故人の銀行口座の解約手続きについて、いつまでに終えるべきか悩んでいる方もいるかもしれません。
この手続きには法的な期限は設けられていませんが、長期間放置すると様々なリスクが生じる可能性があります。
この記事では、故人の口座解約をしない場合に起こりうる5つの具体的なリスクや、手続きを進める上での注意点、基本的な流れについて解説します。
目次
亡くなった人の口座解約に法的な期限はないが放置は危険
亡くなった人(故人)の口座解約手続きについて、法律で「いつまでに完了しなければならない」という明確な期限は定められていません。
しかし、手続きをしないまま長期間放置すると、口座が凍結されて生活費の引き落としが停止したり、他の相続人との間でトラブルが発生したりする可能性があります。
故人の財産を円滑に承継するためにも、相続が発生したらできるだけ速やかに手続きに着手することが重要です。
亡くなった人の口座解約をしないとどうなる?放置で起こる5つのリスク
故人の口座解約を先延ばしにすると、予期せぬトラブルや不利益を被る可能性があります。
具体的には、口座凍結による資金の固定化、相続手続きの遅延、親族間の金銭トラブル、休眠預金化による引き出しの複雑化、そして二次相続の発生による権利関係の複雑化といったリスクが考えられます。
ここでは、放置することで生じるこれら5つのリスクについて詳しく見ていきます。
リスク1:銀行に死亡が伝わると口座が凍結され入出金が一切できなくなる
銀行は、口座名義人が亡くなった事実を知ると、その口座を凍結します。
これは、相続財産を保全し、一部の相続人による無断の引き出しを防ぐための措置です。
口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろん、公共料金やクレジットカード代金の引き落とし、家賃などの振り込みもすべて停止します。
故人の口座から生活費の支払いを行っていた場合、手続きが完了するまで資金が動かせなくなり、生活に支障をきたす恐れがあります。
リスク2:遺産分割協議が進まず相続税の申告期限に間に合わなくなる
相続税の申告と納付は、原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」に行わなければなりません。
この期限は、遺産分割協議がまとまっていなくても適用されます。
申告には故人の預金残高を証明する書類が必要となるため、口座の解約手続きが遅れると、財産の全体像が把握できず、遺産分割協議が進まない原因になります。
結果として、いつまでも申告準備が整わず、期限に間に合わなくなる可能性があります。
リスク3:他の相続人との間で金銭トラブルに発展する可能性がある
故人の口座が凍結される前に、一部の相続人がキャッシュカードを使って預金を引き出してしまうケースがあります。
引き出したお金の使い道が葬儀費用など正当な目的であれば問題になりにくいですが、使途が不明瞭な場合や個人的な目的で費消した場合は、他の相続人から「財産の使い込み」を疑われ、深刻なトラブルに発展することがあります。
故人の預金は相続人全員の共有財産であるため、独断での引き出しは避けるべきです。
リスク4:10年以上放置すると「休眠預金」となり引き出しが困難になる
銀行口座は、入出金などの取引が10年以上ない場合、「休眠預金」として扱われます。
休眠預金となったお金は、預金保険機構に移管され、民間公益活動のために活用されます。
もちろん、移管後も預金者の権利は失われず、金融機関を通じて引き出すことは可能です。
しかし、通常の相続手続きに加えて別途のプロセスが必要になるなど、引き出し手続きが煩雑になる可能性があります。
いつまでも手続きをせずにいると、このような事態を招きかねません。
リスク5:相続関係が複雑化する「二次相続」が発生する恐れがある
故人の遺産分割協議が終わらないうちに、相続人のうちの誰かが亡くなってしまうと、「二次相続」が発生します。
例えば、父が亡くなり、母と子で遺産分割をしない間に母が亡くなった場合、父の遺産を相続する権利は母の相続人(子など)に引き継がれます。
これにより、相続人の数が増え、権利関係が複雑化します。
関係者が増えれば増えるほど、話し合いをまとめるのは難しくなり、手続きにかかる時間や費用も増大してしまいます。
【要注意】借金がある場合は解約手続きを急がないで!相続放棄の検討を
故人の財産調査を進める中で、預貯金よりも多額の借金やローンが見つかることがあります。
このような場合は、相続手続きを急いではいけません。
故人の預金を引き出して個人のために使ったり、口座を解約して自分の口座に送金したりすると、借金を含めたすべての財産を相続する意思があるとみなされる可能性があります。
そうなると、後から相続放棄をすることが認められなくなる恐れがあるため、まずは弁護士などの専門家に相談し、慎重に対応を検討してください。
残高が少なくても解約は必要?少額預金を放置するデメリット
口座の残高が数千円程度の少額である場合、戸籍謄本の取得費用などを考えると、手続きをためらってしまうかもしれません。
しかし、少額であっても預金は相続財産の一部であるため、原則として解約手続きは必要です。
放置していると休眠預金になって引き出しが困難になるほか、金融機関によっては口座管理手数料が引き落とされ、最終的に残高がゼロになる可能性もあります。
他の相続財産がある場合は、それらとまとめて手続きを進めるのが効率的です。
亡くなった人の口座を解約する(相続手続き)ための基本的な4ステップ
故人の口座解約は、一般的に「相続手続き」と呼ばれます。
この手続きは、遺言書の有無や金融機関によって多少異なりますが、大まかな流れは共通しています。
相続人全員の協力が必要となる場面も多いため、あらかじめ全体像を把握しておくことがスムーズな進行につながります。
ここでは、口座解約(相続手続き)を完了させるための基本的な4つのステップを紹介します。
ステップ1:銀行へ連絡し口座凍結を依頼・必要書類を確認する
まず、故人が口座を持っていた銀行の窓口やコールセンターに連絡し、口座名義人が亡くなったことを伝えます。
これにより、不正な引き出しを防ぐために口座が凍結されます。
その際、相続手続きを進めたい旨を伝え、今後の流れや必要となる書類のリストを確認します。
金融機関ごとに専用の申請書類や独自のルールがあるため、最初に正確な情報を得ておくことが、後の手続きを円滑に進めるための鍵となります。
ステップ2:遺言書の有無を確認し相続人を確定させる
次に、故人が遺言書を残していないかを確認します。
遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って手続きが進められます。
遺言書がない場合は、法律で定められた法定相続人が財産を相続することになります。
この場合、誰が相続人になるのかを確定させるため、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)などを収集し、相続関係を証明する必要があります。
ステップ3:必要書類(戸籍謄本など)を収集する
ステップ1で銀行から指示された必要書類を収集します。
一般的には、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書などが必要となります。
また、遺産分割協議を行った場合は「遺産分割協議書」も提出します。
戸籍謄本の収集は、本籍地が遠方にある場合など、時間と手間がかかることが多い作業です。
早めに準備を始めることをお勧めします。
ステップ4:銀行窓口で解約・払い戻しの手続きを行う
収集したすべての書類と、銀行所定の相続手続依頼書などを窓口に提出します。
書類に不備がなければ、銀行内で確認作業が行われ、後日、指定された相続人の代表口座に故人の預金が振り込まれる形で払い戻しが実行されます。
手続きには相続人全員の署名と実印の押印が求められることが一般的です。
手続き完了までには、書類提出から数週間程度かかる場合が多いです。
亡くなった人の口座解約に関するよくある質問
故人の口座解約を進めるにあたり、さまざまな疑問が生じることがあります。
例えば、手続きをしないことによる罰則の有無や、当面の生活費や葬儀費用を故人の口座から引き出せるのか、といった点は多くの方が気になるところです。
ここでは、口座解約に関する代表的な質問とその回答を紹介します。
口座解約の手続きをしないことによる罰金やペナルティはありますか?
口座解約の手続きをいつまでに行わなければならないという法的な期限はなく、手続きをしないこと自体に罰金や過料などのペナルティは課されません。
ただし、相続税の申告が必要な場合は、死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を済ませる必要があり、これに遅れると延滞税などが課されるため注意が必要です。
故人の口座から葬儀費用や入院費を引き出すことは可能ですか?
はい、「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、他の相続人の同意がなくても、家庭裁判所の審判なしで一定額を引き出すことが可能です。
上限額は「死亡時の預金残高×1/3×あなたの法定相続分」または「150万円」のいずれか低い方の金額となります。
これにより、葬儀費用や未払いの入院費の支払いに故人の預金を充当できます。
銀行はどのタイミングで名義人の死亡を知るのですか?
銀行が口座名義人の死亡を知る最も一般的なケースは、親族など相続人からの連絡によるものです。
役所から銀行へ自動的に死亡情報が通知される仕組みはありません。
その他、新聞の訃報欄や、地域社会での情報、窓口担当者が取引先との会話で知るなど、偶然死亡の事実を把握する場合もあります。
銀行が死亡を知った時点で、口座は凍結されます。
まとめ
故人の銀行口座解約には「いつまで」という法的な期限はありませんが、放置することで口座凍結や休眠預金化、相続トラブルといった様々なリスクを招きます。
特に、相続税の申告が必要な場合は10ヶ月という期限があるため、速やかに手続きを開始することが求められます。
残高が少額であっても原則として手続きは必要ですが、故人に多額の借金がある場合は、相続放棄を検討するため安易に解約しないよう注意が必要です。
円滑な相続のため、まずは金融機関へ連絡することから始めましょう。
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