
- 遺言書の検認手続きとは何か
- 遺言書の検認手続き当日は欠席できるのか
- 遺言書の検認手続きの当日に欠席するデメリット
遺言書の検認手続きとは、家庭裁判所が遺言書の形式や内容を確認し、改ざん防止のために記録する重要な手続きです。
自筆証書遺言などでは、検認手続きをしなければ相続登記や預貯金の名義変更ができず、放置すると相続手続き全体が滞ることもあります。
検認手続きは家庭裁判所で行いますが、申立人以外は欠席しても問題はありません。
本記事では、検認手続きの基本から、手続き当日に欠席できるのかについて解説していきます。
目次
1章 遺言書の検認手続きとは
遺言書の検認手続きとは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、日付、署名押印などの形式を記録する手続きです。
検認手続きの目的は、遺言の偽造や改ざんを防ぐことであり、遺言の有効性そのものを判断するものではありません。
つまり、検認手続きが終わったからといって、遺言の内容が有効と確定するわけではなく、形式的な確認に留まることを理解しておきましょう。
検認手続きが必要となるのは、遺言書の中でも、法務局による保管制度を利用していない自筆証書遺言や秘密証書遺言です。
公正証書遺言などは、検認手続きが必要ありません。
検認手続きをするには、遺言書を発見した相続人などが、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
検認手続きの申し立て方法や必要書類は、以下の通りです。
| 手続きする人 | 遺言書の保管者 遺言書を発見した相続人 |
|---|---|
| 手続き先 | 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙:800円分 連絡用の郵便切手代:数千円程度 |
| 必要書類 | 遺言書 相続関係がわかる戸籍謄本など(除籍、改製原戸籍など) |
申立て後は、家庭裁判所から「検認期日」が指定され、相続人全員に通知が送られます。
検認期日には、裁判官の面前で遺言書が開封され、その内容が確認・記録されます。
なお、封がされている自筆証書遺言を家庭裁判所の許可なく開封した場合は、5万円以下の過料に科せられる恐れがあるのでご注意ください。
2章 申立人以外であれば検認手続きの当日に欠席できる
検認期日は、相続人全員に通知されるものの、必ず全員が出席する必要はありません。
実際には、申立人以外の相続人が欠席しても手続きは進行します。
家庭裁判所は、期日に出席した相続人立会いのもとで遺言書を開封・確認し、その内容を検認調書として記録します。
2-1 申立人が欠席すると検認手続きをしてもらえない
申立人以外の相続人は検認手続き当日に欠席しても問題ない一方で、申立人が当日欠席することは認められません。
申立人が出席しなければ、家庭裁判所は遺言書の確認を進められず、検認手続きを完了できません。
そのため、申立人が欠席すると検認手続きは延期となり、結果として、相続手続き全体が遅れる恐れがあります。
3章 遺言書の検認手続きの当日に欠席するデメリット
申立人以外は、遺言書の検認手続き当日に欠席しても問題はありませんが、実務上ではデメリットがあるのでご注意ください。
検認手続き当日に欠席すると、「検認済証明書」をその場で受け取ることができません。
欠席した場合には、後日、家庭裁判所に検認調書を発行してもらう必要があります。
しかし、手続きの手間やタイムラグを考えると、できる限り出席した方が相続手続きをスムーズに進められるでしょう。
4章 検認手続き完了後の遺言書に納得いかないときの対処法
遺言書の検認手続きは遺言書に形式不備がないかなどを確認するものであり、遺言内容について審査するものではありません。
そのため、検認手続きが完了した後でも、遺言の内容に不満や疑問がある場合には、以下のような方法で対処することを検討しましょう。
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 遺言無効確認調停・訴訟を起こす
- 遺留分侵害額請求をする
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1 相続人全員で遺産分割協議を行う
遺言書があっても、相続人全員で遺産分割協議を行うことが可能です。
相続人全員が合意すれば、遺言内容と異なる分け方にすることも可能です。
ただし、相続人のうち1人でも反対する人がいれば協議は成立せず、その場合は遺言内容どおりに相続を進めることになります。
4-2 遺言無効確認調停・訴訟を起こす
遺言書の内容や作成時の状況に疑わしい点がある場合には、遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟を申し立てることも可能です。
遺言無効確認事件では「調停前置主義」が採用されているので、まずは家庭裁判所で調停を申し立て、当事者間での合意を目指します。
それでも解決しない場合には、地方裁判所に訴訟を提起して、遺言書の有効・無効を法的に判断してもらう流れになります。
遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟を行う場合、筆跡鑑定や医師の診断書など、専門的な証拠が必要となるケースもあり、時間と費用がかかる点には注意が必要です。
4-3 遺留分侵害額請求をする
遺言書が有効であっても、その内容が一部の相続人に偏っている場合には、遺留分侵害額請求により自分の取り分を主張できます。
遺留分とは、故人の配偶者や子供、両親などに保障された最低限の相続割合です。
例えば「すべての財産を長男に相続させる」という遺言があっても、他の相続人(妻や次男など)は遺留分を侵害されている場合、遺留分相当額の金銭を請求できます。
遺留分侵害額請求をする際には、相手方に内容証明郵便で意思表示を行うのが一般的です。
まとめ
遺言書の種類が自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、検認手続きを申し立てなければなりません。
申立人以外は検認手続き当日に欠席しても問題ありませんが、遺言書の写しを受け取れないなどのデメリットもあるのでご注意ください。
検認手続きが完了した後は、遺言内容をもとに名義変更手続きなどを進めていきましょう。
グリーン司法書士法人では、相続手続きについての相談をお受けしています。
初回相談は無料、オンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくあるご質問
遺言書の検認手続きを行わないでいるとどうなりますか?
遺言書の検認手続きをしないまま放置していると、相続手続きを進められなくなってしまいます。
また、検認手続きを行わずに勝手に遺言書を開封すると、5万円以下の過料が科せられる恐れもあるのでご注意ください。検認済通知書が送られてこないときにはどうすればいいですか?
検認済通知書とは、検認手続き当日に欠席した相続人に送られる書類です。
万が一、検認済通知書が届かない場合には、家庭裁判所に確認し、検認調書のコピーを取得しましょう。遺言書の検認手続きが終わったらどうすればいいですか?
遺言書の検認手続きが終わると、家庭裁判所から「検認済証明書」が発行され、遺言書が正式に法的効力を持つ形で利用できるようになります。
次は、遺言内容にしたがい、遺産の名義変更手続きを進めていきましょう。
遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、その人が中心となって遺産の分配や名義変更手続きを進めていきます。








