
相続放棄をした場合にも代襲相続が発生するのか知りたい。
そのように考えてこの記事を読まれているのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、相続放棄をする人の立場によって、代襲相続が発生するかどうかが変わってきます。
相続放棄と代襲相続の関係は、かなり複雑なのです。
そこで、この記事では、相続放棄と代襲相続にまつわる相続ついてわかりやすくお伝えします。相続放棄と代襲相続が関係する相続を正しく理解しましょう。
さらに今回は、代襲相続を考慮したうえで結局は相続放棄をしなければならない(またはしてはいけない)のはどういったケースであるかも解説します。相続関係だけではなく、自分自身の場合はどのように行動すべきであるかも理解し、相続で損しないようにしてください。
この記事を読んで、間違いのない相続を実現するようにしましょう。
目次
0章 代襲相続や相続放棄について確認しよう
代襲相続と相続放棄の関係について説明するためには、代襲相続や相続放棄についてある程度知っておく必要があります。既にご存知の方は、この章を飛ばして1章まで進んでください。
0-1 代襲相続とは
まずはイラストで代襲相続のイメージ・登場人物を把握しましょう。
「代襲相続」とは、「被相続人が死亡した時点で本来の相続人が既に死亡している場合に、その死亡している相続人の下の代の人が直接相続する制度」のことです。
例えば、イラストの例では、祖父が死亡した時点で、既に父が死亡していて相続人となることができませんので、孫が祖父から直接相続しています。
そして、祖父のことを「被相続人」、父のことを「被代襲者」または「被代襲相続人」、孫のことを「代襲者」または「代襲相続人」といいます。
また、この代襲相続は、実は兄弟姉妹においても発生します。
被相続人からみると、兄弟姉妹が被代襲者になり、おい・めいが代襲者になります。
以上が代襲相続の概説です。次いで相続放棄についても簡単に説明します。
0-2 相続放棄とは
「相続放棄」とは、裁判所に対して手続きをすることにより、「相続人の地位から完全に外れること」をさします。
相続放棄の詳細を知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。
では、次章以降で相続放棄と代襲相続の相続関係を確認していきましょう。
1章 相続放棄をした場合に代襲相続がかかわる代表的な事例3選を確認しよう
相続放棄と代襲相続が関係するのは、主に次の3つのケースに分類されます。
それぞれの事例をイラストにして解説しますので、1つずつ見ていきましょう。
1-1 父が祖父の相続放棄をした場合でも、孫(自分)は代襲者にならない
まずはイメージをつかむためにイラストを確認しましょう。
①まず祖父が死亡し
②その後に父が祖父の相続を放棄した
という事例です。
このケースでは、孫(自分)は祖父を代襲相続しません。
父が死亡しているケースでは、孫(自分)が祖父を代襲相続するため、結論が異なることになります。
父が相続放棄をした場合に代襲相続が発生しないのは、民法上代襲相続が発生するのは「①死亡②廃除③欠格事由」の3つだけであると定められているからです。代襲相続の発生原因に相続放棄は含まれていないのです。
廃除・・・相続人が被相続人を虐待するなどの著しい非行を行った場合に、相続権を失うこと
欠格事由・・・相続人が被相続人を殺害した場合などの、相続権を失う事由
廃除と欠格の詳しい解説はこちら
結論として、「父が相続放棄を行っても、祖父から孫(自分)に代襲相続は発生しない」ということを覚えておきましょう。
1-2 過去に被代襲者の相続を放棄をしていても、被代襲者の子は被相続人を代襲相続する
これも言葉では難しいのでイラストでイメージを持ちましょう。
①まず父が死亡し
②孫(自分)が父の相続を放棄した後に
③祖父が死亡した
という事例です。
このケースでは、孫(自分)は祖父を代襲相続します。
これは、相続放棄は、被相続人ごとに相続をするかしないかを判断する制度だからです。
つまり、孫(自分)は、相続放棄によって父の相続を放棄するということを決めただけであり、祖父の代襲相続を放棄するかどうかは父の相続放棄とは無関係であるということです。(言い換えると、祖父の代襲相続を放棄したいなら、もう一度祖父の相続放棄の手続きをする必要があります。)
結論として、「父の相続を放棄しても、祖父を代襲相続することができる」ということを覚えておきましょう。
1-3 父母が死亡した子の相続を放棄をした場合は、祖父母が子を相続する
①まず孫が死亡し、
②孫の相続人である父が相続放棄を放棄した
という事例です。(あまりないケースかもしれませんが、父・祖父が健在であるにもかかわらず孫が死亡してしまった事例です。)
このような場合は、父が相続を放棄すると、祖父(自分)が相続人となります。
つまり、祖父(自分)が孫からの相続を避けるためには相続放棄の手続きを行わなければなりません。
1章の1で解説した事例(父が祖父の相続を放棄した事例)とは結果が異なります。
その理由は、数世代上の代の人が相続することを、法律上「代襲相続」として扱わない点にあります。
結論として、「父が相続放棄を行うと、祖父が孫を相続する」ということです。少しややこしいですが、間違いのないよう注意しましょう。
2章 代襲相続を考慮したうえでどのような場合に相続放棄をすべきか把握しよう
相続放棄と代襲相続の関係を理解したら、次に肝心なのが「結局どういった場合に相続放棄をするべきなのか(またはしてはいけないのか)」という点です。
イラストを参考にしながらケースごとに確認していきましょう。
Case1 ~相続放棄をしても安心できない場合~
①まずは父が死亡し
②孫(自分)が父の相続を放棄した後に
③祖父が借金を抱えて死亡した場合
④孫(自分)は祖父の借金を代襲相続するため
⑤祖父の借金から逃れるためには相続放棄をする必要があります。
1章の2で解説したとおり、孫(自分が)父の相続を放棄しても、祖父の相続を放棄したことにはなりません。
祖父の借金から逃れるためには、改めて祖父の相続について相続放棄をする必要があります。
相続放棄の期限は、原則的に被相続人が死亡してから3ヶ月以内です。父の相続を放棄してるからといって安心していると、祖父の借金を背負うことになってしまいますので注意するようにしましょう。
Case2 ~相続放棄を躊躇なく行っても良い場合~
①まずは父が死亡し
②孫(自分)が父の相続を放棄した後に
③祖父がプラスの財産を持って死亡した場合には
④孫(自分)は祖父のプラスの財産を相続することができます。
これもまた1章の2で解説したとおり、孫(自分)は祖父を代襲相続します。
なぜなら、孫(自分)が父の相続を放棄しても、祖父の相続を放棄したことにはならないからです。
このようなケースでは、祖父の相続を放棄しない限りは祖父の相続に影響がありませんので、ためらわずに父の借金を相続放棄するようにしましょう。
まとめ
以上が相続放棄と代襲相続の関係になります。
難しいところもあったと思いますが、しっかりと理解して相続放棄を行うべきか判断するようにしましょう。
一番大事なのは、迷った時に自分自身で決めつけてしまわないことです。
誰が相続人か?というのは相続手続きの根幹の部分ですので、確信が持てない場合は相続を専門にしている司法書士・弁護士に必ず相談するようにしてください。
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