもらうことも可能です。
Step4 必要があれば遺産分割協議をしよう
法律で目安として決められた相続割合(法定相続割合)での預貯金相続に不都合があれば、相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。
そして、もし協議をしたなら「必ず書面にして」、「全員で実印を押し」、「全員の印鑑証明書とセットで」保管しましょう。
Step5 必要書類を集めよう
2-3必要書類の項目で、必要書類について解説しています。
ただし銀行ごとに必要書類の種類や有効期限が異なる場合がありますので、必ず銀行に必要書類を確認してから動きましょう。
Step6 銀行に書類を提出しよう
集めた書類を銀行に提出しましょう。
こちらも遠方の支店の場合、郵送で申し込みできるかと思います。
書類提出時には、戸籍謄本等の自分で収集した書類は原本を返してもらいましょう。
「原本に相違ない」旨を記載したコピーと原本をセットで提出すれば原本を返してもらえます。
原本を回収されてしまうと、再び戸籍謄本等を自分で集めなければならなくなります。
Step7 預金を払い戻してもらいましょう
後は指定した口座にお金が入るのを待ちましょう。
ただし、銀行内部での各種書類チェックの都合上、手続き完了まで少し時間が係ります。2週間ほどは余裕を見ておきましょう。
2-3 相続時の口座名義変更手続きの必要書類
相続が発生し、亡くなった人の口座の名義変更手続きを行う際には、様々な書類が必要です。
主に必要になる書類は、下記の通りです。
書類名 | 備考 |
名義書換依頼書(相続届) |
|
亡くなった方の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本 | 亡くなった人の出生時から死亡時まで連続した戸籍謄本が必要 |
相続人の戸籍 | 亡くなった人と相続人の続柄がわかるものを取得する |
印鑑証明書 |
|
相続放棄証明書 | 相続人の中に相続放棄をした人がいる際に必要 |
遺産分割協議書 | 遺産分割協議を行い、法定相続分以外の割合で預貯金を相続する際に必要 |
遺言書 | 亡くなった人が遺言書を遺していた場合に必要 |
2-4 相続時の口座名義変更手続きの注意点
必要書類についてすでに解説したように、相続時の口座名義変更手続きでは「亡くなった人の生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本」が必要です。
戸籍謄本の収集は、相続手続きに詳しくない人が行うと非常に時間がかかり、労力や負担も大きくなってしまいます。
また、戸籍謄本は全ての相続手続きに必要な書類であり、収集に時間がかかると銀行口座の名義変更手続き以外の相続手続きもストップしてしまいます。
そのため、相続手続きをミスなく期限内に完了させたいのであれば、専門家への依頼もご検討ください。
専門家に依頼した場合の報酬相場は、依頼内容によっても変わってきます。
無料相談を積極的に行っている事務所もありますので、そこでじっくり相談し、どこまで任せるか、どこから自分でやるか、検討しましょう。
筆者が所属しているグリーン司法書士法人でも、相続手続き専門の司法書士が毎日無料相談を実施しておりますので、ぜひご活用下さい。
3章 本人口座の名義変更
銀行口座の名義変更は、相続発生時以外にも婚姻や離婚等で氏名が変更になったときにも必要です。
本人口座の名義変更手順や必要書類を解説していきます。
3-1 本人口座の名義変更手続き方法
本人口座の名義変更手続きは、氏名が変わったか住所が変更になったかで必要な手続きが変わります。
詳しく確認していきましょう。
【名前の変更】
結婚や離婚により名前が変わった場合、銀行へ変更届出を行います。
また、使う印鑑も変わるかと思いますので、新しい銀行届出印を用意の上、届出印の変更も行いましょう。
【住所の変更】
住所が変更になったときにも、銀行での変更手続きが必要です。
しかし、名義変更と比較して緊急性が薄く、住所が変更になってもそのままにしてしまっている人も多いのが現状です。
ただし、住所が変更になったものの銀行で変更手続きを行っていないと、銀行からの書類が届かなくなる恐れがあります。
3-2 本人口座の名義変更の必要書類
本人口座の名義変更に必要な書類は、以下の通りです。
名前の変更には本人の戸籍が必要
結婚や離婚を機に苗字が変わると、その旨が戸籍に記載されます。
よって、変更を証明するため、戸籍の提出を求める銀行が多いです。
例えば、ゆうちょ銀行で名前の変更手続きを行う際の必要書類は下記の通りです。
- 通帳
- キャッシュカード
- 氏名変更届書(窓口でもらえます)
- お届け印
- 本人確認書類(新氏名と現住所が確認できるもの)
住所の変更は書類不要
不要な銀行が多いです。
そもそも来店不要で、ネット手続きで完了する銀行も多いです。
ゆうちょ銀行の場合には、お近くの窓口もしくは郵送での手続きが必要です。
ゆうちょ銀行で住所の変更手続きの必要書類は下記の通りです。
- 通帳
- キャッシュカード
- 住所移転届書(窓口でもらえます)
- お届け印
- 本人確認書類(新しい住所が確認できるもの)
3-3 本人口座の名義変更の注意点
本人口座の名義変更についても、銀行ごとに手続き・必要書類に若干差異があります。
なので、手続きに際しては銀行ごとのHPで案内をチェックしてから手続きを進めましょう。
まとめ
相続が発生した際には、亡くなった人の預貯金を相続人の口座に移す名義変更手続きが必要です。
銀行の相続手続きを行う際には、亡くなった人の生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本等の様々な書類の提出が必要になります。
また、婚姻や離婚により氏名が変更になった場合や法人の代表者名や本店所在地等の情報が変更になった際にも口座の名義変更手続きをしなければなりません。
変更内容や口座の持ち主が故人か法人かによっても必要書類は、変わりますのでまずは口座開設している金融機関に問い合わせてみるのが良いでしょう。
本記事で解説したように相続手続きには様々なものがあり、必要書類も多岐にわたります。
自分で相続手続きを行うのが不安な場合や負担を減らしたい場合には、相続に詳しい専門家に手続きを依頼してしまうのも良いでしょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
初回相談は無料、かつオンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
銀行口座の名義変更はできますか?
本人口座の名義変更に必要な書類は以下の5点です。
・通帳
・キャッシュカード
・氏名変更届等(窓口でもらえます)
・お届け印
・本人確認書類(新氏名と現住所が確認できるもの)
銀行ごとに手続き、必要書類に若干差異があります。
なので、詳しい手続きや必要書類については銀行のHPで案内を確認してから手続きを進めましょう。相続が発生した場合の名義変更は?
相続時の口座名義変更手続きの流れは下記です。
・口座のある銀行に連絡する
・残高証明書を取得する
・相続手続きの用紙をもらう
・遺産分割協議をして、相続する割合を決める
・必要書類を集める
・銀行に書類を提出
・預金を払い戻してもらう
それぞれの詳細、必要書類については下記記事でご説明しております。
▶詳しくはコチラ銀行口座の名義変更にかかる時間は?
銀行口座の名義変更は必要書類が揃えば窓口でその場で対応してもらえます。
▶銀行口座の名義変更手続きについて詳しくはコチラ