- 相続税がかからない財産がわかる
- 相続税の節税方法がわかる
亡くなった人が所有していた預貯金や不動産には、相続税がかかります。
一方で、お墓や仏壇、弔慰金などについては原則として相続税がかかりません。
相続税がかからない財産を把握しておくと、相続税を節税しやすくなります。
また、相続税には基礎控除が用意されており、遺産総額が基礎控除内だった場合は相続税がかかりません。
相続税がかかる人の割合は9~10%程度ですので、相続税がかかる人はそれほど多くないことも理解しておきましょう。
本記事では、相続税がかからないものや相続税を節税する方法について詳しく解説していきます。
相続税については、下記の記事でも詳しく解説しているので、あわせてお読みください。
目次
1章 相続税がかからないもの
預貯金や不動産など様々な財産に対して相続税がかかる一方で、下記の財産に関しては受け取っても相続税がかかりません。
- 墓地や仏壇などの祭祀財産
- 弔慰金や花輪代
- 一定額までの生命保険金・死亡退職金
- 事故などの損害賠償金
- 寄付した財産
- 心身障害者扶養共済制度によって支給される年金
- 公益事業を目的とした財産
- 個人経営の幼稚園事業で使用していた財産
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1 墓地や仏壇などの祭祀財産
お墓や仏壇などは祭祀財産と呼ばれ、遺産には含まれません。
そのため、お墓や仏壇を受け継いでも相続税はかからないのでご安心ください。
ただし、相続税がかからないお墓や仏壇などはあくまでも常識的なものとされています。
例えば、純金などを使用した高額な仏壇や、骨董的価値の高い仏壇に関しては祭祀財産にはあたらないとされ、相続税がかかる恐れもあるのでご注意ください。
1-2 弔慰金や花輪代
お墓や仏壇などの祭祀財産だけでなく、亡くなった人の会社から支払われる弔慰金や花輪代も下記の金額までは相続税がかかりません。
- 業務中に亡くなった場合:月額給与の36ヶ月分まで
- 業務外に亡くなった場合:月額給与の6ヶ月分まで
受け取った弔慰金や花輪代が上記の金額を超える場合は、超えた分については退職手当金などとして相続税の課税対象となります。
1-3 一定額までの生命保険金・死亡退職金
生命保険金や死亡退職金には「500万円×相続人の数」の非課税枠が用意されています。
したがって、受け取った生命保険金や死亡退職金が非課税枠に収まるのであれば、相続税はかかりません。
ただし、上記の非課税枠を利用できるのは相続人だけであり、代襲相続人でない孫や配偶者の嫁、婿などを生命保険金の受取人にした場合は非課税枠が適用されないのでご注意ください。
1-4 事故などの損害賠償金
交通事故などで家族や親族が亡くなったとき支払われる損害賠償金のうち、遺族の精神的な苦痛に対する慰謝料として支払われるものに対しては、相続税も所得税もかかりません。
一方で、家族や親族が事故の被害に遭ったことによる財産的損害に該当する下記の賠償金については、相続財産として扱われ税金がかかるのでご注意ください。
- 付添看護費や医療費などに対する賠償金
- 逸失利益
交通事故などの被害に遭った際に受け取る賠償金は金額も高額ですし、内訳を正確に遺族が把握するのが難しいケースもあるでしょう。
相続税をミスなく申告するためにも、相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
1-5 寄付した財産
相続税申告書の提出期限までに、相続した財産を国や地方公共団体、公益法人などに寄付した場合、寄付した遺産については相続税がかかることはありません。
ただし、特定の公益法人への寄付については、下記の要件を満たさなければなりません。
- 既に設立されている公益法人への寄附である
- 寄附を受けた公益法人は、その財産を2年以内に公益事業の用に供する
- 寄附によって寄附をした人やその親族の税金が不当に安くならない
寄付先の団体が要件を満たすか不安な場合や寄付から相続税申告まで一括で相談したい場合は、相続に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。
1-6 心身障害者扶養共済制度によって支給される年金
心身障害者扶養共済制度(しょうがい共済)によって支払われる年金には、相続税がかかりません。
心身障害者扶養共済制度とは、障がい者の親が加入し、親亡き後は障がい者に対して一生涯年金を支給する制度です。
制度の性質上、支給される年金については相続税および所得税が非課税とされています。
1-7 公益事業を目的とした財産
相続した財産を宗教や慈善、学術といった公益事業に使うことが確実な場合には、相続税がかかりません。
例えば、個人で学校や寺社を経営している人が相続した財産などが該当します。
1-8 個人経営の幼稚園事業で使用していた財産
個人経営の幼稚園に使用されていた財産で一定の要件を満たすものには、相続税がかかりません。
要件は、下記の通りです。
- 幼稚園の経営が引き続き行われていくこと
- 事業が適正に行われていくこと
上記のように、相続税を非課税にするには、相続人が引き続き幼稚園を経営する必要がある点にご注意ください。
また、上記の要件はいずれも抽象的なものなので、特例を適用し相続税を非課税にするには、相続に強い税理士に相談するのがおすすめです。
2章 相続税には基礎控除がある
相続税には「3,000万円+法定相続人の数×600万円」の基礎控除が用意されており、遺産総額が基礎控除内であれば相続税の申告および納税は不要です。
例えば、相続人が配偶者と子供2人であれば相続税の基礎控除は「3,000万円+3人×600万円=4,800万円」と計算できます。
なお、相続税が発生する割合は例年9~10%程度です。
ほとんどの相続では、相続税の基礎控除や後述する相続税の控除や特例の利用により、相続税がかからなくなります。
相続税がいくらになるか不安な場合は、基礎控除がいくらなのか遺産がどれくらいあるのかなどを計算し、将来の相続税額をシミュレーションしてみても良いでしょう。
3章 相続税を節税する方法
本記事の1章で解説したように、相続税がかからない財産は非常に限られています。
そのため、相続税を節税したいのであれば、控除や特例を漏れなく利用する、生前贈与で相続財産を減らしておくなどの対策が必要です。
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 相続税の控除や特例を漏れなく利用する
本記事の2章で解説した相続税の基礎控除以外にも、相続税には様々な控除や特例が用意されています。
相続税の控除や特例は、主に下記の通りです。
控除・特例 | 概要 |
小規模宅地等の特例 | 亡くなった人から受け継いだ土地の相続税評価額を最大8割軽減できる |
相続税の配偶者控除 | 配偶者が相続した財産を1億6,000万円もしくは法定相続分まで非課税にできる制度 |
未成年者控除 | 相続人に未成年者が含まれるときに適用でき、「(18歳-相続時の年齢)×10万円」を控除できる制度 |
障害者控除 |
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生命保険金・死亡退職金の非課税枠 | 生命保険金や死亡退職金に対して「500万円×法定相続人の数」を適用できる |
上記の控除や特例を利用すれば、相続税の負担を軽減できます。
漏れなく控除や特例を利用したいのであれば、相続に詳しい税理士に相談することも検討しましょう。
3-2 生前贈与を行う
生前贈与を行い次世代に財産を受け継げば、将来の相続財産を減らせるのでその分だけ相続税の負担を軽減できます。
一方で、年間110万円を超えると贈与税がかかる場合があるので、生前贈与時には贈与税をシミュレーションしておかなければなりません。
贈与税には、2種類の課税方法があります。
課税方法 | 概要 |
暦年贈与 |
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相続時精算課税制度 |
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暦年贈与は手続き等も不要で手軽に行える魅力がありますが、一括で贈与をしたい場合は相続時精算課税制度を利用する方が贈与税の節税効果が大きくなります。
一方で、相続時精算課税制度は贈与税の節税効果は大きいものの相続税の直接的な節税効果はないのでご注意ください。
相続時精算課税制度は一度利用すると二度と暦年贈与に戻れないので、慎重に判断しなければなりません。
どちらの方法を選択すべきか迷った場合は、生前贈与や相続税対策に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
預貯金や不動産など様々な遺産に対して相続税がかかる一方で、お墓や仏壇、寄付財産などには相続税がかかりません。
家族や親族が亡くなり一定額を超える遺産を受け取ったときには、相続税の申告をしなければなりません。
漏れなく相続税を申告する、相続税を多く申告しすぎないためには、相続税がかかるものとかからないものを適切に把握する必要があります。
また、相続税には控除や特例も用意されているため適切に活用すれば相続税を節税できますし、生前贈与を行えば将来の遺産を減らせるため相続税を節税可能です。
生前贈与は贈与税や相続税のシミュレーションだけでなく、贈与契約書の作成や名義変更手続きも必要となるので、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
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