お墓や仏壇など故人の供養を行う財産は祭祀財産と呼ばれ、原則として相続税は課税されません。
そのため、生前のうちにお墓を購入しておくと相続財産を減らせる分、相続税対策になります。
ただし、お墓を購入したローンの残債は相続税計算時に債務控除できないので、相続税対策でお墓を購入するなら現金一括での購入がおすすめです。
また、高額すぎる墓石や仏壇を購入した場合、税務署に祭祀財産と認めてもらえず相続税の課税対象になる恐れもあるのでご注意ください。
本記事では、相続税計算時におけるお墓の取り扱いやお墓の購入で相続税対策をするときの注意点を紹介します。
1章 お墓には相続税がかからない
墓地や墓石などのお墓は祭祀財産と呼ばれ、相続税は課税されません。
そのため、生前のうちにお墓を購入しておくと相続財産をその分減らせるので、相続税対策になります。
ただし、すべてのお墓に対して相続税がかからないわけではなく、高額すぎるお墓などには相続税がかかるのでご注意ください。
次の章では、お墓と相続税の関係について詳しく解説します。
2章 相続税計算時におけるお墓の取扱い
お墓には原則として相続税がかかりませんが、高額すぎるお墓には相続税がかかるなどいくつか注意しなければならない点があります。
具体的には、下記の5点について理解しておくと良いでしょう。
- 高額すぎるお墓や仏壇は相続税の課税対象に含まれる
- お墓のローン残債は相続税の債務控除の対象外
- 遺産でお墓を購入しても葬儀費用として控除できない
- 墓地として貸している土地・空き地は相続税の課税対象に含まれる
- ペット墓地は相続税の課税対象に含まれる
それぞれ解説していきます。
2-1 高額すぎるお墓や仏壇は相続税の課税対象に含まれる
本記事の1章で解説したように、お墓や仏壇などの祭祀財産は原則として相続税は非課税ですが、高額すぎる墓石や仏壇は相続税がかかる恐れがあるのでご注意ください。
高額な祭祀財産を購入したことにより、相続税の課税逃れをしていると税務署に判断される恐れがあるからです。
相続税がかかる祭祀財産の金額に関しては明記されていませんが、下記に該当すると税務署からの指摘を受ける可能性があります。
- 故人の資産状況に不釣り合いな高額な祭祀財産
- 純金製や骨董価値の高いものなど金銭的な価値がある祭祀財産
例えば、純金製の仏壇を生前のうちに何個も購入しているケースなどでは、税務署が祭祀財産に該当しないと判断する可能性が高いでしょう。
2-2 お墓のローン残債は相続税の債務控除の対象外
相続発生時にお墓を購入したときのローンの支払いが残っている場合、残債は相続税の債務控除の対象外になります。
お墓や仏壇などの祭祀財産は相続税の課税対象外のため、債務に関しても債務控除の対象にならないと考えられるからです。
そのため、相続税対策として生前のうちにお墓を購入しようと考える人は、キャッシュでお墓を買うか自分が生きているうちにローンを支払える金額のお墓を購入することが大切です。
2-3 遺産でお墓を購入しても葬儀費用として控除できない
故人が生前のうちにお墓を購入していなく遺産でお墓を購入したとしても、お墓の購入費用を葬儀費用として相続税の計算時に控除することは認められません。
お墓や仏壇などは遺された家族が故人を供養するために用意するものであり、葬式に直接必要な費用ではないからです。
そのため、自分が入る予定のお墓がない人は遺産で家族に購入してもらうのではなく、生きているうちに自分で購入した方が相続税対策になります。
2-4 墓地として貸している土地・空き地は相続税の課税対象に含まれる
先祖の供養のために用意しているお墓は非課税ですが、故人が所有していた土地をお寺に墓地として貸し出していた場合や墓地用地ではあるものの空き地だった土地には相続税がかかります。
墓地として貸し出していた土地や空き地は先祖の供養のための土地ではなく、販売や活用が可能である収益性のある土地として考えられるからです。
墓地は一律相続税がかからないと思っていると、相続税の申告漏れとなってしまう恐れもあるので注意しましょう。
なお、墓地として使用していた土地は公共性が高いため固定資産税が課税されていない土地も多いです。
そのため、墓地に利用していた土地が固定資産税納税通知書には記載されていない可能性もあるので、相続時には名寄帳を取得して相続した土地を漏れなく調べましょう。
2-5 ペット墓地は相続税の課税対象に含まれる
お墓の中でもペット墓地は祭祀財産に該当せず、相続税の課税対象になります。
法律ではペットは「物」として扱われてしまうからです。
ただし、人間用のお墓にペットも一緒に入るケースであれば祭祀財産に分類されるので、相続税は課税されません。
3章 お墓の購入で相続税対策するときの注意点
本記事で解説したように、お墓には相続税がかからないので元気なうちにお墓を購入しておくと相続税対策になります。
ただし、お墓の購入で相続税対策するときには、下記の4点に注意が必要です。
- 高額すぎるお墓の購入は避ける
- 現金一括でお墓を購入する
- 家族・親族にも相談する
- 公営墓地は生前購入できない
それぞれ解説していきます。
3-1 高額すぎるお墓の購入は避ける
相続税対策を目的としてお墓を購入するのであれば、資産状況に合わない高額なお墓の購入は避けましょう。
本記事での2章で解説したように、高額すぎるお墓は祭祀財産にあたらず、相続税の課税対象とされる恐れがあるからです。
- 資産に合わない不自然な金額のお墓
- 骨董的価値があるなど投資用商品にもなりうるお墓
相続税対策でお墓を購入するなら、上記は避けた方が良いでしょう。
3-2 現金一括でお墓を購入する
相続税対策でお墓を生前のうちに購入するのであれば、ローンではなく現金一括購入がおすすめです。
ローンでお墓を購入し支払い途中で亡くなってしまうと、お墓のローン残債は相続税の計算時に債務控除できないからです。
結果として、生前のうちにお墓を購入したにもかかわらず相続税対策の効果がなくなってしまいます。
そのため、お墓を購入する際にはキャッシュで購入するか、自分が生きているうちにローンを払いきってしまうのが良いでしょう。
3-3 家族・親族にも相談する
相続税対策としてお墓を生前のうちに購入するのであれば、自分が亡くなった後にお墓を管理してくれる家族や親族にも相談しておきましょう。
お墓参りや将来にわたりお墓の管理をするのは遺された家族や親族だからです。
- 家族や親族の自宅から遠くてお墓参りしにくい墓地
- 管理料が高くお墓を継いだ後の負担が大きい墓地
上記のお墓を購入してしまうと、遺された家族の負担が大きくなってしまいます。
また、お墓を受け継ぐ相手と宗教や宗派が異なる場合、お寺の墓地を購入してしまうと家族や親族が檀家になりたがらず、お墓を継ぐ人がいなくなってしまう可能性もあるでしょう。
このように、お墓の購入は本人だけでなく家族や親族にとっても大きな問題なので、相談しながら購入することをおすすめします。
また、お墓の購入だけでなく相続対策や認知症対策などはデリケートな問題であり、本人以外の家族はなかなか口にしにくいケースもあるでしょう。
自分が元気なうちにこれらの相談や対策を徐々に進めておくと、家族や親族も安心できるはずです。
3-4 公営墓地は生前購入できない
都市部にある公園墓地などはアクセスが良いことから人気も高く、生前のうちに購入できない恐れがあります。
公園墓地では、遺骨の埋葬場所がなく困っている人を優先としているところが多いからです。
そのため、生前のうちにお墓を購入したい場合は購入できるお墓の種類や場所が限られてしまう可能性があります。
まとめ
お墓や仏壇などの祭祀財産には相続税がかからないので、生前のうちに購入しておくと相続税対策になります。
一方で、お墓を購入したローンの残債は相続税計算時に債務控除できませんし、遺産からお墓を購入した場合は葬式費用として控除できません。
ただし、お墓は遺された家族や親族が管理することもあり、自己判断で購入するとトラブルになる恐れもあります。
遺された家族にとっても良いと思えるお墓を購入できるよう、購入前に相談しておくと良いでしょう。
また、お墓の購入以外にも相続対策や認知症対策など、家族の負担を減らすために元気なうちにすべき対策はいくつかあります。
相続対策や認知症対策に関しては自分で行うのが難しいので、相続に詳しい司法書士や弁護士への相談がおすすめです。
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