現金を相続する場合どうしたらいい?相続税を減額する対策も簡単解説

現金を相続する場合どうしたらいい?相続税を減額する対策も簡単解説
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司法書士中川 徳将

 監修者:中川 徳将

この記事を読む およそ時間: 5

遺産の中には、様々な種類の財産があります。その中でも多いのが現金です。

現金は、相続人同士で分割しやすく、手続きもそれほどいらないため、楽ちんだと考える方も多いでしょう。

しかし、現金は相続税が高くなりやすいなどのデメリットもあります。

また、タンス預金のような自宅に保管してあった現金も、勝手に自分のものにしてはいけません。しっかりと遺産分割協議でどうのように分割するか決定する必要があります。

現金であっても相続はすこし複雑なのです。

そこでこの記事では相続上の現金の取り扱いや相続する際の注意点、現金を相続するメリット・デメリットについて解説します。


1章 相続上の現金の取り扱い

相続上「現金」とは、お金そのものを指し、タンス預金やへそくり、お財布に入っていたお金などがこれに当たります。

現金であっても、他の相続財産と同様に取り扱います。1,000万円分の現金があれば、そのまま1,000万円の相続財産として、遺産分割の対象となります。

「現金」と似たもので、「預金」がありますが、「預金」は、銀行口座に入っているお金です。

預金の場合、相続上は口座に入っているお金そのものをではなく、「銀行口座から現金を引き出す権利」が相続財産の対象となり、相続人全員の合意がなければ口座からお金を引き出すことはできません。

とはいえ、この2つに相続分の決定方法などに違いはなく、どちらも「相続財産上のお金」として考えて問題ありません。

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2章 現金を相続する際の注意点

ここでは、現金を相続する際の注意点について解説します。

2−1 現金は遺産分割協議で分配する

現金は、遺言書がある場合を除き、他の相続財産と同じように遺産分割協議で相続分を決定します。

遺産分割協議にて、相続方法が決定するまでは相続人全員のものと扱われ、全員の合意が得られない限り誰も現金に手を付けることはできません。

2−2 現金を隠す行為は絶対にNG

「生の現金だから、このままくすねてもばれないだろう…」そう考えてしまう方もいらっしゃいます。

しかし、相続財産の現金を隠す行為は、刑事罰の対象となる可能性があります。

また、現金を隠し、後から税務調査が入った場合、延滞税や過少申告加算税、重加算税などのペナルティが課されるリスクもあります。

相続税の申告をしない、他の相続人に隠れてくすねるという行為は決してやってはいけません。


2章 現金を相続するメリット・デメリット

「分割もシンプルだし、手続きも楽だから、相続財産は現金のまま遺そう」と考える方は多いかもしれません。
しかし、現金を相続するには、メリット・デメリットがあり、場合によっては、不動産などに換えて遺すほうがよいこともあります。

相続人に遺産を遺す場合には、メリット・デメリットどちらも踏まえた上で、検討するようにしましょう。

2−1 現金を相続するメリット

メリット① 手続きがシンプルで簡単

現金を相続する場合、不動産などのように名義を変更する必要がありません。

また、預金の場合には、銀行で口座の名義変更の手続きが必要ですが、不動産ほど煩雑ではありません。

手続きがシンプルというのは、現金を相続する大きなメリットです。

メリット② 相続人同士で公平に分けやすい

現金は、極端に言えば1円単位で分けることができます。

そのため、不動産のように現物を分けることがができないものと違い、複数人の相続人がいても公平に分け合うことが可能です。

相続トラブルの多くは、遺産分割の不公平さから生じるものです。現金を公平に分け合えば、相続トラブルも発生しにくいと言えます。

メリット③ 相続後すぐに使える

不動産や株式などを相続した場合、名義変更などの手続きをした上で売却をしなければならず、お金として使うまでに時間がかかります。

一方、遺産分割協議が終わって現金を相続すれば、その日からでもお金を使うことができます。

メリット④ 相続税の納税や遺留分の支払いに使える

相続税の納税や遺留分(※)の支払いは、原則現金しか認められていません。

不動産のみを相続した場合、一度換価して支払うか、自身で資金を用意しなければいけません。

その点、現金であれば融通が効きやすいので、支払いに困らずに済むでしょう。

遺留分侵害額請求とは?基礎知識や計算方法、請求の手順まで簡単解説

(※)遺留分とは、法定相続人に認められる最低限の遺産取得分です。

2−2 現金を相続するデメリット

現金の場合、当然ですが、現金の金額そのまま相続税の対象となります。

不動産などの場合、相続税上の評価額を算出し、その額が相続税の対象となります。相続税上の評価額は購入した金額よりも下がることがほとんどです。

高額な現金がある場合、対象となる金額が下がることはないため、不動産などに比べ相続税が高額になりやすいと言えます。

とはいえ、相続税がかかるのは、遺産総額が基礎控除【3,000万円+600万円×法定相続人の人数】を超える場合のみです。

遺産総額が基礎控除を超えない場合には、相続税を気にする必要はありません。


3章 現金を相続した場合の相続税

現金を相続した場合、相続税が高額になりやすい傾向にあります。

ここでは、現金を相続した場合の相続税について解説します。

3−1 相続税がかかるのは遺産総額が基礎控除額を超える時

相続税がかかるのは、遺産の総額が相続税の基礎控除を超える場合のみです。

相続税の基礎控除

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

  • 法定相続人が1人の場合:3,600万円
  • 法定相続人が2人の場合:4,200万円
  • 法定相続人が3人の場合:4,800万円

自身が相続した分ではなく、遺産総額が基礎控除を超えた場合ですので注意してください。

例えば、法定相続人が2人の場合。遺産が現金1億円であれば、相続税の課税対象額は【1億円ー4,200万円=5,800万円】。現金5,000万円+不動産5,000万円の場合も【1億円ー4,200万円=5,800万円】となります。

相続税について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

相続税の計算方法を詳しく解説【自分で相続税を計算しよう!】
相続税とは?基礎知識から具体的な計算方法や節税対策まで簡単解説

3−2 配偶者であれば相続税がかからないケースがほとんど

配偶者は、遺産が今後の生活に必要な財産となることが多いため、相続税の控除が大きくなっています。

相続税の配偶者控除は、以下のとおりです。

以下のうちいずれか大きい方

  • 1億6,000万円
  • 法定相続分(※)

(※)相続人が配偶者と子供の場合は1/2、配偶者と両親の場合は2/3、配偶者と兄弟姉妹の場合は3/4、配偶者のみの場合は全額

上記を見ても分かる通り、配偶者の控除額は非常に大きく、相続税が課されることは稀です。

相続税とは?基礎知識から具体的な計算方法や節税対策まで簡単解説|6-2 配偶者の税額控除

4章 現金のまま相続すると相続税が高くなる

相続税の対象額は、相続税の対象となる財産を評価して算出します。

現金の場合は当然、現金の額がそのまま相続税の対象となります。

不動産などの場合、一定の方法で評価額を決定するのですが、購入額よりも低くなることがほとんどです。

また、不動産の相続では、相続税を軽減する控除や特例がさまざま設けられています。現金ではそのような控除・特例がないため、そっくりそのまま相続税の対象になってしまうのです。

現金のまま相続すると相続税が高くなる

現金と不動産では、1.5-2倍程度、相続税の金額に差がでると考えておきましょう。


5章 現金を相続税をかけずに相続人に残す方法

現金を相続すると、相続税が高額になってしまう可能性があります。

しかし、現金のほうが融通が利くため、どうにかして現金のまま相続人に渡したいという方も多いのではないでしょうか。

相続時に相続税を軽減することは難しいですが、生前贈与であれば相続税をかけずに相続人に現金を残すことができるケースがあります。

ここでは、相続税をかけずに現金を相続人に残す方法を解説します。

5−1 1年に110万円ずつ贈与する

生前贈与をすると贈与税がかかりますが、非課税枠【年間110万円】以内であれば、贈与税がかかりません。

そのため、現金を残したい人に、毎年110万円ずつ渡せば、贈与税をかけずに贈与することが可能です。

なお、【年間110万円】というのは、受け取る側の合計金額です。母から110万円、父から110万円、合計220万円の贈与を受けた場合、贈与税の対象となるので注意してください。

生前贈与について詳しくはこちらを御覧ください。

【徹底解説】生前贈与は非課税になる?金額やパターンを紹介!
生前贈与で税金はいくらかかる?計算方法や手続き方法を詳しく紹介!

5−2 住宅取得等資金の贈与の特例を利用する

子や孫に対して、住宅の購入やリフォーム資金として贈与したものは、一定条件を満たすことで、非課税枠に最大1,000万円まで加算することができます。

つまり、暦年贈与110万円を加算すると、最大1,110万円まで非課税になるということです。

贈与の時期・住宅用の家屋の種類省エネ等住宅左記以外の住宅
令和4年1月1日から令和5年12月31日まで1,000万円500万円

※現時点では令和5年12月31日までとされていますが、延長される可能性があります。

5−3 教育資金の一括贈与の特例を利用する

30歳未満の子や孫の教育資金として贈与したものについては、非課税枠に1,500万円まで加算されます。つまり、1,610万円まで非課税になるということです。

教育資金の一括贈与の特例を利用して贈与する場合、専用の口座を開設し、使用する際に都度「教育資金」であることを証明する領収書やレシートを金融機関に提出して引き出します。

教育資金として認められるのは、保育園・幼稚園の費用、中・高・大学の入学金や授業料といった学校等にかかる資金です。塾や習い事などは認められるケースとそうでないケースがありますので、適宜確認しましょう。

なお、教育資金の一括贈与制度で贈与された資金は、教育以外で利用した場合や、30歳を迎えた時点で余った分は贈与税がかかりますので、注意してください。

教育資金贈与は特例で非課税になる?使うメリットと贈与の方法を解説

5−4 結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する

20歳以上50歳未満の子や孫に結婚や子育て用の資金を贈与した場合、1,000万円まで非課税枠に加算されます。つまり、1,100万円まで非課税になるということです。

この特例で受けた贈与も、教育資金と同様に使用目的が限定されていますので、専用の口座を解説し、使用する際には証拠となる領収書やレシートを提出すなければいけません。

結婚資金には、婚活費用、結婚式費用、結婚による引っ越しの引越し費用などが当てはまります。結婚・婚約指輪や、新婚旅行の費用は対象外です。

子育て資金には、不妊治療の治療費、出産費用、産後ケアの費用、子供の医療費、育児にかかる費用(小学生まで)が当てはまります。子供の習い事などは対象外です。

また、この特例には以下のような決まり事があります。

  • 結婚資金として使えるのは300万円まで(残りは子育て資金にあてる)
  • 贈与を受けた人が50際になった時、残高がある場合には贈与税が課税される
  • 贈与した人が亡くなった時、残高がある場合には相続財産に加算される

6章 まとめ

現金の相続はシンプルで手間も少なく、使う際にも融通がきくというメリットがあります。

その反面、相続税が高額になりやすいというデメリットも。

とはいえ、相続税がかかるのは、遺産総額が基礎控除【3,000万円+600万円×法定相続人】を超える場合のみです。

そもそも相続税がかからないようなケースでは、現金で遺すというのもよいでしょう。

なお、ここでは現金の相続について詳しく解説しましたが、預金の相続は口座の名義変更などの手続きが必要になります。

相続時の口座の名義変更などについては、こちらの記事を御覧ください。

相続手続きで銀行預金をスムーズに引き出す方法と預金口座の調べ方
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よくあるご質問

現金の相続手続きは?

現金も他の相続財産同様に遺産分割協議にて分配方法を決定します。
決定後は決められた通りに相続人や受遺者で分配を行います。
▶現金の相続手続きについて詳しくはコチラ

現金に対して相続税はいくらまでかからない?

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されており、現金などすべての相続財産の合計額が基礎控除内に収まる場合は相続税はかかりません。
▶相続税の基礎控除について詳しくはコチラ

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