相続税の障害者控除の適用要件は?控除額の計算方法や手続方法を解説

相続税の障害者控除の適用要件は?控除額の計算方法や手続方法を解説
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 4

障害者控除は相続税から最大1700万円差し引くことができ、適用する人は相続税を大きく削減できる制度です。しかし、正しく手続きをしなければ控除が受けられなくなってしまうため、事前に知識を持っておくことが大切です。この記事では「障害者控除」の適用要件や、計算方法、注意点などついて解説します。


1章 相続税の障害者控除とは?

「障害者控除」とは、相続人に障害者がいる際、その人が受けられる控除のことです。相続税における控除は、遺産総額から控除額を差し引いた額を課税対象として税金を算出するのがほとんどですが、障害者控除は算出した税金から控除されるため、控除が受けられれば納税額を大きく減額することができます。

相続税の障害者控除とは

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2章 相続税の障害者控除が受けられる人(適用要件)

相続税の障害者控除が受けるには、下記要件に適用している必要があります。

  • 法定相続人であること
  • 相続または遺贈で財産を承継したこと
  • 相続開始日に日本に居住していること
  • 相続開始日に障害者であること

それでは、詳しく確認していきましょう。

2-1 法定相続人であること

障害者控除を受けられるのは法定相続人のみです。法定相続人とは法律上で決められている相続人のことで、配偶者や子ども、兄弟などが当てはまります。​​相続は遺言書に記すことで友人や義理の子供など、法定相続人以外を専任することもできますが、その人が障害者であっても障害者控除を受けることはできません​

2-2 相続または遺贈で財産を承継したこと

法定相続人であっても、財産を得ていない場合は障害者控除を受けることはできませんただし、相続放棄をしたとしても、生命保険の受取人であれば障害者控除が適用されます

後述しますが、障害者控除が相続額より上回った場合余った分を扶養義務者の相続額から控除することが可能ですので、プラスの財産がある場合は障害者の方は1円でも相続するのが良いでしょう。

2-3 相続開始日に日本に居住していること

相続人が相続開始日に日本に居住(日本に住所がある)していなければ、適用されません。ただし、その相続人が一時居住者かつ、亡くなった人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合は適用されます。なお、相続開始日とは被相続人が亡くなった日を指します

2-4 相続開始日に障害者であること

当然ですが、相続開始日に障害者である必要があります。また、障害者には「一般障害者」と「特別障害者」の2つの区分があります。

【一般障害者】

  • 児童相談所、知的障害者更生相談所もしくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者
  • 精神障害者保健福祉手帳に障害者等級が二級または三級であると記載されている者
  • 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が三級から六級までであると記載されている者
  • その他一定の者

※詳細はこちらでご確認ください。
《障害者控除》関係|国税庁 一般障害者の範囲

【特別障害者】

  • 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者または、児童相談所、知的障害者更生相談所もしくは、精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた者
  • 精神障害者保健福祉手帳に障害者等級が一級であると記載されている者
  • 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級または二級であると記載されている者
  • その他一定の者

※詳細はこちらでご確認ください。
《障害者控除》関係|国税庁 特別障害者の範囲

この区分によって控除額が大きく異なるので、自身や親族がどちらに当てはまるかを確認しておきましょう。


3章 障害者控除の控除額計算方法

障害者控除額は以下の方法で計算できます。

【一般障害者】障害者控除額=(85歳-相続開始日の障害者の年齢)×10万円

【特別障害者】障害者控除額=(85歳-相続開始日の障害者の年齢)×20万円

※(85歳-相続開始日の障害者の年齢)に端数があるときは切り上げ。

この計算上、85歳以上の方は控除額が0になります。

3-1 障害者控除の例

障害者控除の具体的な例を見てみましょう。

【具体例①】相続開始日の年齢:65歳2ヶ月                                     障害者の区分:精神障害者二級(一般障害者)

200万円=(85歳-65歳2ヶ月)×10万円
※85歳-65歳2ヶ月=19歳10ヶ月なので端数を切り上げて20歳として算出

【具体例②】相続開始日の年齢:60歳8ヶ月
障害者の区分:身体障害者一級(特別障害者)

500万円=(85歳-608ヶ月)×20万円

※85歳-60歳8ヶ月=24歳4ヶ月なので端数を切り上げて25歳として算出

3-2 相続税より障害者控除が上回る場合

障害者控除は相続税額からそのまま控除されるため、相続税額より控除額の金額が上回ることもあります。控除額が相続税より上回った場合は、障害者の扶養義務者から控除することができます。扶養義務者とは、配偶者、祖父母・父母・子・孫及び兄弟姉妹、3親等内の親族で家庭裁判所が扶養義務を負わせた者を指します。

具体的なケースで見てみましょう。

【具体例】相続人:長男(扶養義務者)/次男(障害者)
長男の相続税額:200万円
控除前の次男の相続税額:150万円

障害者控除額:300万円
次男の相続税額:150万円-300万円=△150万円→相続額は0円
長男の相続税額:200万円-150万円=50万円
次男の障害者控除額が相続税額より150万円上回ったため、扶養義務者である長男の相続税から150万円控除することができます。


4章 障害者控除申請の際のよくある質問と注意点

障害者控除を申請する際にはいくつかの注意点があります。ここでは、よくある質問とともにその注意点についても解説します。

4-1 障害者控除の対象であるかどうかを判定する時期はいつですか?

A.対象であるかどうかを判定するのは「相続開始日」です。

ただし、相続開始日までに障害者手帳などの交付がされていなくても、障害者控除の申請書提出時までに交付を受けた場合や、交付申請中で一定要件を満たしている場合は障害者控除が適用される可能性があります。

詳細はこちらを御覧ください。                                            《障害者控除》関係|国税庁 障害者として取り扱うことができる者

4-2 障害者控除の申請に必要な書類はありますか?

A.障害者控除の申請には相続税申告書の第6表「障害者控除額の計算書」の添付が必要です。

この計算書(書式)は所轄の税務署でもらえます。これに加え、障害者手帳など該当する障害者であることが分かる書類のコピーの提出が必要です。

4-3 遺産が未分割の場合でも障害者控除は受けられる?

A.未分割の場合でも障害者控除を受けることはできます。

相続税の申告期限は、相続発生日から10ヶ月です。しかし、親族間などで遺産の分割協議がまとまるとは限りません。その場合、一度法定相続割合で遺産を相続したとして相続税の申告・納付をしましょう。その際に障害者控除の申請もします。この場合、遺産の分割が済んだら修正申告や更生の請求で改めて相続税を精算する必要があるので注意しましょう。

4-4 要介護認定でも障害者控除は受けられますか?

A.要介護認定は障害者控除が受けられる対象の障害者としてはみなされていないため、要介護認定だけでは障害者控除を受けることはできません

ただし、役所に「障害者控除対象者認定書」の発行を申請し、認定された場合は要介護認定を受けている場合でも障害者控除を受けることは可能です。

​4-5 相続人に障害者がいる場合、遺産分割に成年後見人は必要ですか?

A.障害者の方でも意思能力があり、自己判断できれば成年後見人は不要です。

遺産分割をするには、分割内容について遺産分割協議をしなければいけません。障害者が他の相続人らと意思疎通が取ることができ、遺産分割協議に参加できるのであれば成年後見人は必要はありません。

しかし、精神障害や認知症、知的障害等により意思能力がない場合は成年後見人を家庭裁判所に選任してもらい、遺産分割協議に参加してもらう必要があります

なお、成年後見人の選定には時間を要します。相続開始後だと申請期限に間に合わないこともありますので、できれば相続が発生する前に選任しておくことをおすすめします。

成年後見人についての詳細はこちら

「成年後見人とは?必要になる6つのケースと知っておくべき5つの注意点」

4-6 相続税の障害者控除と配偶者控除は併用できますか?

亡くなった人の配偶者が障害者の場合には、相続税の配偶者控除と障害者控除を併用可能です。
また、配偶者控除を利用し相続税がかからなくなった場合には、配偶者が控除しきれなかった障害者控除を扶養義務者の相続税から控除できます。

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5章 まとめ

相続人に障害者がいる場合、障害者控除を受けることができます。

障害者控除は相続税から控除するため、相続税が大きく減額することもあるので、忘れずに申請しましょう。また、控除額が相続税よりも上回った場合は扶養義務者の相続税からも控除することができます。

障害者控除を受けるには申請が必要ですので、申請方法や注意点についても留意した上で準備を進めましょう。

分からないことや、難しいことがある場合は司法書士へ相談することで手続きがスムーズになることもあります。お困りの際は、ぜひご相談を検討してみてください。

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