遺産整理業務とは?司法書士・行政書士と信託銀行でかかる費用を比較

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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 6

家族が亡くなると必ず「遺産相続」が発生します。

家族が亡くなった後は葬儀や法要、役所の手続きなどやるべきことが多く大変なのに、それに加え遺産分割協議書の作成や財産の名義変更などの相続手続きまで対応しきれないと感じる人も多いでしょう。

そのような方には相続手続きを一括してお任せすることができる「遺産整理業務」の利用がおすすめです。
遺産整理業務は「司法書士・行政書士」「信託銀行」などが提供しており、提供元によって名称は様々ですが、「相続手続きを一括して任せられる」という点では共通しています。

この記事では、遺産整理業務の詳細に加え、依頼先や、依頼先それぞれの特徴などについて解説します。
現在、相続手続きでお困りの方や将来の相続手続きに不安がある人は、ぜひご参考にしてください。


1章 遺産整理業務とは

遺産整理業務とは、相続に関する手続きを支援・代行してくれるサービスで、主に司法書士事務所や信託銀行などが提供しています。

「遺産整理業務」を始め、「遺産整理代行サービス」「相続手続き代行サービス」「相続サポート」など、提供元によって名称や内容は様々ですが、「相続手続きを代行してくれる」という点では共通しています。次の章では、遺産整理業務を依頼した場合、どのような手続きを、どのような流れて進めてくれるのかを詳しく見ていきましょう。

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2章 遺産整理業務の流れ

サービスの提供元によって細かな流れや業務は異なりますが、大まかな流れは以下の通りです。

業務内容 備考
相続人の調査 戸籍の収集などを行い、相続人の調査および確定
遺言の調査 公正証書遺言がないか、公証役場で遺言の有無の確認
財産の評価・財産目録の作成 現金や預貯金、不動産、有価証券など相続財産を調査し、具体的な金額をまとめた財産目録を作成
遺産分割協議・遺産分割協議書の作成 遺産分割協議に対するアドバイスした上で、協議がまとまったら遺産分割協議書を作成
預貯金の名義変更・払い戻し 預貯金口座の名義変更や払い戻し手続き
不動産・証券など財産の名義変更・登記手続き 不動産や有価証券を相続人の名義に変更する手続き
財産の管理・運用・売却・処分 相続した財産の売却や処分する際のサポート
相続税の申告 税務署への相続税申告に関する手続き(相続税が発生する場合のみ)

上記の業務の中には、不動産の名義変更(司法書士)手続きや、相続税の申告(税理士)など専門家しか代行できない業務があります。
例えば、金融機関などで遺産整理業務を依頼した場合、専門家による対応が必要な部分は提携先の専門家に外注されることになります。

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3章 遺産整理業務の依頼先

遺産整理業務の依頼先は主に以下の3つです。

信託銀行 司法書士 行政書士
メリット 信託銀行を利用している人にとって依頼しやすい
  • 不動産の名義変更も行える
  • 財産管理人として遺産の換価、清算、分配を行える
相続関係の資料を作成できる
デメリット 業務を提携先の専門家に外注するので費用が高くなりやすい 資料の作成のみであれば、行政書士への依頼で十分 不動産の名義変更や遺産の清算・分配はできない
依頼がおすすめな人 信託銀行を利用している人
  • 相続人同士の関係が良くない人
  • 相続財産に不動産が含まれる人
相続関係の資料作成や預金解約手続きを行ってほしい人

それぞれの特徴について解説しますので、依頼先を検討している方はぜひご参考にしてください。

3-1 信託銀行

信託銀行は、メイン業務である信託業務以外にも不動産の仲介や相続に関するサポートも行っているところが多くあります。
「遺産整理業務」もそのサポートのひとつです。

信託銀行で資産や不動産の運用のサービスを利用している人は、遺産整理業務も一緒にお願いする方が多いようです。

ただし、信託銀行に遺産整理業務を依頼した場合も、実際の実務を担当するのは銀行が提携している司法書士や行政書士などです。
信託銀行が窓口となり、各手続きを士業に外注する形となるため、その分費用が高くなる傾向にあります。

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3-2 司法書士

司法書士は、法務手続きや不動産の名義変更などを行う専門家です。
また、裁判所に提出する法的な書類を作成する業務も担っています。

不動産を相続した際の名義変更手続き(相続登記)は、司法書士や弁護士のみが対応できる業務であるため、不動産が遺産に含まれる場合は司法書士に依頼するのが良いでしょう。

また、遺産分割協議書の作成や相続手続きに必要な提出書類の作成もサポートしてくれます。
さらに司法書士(と弁護士)は、信託銀行や行政書士と比べ「財産管理人」として行動することができるので、遺産の換価、清算、分配まで行えます。

専門家が公平中立な立場で、遺産整理・精算・分配まで行ってくれるので、以下のようなケースでは、司法書士に遺産整理業務を依頼することも検討しましょう。

  • 相続人同士の仲が良くない(関係が薄い)
  • 相続人が全国(海外)に散らばっている
  • 仕事などが忙しいので出来るかぎりのことを任せたい
  • 中立公平な立場で速やかに相続手続きを進めてほしい

このように相続税の申告など一部を除き、対応範囲が広く信託銀行に比べ、費用は安価な傾向にあります。

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【相続財産管理人とは?】必要なケース・選任の流れ・費用について

3-3 行政書士

行政書士は、官公署に提出する書類や事実証明に関する書類などを作成する専門家です。
「書類を作成する」という点では司法書士と共通しており、行政書士も遺産分割協議書を作成できます。
遺産分割協議書や相続関係の資料作成を依頼した場合の費用相場は、司法書士と同等程度か少し安い程度です。

ただし、不動産の名義変更手続きや遺産の清算・分配は行政書士では行えません。
そのため、相続財産に不動産が含まれており、相続登記も依頼したい場合には別途司法書士や弁護士に依頼する必要があります。

【ケース別】遺産整理業務はどこに依頼すべき?

  • 遺産に不動産が含まれる→司法書士がおすすめ!
  • 遺産に不動産が含まれず、書類手続きのみ→行政書士がおすすめ!
  • 遺産の処分・売却、清算、その後の分配まで依頼したい→司法書士がおすすめ!

司法書士や行政書士に比べ、信託銀行は手続き費用が割高です。

亡くなった人が生前に信託銀行に財産の運用などを任せていたなど、すでに関係性がある場合か、何十億円もの遺産がある方は信託銀行へ依頼するのもいいでしょう。


4章 遺産整理業務の費用相場

3章で解説したように、遺産整理業務は信託銀行や司法書士、行政書士に依頼できます。
相続の状況によって、依頼先を決めることになりますが、「費用」も気になるところではないでしょうか。「信託銀行」「司法書士」「行政書士」の遺産整理業務の費用相場は、以下の通りです。

信託銀行 最低報酬110万円〜遺産総額×0.3〜1.8%程度
※遺産総額に応じて変動最低報酬が決まっており、どんなに遺産が少なくとも110万円程度の費用がかかることが多いようです。
※不動産の名義変更は司法書士へ外注
司法書士
※グリーン司法書士法人の場合
最低報酬:25〜30万円遺産総額×0.3~1%+消費税
※遺産総額に応じて変動

【その他】

  • 遺産分割協議書作成:21,000円〜
  • 相続登記申請:30,000円〜

など

行政書士 最低報酬:25〜30万円遺産総額×0.3~1%+消費税
※遺産総額に応じて変動

【その他】
遺産分割協議書作成:21,000円〜
※不動産の名義変更や遺産の精算・分配の作業は司法書士や弁護士へ外注が必要

相続手続き代行とは?|依頼先を選ぶポイントや費用相場について解説

5章 遺産整理業務の依頼先を選ぶポイント

ここまで、遺産整理業務の依頼先や費用相場について紹介しました。
「結局どこに依頼すればいいの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。

結論としては、相続財産や依頼範囲に応じて、以下のように選ぶのがおすすめです。

  • 遺産に不動産が含まれる:司法書士
  • 遺産に不動産が含まれず、書類手続きのみ依頼したい:行政書士
  • 遺産の処分・売却、清算、その後の分配まで依頼したい:司法書士

それぞれ詳しく解説していきます。

5-1 遺産に不動産が含まれるなら司法書士がおすすめ

遺産に不動産が含まれる場合には、名義変更に伴い相続登記が必要です。
しかし、相続登記は司法書士と弁護士の独占業務であり、信託銀行や行政書士に依頼した場合には別途外注しなければなりません。

そのため、相続財産に不動産がある場合には、依頼先が司法書士に外注をするか、依頼者自身で相続登記を別途依頼する必要があります。
余計な外注費用や新たに司法書士や弁護士を探す手間を省くためにも、最初から司法書士に依頼し、ワンストップで相続手続きを代行してもらうのがおすすめです。

5-2 協議書作成や預金解約のみ依頼したいなら行政書士がおすすめ

一方で遺産に不動産がなく、現金や預貯金のみで完結する場合は行政書士がおすすめです。
行政書士の場合、「遺産分割協議書の作成だけ」「財産調査だけ」のように、必要な手続きのみを依頼できます。
予算の範囲内で遺産整理業務を依頼したい場合にも、行政書士に相談するのが良いでしょう。

5-3 遺産の処分・売却、清算、その後の分配まで依頼したいなら司法書士がおすすめ

相続の状況によっては、遺産の処分や売却まで専門家に任せてしまいたい場合もあるでしょう。
また、法定相続人全員が相続放棄をして、相続人がいなくなった場合などにも相続財産管理人を選任し、遺産の処分を行ってもらう必要があります。

相続財産管理人になれるのも、司法書士や弁護士のみとなっています。
そのため、遺産の処分や売却、清算、その後の分配まで任せてしまいたいときには、司法書士への相談をご検討ください。

5-4 信託銀行は費用が高めでおすすめできない

信託銀行に関しては、あまりおすすめできません。
業務のほとんどを司法書士や行政書士に外注しているため、費用が割高になってしまいがちだからです。

依頼先の信託銀行に財産を預けている場合であれば安くなる場合もありますが、最低報酬が110万円〜150万円に設定されているため、最低でもその程度は費用がかかる可能性が高いでしょう。

ただし、被相続人が生前に信託銀行に財産の運用などを任せていて、関係性ができているのであれば、信託銀行へ依頼するのも良いかもしれません。


まとめ

遺産整理業務とは、名前の通り相続に関する手続きを一括で依頼できるサービスです。
遺産整理業務を依頼すれば、遺族は相続手続きに時間と手間を割かなくて良くなります。
家族が亡くなり、葬儀や法要、戸籍等の手続きに追われていて、相続手続きまで手が回らないのであれば、遺産整理業務の依頼を検討するのも良いでしょう。

遺産整理業務の主な依頼先は「信託銀行」「司法書士」「行政書士」の3つです。
インターネットで「遺産整理業務」と検索すると、どうしても大手の信託銀行ばかり出てきますが、他の士業に比べ信託銀行の費用は割高です。

もし、遺産整理業務の依頼を検討しているのであれば、一度、司法書士などの専門家へ相談してみることをおすすめします。

相続手続き代行とは?|依頼先を選ぶポイントや費用相場について解説

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よくあるご質問

遺品整理業務の流れは?

遺産整理業務の流れは、下記の通りです。
①相続人の調査
②遺言の調査
③財産の評価・財産目録の作成
④遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
⑤預貯金の名義変更・払い戻し
⑥不動産・証券など財産の名義変更・登記手続き
⑦財産の管理・運用・売却・処分
⑧相続税の申告
▶遺産整理業務の流れについて詳しくはコチラ

遺品整理業務は誰に依頼する?

遺品整理業務の依頼先は、下記の3つです。
①信託銀行
②司法書士
③行政書士
▶遺品整理業務の依頼先について詳しくはコチラ

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