銀行の相続手続きにかかる日数は約2週間~1ヶ月!短くする方法とは

銀行の相続手続きにかかる日数は約2週間~1ヶ月!短くする方法とは
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 8

家族が亡くなり相続が発生したときは、銀行で相続手続きを行い故人の預貯金を払い戻す必要があります。
銀行の相続手続きでは要書類の提出や銀行側の確認が必要であり、約2週間から1ヶ月程度かかります。

必要書類に不備があった場合は再提出や修正が必要になり、手続き完了までの期間が長くなるのでご注意ください。
手続きをスムーズに終えるためには書類の不備をなくすことはもちろんですが、相続発生時から必要書類の収集を始めておくと良いでしょう。

また、平日日中は仕事をしていて銀行や役所で手続きや必要書類の収集をするのが難しい場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士に手続きを依頼するのもおすすめです。

本記事では、銀行の相続手続きにかかる日数や手続きの流れを解説します。


1章 銀行の相続手続きは2週間から1ヶ月程度かかる

家族や親族が亡くなったときは銀行の相続手続きが必要です。
銀行の相続手続きを行う際には、必要書類の収集や銀行側の確認作業が必要であり約2週間から1ヶ月程度かかります。
具体的には、銀行が口座名義人の死亡を確認し、相続人に預貯金を払い戻すまで下記の手続きを行う必要があります。

相続手続き期間の目安
故人の銀行口座が凍結される銀行が口座名義人の死亡を知ったとき
相続人などが手続き開始を申し出る1日
必要書類の収集および提出をする約1週間~
(故人や相続人の戸籍収集も行うと1ヶ月以上かかる場合も多いです)
銀行側で内容確認および払い戻し手続きをする約1週間から1ヶ月

また、銀行が求める必要書類の収集をする際には、故人が遺言書を用意していたか、相続人は誰なのかなどを調査しておかなければなりません。
預貯金の払い戻しにかかる期間を少しでも短くしたいのであれば、相続手続きの流れを把握し効率よく必要書類を収集していきましょう。

次の章では、故人の預貯金を払い戻す際の手続きの流れについて詳しく解説します。

銀行口座の凍結とは?口座名義人の死亡後に解除する方法と必要書類
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2章 銀行の相続手続きの流れ

故人の銀行口座から預貯金を払い戻すには、誰がどれくらいの割合で預貯金を相続するかを決定した上で銀行側に必要書類を提出しなければなりません。
具体的には、下記の流れで手続きを進めていきましょう。

  1. 遺言書の有無の調査・検認手続きをする
  2. 相続人を調査する
  3. 故人の銀行口座を特定する
  4. 遺産分割協議をする
  5. 相続人が銀行に手続きを申し出る
  6. 必要書類を収集する
  7. 必要書類を提出する
  8. 内容に不備がなければ預金が払い戻される

なお、上記の手続きは預貯金以外の相続手続きでも必要です。
相続手続き全体の流れを知りたい人は、下記の記事もご参考にしてください。

【保存版】相続手続きでやるべきことまとめ!必要書類や期限も紹介

STEP① 遺言書の有無の調査・検認手続きをする

故人が遺言書を作成していた場合、原則として遺言書に記載された内容通りに遺産分割が行われます。
そのため、まずは故人が遺言書を用意していたかどうかを確認しましょう。

  • 故人の自宅や貸金庫などを整理して、遺言書がないか確認する
  • 最寄りの公証人役場で故人が公正証書遺言を作成していたか確認する

故人が遺言書を作成していた場合、上記の方法で見つかる可能性が高いです。
なお、遺言書には主に3種類あり、故人が用意していたものが①自筆証書遺言もしくは②秘密証書遺言だった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

検認手続きの申し立て方法および必要書類は、下記の通りです。

手続きできる人
  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人
手続き先故人の最後の住所地の家庭裁判所
費用
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手代
必要書類
  • 遺言書の検認申立書
  • 遺言書
  • 相続関係がわかる戸籍謄本など(除籍、改製原戸籍など)
遺言書の種類は3種類!自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴について
【遺言書の検認】手続方法と流れ・費用・注意点まで図解で簡単解説!

STEP② 相続人を調査する

故人が遺言書を用意していなかった場合は、故人の戸籍謄本を収集して相続人を確定させましょう。
誰がどの財産を受け継ぐか話し合う遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければならないからです。

相続人調査は、故人の死亡時の戸籍謄本から遡って取得し出生まで連続した戸籍謄本を集めます。
戸籍謄本には前の本籍地が書かれているので、死亡時から遡ると途切れることなく収集できます。

死亡時からさかのぼって出生までの戸籍謄本を取得する

故人の戸籍謄本の収集が完了したら、相続人全員の戸籍も集めます。
相続人調査の方法については、下記の記事もご参考にしてください。

相続人調査(戸籍収集)とは?詳しい手順から方法まで専門家が簡単解説

STEP③ 故人の銀行口座を特定する

相続人調査と共に故人が使用していた銀行口座も特定しましょう。
故人が生前のうちに自分の財産目録などを用意していなかった場合は、下記の方法で利用していた銀行を特定できます。

  • 自宅などを整理し預金通帳やキャッシュカードを探す
  • 銀行からの郵便物がないか探す
  • 故人が使用していたスマホやパソコンの履歴、アプリ、メールなどを確認する

故人がネット銀行を利用していた場合、紙の預金通帳がないことや自宅に郵便物が届かないことも多いです。
その場合は、故人のスマホやパソコンも確認して利用していた金融機関を特定しなければなりません。

なお、利用していた銀行さえわかれば、残高証明書の発行や相続手続きは行えるので口座番号までは特定できなくても問題ありません。

預金の相続手続きの流れ・必要書類【故人の預金口座の調べ方とは?】4章

STEP④ 遺産分割協議をする

相続人および相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、誰がどの財産をどれくらいの割合で受け継ぐかを決める話し合いです。

遺産分割協議が完了したら、内容を遺産分割協議書にまとめ相続人全員で署名および押印をします。

遺産分割協議とは?やり方や注意点・相談できる専門家まとめ

STEP⑤ 相続人が銀行に手続きを申し出る

故人の銀行口座の払い戻し手続きをするために、故人が利用していた銀行の下記窓口に連絡しましょう。

  • 相続人の最寄りの支店
  • 相続手続き専門部署(相続手続きセンター)
  • 亡くなった人の取引支店
  • 銀行の公式HP

銀行によっては、公式HPなどからWeb上で相続手続きの受付を行っている場合もありますので、まずは確認してみるのがおすすめです。

STEP⑥ 必要書類を収集する

銀行に相続手続きを申し出ると、銀行から相続手続きの案内に関する書類を相続人宛に送られてきます。
案内が届くまでの期間は約1週間程度かかることが多いです。

案内が届いたら、記載されている書類の収集および作成をしましょう。
銀行によって異なる可能性もありますが、手続き時には下記の必要書類を用意しなければならないことが多いです。

遺言書の有無必要書類
遺言書がある
  • 遺言書
  • 故人の死亡の事実が確認できる戸籍謄本
  • 預金を相続する人(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(遺言執行者がいる場合)
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言で手続きをする場合は不要)
  • 預金通帳やキャッシュカード、証書等
遺言書がない
  • 故人の除籍謄本、戸籍謄本等(出生から死亡までつながりのわかるもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合)
  • 預金通帳やキャッシュカード、証書等

STEP⑦ 必要書類を提出する

必要書類の収集が完了したら、各銀行所定の相続手続きの用紙と共に提出しましょう。

  1. 各支店の担当窓口に提出する
  2. 相続センターなどの専用窓口に提出する

上記の2種類のパターンがあるので、事前に確認しておくとスムーズです。

STEP⑧ 内容に不備がなければ預金が払い戻される

必要書類の提出後は銀行側が内容を確認し、不備がなければ相続人や受遺者のもとに預貯金が払い戻されます。

銀行が確認した結果、内容に不備がある場合は書類の再提出や訂正印を求められます。
訂正印は実印で押す必要があるので、相続人同士が遠方に住んでいる場合などは払い戻し手続きまでにさらに時間がかかってしまう恐れもあるでしょう。

できるだけ早く故人の銀行口座の払い戻し手続きを終えたい場合は、必要書類の収集を効率よく行うだけでなく提出書類の不備をなくすことも大切です。
不備なくスムーズに手続きを終えたい場合や平日日中は仕事をしていて相続手続きを進められない場合は、相続に詳しい司法書士や弁護士への相談もご検討ください。


3章 銀行の相続手続きにかかる期間を短くする方法

銀行の相続手続きは必要書類の収集や銀行側の確認などで約2週間から1ヶ月はかかります。
遺された家族の生活費や相続税の納税資金として故人の預貯金を使用したい場合、できるだけ早く銀行での手続きを終えたいと考える人も多いでしょう。

銀行の相続手続きにかかる期間を短くしたいのであれば、下記の方法もお試しください。

  1. 銀行の窓口で相続手続きをする
  2. 相続発生時点で必要書類を収集しておく
  3. 専門家に相続手続きを依頼する

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1 銀行の窓口で相続手続きをする

銀行に口座名義人の死亡を連絡し相続手続きを申し出るときは、郵送で必要書類を受け取るのではなく銀行窓口で受け取ると手続きにかかる期間を短縮できます。
また、必要書類の提出をする際も銀行窓口に提出すれば、その場で書類に不備がないかを確認してもらえます。

銀行の相続手続きは故人が口座開設していた支店だけでなく、相続人の最寄りの支店でも行えるのでお急ぎの場合は窓口での手続きがおすすめです。
なお、窓口で手続きする際には事前に来店予約をしておくと待ち時間を短縮できます。

3-2 相続発生時点で必要書類を収集しておく

故人が亡くなり相続が発生した段階で必要書類の収集を始めておけば、それだけ相続手続きにかかる期間を短縮できます。
故人が遺言書を用意していたかにもよりますが、銀行の相続手続きで必要な書類は複数あり収集だけでも大変だからです。

さらに必要書類の中には、故人の除籍謄本や出生から死亡まで連続した戸籍謄本など、銀行以外の相続手続きでも求められる書類もあります。
そのため、最初にすべての相続手続きで必要になる書類を集めておけば、他の相続手続きもスムーズに進むでしょう。

また、必要書類の提出をする際に不備をなくすことも大切です。
銀行側が書類の確認をした際に不明点や不備があると再提出や修正が必要になり、相続手続きにさらに時間がかかってしまうからです。

3-3 専門家に相続手続きを依頼する

平日日中は仕事をしていて自分で相続手続きを行う時間がない場合やミスなく相続手続きを完了させたい場合は、相続に精通した司法書士や弁護士などに手続きを依頼するのが良いでしょう。
専門家であれば、必要書類の収集から銀行への払い戻し手続きまでワンストップで対応可能です。


4章 払戻制度なら相続手続き完了前に預金を引き出せる

本記事の2章で解説しましたが、故人の銀行口座の払い戻しをする際には遺言書もしくは遺産分割協議書が必要です。
しかし、相続時の状況によっては葬儀費用や入院費用の支払い、当面の生活費などが必要になり、遺産分割協議完了前に故人の預貯金を引き出したいケースもあるでしょう。

払い戻し制度を利用すれば、遺産分割協議の完了前に故人の預貯金を引き出せます。
払い戻し制度は家庭裁判所を通す場合と通さない場合の2種類があり、それぞれの特徴は下記の通りです。

家庭裁判所の介入の有無払い戻しの上限額必要書類
家庭裁判所を介す
  • 家庭裁判所が認めた金額
  • 家庭裁判所の審判書謄本
  • 手続きする相続人の印鑑証明書
家庭裁判所を介さない
  • 金融機関ごとに150万円
  • 相続開始時の預金額×払戻を行う相続人の法定相続分×1/3
  • 亡くなった人の除籍謄本
  • 亡くなった人の戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本もしくは全部事項証明書
  • 手続きする相続人の印鑑証明書

上記のように、150万円までであれば家庭裁判所で手続きを行わずに預貯金を引き出せる可能性があります。
葬儀費用の支払いなどでまとまった現金が必要な場合は、払い戻し制度の利用もおすすめです。


5章 銀行で相続手続きをするときの注意点

銀行で相続手続きを行う際には、故人が利用していた銀行口座を漏れなく特定する、相続放棄を検討しているのであれば預貯金に一切手を付けないなどの注意が必要です。
具体的には、下記の3点に注意しましょう。

  1. ネット銀行の口座は相続人が見つけにくい
  2. 引き出した預金を使うと相続放棄できなくなる
  3. 払い戻し制度を利用するときは領収書を保管しておく

それぞれ詳しく解説していきます。

5-1 ネット銀行の口座は相続人が見つけにくい

故人がネット銀行を利用していた場合、メガバンクや地方銀行などの口座と違い発見しにくいです。
​ネット銀行は郵便物が届かないことも多いですし、紙の預金通帳がない場合もあり、​故人宛の郵便物の確認や自宅を整理しただけでは銀行に関する情報を見つけられない可能性があります。

故人がネット銀行を使用していた可能性があるなら、下記の確認をして利用していた銀行を特定しましょう。

  • 故人宛のメール
  • 故人のスマホやパソコン履歴
  • 故人のスマホアプリやブックマーク

故人が利用していたネット銀行の口座を見つけられないと預貯金の払い戻しができないだけでなく、下記のリスクもあります。

  • 遺産分割協議のやり直しが必要になる
  • 相続税の申告漏れによるペナルティを受ける

遺産分割協議書の作成前や相続税申告までには、必ず相続財産の確定を完了させましょう。

このように、故人が財産目録や遺言書を作成していないと、遺された家族の手間が増えてしまいます。
家族や親族の負担を減らすためにも、エンディングノートに自分の財産について記しておく、遺言書を作成し相続手続きの手間を減らすなどの対策も必要です。

【無料DL付】エンディングノートとは?書くべき10個と注意点

5-2 引き出した預金を使うと相続放棄できなくなる

故人の預貯金を相続人が使用してしまうと、財産を相続したとみなされ相続放棄ができなくなる恐れがあるのでご注意ください。

相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しなくなる制度です。
例えば故人が多額の借金を遺していて遺産すべてを使っても返済しきれない場合は、相続放棄しなければ相続人が返済義務を負ってしまいます。

相続放棄すれば故人の借金を返さなくてよくなりますが、故人の財産を勝手に処分すると「単純承認」にあたり、相続放棄が認められません。

なお、故人の葬儀費用を預貯金から支払った場合は単純承認とみなされませんが、故人の入院費用や遺された家族の生活費に預貯金を使用すると単純承認になってしまいます。
故人が借金をしていて相続放棄したい場合や借金の有無がわからない場合は、故人が遺した預貯金にも手を付けずそのままにしておくのが良いでしょう。

相続放棄時の財産処分の取り扱いに関しては、専門的な知識が必要です。
相続放棄を検討した時点で、相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。

相続放棄はどんな効果がある?いつから効力が発生するのかも解説!

5-3 払い戻し制度を利用するときは領収書を保管しておく

故人の銀行口座が凍結される前や凍結後に一時払い戻し制度を利用して故人の預貯金を引き出した際は、領収書を保管しておきましょう。
払い戻した預貯金を葬儀費用や故人の入院費用の支払いに充てたとしても、領収書がなければ他の相続人に対して証明できないからです。

他の相続人から預貯金の使い込みを疑われる恐れもあるので、トラブルを避けるためにも領収書を保管しておくと安心です。
また、預貯金の引き出しは最小限にとどめ、できるだけ早く相続手続きを完了させましょう。

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まとめ

銀行の相続手続きは必要書類の収集や銀行側の確認などで約2週間から1ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、銀行に相続手続きの連絡をする前に相続人の調査や故人が利用していた銀行を特定する必要があるので、実際にはもっと時間がかかる可能性もあるでしょう。

故人の預貯金の払い戻し手続きに限らず相続手続きをスムーズに完了させたいのであれば、相続に精通した司法書士や弁護士に依頼するのが確実です。
司法書士や弁護士であれば、必要書類の収集から払い戻し手続きまで一括で行えます。

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