銀行の相続手続きに期限はない!早めにすべき理由6つを解説

銀行の相続手続きに期限はない!早めにすべき理由6つを解説
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 9

家族や親族が亡くなったときに行うべき手続きのひとつが、故人が遺した銀行口座の相続手続きです。
具体的には、故人から相続人に預貯金の解約手続きをする必要があります。

相続手続きの中には期限が決まっているものもありますが、銀行の相続手続きは期限が設定されていません。
そのため、期限が決まっている相続手続きを先に行ってから手続きするのでも良いですし、何らかの事情で銀行の相続手続きを放置してしまっても、後から問題なく手続きできます。

ただし、銀行の相続手続きをいつまでも放置してしまうと第三者による引き出しリスクなどもあるので、可能であれば早めに手続きをするのが良いでしょう。

本記事では、銀行の相続手続きに期限がないことや早めに手続きをすませた方が良い理由を解説します。
家族が亡くなったときの相続手続き全体の流れは、下記の記事で解説しているのでご参考にしてください。

【保存版】相続手続きでやるべきことまとめ!必要書類や期限も紹介

1章 銀行の相続手続きに期限はない

銀行の相続手続きには期限が設定されていないため、家族や親族が亡くなってから時間が経っていても問題なく預貯金の解約手続きを行えます。
また、銀行などの金融機関が口座名義人の死亡を知らない限り、銀行口座が凍結されることもありません。

ただし相続発生からあまりに時間が経過してしまうと、相続人の一人も亡くなってしまい遺産分割協議をやり直さなければならないなどデメリットが生じる恐れがあります。
次の章では、銀行の相続手続きを早めにすべき理由やしない場合のリスクについて詳しくみていきましょう。

相続手続きの期限まとめ!期限を守れなかった場合のデメリットとは?

1-1 期限のある相続手続き一覧

銀行の相続手続きに期限はない一方で、相続手続きの中には期限が設定されているものもあるのでご注意ください。
期限のある相続手続きは、下記の通りです。

期限相続手続き
3ヶ月以内相続放棄や限定承認
4ヶ月以内準確定申告
10ヶ月以内相続税の申告
1年以内遺留分侵害額請求
3年以内生命保険金の請求
5年10ヶ月以内相続税の還付請求

例えば、銀行の相続手続きに期限はないものの相続税の申告期限は10ヶ月以内のため、遺産から相続税を払う場合には相続から10ヶ月以内に故人の銀行の解約手続きを行っておくのが良いでしょう。
このように、相続手続きの期限に間に合うようにするには、効率よく順序だてて相続手続きを進めていくことをおすすめします。

相続手続きの期限まとめ!期限を守れなかった場合のデメリットとは?
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2章 銀行の相続手続きを早めにすべき理由6つ

銀行の相続手続きに期限はなく、故人が亡くなってから時間が経ってしまい放置されていた口座も問題なく手続きを行えます。
しかし、銀行の相続手続きをいつまでもしないで放置するといくつかのデメリットやリスクがあるのでご注意ください。

銀行の相続手続きを早めにすべき理由は、下記の6つです。

  1. 手続き前に相続人が亡くなると再度遺産分割協議が必要になる
  2. 口座名義人の死亡を確認すると銀行口座が凍結されてしまう
  3. 凍結されていない故人の口座は第三者による引き出しリスクがある
  4. 10年以上取引がない口座は休眠預金として扱われる
  5. 相続税の納税期限までに手続きを終えれば遺産から相続税を支払える
  6. 口座管理手数料がかかる恐れがある

それぞれ解説していきます。

2-1 手続き前に相続人が亡くなると再度遺産分割協議が必要になる

遺産分割協議が完了した後、銀行の相続手続きを行わず放置すると、相続人の一人が亡くなってしまい新たな相続が発生してしまうケースもあります。
新たな相続が発生すると再び遺産分割協議をする必要がありますし、相続人調査や相続財産調査で漏れが発生してしまう恐れもあるのでご注意ください。

具体例と共に見ていきましょう。

【1回目の相続】

  • 父が亡くなった
  • 母(配偶者)および長男と次男が相続人

【2回目の相続】

  • 母が亡くなった
  • 長男および次男が相続人

上記のケースで1回目の相続発生時に父の預貯金の相続手続きを放置してしまうと、母が亡くなった2回目の相続発生時には下記の2つの預貯金について遺産分割方法を決定しなければなりません。

  • 母が相続した父の預貯金
  • 母が元々所有していた預貯金

結果として相続財産調査や遺産分割協議が複雑になり、自分たちで行うと相続財産や相続人に漏れが発生してしまう可能性もゼロではありません。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人が一人でも欠けていた場合は遺産分割協議が無効になってしまいます。

  • 1回目の相続と2回目の相続で相続人が異なる
  • 1回目の相続手続きを長年放置してしまい、1回目の相続財産や状況について相続人が誰も把握できていない

上記の状況では、自分たちでミスなく遺産分割協議や各種手続きを完了させることは困難でしょう。
相続が発生した際には手続きを放置せず、順序だてて進めていくことが大切です。

遺産分割協議に時効はある?やり直しは可能?やり直しをする際の注意点<

2-2 口座名義人の死亡を確認すると銀行口座が凍結されてしまう

銀行が口座名義人の死亡を確認すると、故人名義の銀行口座が凍結され下記の取引ができなくなってしまいます。

  • 預貯金の引き出し
  • 公共料金やクレジットカードの引き落とし・口座振替

口座が凍結されると、銀行で相続手続きを完了させるまで故人の預貯金は動かせなくなってしまいます。
相続手続きを早めに終わらせることも大切ですが、それとあわせて故人名義のクレジットカードや各種料金の支払い口座を変更しておきましょう。

銀行口座の凍結とは?口座名義人の死亡後に解除する方法と必要書類

2-3 凍結されていない故人の口座は第三者による引き出しリスクがある

銀行が口座名義人の死亡を確認しない限り口座凍結されることはありませんが、一方で口座名義人が亡くなってからも凍結されない口座は第三者による引き出しリスクにさらされています。
キャッシュカードを持っていて暗証番号を知っていれば、故人でなくても預貯金を引き出せてしまいます。

  • 一部の家族や親族
  • 泥棒や強盗など悪意を持った第三者

上記の人が預貯金を引き出し、勝手に相続財産を使い込みしてしまう可能性もゼロではありません。
特に、家族や親族による預金の使い込みはトラブルに発展すると泥沼化しやすいので、故人の銀行口座は放置せず早めに手続きをすませましょう。

2-4 10年以上取引がない口座は休眠預金として扱われる

法律により10年以上にわたり入出金がない口座は休眠預金として扱われ、国のお金として使用されてしまいます。
休眠預金になった後も所定の手続きを行えば預貯金の引き出しを行えるものの手間がかかりますし、放置したまま相続人全員に忘れられてしまう恐れもあるでしょう。

2-5 相続税の納税期限までに手続きを終えれば遺産から相続税を支払える

家族や親族が亡くなり遺産を受け取ると相続税がかかりますが、相続税の納税期限までに銀行の相続手続きを完了させれば遺産から相続税を支払えます。
相続税の納税期限までに銀行の相続手続きが完了しなければ、相続人が自分の財産から相続税の納税資金を用意しなければなりません。

相続税の納税期限は相続発生から10ヶ月とされていますので、この時期までに遺産分割協議や銀行の相続手続きを完了させることを目指しましょう。

相続税は遺産から払える?遺産から払う方法・納税資金を用意する方法

2-6 口座管理手数料がかかる恐れがある

銀行によって対応が異なりますが、一定期間以上にわたり入出金がない口座は未利用口座として扱われ、口座管理手数料や口座維持手数料などが発生する恐れがあります。

故人の銀行口座を放置し続けると、最終的には手数料が発生し遺産が目減りしてしまう可能性もあるのでご注意ください。


3章 銀行の相続手続きの流れ・必要書類

家族や親族が亡くなり相続が発生したときは、銀行にて故人名義の預貯金の払い戻し手続きをする必要があります。
具体的には、下記の流れで銀行の相続手続きを行いましょう。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人調査をする
  3. 相続財産調査をする
  4. 遺産分割協議をする
  5. 銀行にて解約手続きを行う

それぞれ詳しく解説していきます。

STEP① 遺言書の有無を確認する

家族や親族が亡くなった際は、最初に故人が遺言書を用意していたかを確認しましょう。
故人が遺言書を作成していた場合、原則として遺言書に書かれた内容に従って遺産分割を行うからです。
遺産分割協議完了後に遺言書が見つかってしまうと、遺産分割協議をやった意味がなくなる、遺産分割協議のやり直しが必要になるなどのリスクもあるのでご注意ください。

なお、遺言書には下記の3種類があります。

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

上記の遺言書のうち、「公正証書遺言」と「法務局で保管していた自筆証書遺言」以外は家庭裁判所での検認手続きが必要です。
遺言書の検認手続きの申し立て方法および必要書類は、下記の通りです。

申立てできる人
  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人
申立て先故人の最後の住所地の家庭裁判所
費用
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手
必要書類
  • 遺言書の検認申立書
  • 遺言書
  • 相続関係がわかる戸籍謄本など(除籍、改製原戸籍など)

遺言書の種類や検認方法については、下記の記事もご参考にしてください。

遺言書の種類は3種類!自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴について<
【遺言書の検認】手続方法と流れ・費用・注意点まで図解で簡単解説!

STEP② 相続人調査をする

故人が遺言書を用意していなかった場合は、遺産分割協議を行う必要があるので相続人調査を行いましょう。
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければならないので、最初に相続人全員を確定させる必要があるからです。

相続人調査は故人が生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を取得して行います。
故人が死亡したときの戸籍謄本から遡って順番に取得していけば、生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本を集められます。

死亡時から遡って出生までの戸籍謄本を取得しよう

戸籍謄本の取得方法や必要書類は、下記の通りです。

取得できる人
  • 本人
  • 配偶者
  • 直系血族
  • 代理人
取得先本籍がある(あった)市区町村役場※郵送可
費用
  • 戸籍謄本1通:450円
  • 除籍謄本や改製原戸籍謄本1通:750円
必要書類
  • 申請書(窓口または役場HPからダウンロード)
  • 本人確認書類
  • 代理の場合は委任状
  • 郵送の場合は定額小為替 など
相続人調査(戸籍収集)とは?詳しい手順から方法まで専門家が簡単解説

STEP③ 相続財産調査をする

相続人調査や戸籍謄本の収集が完了したら、相続財産の調査を進めましょう。
相続財産は銀行の預貯金以外にも様々な種類があるので、財産に合った調査を行うことが大切です。
相続財産に漏れがあると、再び遺産分割協議をしなければならない場合もあるのでご注意ください。

故人が遺した銀行口座を調査をする際には、故人の自宅などを整理して下記の情報や資料を探しましょう。

  • 預金通帳やキャッシュカード
  • 銀行や証券会社等からの郵便物
  • 故人のメール
  • 故人のパソコンやスマホのブックマーク、アプリ

近年ではネット銀行を利用している人も多く、通帳が発行されていない銀行口座も多いです。
故人が利用していたネット銀行も漏れなく発見するために、郵便物だけでなくメールやパソコンやスマホのブックマーク、アプリも確認しましょう。

相続財産とは?【簡単】正しく理解するために知っておくべき基礎知識

STEP④ 遺産分割協議をする

相続人調査および相続財産調査が完了したら、相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議とは、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかを決める話し合いです。

遺産分割協議で話し合った内容に相続人全員が合意したら、内容を遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書は相続人全員で署名および押印をして、各種相続手続きで提出します。

なお、遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、全員が1ヶ所に集まり行う必要はありません。電話やメール、その他の方法で意見交換をしながら協議を進めるのでも問題ありません。

また以下に該当する相続人がいる場合、家庭裁判所で代理人を選任してもらい遺産分割協議を進める必要があります。

認知症になって判断能力を欠く人 成年後見人
行方不明者不在者財産管理人
未成年者特別代理人
遺産分割協議とは?やり方や注意点・相談できる専門家まとめ

STEP⑤ 銀行にて解約手続きを行う

遺産分割協議が完了したら、銀行にて預貯金の解約手続きを行いましょう。
銀行の相続手続きは故人が利用していた銀行に連絡し必要書類を確認し、収集や作成後、提出すれば完了します。

金融機関や相続人と故人の関係、遺言書の有無によって異なりますが、銀行の相続手続きに必要な書類は主に下記の通りです。

パターン必要書類
遺言書がある
  • 遺言書
  • 故人の死亡の事実が確認できる戸籍謄本
  • 預金を相続する方(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(遺言執行者がいる場合)
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言で手続きをする場合は不要)
  • 預金通帳やキャッシュカード、証書等
遺言書がない
  • 故人の除籍謄本、戸籍謄本等(出生から死亡までつながりのわかるもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合)
  • 預金通帳やキャッシュカード、証書等
家庭裁判所の調停調書・審判書があるパターン
  • 調停調書謄本又は審判書謄本(審判書上で確定表示が無ければ、審判確定証明書も必要)
  • 預金を相続する方の印鑑証明書

平日日中は仕事をしていて銀行で相続手続きをするのが難しい場合や、相続手続きを何から始めて良いかわからない場合は相続を専門とする司法書士や弁護士に相続手続きを依頼できます。

預金の相続手続きの流れ・必要書類【故人の預金口座の調べ方とは?】

4章 銀行の相続手続きを依頼できる専門家

銀行の相続手続きを自分で行うことが難しい場合は、司法書士や行政書士に相続手続きを依頼することも検討しましょう。
司法書士や行政書士であれば、相続人の代わりに相続手続きを行い、故人の預貯金の解約手続きを行えます。

特に、下記のケースでは書類の収集や手続きに手間がかかるため、相続手続きを専門家に依頼するのが良いでしょう。

  • 相続人の数が4名以上
  • 故人が保有していた銀行口座の3か所以上
  • 相続人同士の関係性が悪いもしくは関係性が薄い
  • 銀行口座がある銀行の支店が近隣にない
  • 不動産の名義変更などの手続きもまとめて行いたい

グリーン司法書士法人でも、預金の相続を始めとした相続手続き全般に関する相談をお受けしています。

相続の相談をする専門家の正しい選び方と資格別の特徴【比較表付き】

5章 銀行の相続手続きに関するよくある質問

最後に、銀行の相続手続きについてよくある質問を回答と共に紹介していきます。

銀行の相続手続きにかかる期間はどれくらい?

銀行の相続手続きには必要書類の提出などが必要なため、約2週間から1ヶ月ほどかかることが多いです。

銀行の相続手続きにかかる日数は約2週間~1ヶ月!短くする方法とは

家族が故人の預金を勝手に引き出すのは違法?

相続人が口座名義人の死後に預金を引き出したとしても違法ではありません。

日本では親族間での窃盗や横領について刑事上の罪に問わないと決まっているからです。
ただし、預貯金が遺産であることに変わりはないため、入院費用や葬儀費用の支払い目的で引き出した場合、領収書などを大切に保管しておきましょう。

家族の死後に預金引き出しをするのは違法?相続トラブルに注意が必要

口座名義人が死亡すると銀行口座はどうなる?

口座名義人の死亡を銀行が知ったタイミングで、口座が凍結され預貯金を引き出すことや口座引き落としが行われなくなります。
凍結を解除するには、銀行の相続手続きを行うしかありません。

銀行口座の凍結とは?口座名義人の死亡後に解除する方法と必要書類
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まとめ

銀行の相続手続き自体に期限はありませんが、手続きを放置すると故人の口座が休眠口座になる、第三者による引き出しリスクがあるなどのデメリットがあります。
そのため、可能であれば早めに銀行の相続手続きを進めるのが良いでしょう。

銀行の相続手続きを行う際には、故人が利用していた金融機関に連絡して必要書類を収集しなければなりません。
必要書類の収集が難しい場合や他の相続手続き含めどんな順番で進めれば良いかわからず困っている人は、相続手続きを司法書士や弁護士に依頼することもご検討ください。

相続に精通した司法書士や弁護士であれば、相続人調査や相続財産調査から銀行の解約手続きまでワンストップで行えます。

グリーン司法書士法人では、相続手続きに関する相談をお受けしています。
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