
【この記事でわかること】
- 相続税申告書は連名で提出するのか
- 相続税申告書を相続人ごとに提出するリスク・デメリット
- 相続税申告書を連名で提出しない方が良いケース
家族や親族が亡くなり、相続が発生すると相続税の申告が必要な場合があります。
相続税申告書は遺産を受け継いだ相続人が提出する必要がありますが、その際は連名で提出することが一般的です。
相続税申告書を連名で提出せず、相続人ごとに提出してしまうと、申告内容が異なった場合に税務調査の対象になりやすいのでご注意ください。
本記事では、相続税申告書を相続人ごとに提出すべきなのか、相続人ごとに提出するリスクやデメリットを解説します。
相続税の計算方法については、下記の記事で詳しく解説していますので、よろしければ併せてお読みください。
目次
1章 相続税申告書は連名で提出するのが一般的
相続人が複数人いた場合は共同相続となり、相続税申告書は連名で提出することが一般的です。
「相続税申告書は連名で提出しなければならない」と法律で決まっているわけではありませんが、相続人ごとに申告書を提出すると、様々なリスクやデメリットがあるので注意しなければなりません。
次の章では、相続人ごとに申告書を提出するリスクやデメリットについて詳しく解説していきます。
2章 相続税申告書を相続人ごとに提出するリスク・デメリット
相続税申告書を相続人ごとに提出すると、下記のリスクやデメリットがあるので注意しましょう。
- 相続人ごとに申告内容が異なると税務調査の対象になりやすい
- 遺産分割協議が完了しないと相続税の控除・特例を適用できない
- 税理士に依頼した場合の費用が高額になる
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 相続人ごとに申告内容が異なると税務調査の対象になりやすい
相続人ごとに申告書を提出すると、申告内容が異なってしまう可能性があります。
そして、相続人ごとに申告内容が異なると、税務調査の対象になりやすくなるのでご注意ください。
相続税を計算する際には、遺産の相続税評価額を計算しなければなりません。
相続税評価額の計算を間違えてしまうと、相続税の金額も異なるため、税務調査の対象になりやすくなります。
2-2 遺産分割協議が完了しないと相続税の控除・特例を適用できない
遺産分割協議が完了しないからといって、相続税申告書を個別に提出してしまうと、相続税の控除や特例を適用できなくなる可能性があります。
相続税にはいくつかの控除や特例がありますが、中でも下記のものは、期限内の遺産分割協議完了および申告書の提出が要件となっているのでご注意ください。
万が一、相続税の申告期限までに遺産分割協議が完了しない場合には、下記の手順を踏めば、配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用できます。
- 申告期限内に法定相続分による申告書を作成する
- 申告期限後3年以内の分割見込書を提出する
- 申告期限内に納税を済ませる
- 3年以内に遺産分割協議を完了させる
- 遺産分割協議書を作成する
- 遺産分割協議完了後4ヶ月以内に修正申告・更正の請求をする
2-3 税理士に依頼した場合の費用が高額になる
相続人ごとに相続税申告書を提出する場合、税理士への依頼費用が高額になってしまいます。
税理士に支払う報酬を抑えたいのであれば、相続税申告書を連名で提出することをおすすめします。
3章 相続税申告書を連名で提出しない方が良いケース
本記事で解説してきたように、相続税申告書はできる限り、連名で提出する方が望ましいといえます。
ただし、下記のようなケースでは相続人ごとに申告書を提出することも検討しましょう。
- 相続人の1人が遺産隠しをしている可能性が高いケース
- 遺産分割協議がまとまらず相続人同士の関係が悪くなってしまったケース
- 相続税申告・手続きに協力しない相続人がいるケース
- 他の相続人が依頼している税理士に頼みたくないケース
それぞれ詳しく解説していきます。
3-1 相続人の1人が遺産隠しをしている可能性が高いケース
相続人の1人が遺産隠しをしている可能性がある場合、連名ではなく相続人ごとに相続税申告書を提出する場合があります。
例えば、長男が遺産隠しをしていると他の兄弟姉妹が疑っている場合などが考えられるでしょう。
ただし、実際に長男が遺産隠しをしていた場合、申告内容と遺産の内容が異なるため、税務調査の結果、追徴課税が発生する可能性があります。
そのため、遺産隠しが疑われる場合は、証拠を集めたり専門家に相談したりして解決を目指すこともご検討ください。
3-2 遺産分割協議がまとまらず相続人同士の関係が悪くなってしまったケース
遺産分割協議がまとまらず、相続人同士の関係が悪くなり、相続税申告書を個別に提出するケースも中にはあります。
遺産分割協議とは、相続人全員で誰がどの遺産をどれくらいの割合で受け継ぐかを決める話し合いです。
互いに主張をぶつけ合うばかりで話し合いがまとまらなかった場合などでは、相続税を連名で申告することすら嫌だと感じてしまう可能性もあるでしょう。
3-3 相続税申告・手続きに協力しない相続人がいるケース
相続人同士が疎遠な場合や、相続手続きに非協力的な相続人がいる場合も、相続税申告書を個別に提出するケースがあります。
相続手続きは相続人全員で協力して進める必要があります。
しかし、いくら連絡をしても返信してくれなかったり、必要書類を準備してくれなかったりするケースでは、個別に相続税申告書を提出せざるをえないこともあるでしょう。
3-4 他の相続人が依頼している税理士に頼みたくないケース
ごくまれにですが、他の相続人が依頼している税理士との相性が悪く、相続税申告を依頼したくないと考えてしまう場合もあります。
この場合、それぞれ別の税理士に相続税申告を依頼し、個別に申告書を個別に提出することとなります。
4章 相続税申告書を連名で提出する際の記載方法
複数の相続人が連名で申告書を提出する場合、下記のように決められています。
2人以上の相続人等がいる場合には、申告書の提出意思の有無を明らか
にするため、申告書第1表及び第1表(続)(以下「第1表等」といいます。)には
共同して提出する方のみを記載して提出してください。
上記に書かれているように、相続税申告書を連名で提出する際には、連名で提出する相続人の「氏名・住所・マイナンバー」を記載する必要があります。
連名で提出しない相続人がいる場合、その相続人については申告書に記載する必要はありません。
5章 円満・円滑に連名で相続税申告をするための対策
相続税申告を連名でするには、遺産分割協議などの手続きを相続人全員で協力して行う必要があります。
場合によっては、司法書士などの専門家に相続手続きをサポートしてもらうことも検討しましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
5-1 遺産隠しをしない
相続税申告などの相続手続きを進める際には、遺産隠しをしないようにしましょう。
遺産分割協議の段階で遺産隠しに気付かれなかったとしても、相続税の申告内容と実際の遺産が異なる場合、税務調査が行われる可能性があるからです。
税務調査にて遺産隠しが明らかになると、他の相続人にも遺産の全容が明らかになってしまうのでご注意ください。
5-2 司法書士など中立的な立場の専門家にサポートをしてもらう
円満に相続手続きを進めたいのであれば、司法書士など中立的な立場の専門家に依頼することも検討しましょう。
相続税申告書を連名で提出できないケースのほとんどは、相続人同士でトラブルが起きてしまったケースです。
トラブルが起きそうだったり、遺産分割協議がまとまらなかったりする段階で、司法書士などの専門家に相談すれば、トラブルを回避できる可能性があります。
特に、特定の代理人といった意味合いが強い弁護士と比較して、司法書士は第三者として中立的な立場からアドバイスを行えます。
トラブルが泥沼化する前に円満解決を目指したいのであれば、専門家の中でも司法書士に相談することをご検討ください。
まとめ
相続税申告書は連名で提出することが一般的であり、個別に提出すると様々なリスクがあるのでご注意ください。
ただし、一部の相続人が遺産隠しをしているのではないかと疑っている場合や遺産分割協議がまとまらずトラブルになった場合は、個別に相続税申告書を提出することも検討しましょう。
相続税申告書を連名で提出したい場合や、円満かつスムーズに相続手続きを完了させたい場合は、相続に詳しい司法書士や税理士などの専門家に相談することもご検討ください。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
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