
- ペット連れで入れる老人ホームとは、どんな施設か
- ペット連れの老人ホームに入るメリット・デメリット
- ペット連れ老人ホームに入所する際の注意点
近年、ペットを家族同然に大切にする高齢者が増えたことにより「ペットと一緒に暮らせる老人ホーム」への関心も高まっています。
高齢者施設は通常、動物との同居が認められていませんが、一部の施設ではペットとの共生を前提とした環境やサービスを整え、飼い主とペットの安心できる老後を支えています。
本記事では、ペット連れで入れる老人ホームの特徴やメリット・デメリット、そして入所時の注意点について解説します。
目次
1章 ペット連れで入れる老人ホームとは
今日では、ペットが家族の一員であるという考え方は当たり前のものになりつつあり、そうしたニーズに応えるため「ペットと一緒に暮らせる老人ホーム」が徐々に増えてきています。
これらの施設では、単に「ペット可」としているのではなく、ペットとの共生を前提とした設備やサービスが用意されている点が特徴です。
ペット連れで入所できる老人ホームでは、以下のような対応が見られます。
- ペット同伴可能な個室の用意
- ペットの散歩代行やお世話サポート
- 獣医との連携体制
- ペット専用の共有スペース(ドッグランなど)
- ペットのための防音・防臭
ただし、老人ホームによって施設の設備やサービス内容が異なるので、ペットと老人ホームに入所したい場合には、入所予定の施設を具体的に調べておくことが大切です。
2章 ペット連れの老人ホームに入るメリット
ペット連れの老人ホームに入所すれば、長年一緒に暮らしたペットと生活できるなどのメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
2-1 長年一緒にいたペットと一緒に暮らせる
ペットを連れていける老人ホームに入居すれば、入所にあたりペットと離れる必要がなくなります。
ペットは単なる飼い主と動物という関係に留まらず、孤独を癒してくれる存在であり、多くの高齢者にとって「家族」とも言えます。
そのため、高齢になり体力的な不安から施設入所を検討する際、「ペットと離れたくない」という理由で入所をためらう方も少なくありません。
ペット連れで入居可能な老人ホームであれば、そうした不安を解消し、今まで通りの生活を続けられます。
見知らぬ環境でも、慣れ親しんだペットがそばにいることで精神的な安定を得やすく、日々の生活にも張り合いが生まれやすくなるのもメリットといえるでしょう。
2-2 他の入居者と共通の話題も持ちやすい
ペット可の老人ホームに入所する方の多くは、当然ながら動物好きです。
そのため、ペットの種類や性格、日々のケアのことなど、自然と共通の話題が生まれやすく、人間関係を築くきっかけにもなるでしょう。
高齢者施設では、引きこもりや孤独感が問題になることもあります。
しかし、ペットを介した交流をすることで、入居者同士の自然なつながりを促進できます。
3章 ペット連れの老人ホームに入るデメリット
ペットと一緒に入所できる老人ホームには多くの魅力がありますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。
本章では、代表的な2つのデメリットについて解説します。
3-1 施設数が少なく選択肢が限られてしまう
最大のデメリットは、ペットと一緒に入れる老人ホームの数が非常に少ないという点です。
2020年代に入り徐々に増加傾向にはあるものの、全体の老人ホームのうちペット可の施設はまだごく一部に限られています。
特に、地方都市や郊外エリアでは、該当施設がまったく存在しない地域もあるのでご注意ください。
また、ペット可とされている施設であっても、すべての動物を受け入れているわけではなく、以下のような制限を設けている場合もあります。
- 小型犬に限る
- 1匹のみ
- 〇歳以下などの年齢制限
そのため、実際に希望に合った施設を見つけるのは簡単ではないでしょう。
選択肢が限られることで、希望する地域に住み替えできなかったり、入居までに時間がかかったりする可能性もあります。
高齢者本人の健康状態や介護度によっては、早急な入居が必要となる場合もあるため、ペットとの同居を優先することが現実的でないケースも出てきます。
3-2 入所費用が高額になる可能性がある
もうひとつのデメリットは、通常の老人ホームと比べて費用が高額になる可能性がある点です。
ペットの受け入れには、以下のようなコストが追加でかかります。
- 専用設備の整備
- スタッフの教育
- 人員配置
- 清掃体制の強化
そのため、ペット可の老人ホームでは、入居一時金や月額費用が高めに設定されていることが一般的です。
加えて、ペットに関するサービス(お世話の補助やトリミング手配、健康管理など)には別途オプション料金が発生するケースも多く、結果としてトータルの負担は想定以上になることもあります。
また、ペット自身の病気や老化も避けられない問題です。
施設内で治療が受けられない場合には、外部の動物病院に通う必要があり、医療費や送迎費用も別途発生します。
高齢者自身の生活費・介護費に加えてペットの費用も確保しなければならないため、老後資金に余裕がある方向けの選択肢といえるでしょう。
4章 ペット連れ老人ホームに入所する際の注意点
ペット連れ老人ホームに入所する際には、以下のことなどに注意しましょう。
- 老人ホームの規約によりペットの数・種類が決められていることが多い
- サービス・サポート内容をよく確認しておく
- 飼い主(入所者)が亡くなったら遺族がペットを引き取る必要がある
- ペットが傷つけた壁・床などは原状回復が求められることが多い
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 老人ホームの規約によりペットの数・種類が決められていることが多い
ペット可とされている老人ホームであっても、すべての動物やあらゆる条件での飼育が認められているわけではありません。
多くの施設では、ペットの種類や大きさ、数などの制限を設けています。
他にも、以下のような条件を定めている施設もあります。
- ワクチン接種や去勢・避妊手術の実施
- 無駄吠えしないこと
- トイレのしつけができていること
条件を満たさなければ、入居が認められないこともあるのでご注意ください。
特に、複数のペットを飼っている方は、すべてのペットと一緒に入居できるかどうか、事前に施設へ相談しておくことが大切です。
4-2 サービス・サポート内容をよく確認しておく
ペットと一緒に老人ホームに入れるといっても、具体的な環境や支援内容は施設によって様々です。
「ドッグランで犬を自由に遊ばせたい」「散歩は代行サービスを頼みたい」などの希望があれば、対応している施設を選ぶ必要があります。
特に注意しておきたいのは、自分が体調を崩したり、入院したりして世話ができなくなった場合の対応です。
施設によっては、一時的にスタッフがペットの世話を代行したり、提携施設で預かってくれるところもありますが、すべての施設が対応しているわけではありません。
スタッフによる一時預かりや提携施設での預かりサービスがない場合、自分に何かあったときのペットの引き取り先も考えておく必要があります。
4-3 飼い主(入所者)が亡くなったら遺族がペットを引き取る必要がある
万が一の際に、ペットを引き取る家族や知人を事前に決めておくことを求めるペット連れ老人ホームも多くあります。
入所者が死亡した場合や長期入院などでペットを飼育できなくなった場合、施設ではペットの世話を継続的に行えないからです。
ペット連れ老人ホームに入所するから自分が最期までペットの世話をすると安易に考えるのではなく、引き取ってくれる人物を見つけておかなければなりません。
4-4 ペットが傷つけた壁・床などは原状回復が求められることが多い
ペットと入所できる老人ホームであっても、退去時には原状回復を求められるのが一般的です。
ペットとの生活では、どうしても爪とぎや噛み癖、排せつの失敗などによる室内の傷みが生じやすくなります。
特に、壁紙の引っかき傷や床材の破損、臭いの染みつきなどは修繕費用の対象となり、数万円〜十数万円単位で請求されるケースもあると理解しておきましょう。
これらの費用は、入居一時金や保証金ではカバーされないことも多く、費用を別途用意しておかないと遺族に負担がかかる恐れもあります。
まとめ
ペットと暮らせる老人ホームは、心の支えとなる存在と共に安心して老後を過ごせる貴重な選択肢といえるでしょう。
一方で、施設数の少なさや費用面、ペット受け入れ条件など、確認すべき点も多くあります。
入所を検討する際は、施設ごとの規約やサポート体制をしっかり確認し、自分とペットの将来を見据えた準備を行うことが大切です。
また、ペット連れで入所できる老人ホームを見つけたから安心と考えるのではなく、万が一のときに備えて、ペットの引き取り手を探しておくと良いでしょう。